グランドパッキン

グランドパッキンとは

グランドパッキン挿絵

グランドパッキン (英: Gland Packing) とは、回転運動や往復運動を行うシャフト (軸) の外面に巻き付けるように取り付け、機械や設備内外を封止するためのシール部材です。

機械や設備のシャフト貫通部分の軸封に用いられています。グランドパッキンは、JIS B0116パッキン及びガスケット用語において、「断面が角形又は丸形で,スタッフィングボックスに詰め込んで用いるパッキンの総称」と定義されています。

グランドパッキンは、完全な軸封ではなく若干の漏れを伴うため注意が必要です。ただし、ポンプなどにおいては、軸とグランドパッキン間の漏れが、グランドパッキンの潤滑と冷却に必要な場合があります。

グランドパッキンの原理

グランドパッキン原理は、グランドパッキン内面 (シャフト側) がシャフト外面に、またグランドパッキン外面 (ハウジング) 側がスタッフィングボックス内面に密着することで、それぞれの間の隙間を埋め接触する面圧で流体の漏れ防止します。詳細は下記図1を参照してください。

グランドパッキン_図1

図1. グランドパッキンの原理

上記の面圧は、ナットを締め付けることでパッキングランド (パッキン押さえ部品) がグランドパッキンが押されて、グランドパッキンが内外径方向に広がることで発生します。ナットを強く締め付ければ面圧も高くなります。

締め付けが強すぎると密着による摩擦抵抗が高くなり過ぎ、回転軸や往復動軸に大きな負荷がかかります。機器の運転に支障をきたすことがあるため、注意が必要です。しかし、締め付けが弱いと流体が漏洩しやすくなります。

グランドパッキンの漏洩には、下記の3つがあります。漏洩の流れは上記図1を参照してください。

  • 接面漏れ グランドパッキン内径側とシャフト外径側を流れる漏洩
  • 背面漏れ グランドパッキン外径側とスタフィンボックス内径側を流れる漏洩
  • 浸透漏れ グランドパッキン内部で主に編組パッキンの編み込みの隙間を流れる漏洩

グランドパッキンの使用用途

グランドパッキン_図2

図2. グランドパッキンの使用例

グランドパッキンは、回転や往復運動をする機械や設備で、シャフトがハウジングやケーシングなどを貫通して外部へ突出している場合に使用されています。機械や設備内部のオイルの流体やガスなどの気体が、外部に漏れることを防止するための部品です。グランドパッキンの使用例は、上記図2を参照してください。

グランドパッキンを、シャフト貫通部のシャフト外周に巻き付けるように、ハウジングやケーシングのスタフィンボックス (パッキンを収納する箱体) 内に挿入します。グランドパッキン内面をシャフト外面により強く密着させるために、パッキングランド (パッキンを押えて締め付けるための部品) 部のナットを締め付けることで、グランドパッキンを押し込みます。

グランドパッキンの種類

グランドパッキン_表1

図3. グランドパッキンの種類と主な材質

グランドパッキンの特徴は、軸封部としては比較的安価であり、メカニカルシールなどと比較して構造が簡単なことです。それぞれ種類によって特徴があり、使用方法や使用環境も異なるため、製造者のカタログや仕様書、取扱説明書で確認した上で選定することが重要です。

グランドパッキン_図5

図4. グランドパッキンの種類

一般的に市販されているグランドパッキン (積層パッキン以外) は、ひも状でらせん状に巻かれた状態になっています。そのため、シャフトとスタフィンボックスの寸法に合わせ、必要な長さに切断して挿入し使用します。また、ひも状のパッキンを切断し使用する以外に、シャフトとスタフィンボックスの寸法に合わせて、あらかじめリング状に成形したものを製作することもあります。

成形品を使用することで、パッキン挿入の作業性やシール性も向上します。以前はグランドパッキンパッキンの材質としてアスベストパッキン (石綿含有シール材) が多く使用されていました。しかし、飛散したアスベスト (石綿) を吸引して健康被害を及ぼすことから、現在では一部の例外を除いて、労働安全衛生法により、「石綿含有製品の製造等」は全面的に使用が禁止されています。

グランドパッキンのその他情報

1. グランドパッキンの使用本数

通常、グランドパッキンは1本だけで使用せず、何本 (何段) か重ねて使用します。また、上図のようにシールリング (密閉用パッキン) を数本と、ヘッダーリング (はみだし防止用パッキン) を組み合わせて使用することで、より確実な封止が可能になります。

グランドパッキンの本数 (段数) や、パッキンの材質や密閉すべき流体などの圧力などによって異なるため、パッキン製造者の製品仕様書や取扱説明書などを参考に決定します。

2. グランドパッキンと軸の運動方向

グランドパッキンの使用用途は、軸の運動方向によって下記のような使用例があります。

回転運動軸用
グランドパッキン_図3

図5. ポンプの回転運動軸用

主にポンプや送風機などのシャフトの軸封などに使用されています。

往復運動軸用
グランドパッキン_図4

図6. バルブの往復運動軸用

バルブなどのバルブステ (弁棒) の軸封などに使用されています。

上記以外にも、さまざまな回転機械や往復動軸を持つ機械の軸封部に使用されています。液体や気体、粉体などを封止し、機械や設備が正常に運転、運用できるよう役立っています。

3. グランドパッキンの組み合わせ

前述した図5のポンプ用グランドパッキンは、編組パッキンが3リングとランタンリングで構成されています。このランタンリングは、下記の目的で使用されています。

  • シャフトの冷却や潤滑
  • 流体に砂などが混入している場合にグランドパッキン部から排出させ摩耗を防止
  • 流体の圧力が大気圧以下になる場合にグランドパッキンから空気の吸い込み防止

グランドパッキンは若干の漏れが発生するため、更に少ない漏洩で機械や設備、危険物などの封止に使用する場合は、メカニカルシールなどの軸封装置が使用されます。

4. グランドパッキンのメンテナンス

グランドパッキンは、長期的な機器の運転で摩耗し充填剤が減量して、漏洩が発生することがあります。その際は、ナットを増し締めするかグランドパッキンの取り替えが必要です。また、一度軸に沿って漏れの経路ができてしまうと、増し締めしても漏れが解消されにくいため、その場合も取り替えが必要になります。

参考文献
https://www.pillar.jp/know/gland_packings/
http://www.seal.valqua.co.jp/seal/gasket_detail_tech/

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