ソフトアブソーバ

ソフトアブソーバとは

ソフトアブソーバとは、自動組み立て装置や搬送機械などの高速動作するユニットが出す衝撃や振動、騒音などを軽減する、油圧式の機械製品のことを指します。

同じような機能を持つ部品として、スプリングやゴム、空気圧を利用した機械製品があります。

ソフトアブソーバは油圧式であり、上記の他の衝撃吸収手段に比べて比較的小型で効率の良い衝撃吸収が実現であるため、機械設計者などが衝撃吸収手段として重宝しています。

ソフトアブソーバの使用用途

自動組み立て装置や搬送機械、工作機械や各種ユニットなど、あらゆる産業機械は生産性向上を目指し高速化されます。その弊害として、高速動作するユニットなどからは強い衝撃や振動、騒音などが発生します。このような現象は、場合によっては産業機器全体の性能を低下させる原因となり、結果として生産性向上が達成されない事態に発展しかねません。

これを解決するのがソフトアブソーバです。衝撃や振動、騒音の原因となっている箇所にソフトアブソーバを取り付けることでそれを吸収し、生産機器全体の性能低下を防ぎながら個々のユニット動作の高速化が実現できるようになります。

ソフトアブソーバの原理

ソフトアブソーバが衝撃や振動、騒音を軽減する原理を説明します。これらを軽減することは、つまり衝撃や振動、騒音のエネルギーを吸収することと同義です。

ソフトアブソーバは大まかに以下の部品から構成されます。

  • ピストンロッド
  • ピストン
  • 圧力室オイル
  • オリフィス
  • インナーチューブ

物体がピストンロッドに衝突します。そうすると、その動きはピストンによって圧力室内のオイルに伝達します。そして、圧力室内のオイルはインナーチューブに設けられたオリフィスから流れ出し、その時圧力室内には圧力(油圧)が発生します。この油圧によって抵抗力がうまれ、ピストンを通して物体に押し返す力が働きます。その結果、衝突してきた物体にはブレーキがかかり減速されるのです。圧力室内に発生する油圧は、オリフィスの大きさ、オイルの粘度が一定であれば、衝突する速度の2乗に比例して大きくなります。これを速度2重抵抗と呼びます。

参考文献
https://www.takachiho-kk.co.jp/prod/mechanical/damper/soft/soft_sp/

ダブルバランスドミキサ

ダブルバランスドミキサとは

ダブルバランスドミキサとは、 パッシブミキサ回路の一種です。

ミキサ回路とは、一般的に2つの異なる周波数の信号の乗算値を出力する回路で、その出力信号成分として2つの信号の和と差の周波数が出力されます。ダブルバランスドミキサは、英語の頭文字からDBMとも呼ばれたり、二重平衡変調器ともいいます。ダブルバランスドミキサはミキサ回路のため2入力1出力の構成をもち、2つのトランスと4つのダイオードから構成されます。

ダブルバランスドミキサの使用用途

ダブルバランスドミキサは、ミキサ回路として無線通信の変調回路によく用いられます。近年スマートフォンを含め無線通信が盛んになってきており、ミキサ回路による変調は無線通信において重要な役割を果たしています。

ダイオードとトランスのみで構成され比較的簡潔な仕組みで動作が可能です。また入出力の向きを変えることで、変調・復調回路の受信側と送信側どちらとしても利用することができます。

ダブルバランスドミキサの原理

ダブルバランスドミキサは、ミキサ回路であり一般的に乗算器として用いられます。2入力1出力の構成で、出力には、2つの入力信号の周波数の和と差の成分が出力されます。

入力される2つの信号の周波数をそれぞれf1, f2とした場合、出力される信号の周波数はf1+f2とf1-f2 (f1>f2の場合) となります。ダブルバランスドミキサを変調回路として用いる場合は、f1を搬送波、f2を低周波の信号とした場合f1にf2が重畳した振幅変調信号を出力することができます。

出力に2つの和と差の周波数が出力されるしくみは、以下のとおりです。2つの周波数f1,f2を用いてα=2πf1,β=2πf2としたとき、2つの単一周波数の乗算を行うと次の式の通りになります。

 sinα×sinβ=1/2{cos(α-β)-cos(α+β)}

ここで、α-β=2π(f1-f2)、α+β=2π(f1+f2)となり、和と差の周波数成分に分かれることが分かります。そのためミキサ回路により二つの交流信号を入力し乗算を行うと、入力した周波数の和と差の信号を出力することになります。

参考文献
https://www.cqpub.co.jp/toragi/TRBN/contents/2004/tr0412/0412sp7.pdf

チタン

チタンとは

チタン

チタンとは、原子番号22の化学記号Tiで表される銀白色の光沢を持ち軽量で強靭な金属です。

非常に耐食性が高く熱に強いことから、航空産業や自動車産業などの高度な技術分野で広く使用されています。また、生体適合性があり、人工関節や歯科インプラントなどの医療器具にも使用されています。

一方で、非常に強靭であるため、加工には専門的な技術が必要です。空気中の酸素と反応して表面に酸化物の皮膜を形成するので、溶接や加工時には特別な対策を行います。

チタンの使用用途

以下はチタンの代表的な使用用途の一部です。

  • 航空機
    フレームや翼、ランディングギア、エンジン部品トなど
  • 自動車
    エンジン部品や排気システム、サスペンション、ホイールなど
  • 医療機器
    人工関節、歯科インプラント、外科用具、手術用具、医療装置など
  • エレクトロニクス
    スマートフォンやタブレットの筐体、電子部品の接触端子、電子回路基板など
  • 化学産業
    化学プラントや石油・ガス産業での配管、反応槽、ボルト、ナットなど
  • スポーツ用品
    自転車のフレーム、テニスラケット、ゴルフクラブ、釣り竿など
  • 製造業
    工具や機械部品、金型、プレス成形部品など
  • エネルギー産業
    火力発電所や原子力発電所の熱交換器、配管、タービンブレードなど

チタンの性質

1. 軽量で高強度

チタンは軽量でありながら強度が非常に高い金属です。チタンの密度は約4.5 (g/cm3) 、鉄の密度は約7.9 (g/cm3) で、鉄の約半分の質量です。 六方最密充填構造を持つ金属なので、この構造が強度に関係しています。なお、六方最密充填構造とは、原子や分子が六方最密充填と呼ばれる配置で密に詰まった構造です。

2. 耐腐食性

チタンは耐腐食性に優れ、酸やアルカリや海水などの化学的環境にも耐えられる材料です。主な理由として、まずチタンは空気中の酸素と反応し、薄い酸化被膜を形成することが挙げられます。この酸化被膜は非常に頑丈であり、酸やアルカリ、海水などの腐食性物質からチタンの表面を保護します。

また、チタンは化学的に安定な性質を持つ金属です。酸やアルカリ、海水などの化学的な環境に晒されても、チタンの結晶構造や特性により変質や腐食が起こりにくくなっています。さらに、酸素イオンの透過性が低いため、酸化被膜がより安定的に形成され、耐腐食性が向上します。

他の金属と接触した場合にも、電気化学的な反応が起こりにくい特性があることも理由の1つです。これにより、腐食の進行を抑える効果があります。

3. 耐熱性

チタンは融点が1,668℃と高く、高温下でも安定した物性を持ちます。また、チタンの酸化皮膜は高温下でも安定しており、熱酸化による劣化が少ないため、高温環境での使用に適した材料です。

理由として、まずチタンは高温下での酸化に対しても耐性があることが挙げられます。酸素や窒素、水素、炭素などの高温のガスに触れてもチタンの表面に酸化皮膜が形成されるため、内部の金属部分を保護できます。

また、高温腐食に対しても耐性があり、酸やアルカリ、海水、溶融塩などの高温で腐食性のある物質に対してもチタンの表面に形成される酸化皮膜が保護するため、長期間にわたって使用可能です。

さらに、高温下でも強度を維持できるので、高温環境での機械的な部品に使用されます。高温でのクリープ (塑性変形) に対しても耐性があり、長期間にわたる使用にも耐えられます。

4. 耐摩耗性

チタンの耐摩耗性が高い理由は、チタンの表面に形成される酸化被膜が要因です。空気中の酸素と反応して表面に酸化チタンの被膜を形成しますが、この被膜は非常に硬くて耐摩耗性が高いため、チタンの材料自体が摩耗しても被膜が剥がれることで表面を再生します。

また、チタンは非常に強靭であり強度が高く、物理的な衝撃や力にも耐えられます。

チタンの種類

チタンには多くの種類がありますが、以下はその一部です。

1. 酸化チタン

白色の粉末状物質で光触媒や塗料、食品添加物、紙・プラスチックの着色剤、紫外線吸収剤などに使用されます。

2. チタンカーバイド

チタンと炭素を合金化したもので硬度が高く、切削加工用の切削工具や精密部品に使用されます。

3. 窒化チタン

チタンと窒素を合金化したもので、硬度が高くて耐摩耗性や耐腐食性があります。コーティング素材や切削工具、軸受などに使用されます。

4. チタンシリコンカーバイド

チタンとケイ素と炭素の三元素から成る化合物で、高温下での強度が高くて耐熱性に優れています。航空機のエンジン部品や原子力発電所の制御棒や高速列車のブレーキディスクなどに使用されます。

チタンのその他情報

1. 低熱伝導性

チタンの結晶構造は六方最密充填構造を持っていて原子が密に詰まって配置されているため、熱エネルギーが原子間で効率的に伝導されることが制限されます。

また、チタンの原子間の結合は比較的強く、原子間の振動やエネルギー伝達が制限されるので、熱エネルギーが効果的に伝導されることが妨げられ、チタンの熱伝導性が低くなります。

2. 非磁性

純チタンや一般的なチタン合金では非磁性が一般的であり、磁気特性がほとんど見られません。ただし、一部のチタン合金には磁性が存在する場合があります。

3. 酸化耐性

チタンは高温環境下でも酸化しにくい性質を持ちます。通常の酸素や空気中では、チタン表面が酸素と反応してチタン酸化物 (酸化チタン) の酸化被膜を形成し、この酸化被膜は非常に薄くて強固で密着性があり、酸化被膜の形成によりチタンの表面は酸素や他の酸化物から保護されます。

4. 生体適合性

チタンは、生体適合性に優れた金属です。表面に形成される酸化被膜が重要な役割を果たしています。酸化被膜は非常に薄くて強固な保護層であり化学的に安定していて、生体組織との相互作用を促進し、細胞や骨組織の成長を助けます。

また、チタンは人体の組織や生物と接触しても、ほとんどの場合で反応が起こらず、体内での影響や副作用が極めて少ないです。そのため、アレルギー反応や炎症を引き起こすリスクが低い金属といえます。

5. 軟化現象

チタンは高温での使用にも耐えますが、長時間高温環境下にさらされると軟化現象が発生することがあります。この現象はチタンの結晶構造が変化して強度が低下することで起こります。

チャック

チャックとは

チャック

チャックとは、機械加工機や組み立て自動機などにおいて、加工対象の材料 (ワーク) や加工ツールを把持するために用いる機械駆動部のことです。

具体的には、ロボットアームなどに取り付けられる電動ハンドや、フライス盤ボール盤の刃物を固定する部分を指します。

チャックを動作させることで、ワークを移動させたり加工したりといった仕事が実行できるようになるため、用途によってさまざま種類が存在し、取り付け方法も複数存在します。

チャックの使用用途

チャックは、それを用いて何を実現したいかによって用途が変わります。代表的な用途を以下に示します。

1. 加工対象の材料 (ワーク) を把持する場合

ロボットアームなどのハンドとして、チャックが使われます。ワークを傷つけずに把持したいときには、チャックの先端にシリコンなどを装着し、小さく把持力を制御します。このように、目的に合わせてさまざまな工夫が施されます。

2. ワークを加工するツールを固定する場合

例えば、フライス盤やボール盤でワークを加工する刃物を固定するためにチャックが使われます。

チャックの種類

チャックはさまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。代表的なチャックとその特徴を以下に示します。

1. スクロールチャック

内部にスクロール状のカムがあります。全ての爪が連動しており、一箇所のハンドルを回転するだけで全ての爪が同時に駆動します。全ての爪が連動して同じ動きをするため、例えば円筒形ワークを把持する際に適しています。

2. インデペンデントチャック

スクロールチャックに対して、全ての爪が独立して駆動するチャックがインデペンデントチャックです。それぞれの爪が独立しているため、爪ごとに動作量を設定できます。複雑な形状をしたワークを把持する際に採用されます。

3. マグネットチャック

電磁石や永久磁石を用い、磁力で吸引することで固定するチャックです。

4. 真空チャック

真空状態を作り出し、その力で対象物を把持するチャックです。軽いワークや小さいワークを把持したい時や、硬い爪だとワークを傷つけてしまう恐れがある場合などに使用されます。

参考文献
https://www.yumoto.jp/yumopedia/chuck

トライアック

トライアックとは

トライアック(TRIAC)はTriode for Alternating Currentの略で、3つの端子を持つ半導体スイッチの一種です。

トライアックは、2つのサイリスタを互いに逆方向になるように並列に接続した構造で、双方向の電流のスイッチング動作を1つのゲートで制御することができます。

双方向に電流を流せることから、トライアックは交流スイッチとして使用されています。また、ゲート入力の位相をずらすことで、交流電力を簡単に制御することができます。

トライアックの使用用途

トライアックは、交流スイッチとして広く使用されています。

特に、小さいゲート信号で大電流のスイッチング制御が可能であることから、テレビやエアコンなどパワーの大きな家電製品のリモコンスイッチに使用されます。

また、ゲート入力を交流に対して位相をずらすことで電力量を制御することができるため、トライアックは照明の調光器、蛍光灯の電流を一定に保つ安定器、扇風機、エアコン、洗濯機などのモーターの回転数制御、冷蔵庫の温度制御、交流電車の速度制御、モーターを用いた産業機器の制御などさまざまな用途に使用されています。

トライアックの原理

トライアックを構成するサイリスタはPNPN4層構造をしていますが、これはPNP型とNPN型のバイポーラ・トランジスタを組み合わせ、PNP型のゲートとNPN型のアノード、PNP型のカソードとNPN型のゲートを接続した等価回路で表すことができます。

ゲート信号を入力し、アノード・カソード間に順電圧を印加すると、2つのトランジスタはオン状態になります。双方のトランジスタのオン状態が互いのゲート入力に正帰還することで、安定したオン状態になり、一度アノード・カソード間に電流が流れ始めるとゲート信号がなくなっても電流は流れ続けます。

アノード・カソード間に逆電圧が印加されるとサイリスタはオフ状態になり、電流は遮断されます。したがって、サイリスタのアノード・カソード間に交流電流を流すと、交流サイクルの半分だけ電力供給を行い、逆方向の電流をブロックするという動作をします。

トライアックは、このような動作をするサイリスタ2つを互いに逆方向になるように並列に接続しています。

ゲート電流を入力すると、順方向に接続されている方のサイリスタがオン状態になり、トライアックに順電圧が印加されている間だけ電流が流れます。交流電流の半サイクルが終わると、オン状態であったサイリスタは逆バイアスとなってオフ状態になり、電流は流れなくなります。

その後、逆バイアスになる後半のサイクルで再びゲート電流を入力すると、今度は反対側のサイリスタがオン状態になります。このように、1つのゲード入力によって双方向の電流のスイッチングタイミングを制御します。

また、ゲート電流の位相を交流電流に対してずらすと、トライアックがオン状態になる時間が変化し、これによって供給電力量を制御することができます。

参考文献
https://kobaweb.ei.st.gunma-u.ac.jp/lecture/20190618_matsuda_1.pdf
https://jeea.or.jp/course/contents/12119/
https://www.sanyu-group.com/techno/userbox/data/denshi_text2.ppt

ドリルねじ

ドリルねじとは

ドリルねじ

ドリルねじとは、下穴やねじ切りなしでねじ止めできるドリル形状のねじです。

通常ねじを締めるためにはねじの受け側にねじ溝に合わせた切り込み (下穴) が必要です。下穴を開ける作業をねじ切りと呼びます。

現場では、テクスビスや、ピアスビスと呼ばれることもあります。

ドリルねじを使用すればねじ切り作業が不要で、ねじ穴がなくてもねじ締め作業が可能です。ドリルねじ自らが穴を開けながら進み、相手部材を固定できます。

ドリルねじの使用用途

ドリルねじは建築現場などで鉄骨部材を締結する際に多く用いられています。

上下2枚の板金の間にボード類を挟む場合は、ドリル部の肩が下側板金を突き抜ける際にねじ部が上側板金にかかっていない状態が正しい使用方法です。

例えば、ドリル部が下側板金を突き抜けた際にねじ部が上側板金にかかっているとねじ締め中に上側板金が上がってきて隙間ができたり、ドリル部に欠け・折れが発生し、締結不良を引き起こします。

ドリルねじの原理

ドリルねじは種類は多いため用途に応じて使い分けられます。代表的なドリルねじの種類と原理は以下の通りです。

1. 頭部形状: なべ

ドリルねじで最も一般的な頭部形状です。頭部がなべ底形状で、冷間成形性が良いです。

2. 頭部形状: 6角 (ヘックス) 

トルク伝達力が大きくカムアウトしにくいです。太径ねじに適しています。

3. 頭部形状: サラ

頭部の形状が平たく、締結後にひっかかりがないため、外観を良く見せる場合に使用されます。

4. 頭部形状: フレキ

座面にリブが形成されています。硬いボード類に沈みやすいです。

5. 頭部形状: トラス

頭部径が大きく、締結物を強く押さえます。

6. ねじ山形状: タッピン

ドリルねじで最も一般的なねじ山形状です。軽量鉄骨の締結に広く使われます。

7. ねじ山形状: マシン

下地材が薄くても必要な保持力を確保でき、緩みにくいです。保持力を確保しやすいため、ねじの外径を小さくでき、ねじ締めトルクを削減できます。

ドリルねじの種類

板厚の厚さに合わせてドリルねじのドリル部の形を選択する必要があります。

1. 薄板用

1〜1.2mmほどの薄板鋼板の締結で保持力が高いです。ねじ山のかかり代が大きいです。

2. 標準板厚用

厚さが2.3〜4.5mmの板でよく使用されます。ピッチは薄板用と同様の並目で、ねじ込み性や保持力のバランスが取れています。

3. 中厚板用

4.0〜6.5mmの板厚に向いています。ねじ込みトルクを低減するようにねじ山の一部が切削加工されています。

4. 厚板用

6〜13mmの板厚に適しています。ねじ山の一部を切り欠いて切り刃を形成しています。

ドリルねじの選び方

主にドリルねじの材質にはステンレス鋼や炭素鋼が使用されます。

1. ステンレス鋼

ドリルねじにはマルテンサイト系ステンレスやオーステナイト系ステンレスなどが用いられます。ステンレス鋼は耐食性が高いです。さらに強度が必要なら焼入れできるマルテンサイト系が、より耐食性が必要ならオーステナイト系が適しています。マルテンサイト系は鋼板などの硬い素材に、オーステナイト系はアルミ材などの軟らかい素材に使う場合が多いです。

2. 炭素鋼

冷間圧造加工で製造された素材を使用します。マンガンの量が多いと衝撃強度、耐摩耗性、引張強さなどを向上でき、高品質のアルミキルド鋼から製造されます。

ドリルねじの構造

木材や硬質ボードに取り付けるため、リーマ付やパイロット付などの形状のドリルねじもあります。

1. リーマ付

リーマはドリル部で開けた穴径を広げる刃です。ドリル部の端には2枚のウィング状の刃が付いており、木材のような軟らかい部材を進むときにリーマが機能します。硬い部材まで到達するとはじけ飛んで役目を終えます。

2. パイロット付

パイロット部はドリル部から延びた平滑部分とドリル刃を含むねじの先端部分です。めねじ立てと削孔する場所の間に距離があり、厚い部材でも締結可能です。

参考文献
http://www.kinzoku-yane.or.jp/technical/pdf/0609web.pdf
http://www.drill-neji.com/tukaikata.htm

トルクドライバー

トルクドライバーとは

トルクドライバー

トルクドライバーとは、任意のトルクで締め付けを行えるドライバーです。

正確なトルクを必要とする作業においては、欠かせない工具です。トルクドライバーは、特定のトルク値を設定することができます。

適切なトルク値で締め付けることで、部品の損傷や破損を防ぎます。また、トルクドライバーは一定のトルクを提供するため、作業者の力加減に左右されず一貫した締め付けが可能です。これにより、作業の品質と信頼性の向上に寄与します。

トルクドライバーの使用用途

トルクドライバーは、さまざまな用途で使用されます。トルクドライバの使用分野は、代表的な作業は機械の整備です。特に自動車整備で使用されています。

1. 自動車

自動車のホイールナットやサスペンション部品など、自動車の各部品の締め付けに有用です。正確なトルク値で締め付けることで、部品の損傷や緩みを防ぎつつ安全性を確保します。

2. 航空機

航空機のメンテナンスや整備においても、トルクドライバーは重要な役割を果たします。航空機の部品は高い信頼性が求められるため、正確なトルク制御が必要です。各種工業製品の製作段階でも、トルクドライバーが使用されることがあります。

3. 電子機器

電子機器の分野では、 コンピュータやモバイルデバイスのマザーボードの組み立てにおいて使用されることが多いです。また、シリンダーヘッドやクランクケースなど、大型機械部品を正確なトルク値で締め付ける場合にも使用されます。

トルクドライバーの原理

トルクドライバーは、一般的にスプリング構造を利用しています。スプリングはトルクドライバーのボディとドライバーヘッドの間に配置され、回転力がかかると圧縮または伸長します。

スプリングに一定の回転力が付与されると、内部機構によってクリック音や物理的な操作感を示すことで使用者に知らせる仕組みです。これにより、所定のトルク値での締め付けを確実に行うことができます。

なお、トルクドライバーにはトルク設定構造があります。これにより、必要なトルク値を設定することが可能です。一般的にはトルク設定ノブまたはダイヤルがあり、指定したトルク値に合わせて調整します。

また、一部のトルクドライバーには解放機構が備わっています。過トルクが発生すると、クリック音と同時に内部のラッチが外れて空回りします。

トルクドライバーの種類

トルクドライバーにはいくつかの種類があり、それぞれに特徴が異なります。以下は、トルクドライバーの種類一例です。

1. デジタル型

デジタル型は液晶が搭載されており、リアルタイムに締め付けトルクを監視できるトルクドライバーです。目標トルクを設定すると、作業中にその付近に到達したときに音などでそのことを作業者に通知します。デジタル型は高度なセンサーや制御回路を使用するため、非常に正確なトルク制御が可能です。

また、一部のモデルではトルクデータを記録する機能を備えています。作業時のトルク値や日付、時刻などが保存され、後で参照や追跡が可能です。品質管理やトラブルシューティングに役立ちます。

2. プレセット型

プレセット型はドライバーにダイヤルなどが付いており、そのメモリを操作することでトルクを指定できるトルクドライバーです。電池などの電源が必要ないため、電池切れなどの心配がありません。プレセット型は空転式の製品が多く、指定トルクに到達するとそれ以上締められないような構造になっています。

3. 単能型

単能型はダイヤルやボタンなどが搭載されておらず、締め付けトルクが決まっているトルクドライバーです。トルクドライバーテスターなどを用いて校正する必要があります。容易に指定トルクを変更できないため、作業者のポカヨケなどの観点で繰り返し作業などに用いられます。

また、一方向にのみトルクをかけることができる場合も多いです。通常は、右回りの締め付け方向にトルクを伝達します。

参考文献
https://www.bildy.jp/mag/torque-drivers/

ナイロン

ナイロンとは

ナイロン

ナイロンは石油を原料として合成されたポリアミドと呼ばれるプラスチック樹脂を溶融し、繊維状に加工したものです。

「ナイロン樹脂」については、本ページ下部「ナイロンのその他情報」でご紹介します。

1935年にアメリカのデュポン社により開発され、工業生産後は主に女性用ストッキングの材料として使用されてきました。合成繊維の樹脂としてはポリエステルも有名で生産量は1位であり、2番目に多いのがナイロンです。染色なども容易であり、衣料品を中心として様々な場所で使用されています。

ナイロンの使用用途

ナイロンの使用用途は衣料品が中心です。「蜘蛛の糸より細く、鋼鉄よりも硬い」というコンセプトで開発されているため、一般の衣服だけでなく宇宙服の素材にも使用されており、有名な「アポロ計画」での宇宙服にも使用されました。

強度が高いため、衣服以外でもさまざまな場所で使用されており、鞄やバッグ、釣り糸、ロープなど太さに関わらず壊れにくい製品の素材となっています。

ナイロンの種類

ポリアミドから合成されるナイロンにはさまざまな種類があります。その中でも有名なのが、ナイロン6、ナイロン6,6の2種です。

1. ナイロン6

ナイロン6はε-カプロラクタムの開環反応、ナイロン6,6はアジピン酸ヘキサメチレンジアミンの重合反応より作られ、同じナイロンでも化学構造が異なります。どちらも耐久性、軽さ、伸縮性、吸湿性に優れますが、ナイロン6は染色性に優れるため衣料などの日用品に使用されることが多いです。

2. ナイロン6,6

ナイロン6,6は機械的強度、耐熱性などがナイロン6より優れるため、強度がより求められる工業製品に使用されます。ナイロンの特徴は耐熱性、機械的強度、耐薬品性などが、ポリエステルと並び優れています。しかし吸湿性、染色性はナイロンのほうが優れ、どちらの特徴も衣料品に欠かせません。デメリットは紫外線に弱いという点で、長時間日光の当たる場所に置いておくと変色する可能性があるため注意が必要です。

ナイロンのその他情報

ナイロン樹脂について

ナイロン樹脂はナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12 ナイロン46などの総称として扱われています。ナイロン樹脂は衣料品にも使用されますが、電気部品や車などの機械部品にも使用されています。

1. ナイロン6
ナイロン6はナイロン樹脂の中でも用途が多様で、さまざまな製品に用いられていることが特徴です。耐衝撃性や耐薬品性にも優れているため、衣料品だけでなく、機械部品などにも用いられています。

2. ナイロン6,6
ナイロン6,6はナイロン樹脂の中でも強度に優れていることが特徴です。耐油性や耐摩耗性にも優れています。衣料品よりも機械製品の部品に用いられることが多く、絶縁耐性や体積固有体積が高いことも特徴です。そのため、電気部品の圧着端子やスイッチ部品などにも多く用いられています。

3. ナイロン11
ナイロン11はヒマシ油を原料として生成することが可能な植物由来のナイロン樹脂です。そのため、安定入手可能な植物由来のナイロン樹脂として使用されています。 樹脂としては耐久性が高く、長期使用した場合にも性能が劣化しにくいです。酸に対しても耐性があるため、薬品保管容器や家庭の浴槽、水処理部品に多く使用されています。

4. ナイロン12
ナイロン12は寸法安定性に優れていることが特徴のナイロン樹脂です。耐寒性や耐候性にも優れています。そのため、衣料品ではなく、光ファイバーケーブルや防弾チョッキなどに使用されることが多いです。 また、加工性も優れているため、複雑な形状への成形にも優れています。

5. ナイロン46
ナイロン46は耐熱性と耐油性に優れたナイロン樹脂です。ナイロン6,6と比べ強度や耐熱性が高いことも特徴です。そのため、インシュロックなど高い耐久性を求められる製品に多く用いられています。

ニッケル

ニッケルとは

ニッケル

ニッケルとは、元素記号  (Ni) で表される、原子量58.71の金属元素です。

銀白色の金属で、比重は8.9 (20℃) 、融点は1,453℃、沸点は2,730℃、線膨張係数は13.3×10-6/℃となっています。耐食性良好、展延性にも優れ、加工しやすい材料です。

ニッケルの使用用途

ニッケルを含む製品は、私たちの周りに溢れています。例えば、調理器具や医療機器、携帯電話や建築物、発電機などです。

その中でも特に重要なものとして、エレクトロニクス分野や非常用電源、電気自動車などに用いられる充電式電池があります。その一つが、ニッケル水素電池です。このニッケル水素電池の正極にニッケルが使用されています。

また、ニッケル水素電池に限らず、リチウムイオン電池にも、ニッケルを原料とする正極用活物質が使用されています。リチウムイオン電池で用いられる正極活物質すべてにニッケルが含まれてはいませんが、ニッケルを使用した正極活物質を用いたリチウムイオン電池は、エネルギー密度や出力を上げやすいことから、主流の原料となっています。

ニッケルの特徴

ニッケルは、特に淡水・海水・アルカリ性水溶液に対しての耐食性が高いです。「金属を海水に浸すとすぐ錆びる」というイメージがありますが、ニッケルはその強い耐食性を活かして海水中でも安全に使用することができます。

また、ニッケルは腐食や酸化にも強いです。強度が高くても腐食に弱い金属では耐久性に問題が出てしまいますが、ニッケルを使うことでこれらの課題を解決できます。その他、ニッケルを他の金属と混ぜて合金化することで、様々な材料に変えられる点も特徴の一つです。

ニッケルは容易に合金化できるため、あらゆる金属と掛け合わせて新たな合金が作られています。比較的低コストで加工可能で、コストパフォーマンスにも優れています。ニッケルの融点は1,453℃であり、非常に高い熱耐性を持っています。合金化した際にこの特性を活かすことで、熱に強い合金を生み出せます。

ニッケルの合金として有名なものとして、ニクロムが挙げられます。これは名前の通り、主にニッケルとクロムからなる合金で、電気抵抗が高いため、発熱素子として用いられます。

ニッケルのその他情報

1. ニッケルの合金

ニッケルを含む合金は、元の金属だけの素材と比べて耐食性、耐久性が向上し、温度変化に対する強度も向上するのが一般的で、特殊な磁気電気特性を幅広く備えています。ステンレス鋼は、鉄、ニッケル、クロムの合金であり、ニッケルを約8~12%含有しています。

ニッケルの含有率がさらに高いのが、ニッケル基合金です。硬貨の原料にもニッケル合金が使われており、50円、100円、500円硬貨はとニッケルの合金です。

2. ニッケルを含む化合物

ニッケルは他の金属と合金をつくる以外にも、ニッケルの酸化物や硫酸塩酸などの酸成分との塩のような、無機化合物も工業的に生産されています。

酸化ニッケル (II)
化学式:NiO、暗黄緑色~灰色の粉末。水に不溶、塩酸に可溶。
用途:電子部品、電池電極材料、触媒、窯業製品などの原料

硫酸ニッケル
化学式:NiSO4、緑色の結晶または粉末。水に易溶、エタノールには溶けない。
用途:ニッケルめっき、ニッケル触媒、亜鉛・真鍮の黒色着色剤、窯業用顔料、リチウムイオン電池用活物質原料

塩化ニッケル
化学式:NiCl2、緑色柱状晶、単斜晶結晶で潮解性。水、アルコールに易溶。
用途:電気めっき、試薬

炭酸ニッケル
化学式:NiCO3、淡緑色結晶または粉末。水に不溶、酸に可溶。
用途:触媒、窯業用顔料、ニッケル塩の原料、電気メッキ

硝酸ニッケル
化学式:Ni(NO3)2、緑色単斜晶結晶で潮解性。エタノール、アンモニア水に可溶。
用途:触媒原料、金属表面処理剤、メッキ用原料、電池

参考文献
http://www.nickel-japan.com/nickel/used.html

ネオンランプ

ネオンランプとは

ネオンランプ

ネオンランプとは、ネオンガスを封入したガラス管の中でグロー放電を起こすことで発光する照明機器です。

アルゴンガスなどと組み合わせたり、透明管と蛍光管を使い分けたりすることで様々な色に発光させることができます。ガラス管の中に2枚の電極が取り付けられ、外部から電圧を制御することによってグロー放電を発生させます。

近年では、LEDが照明機器として主流となりつつありますが、ネオンランプも同様に使用されています。消費電力が少なく、長寿命であること、発熱せず衝撃などにも強いことなどがメリットです。 

ネオンランプの使用用途

ネオンランプは、ガラス管中にネオンガスを封入し、発光させるランプです。様々な演出や照明として使用されており、歓楽街の照明が代表例です。近年では、室内のインテリアとしての利用例もあります。

そのほか、ネオン発光式検電器も用途の1つです。ネオン管の電流が人間を介して地面へと流れることを利用した検電器で、電池が不要という利点がありますが、絶縁手袋をはめていると利用できず、感電のリスクがあることに注意が必要です。

ネオン式検電器

図1. ネオン式検電器

ガスを封入するガラス管自体を曲げたり伸ばしたりする加工をすることで、文字表現として使用することも可能です。ガラス管の太さを調整することで、ネオン管の発光強度を調整できます。消費電力が少なく、長寿命であることから、終夜灯や表示灯 (パイロットランプ) などの照明として長時間利用されることもあります。

LEDが登場するまでは最もポピュラー照明機器の1つでしたが、今も上記のような場面で使用されています。 

ネオンランプの構造

ネオンランプの構造

図2. ネオンランプの構造

ガラス管の中に、鉄あるいはニッケルの2枚の電極を配置し、ネオンガスを10~15mmHg程度の低圧で封入した構造をしています。ガラス管は透明なものだけではなく、内側に蛍光塗料を塗布したものを利用する場合もあります。

ネオンガスは透明管では赤色に、蛍光塗料を塗布した管ではピンク色、オレンジ色に発光します。

ネオンランプのその他情報

1. ネオンランプの発光

電極間に電圧を印加すると、電極間の電子が電場によって加速され、ネオンガスに衝突し、正電荷の陽イオンと電子に電離します。

生じた陽イオンは陰極に衝突し、陰極からは二次電子が放出されます。放出された二次電子が陽極へと移動することで大きな電流が流れます。この現象がグロー放電です。

この電流 (二次電子の流れ) は、ガラス管内のネオン原子を励起するのに十分なエネルギーを持っているため、ネオン原子は励起されます。励起された原子が基底状態に戻る際に、エネルギーバンド間のエネルギー差に応じた波長の光を発します。ネオン原子の場合、赤色の光として観測されます。

2. グロー放電の特徴

グロー放電が始まると、一部のガスはイオン化されさらに電子を発生します。これが繰り返されると電子なだれにより、電極間に定常的に0.1~10ミリアンペアほどの電流が電極間に流れます。低圧気体中で持続的な放電が起こることが、グロー放電の特徴です。

グロー放電の概略図

図3. グロー放電の概略図

ネオンランプにおけるグロー放電開始電圧は70V程度、放電終了電圧は60V程度であり、安定した放電を続けるためには安定した電圧を供給する必要があります。そのため、蛍光灯などと同様に安定器とセットで利用されることが一般的です。

なお、電極間の電圧をさらに上げるとアーク放電となり、ネオンガスはより不安定な状態になります。このときに観測される光は青白色へと変化します。アーク放電はアーク溶接に利用されることからもわかるように、非常に高い熱を発生するため注意が必要です。

参考文献
https://kotobank.jp/
https://www.intl-lighttech.com/instrumentation-sensor-light-sources/neon-lamps
https://www.homemade-circuits.com/neon-lamps-working-and-application-circuits/