トライアックとは
トライアックは「Triode for Alternating Current」の略で、主に交流電流を制御するために使われる3端子の半導体デバイスです。
2つのSCRを互いに逆方向に並列接続した構造で、1つのデバイスで交流の正の半周期と負の半周期のいずれも制御できることが特徴です。電流の向きに関係なく電流を制御できることから、トライアックは主に交流のスイッチングデバイスとして使用されています。またゲート入力の位相をずらすことで、機器へ供給する交流電力をコントロールすることも可能です。
トライアックの使用用途
トライアックは交流電源を制御する多くの機器で使われています。以下はその代表的な用途です。
1. 家電製品
トライアックは様々な家庭製品で使われています。例えば調光器では照明の明るさの制御、電気ストーブやトースターでは電熱器の温度制御、扇風機や洗濯機では速度制御のためのモーターの制御に使用されています。
2. 産業用途
産業用途では、工業用ヒーターやモーターでの電力制御のための位相制御で用いられます。また交流スイッチでも使用され、トライアックにより高電圧/高電流の交流負荷をON/OFF制御することが可能です。
3. 電子機器
電子機器では、リレーの代替として用いられています。トライアックを機械式リレーの代わりに用いることで、寿命や信頼性の向上を期待できます。また電力制御回路でも使用され、AC電源の電圧や電流の制御に役立っています。
トライアックの原理
1. 基本構造
トライアックは2つのSCRを背中合わせに接続した構造で、次の3つの端子を有しています。
- MT1 (Main Terminal 1)
- MT2 (Main Terminal 2)
- G (Gate) :ゲート (Gate) は制御信号を受け取るための端子です。
トライアックはどちらの方向に流れる電流でも導通 (ON/OFF) を制御できるため、特に交流回路で利用されています。
2. 動作原理
トライアックはゲート電流を流すると順方向に接続されている方のSCRがON状態になり、トライアックに順電圧が印加されている間電流が流れます。交流電流の半サイクルが終わると、ON状態であったSCRは逆バイアスとなってOFF状態になり、電流は流れなくなります。
その後逆バイアスになる後半のサイクルで再びゲート電流を流すると、今度は反対側のSCRがON状態になります。このように1つのゲード入力で双方向の電流が流れるタイミングを制御することができます。またゲート電流の位相を交流電流に対してシフトすると、トライアックがON状態になるタイミングが変化し、これによって負荷への供給電力を制御することができます。
以上から、トライアックの原理は以下のように要約できます。トライアックは、ゲート端子に短時間のパルス電流を流すことで、MT1-MT2間を導通状態にします。
一旦導通状態になればゲート電流は不要で、そのまま状態を維持します (ラッチ効果といわれます) 。またその状態は、交流の電流がゼロクロス (トライアックに流れる電流がゼロになる瞬間) に達するまで続きます。SCRとは異なり、正負両方向の電流を1つの素子で制御可能です。
トライアックの種類
トライアックは、用途や仕様に応じてさまざまな種類があります。以下の観点で分類できます。
1. 動作電圧と電流容量
- 低電力タイプ:家庭用電化製品向け
- 高電力タイプ:工業用機器向け
2. ゲート感度
- 高感度ゲートトライアック:小さなゲート電流で動作可能なため制御回路が簡単
- 標準ゲートトライアック:通常のゲート電流が必要だが、耐ノイズ性能が高い
3. パッケージタイプ
- TO-220型:放熱性が良く、産業用で一般的
- SMD型:小型機器向け
トライアックのその他情報
1.トライアックの動作モード
トライアックには4つの動作モードがあります。これらは、ゲート信号とMT1-MT2間の電圧極性に基づいて決まります。
- Quadrant I:正のMT2電圧と正のゲート信号
- Quadrant II:正のMT2電圧と負のゲート信号
- Quadrant Ⅲ:負のMT2電圧と負のゲート信号
- Quadrant Ⅳ:負のMT2電圧と正のゲート信号
一般的な使い方では、主にQuadrant IとQuadrantⅢが利用されています。
2.トライアックのメリットとデメリット
トライアックのメリットとデメリットを以下で説明します。
メリット
- 両方向動作:一つのデバイスで交流電流の正負いずれでも導通制御可能
- 低コスト:シンプルな回路設計が可能で、機械式リレーよりも安価
- 高信頼性:機械的な可動部品がないため、長寿命
効率的なスイッチング:高速でオン/オフが可能
デメリット
- 高調波歪みの発生:位相制御を行う際に、電源から高調波ノイズが発生する可能性がある
- 過電流耐性の限界:サージ電流には弱いため、適切な保護回路が必要
- ノイズ耐性:ゲートがノイズで誤動作しやすいため、慎重な設計が必要
- 低効率なゼロクロス制御:特定の用途でスイッチング効率が落ちることがある
参考文献
https://it-notes.stylemap.co.jp/programs/embedded-operating-systems%E2%86%92-a-comprehensive-overview/
https://jeea.or.jp/course/contents/12119/
https://www.sanyu-group.com/techno/userbox/data/denshi_text2.ppt