ワンダーガン

ワンダーガンとは

ワンダーガンとはエアガンの一種で、吹き飛ばしや吸い込みおよび搬送などを可能にするコンプレッサエア(圧縮された空気)を動力とする器具のことを言います。

主に手に持って取り扱い作業を行うハンドタイプのものと、特定の機械や機具に装着させて作業するタイプのものがあります。

基本的にワンダーガンの内部は他の部品などによる障害物がない空洞構造となっているので、作業中に内部に物がつまったりすることがなく安全に作業を行うことができます。

ワンダーガンの使用用途

ワンダーガンは様々な製造現場において使用されています。

ワンダーガンの吹き飛ばし機能を使えば、細かい塵などを吹き飛ばし現場を清掃することができ、吹き出される際の空気圧によって冷却や乾燥(水滴の除去)などを行うことができます。

さらには研磨材や塗料・液体の吹き付けやサビ取り・スケール落としなどの表面処理を行うことのできるエアブラスト形式のものもあります。

吸い込み機能を使えば、液体や粉末などを吸引・回収し清掃を行うことが可能です。

ワンダーガンの原理

ワンダーガンの基本構造は非常に簡素で、吹き出し口・外気吸い込み口と空気を圧縮するコンプレッサから成ります。

ワンダーガンを吹き出し用として使用する場合には、コンプレッサから圧縮空気が吹き出し口に送り出されると、吸い込み口に外気が流れ込むことで吹き出し口から高圧力の空気が吹き出され作業を行うことができます。

吸い込み用として使用する際にはワンダーガンの吹き出し・吸い込み口を逆にして同様の動作を行うと吸い込み口から対象となるものを吸い込むことができます。

この時、安全に作業を行うためにワンダーガンの吹き出し口にホースや集塵袋などを装着しなければいけません。

さらに吹き出し・吸い込み口の両方にホースや管などを接続すれば搬送用のガンとして使用することが可能です。

効率よく大量の空気を吹き出すことのできるスパイラルジェット方式というものもあり、用途・現場に応じた機能を備えた製品を選ぶことができます。

参考文献
https://www.osawa-company.co.jp/ja/support/j-info.html

圧搾機

圧搾機とは

圧搾機とは、素材や成分を圧搾することで抽出や成形を行う機械のことで、圧搾加工が可能なプレス機のことです。

手動式やモーター駆動、油圧駆動など、様々な方式が存在します。駆動方式によって、圧搾力や機器のサイズが異なるため、用途に応じて適切な機器を選択することが重要です。

また、圧搾機は絞り機や搾汁機とも呼ばれることがあります。素材を圧搾することで濃縮された成分を抽出するのに適しており、食品工業や化学工業、薬品製造業など、様々な業界で幅広く利用されています。

圧搾機の特徴としては、高い圧搾力によって効率的な抽出が可能であることが挙げられます。機械自体がコンパクトであるため、スペースを節約しながら多くの用途に対応できるのも魅力の1つです。

圧搾機の使用用途

圧搾機の主な使用用途は、食品分野、農業分野、水産加工分野、化学・医薬品分野などです。

1. 食品分野

食品分野では、圧搾機は果物や野菜から果汁を抽出したり、リキュール原料を抽出したりする際に使用されます。また、ペースト状の餡などを作るのにも適しています。

2. 農業分野

農業分野では、農作物をペースト状に加工したり、油を抽出したりするのに使用され、特にコールドプレス法を用いることで、高品質の油が抽出できることが特徴です。

3. 水産加工分野

水産加工分野では、海藻や魚類からエキスを抽出するのに役立ちます。

4. 化学・医薬品分野

化学・医薬品分野では、薬品や健康食品、化粧品などの原料成分を抽出するのに用いられます。また、エキス抽出以外の目的として、脱水処理にも圧搾機が使用されます。

圧搾機の原理

圧搾機は、圧力を用いて素材をペースト状にしたり、エキスの抽出や水分の脱水したりすることが可能な機械です。圧搾機には、手動圧搾機、油圧圧搾機、空気圧圧搾機、モーター駆動圧搾機、スクリュー式圧搾機、低温圧搾機などの様々な圧搾方式があり、特性や適用分野によって異なるメリットを持っています。

例えば、手動による圧搾機は、力が小さいものの、少量の素材に対して簡易的に使用することが可能です。家庭や小規模な業務で利用されることが多い点が特徴です。

一方、油圧圧搾機は、圧搾の際に熱が生じないため、食品が劣化しにくいという特徴があります。そのため、食品分野での使用に適しており、高品質な製品を作る際に好まれる方式です。

圧搾機の種類

圧搾機は主に手動圧搾機、油圧圧搾機、空気圧圧搾機、スクリュー式圧搾機、低温圧搾機の5種類があります。それぞれの特性と適用分野を理解し、最適な機械を選択することが重要です。

1. 手動圧搾機

手動圧搾機は、操作者が直接力を加えることで圧搾を行うタイプの機械です。手動式のため力は小さいものの、少量の素材に対して簡単に使用できます。家庭や小規模な業務での利用に適しています。

2. 油圧圧搾機

油圧圧搾機は、油圧シリンダーを用いて圧搾を行う機械です。圧搾の際に熱が生じにくいため、食品の劣化が抑えられます。高品質な製品を作る際に好まれる方式で、食品や化学業界で広く利用されています。

3. 空気圧圧搾機

空気圧圧搾機は、圧縮空気を用いて圧搾を行うタイプの機械です。油圧圧搾機と同様に熱が生じにくいので、食品や化学薬品の加工に適しています。

また、油圧圧搾機に比べて設置やメンテナンスが容易であることも特徴です。

4. スクリュー式圧搾機

スクリュー式圧搾機は、回転するスクリューによって素材を圧搾する機械です。連続的に素材を処理できるため、大量の素材を効率的に圧搾することが可能です。食品工業や農業分野での油抽出など、多くの用途に対応しています。

5. 低温圧搾機

低温圧搾機は、低温状態で素材を圧搾できる機械です。一般的な圧搾機では熱が発生しやすいため、熱による品質の劣化が懸念される場合があります。低温圧搾機は、熱による劣化を最小限に抑えられるので、高品質な製品を求める業界で利用されています。

参考文献
http://otsuka-tek.co.jp/products/detail_15/
http://www.yabuta.co.jp/products/products01.html
https://www.matsuoco.co.jp/products/small/index.html
https://nskeng.co.jp/onp/
http://www.yabuta.co.jp/products/products03.html

圧電アクチュエータ

圧電アクチュエータとは

圧電アクチュエータとは、アクチュエータの一種で、圧電素子によりIC等から出力された電圧などの電気的なエネルギーを、リニア動作や変形などの物理的な運動エネルギーに変換する機構のことです。

内蔵するピエゾ素子とも呼ばれる圧電素子を利用することで、電気的なエネルギーを物理的な機械エネルギーに変換できます。圧電アクチュエータは、一般に圧電セラミックスの変形を利用しているため、他のアクチュエータと比べて電磁ノイズなどが生じず、非常に高い精度を持っていることや高速で素早い応答速度を有していることなどが特徴です。

また、駆動のためのコイルなどが不要で、小型にできることも大きな特徴と言えます。消費電力が小さいことから、デジタルカメラや携帯端末といった小型化が求められている精密機器に利用されています。

圧電アクチュエータの使用用途

圧電アクチュエータは、特に精密機器を中心に工業用製品から身近な電化製品まで使用されています。小型化が可能なことや反応速度が速いこと、消費電力が小さいことなどの特徴を生かし、幅広い用途で使用されています。

具体的な製品への適用事例は、一眼レフのカメラなどの精密機器やハードディスクドライブなどの記憶媒体、インクジェットプリンター、医療機器、工業製品などです。

圧電アクチュエータの原理

圧電アクチュエータの原理は、圧電体の特徴である結晶に対して電界を与えることで力や歪みを生じる「逆圧電効果」と呼ばれる物理現象を用い、電気的な制御により精密な圧電体の変位を機構部品として利用する点にあります。

圧電アクチュエータに用いられている圧電セラミックスは、この逆圧電効果によって小さい駆動電圧にて大きな変位を得られるような技術的な工夫が施されています。特にセラミックス基板の厚みを薄くすることで、圧電アクチュエータの駆動電圧を比較的低電圧化することが可能です。

圧電アクチュエータのその他情報

1. 電磁式アクチュエータとの比較

従来から用いられているアクチュエータに電磁式アクチュエータがありますが、圧電アクチュエータと比較すると以下のようなメリットがあります。

  • 変位量を大きく確保可能
  • 駆動電圧の低電圧化が容易

しかしながら、電磁式アクチュエータには電磁用コイルが必要なため小型化が困難であり、アクチュエータとしての変位の精度やその制御性、および低消費電力化という点では圧電アクチュエータには及びません。従来の比較的大型の工業用製品や設備システムの機構箇所には電磁式アクチュエータが、精密性や小型化、低消費電力化が重要な箇所には、圧電アクチュエータが用いられているというすみ分けが現在は図られています。

2. 圧電アクチュエータのヒステリシス

ナノオーダーレベルの制御が原理的に可能な圧電アクチュエータですが、実はヒステリシス (履歴現象) という課題を有しています。ヒステリシスとは、制御電圧に対するアクチュエータの変位 (=ストローク量) が完全な比例関係を有していない現象を指します。

圧電アクチュエータにおいては、印加電圧に対するストローク量が曲線を描き、印加電圧の昇圧時と降圧時でそのカーブが一致していません。これを補正するには、外部にて高精度の位置決めのための機構 (ストレインゲージ等) で補う必要があります。ASICとともにゲージからの位置決めのFeedbackで、高精度なストローク量の制御を行う精密部品も多数存在している状況です。

3. エナジーハーベスティングへの応用展開

圧電素子は、機械的な変位から電圧などの電気的エネルギーを得る発電用途としても、開発検討がなされています。昨今のSDGsに代表される環境問題への関心の高まりから、圧電素子を用いた圧電アクチュエータに加える機械的な変位や振動を用いて、発電用に検討する研究開発が進められています。

このような技術をエナジーハーベスティング (環境発電) と呼び、振動エネルギー以外にも光、熱、電磁波なども注目されている状況です。振動発電での無線通信タグなどへの展開も進められており、圧電アクチュエータでの技術が応用展開されています。

参考文献
https://www.yuden.co.jp/jp/solutions/piezoelectric_actuator/
https://www.murata.com/ja-jp/products/mechatronics/actuator/basic
https://www.ngk.co.jp/product/electron/microactuator/
https://jpn.nec.com/techrep/journal/g06/n05/pdf/t060519.pdf
https://www.tokin.com/product/pdf_dl/sekisou_actu.pdf
https://www.matsusada.co.jp/column/words-actuator.html

塩水噴霧試験機

塩水噴霧試験機とは

塩水噴霧試験機とは、金属材料や金属製部品、めっきや塗装などの被膜加工をした製品に対して、腐食試験として塩水噴霧試験を行うための実験装置です。

塩水噴霧試験装置を用いることにより、ISOやJISなどの工業規格によって定められた一定の温度や塩分を含む湿度などの雰囲気環境を、試験装置内の空間に作り出します。この試験環境内に試験片を入れることで、腐食が発生する経過を確認します。

塩水噴霧試験機の使用用途

塩水噴霧試験機は塩水噴霧試験の専用試験装置です。塩水噴霧試験の主な試験対象は金属材料、めっきや塗装などの被膜およびこれら被膜を施した製品です。

JISなどの工業規格では、定められた大きさの試験片での評価することが定められていますが、製品開発や品質管理の現場においては、実際の製品を使って試験されています。塩水噴霧試験機の具体的な使用用途は、以下の通りです。

1. 自動車分野

自動車分野では、めっきや表面処理した部品の耐食性評価に使われます。具体的には、ねじ部品や各種ブラケット部品、トランスミッションのオイルパンなどの耐食性評価のためです。

特に積雪が多い地方では、雪を溶かすために道路上に撒かれる融雪塩によって、自動車の外装や足回り部品などが、著しく腐食されることがあります。塩水噴霧試験は、このような外的環境に対する耐食性を評価します。

2. 建築分野

建築分野では、風雨などの自然環境による耐食性評価が行われます。例えば、沿岸部で潮風が強い地域の場合、金属製の家屋に使われる部品には、比較的短時間で錆が発生します。

古い家屋の屋根や壁に使われているトタン板や一般家庭用の物置などにも、錆が発生しているのを目にすることは多いです。塩水噴霧試験では、このような錆が発生するまでの期間を確認しています。

塩水噴霧試験機の原理

塩水噴霧試験機は、機器の庫内に試験対象物を置き、庫内に腐食を促進する酸性溶液をミスト化して、連続的に噴霧することでサンプルの腐食を促します。使用される酸性溶液は、塩化ナトリウム塩化カルシウム塩化マグネシウムなどです。酸性溶液をミストにすることで、試験サンプルに対して均一にいきわたり、局所的に偏ることなく腐食を促すことができます。

塩水噴霧試験では、塩化溶液の塩分濃度や試験温度が定められており、塩水噴霧試験機は定められた条件を満たすように雰囲気環境を維持、制御します。

塩水噴霧試験機のその他情報

1. 塩水噴霧試験の相当時間

塩水噴霧試験は、めっきや塗装、工業製品などが、製品として使われる日常環境において、錆の発生を抑えるための品質を確認する試験です。年単位で求められる耐食性を、時間単位で評価するための加速試験の一つです。しかし、各種工業規格では、自然環境と試験環境との相関については規定していません。

塩水噴霧試験の試験時間が、自然環境のどのくらいの経過時間に相当するのかという相関については、各製品の製造メーカーが、独自に基準を定めて運用しています。試験の方法や条件は各種工業規格に則り、規定された条件下での評価時間は、それぞれの会社や業界が定めています。

2. 塩水噴霧試験の判定方法

塩水噴霧試験を製品で評価する場合は、錆の発生を明確に定義しておくことも大切です。評価は、定期的に試験品を目視などで錆の発生の有無を確認しながら進めていきます。塩水噴霧試験装置は試験環境を作り出す装置であり、錆の発生を検知や判定する機能までは有していません。

また、錆の発生は、製品全面に発生せず、特定の部位から徐々に広がっていくことが一般的です。JISなどの工業規格では、定められた大きさの試験片を使い、錆が発生したと判定する基準として、表面積の割合で定めています。よって、実際の製品で試験を行う際には、「どの状態を錆が発生したと判定するのか」「錆が発生する部位や表面積の割合」などを、関係する会社と事前に取り決めておくことが大切です。

さらに、亜鉛めっきのように自己犠牲によって母材の錆を防ぐめっきの場合には、通常自己犠牲である白錆が発生した後に、母材が錆びたことを示す赤錆が発生します。そのため、塩水噴霧試験においても、白錆と赤錆それぞれが発生するまでの時間で評価します。例えば、白錆は72時間以内、赤錆は240時間以内に発生してはいけない等、2つの評価基準を用いて運用されています。

参考文献
https://www.espec.co.jp/products/trustee/test/saltwarter.html
https://www.keisokuten.jp/products/1679.html
https://www.sanyo-si.com/
https://www.oeg.co.jp/Rel/saltspray.html

金型温度調節機

金型温度調節機とは

金型温度調節機とは、射出成型や押出成形などプラスチック製品の成型加工に使用する金型の温度を一定に保つための装置のことです。

金型の温度は季節による変動だけでなく、朝晩の気温差による影響も受けます。成形品の品質を安定させるためには、金型温度調節機により金型温度を一定に保つことが必要です。

金型冷却器(チラー)とも類似しています。金型冷却器は冷水を循環させて金型の温度を下げることに特化しています。一方で金型温度調節機は、循環媒体として水だけでなく油などを用いたものもあり、低温だけでなく100℃以上において金型温度を一定に保つことを可能としています。

金型温度調節機の使用用途

金型の温度は高すぎても低すぎても、成形品の品質に大きく関わります。金型の温度が低いと、フローマーク、クラック、光沢不良等を引き起こします。一方、金型の温度が高すぎると、反り、寸法不良、ヒケ等を引き起こします。

金型の温度を一定に保ち、これらの不良を防ぐために金型温度調節機は用いられます。

水媒体の金型温度調節機は90℃程度まで制御することができます。それ以上の温度調節には油媒体の金型温度調節機を使用します。

例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などは、水媒体の金型温度調節機を用います。

一方で、高温での制御が必要となるPET(ポリエチレンテレフタレート)やPPS(ポリフェニレンスルファイド)などは、油媒体の金型温度調節機を用います。

金型温度調節機の原理

  • 温度調節の原理
    金型温度調節機によって温度を制御された水または油などの媒体を、金型内に通した配管に循環させ、熱交換によって金型の温度を一定に保ちます。

熱交換とは、温度の高い金型から温度の低い水媒体・油媒体へ熱エネルギーが移動することを言います。金型へ入る媒体の温度と、出てくる媒体の温度差が、金型温度調節機の性能効率を評価するためのひとつの指標となります。

水媒体の金型温度調節機は、金型内に通した配管を通る水の循環と排出を管理することで温度を調節する、直接冷却方式により熱交換を行います。一方で油媒体の金型温度調節機は、金型を内の配管には油媒体が循環し、その媒体の温度を冷却水によって調節する間接冷却方式により熱交換を行います。

  • 金型温度調節機の有用性
    射出成型では、高温になった樹脂を冷却することで成形品の形を安定させ、金型から取り出すことができます。金型温度調節機がなくても、外気への放熱により離型することもできますが、金型温度調節機を用いることで、成形品の品質安定のみならず、迅速な離型を促し、生産効率の改善にも繋がります。

参考文献
https://books.google.co.jp/books?id=lkPpBm5fVH0C&printsec=frontcover&hl=ja#v=onepage&q&f=false
http://www.nakamurakagaku.co.jp/product03.html
https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/qes/25/1/25_32/_pdf/-char/ja&ved=2ahUKEwj6xdao-Y7uAhWwGKYKHWa5ArIQFjADegQICRAK&usg=AOvVaw2_B3zz-bEUuYO-wjVfHHmF

光学フィルタ

光学フィルタとは

光学フィルタ

光学フィルタとは、入射光のうち、特定の光のみを選択的に透過させることができる光学素子です。

光学フィルタは、光を吸収または反射させることで特定の波長を遮断し、性能によって様々な種類があります。光学フィルタリングの原理を理解し、用途に合った光学フィルタを選択することで、高い使用効果を得ることができます。

光学フィルタの使用用途

光学フィルタは、コントラストの調節や光の特定波長のみを透過させる用途で使用され、以下のように様々な種類があります。

身近な例では、プロジェクターなどの投影機、カメラなどの映像機器などに用いられていて、光量やコントラストの調節や色の調整、過剰露光の抑制など役割も多いです。

この他にも、測量機、光学機器などで幅広く用いられており、具体的には顕微鏡や半導体などの精密機器の製造に使用される測定装置などがあります。

1. 特定波長の光を選択するフィルタ

特定波長の光を選択するフィルタとして、バンドパスフィルタとノッチフィルタが挙げられます。バンドパスフィルタは、特定の波長領域の光のみを選択して透過することができる光学フィルタです。

一方で、ノッチフィルタは、特定の波長領域の光を選択して遮断することができます。両者ともにレーザーを使用した実験で使用される場合が多いです。ノッチフィルタは、強度が高く単一波長を持つレーザー光をカットしたいときに役立ちます。

2.特定波長領域を選択するフィルタ

特定波長領域を選択するフィルタとして、ロングパスフィルタとショートパスフィルタが挙げられます。ロングパスフィルタは、特定の波長より短波長領域を遮断して長波長側の光を透過することができる光学フィルタです。

一方、ショートパスフィルタは、特定の波長より高波長側の光を遮断して短波長側の光を透過することができます。ロングパスフィルタは、励起波長より長い波長領域に現れる発光スペクトル測定などに使用されます。

励起光源などの光をカットして、測定したい発光スペクトルのみを検出することが可能です。また、ロングパスフィルタとショートパスフィルタの両方を組み合わせることで、バンドパスフィルタと同じような用途でも使用することができます。

3.明暗を選択するフィルタ

明暗を選択するフィルタとして、NDフィルタが挙げられます。ND (Neutral Density:中性濃度) フィルタは、入射する光の量を一定率で減衰させて光量を調節できます。

光量を減らすことを目的とした光学フィルタで、製品と用途にもよりますが写真撮影時に使用される場合が多いです。可視光域の間で、どの波長でもほぼ同じ減光比を示します。例えば、風景写真、特に流動性のある液体を撮影したい場合 (滝や川など) に、流動感をもたせるためにはシャッター時間を長くしなければなりません。

しかし、シャッター時間を長くすることで必要以上の光量を得てしまい、画像の一部に白飛びが生じる場合があります。その際にNDフィルタを用いて、あえて光量を落として撮影することもあります。

光学フィルタの原理

光学フィルタの原理は、フィルタリングの方式によって吸収型とダイクロック型の2種類に大きく分けることが出来ます。

1. 吸収型 (色ガラスフィルタ)

吸収型は、ガラス基板の光吸収の特性を利用して、一部の波長の光を吸収して遮断し、特定の波長の光のみを透過させるフィルタリング方式です。

色ガラスフィルタとも呼ばれ、素材によって吸収波長を変えることが可能で、主にロングパスフィルタとして用いられます。ダイクロイック型に比べ、安価で大面積ですが、透過率などの性能で劣ります。また、入射光強度が大きい場合、透過光を検出する際にガラスからの発光がバックグラウンドとして現れる場合があります。

2.ダイクロイック型 (ダイクロイックフィルタ)

ダイクロック型は、一部の波長の光を反射して遮断し、特定の波長の光のみを透過させるフィルタリング方式です。複数の屈折率の異なる薄膜を積層することで、干渉効果を利用してフィルタリングしています。

光学フィルタのその他情報

光学フィルタに関連する用語

光学フィルタの性能を規定するための以下の用語は、光学フィルタを理解し選択する上で必要となります。

1. 中心波長
中心波長とは、バンドパスフィルタの特性を定義する場合に用いられ、フィルタが透過するスペクトルバンドの中心を指します。

2. バンド幅
バンド幅は、バンドパスフィルタが透過するスペクトルの幅であり、半値全幅 (FWHM) により規定されます。最大透過率を起点として、そこから短波長方向にグラフを見たときに透過率が50%となる位置の波長と、長波長方向にグラフをみたときに透過率が50%となる波長との幅を表します。

3. ブロッキング領域
フィルタによって減衰される (光が遮断される) 波長域を規定します。遮断能力は光学濃度によって規定されます。ここで光学濃度とは光がどれだけ透過・反射しないかの度合いを対数で表現したもので、最小が0 (すべて透過・反射) で、数字が大きいほど遮断能力が高くなります。

参考文献
https://www.edmundoptics.jp/knowledge-center/application-notes/optics/optical-filters/
https://www.asahi-spectra.co.jp/filter/search/lineup.htm
https://www.ccs-inc.co.jp/guide/column/light_color_part2/vol02.html
https://www.chuo.co.jp/core_sys/images/main/pdf/38GC0981-0982.pdf
https://www.edmundoptics.jp/knowledge-center/application-notes/optics/optical-filters/
https://www.kenko-tokina.co.jp/special/product_type/nd/nd-filter-guide.html

照度ロガー

照度ロガーとは

照度ロガーとは、明るさの指標である照度を計測し、数値データとしてパソコンなどに出力する装置のことです。

人間がなんらかの作業をするとき、周辺の明るさが重要になります。

人間による評価は明るさを評価するのに適していません。人間の目には環境に対する慣れ(順応)があること、個人差が大きいこと、数値データを得られないことが理由です。

照度ロガーは明るさを「照度」という客観的・定量的なデータとして計測できますので、人間による評価の問題点をクリアできます。

また照度ロガーにはデータをパソコンに送る機能があるので(ロガーとは記録を取るものという意味)、人間が手動で記録を取る必要がなくなります。

照度ロガーの使用用途

照度ロガーは環境の明るさを客観的に評価する場面で幅広く利用されます。

一般的なオフィス以上に、照度が業務上重要な工場や研究所などの環境では照度を計測することが必須です。

また、映画館などの客席誘導灯も消防法で照度が規定されているため、照度ロガーで照度を計測し、法律の基準を満たすことを証明する必要があります。

計測した照度を手動でパソコンに打ち込んで解析するのは面倒なので、照度ロガーを用いてパソコンに自動送信できるようにすることが一般的です。

照度ロガーの原理

照度ロガーで計測する「照度」の単位はlux(ルクス)です。lxとも表記されます。光束(単位lm)を面積(単位m2)で割って算出します。

光束の定義は「ある面を通過する光の明るさ」です。しかし光束は面積の大きい方が明るくなるため、その面の面積で割って照度を計算します。

広いオフィスでも狭いオフィスでも、要求される明るさは同じですから、明るさの尺度として光束ではなく照度を用いることは理にかなっています。

白色の光は約400nm(青紫)~700nm(赤)の波長にわたって分布する光を合成したものです。人間の目は波長によって感度が異なり、約555nm(緑)をピークとした分布をしています。

照度ロガーは入射した光を人間の感度を模したフィルターに通し、フォトダイオードで受光します。フォトダイオードは受光した光を電気信号に変換する素子です。

フォトダイオードで光から変換された電気信号を計測し、照度を得ます。得られた照度はログ機能によりパソコンに送られるため、Excelなどのソフトで解析が可能です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsde/51/2/51_2015.2622/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalip1984/18/0/18_0_809/_pdf/-char/en

真空成形機

真空成形機とは

真空成形機

真空成形機とは、プラスチックシートを加熱して型に合わせて成形する機械です。

シートを加熱し、成形装置によってシートを型に沿って成形します。このときシートと型の間に真空をかけてシートを型に密着させて余分な空気を除去し、成形後は製品を冷却装置で冷却して型から取り外します。

真空成形機は薄肉の製品や大型製品の成形が容易にでき、射出成形に比べ金型が安価です。適切な機械を選べば大量生産にも少量生産にも対応できます。真空成形は、多様な形状や複雑な形状のプラスチック製品を製造するために広く用いられています。

真空成形機の使用用途

真空成形機の使用用途は以下の通りです。

1. プラスチック製品の成形

ペットボトルや食品容器、玩具、化粧品容器などのプラスチック製品の成形に使用されます。

2. プラスチックの板やフィルムの製造

液体状態のプラスチックを成型した後、板状やフィルム状に整形する際に使用されます。プラスチック製のシート、シート状の素材、ラミネートフィルムなどを製造するためにも使用されます。

3. 医療機器や医薬品の包装材料の製造

医療機器や医薬品の保護や密閉を目的とした包装材料の製造に使用されます。衛生材料の製造にも使用されます。

4. 食品の保存

食品を保存するための容器や袋、加熱調理用の容器などの製造に使用されます。

5. 自動車部品、家電製品、家具などの製造

自動車部品の内装品、家電製品のハウジング、家具の一部品などの製造に使用されます。

6. その他の用途

真空整形機を用いてフィルターやポンプ、電子部品の保護ケース、建築用の軽量パネル、文具類などが製造されています。

真空成形機の特徴

長所

真空成形機は専用の成形型と加熱装置を備え、高精度な成形が可能です。成形型の形状やサイズを変更することで多様な製品を作れます。また真空成形機は、自動化された生産ラインに組み込めるため生産効率が上がります。

また一度に複数の製品を同時に成形でき、加工する材料も比較的安価な熱可塑性プラスチックシートを使用するため、製造コストを抑えられます。

短所

成形工程ではプラスチックシートの加熱・吸い込み・冷却に必要な時間がかかるため、効率が低下する場合があります。

また真空成形機は、射出成形などと比較すると機器の初期コストが高くなる場合があります。そのため初期投資が大きくなることが短所です。

射出成形機よりも精度が低い場合があります。プラスチックシートの融点や型の温度調整、真空の度合いなどが正確でないと、成形された製品の精度が低下することがあります。

真空成形機の使い方

真空成形機は熱可塑性樹脂を加熱して軟化させ、その後専用の型に吸い込ませることで特定の形状を形成する機械です。

1. 加熱

真空成形機で使用される熱可塑性樹脂を加熱する工程です。熱によって樹脂は軟化し成形が容易になります。樹脂の加熱方法には電熱線を使用した加熱方法や、赤外線加熱を利用した方法などがあります。

2. 成形

加熱された樹脂を専用の型に吸い込む工程です。この時、樹脂は軟化しているため型に沿った形状になります。樹脂を吸い込むために型と樹脂の間に真空を発生させます。

3. 冷却

成形が完了したら型から取り出して冷却する工程です。冷却によって樹脂は硬化して成形された形状を保持できます。冷却方法には水冷や冷風を利用する方法などがあります。

真空成形機のその他情報

真空パック袋について

真空成形機を使用して作成される食品用の真空パック袋は、プラスチックフィルムを成形して作られます。

真空パック袋は、食品や調味料、生鮮食品、乾燥製品などを保存するために使用されます。真空パック袋は、空気を取り除くことによって酸化や菌の繁殖を防止して食品の鮮度を長期間維持でき、また袋に密封することで保存中に味や香りが変わることを防げます。

真空パック袋は様々な形状やサイズで作成でき、一般的にはポリエチレンナイロンポリプロピレン、PET (ポリエチレンテレフタレート) などが使用されます。

真空パック袋は、食品以外にも様々な用途で使用されています。例えば金属部品や電子部品などの保管に使用されます。金属部品や電子部品は、酸化や湿気、塵などの影響を受けると劣化してしまうことがあるため、保管時には高い気密性が求められます。真空パック袋は空気を抜いて密封することで、これらの部品の品質を維持しながら保管できます。

また医薬品や化粧品などの保存にも使用されます。これらの製品は、酸化や光、湿気などの影響を受けると品質が低下するため、保管時には高い気密性が求められます。真空パック袋は、これらの品質維持のために使用されます。

多関節ロボット

多関節ロボットとは

多関節ロボット

多関節ロボットとは、アームにジョイントという関節を複数持つロボットのことです。

ジョイントは次のような動作を行います。

  • アームの曲げ伸ばし
  • 上下動作
  • 回転動作
  • 伸縮動作

多関節ロボットは曲げ伸ばしといった人間の動きに似た関節や、伸縮動作といったロボット特有の直動関節を持っています。これによって、人間に代わって様々な作業をさせることが可能となります。

多関節ロボットのジョイント

図1. 多関節ロボットのジョイントの動作

多関節ロボットの中の主要なものは、垂直多関節ロボット水平多関節ロボットです。それぞれアームとジョイント構造が違い、得意とする作業が異なります。

多関節ロボットの使用用途

多関節ロボットは、次のような作業を人間の代わりに行わせるのが主な使用用途です。

  • 重い荷物を持ち上げるような重労働作業
  • 繰り返し同じことを長時間行う作業
  • 熟練した技能が必要な作業
  • センサーやカメラを使った検査作業

ロボットは人間と違って疲れることがなく、同じ作業を正確に長時間行えます。単純作業をロボットに任せると人間は付加価値のある工程に従事できるため、工場の生産性を上げることができます。

また、ロボットの正確な動作が再現できる特性を使って、熟練した技能者の動きを正確にトレースが可能です。これによって、退職間近のベテラン技能者の技術をロボットに引き継いで、業務の属人化を防ぐことが期待されています。近年のAI技術の発展に伴って、センサーやカメラなどを多関節ロボットに取り付けて、検査を自動化することも可能です。

多関節ロボットの原理

ロボットにおけるリンクとジョイントはそれぞれ人間の骨と関節部分にあたります。ジョイントは回転軸や直動機構によってリンクの可動範囲が広がり、人間と同じような作業をロボットで行うことが出来ます。

ロボットの駆動源は、初期のロボットは油圧駆動でしたが、現在はモーター駆動が一般的です。電子制御によってより精密な動作を実現しています。

多関節ロボットのその他情報

1. 垂直多関節ロボットとは

垂直多関節ロボットはジョイントがアームを垂直方向に動かす方向についているロボットです。一般的に6つの軸を持ち、X・Y・Zといったような水平・垂直動作に加えて、Rx・Ry・Rzといった回転動作も行うことができます。

垂直多関節ロボットは人間の腕に近い動作ができるので、

  • 溶接、塗装など斜め方向からのアプローチが必要な作業
  • 侵入経路が複雑な場所へのワーク搬送作業

といった作業が得意です。

垂直多関節ロボット

図2. 垂直多関節ロボット

2. 水平多関節ロボットとは

水平多関節ロボットは主に水平方向に動作する3つの回転軸を備えています。スカラロボットと呼ばれることも多いです。水平方向の回転軸に加えて、上下方向に動作する1軸が付加された製品が一般的です。

水平多関節ロボットは、垂直多関節ロボットと比べて次のようなメリットがあります。

  • 平面内の動き(X・Y・Rz方向)が素早い
  • 上下方向の剛性が高い
  • 低価格

水平多関節ロボットのメリットを活かした作業は、次のようなものがあります。

  • ベルトコンベヤからワークをピックし、箱詰めする作業
  • 垂直方向のネジ締め作業
  • ワークの平面内の整列作業

水平多関節ロボットと水平多関節ロボットは同じ多関節ロボットでも特性が違うため、実施したい仕事に合わせて使い分ける必要があります。

水平多関節ロボット

図3. 水平多関節ロボット

3. 低価格な多関節ロボット

産業用の製品だと百万円以上する多関節ロボットですが、近年は低価格な多関節ロボットが様々なメーカーから販売されるようになりました。これらのロボットは、電子工作やプログラミング学習用途が主な用途です。

安価なものだと数万円から購入することができますが、低価格なロボットは関節構造やモーターに安価なものを採用しているため、位置決め精度や繰り返し停止位置精度、動作速度や耐久性が格段に劣ります。購入する際には実用に耐えうるものなのかをしっかり判断する必要があります。

参考文献
https://www.denso-wave.com/ja/robot/product/five-six/
https://www.shibaura-machine.co.jp/jp/product/robot/lineup/tv/
https://www.keyence.co.jp/ss/products/vision/fa-robot/industrial_robot/mechanism.jsp
https://www.fa.omron.co.jp/products/category/robotics/industrial-robots/articulated-robots/

電子ビーム描画装置

電子ビーム描画装置とは

電子ビーム描画装置とは、LSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)の回路パターンを描くための装置です。

携帯電話・パソコンなどの電子機器にはLSIという半導体電子回路部品が組み込まれています。

LSIの回路を設計したあと、回路パターンをレチクル(銀塩写真でいうフィルムに相当)に電子ビームで焼き付ける工程が必要です。

このとき、寸法・位置誤差を2~5nm以内に抑える必要があります。

この精度で回路パターンをレチクルへ電子ビームを焼き付けるために利用されているのが、電子ビーム描画装置です。

電子ビーム描画装置の使用用途

電子ビーム描画装置は、LSIに使用される超微細回路の焼き付け工程に利用されています。

LSIは電子機器には必須とも言ってよい部品です。

たとえばLSIは、携帯電話・パソコン・ゲーム機・カメラなどの部品として使われています。

用途によりLSIの設計も変化し、通信機器・電源・音響処理・画像処理・センサー・AIなど、さまざまな分野に適したLSIが存在します。

幅広いLSIの設計パターンに対応するため、CAD(Computer Aided Design)で設計された回路パターンを電子ビーム描画装置でレチクルに焼き付けているのです。

電子ビーム描画装置の原理

LSIの工程は大きく設計・前工程・後工程に分けられます。

設計段階で回路パターンをレチクルに描き、前工程段階でシリコンウェーハ上に電子回路を高集積で形成し、後工程でウェーハから半導体を切り出して所定の位置に固定・封入します。

設計段階において、従来は銀塩写真のような光転写によりLSIの微細回路パターンをレチクルに焼き付けていました。

しかし光(可視光線)は約400nm~700nmの波長があるため、光の波長より細かい回路をレチクルに焼き付けられません。

時代とともにLSIは大規模化しており、いかに小さなLSIに多くの回路を集中させるかが研究対象でした。

そこで登場したのが電子ビームです。

電子ビームの波長は加速電圧10kVで0.012nmなので、光と比べて大幅に微細な回路パターンを描けます。

ただし高度に微細な回路パターンを描画するには、その分高精度に電子ビームの照準を合わせられる装置が必要とされます。

その装置として開発されたのが電子ビーム描画装置です。

電子ビーム描画装置にはラスター走査方式(テレビの画素のように「点」を並べていく方式)と、ベクター走査方式(円形・長方形などの形状を塗りつぶす方式)があります。

この電子ビーム描画装置により、高精細な回路パターンをレチクルに描画できるようになりました。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu1932/70/4/70_4_411/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1986/67/9/67_9_1403/_pdf/-char/ja