塩水噴霧試験機

塩水噴霧試験機とは

塩水噴霧試験機とは、金属材料や金属製部品、めっきや塗装などの被膜加工をした製品に対して、腐食試験として塩水噴霧試験を行うための実験装置です。

塩水噴霧試験装置を用いることにより、ISOやJISなどの工業規格によって定められた一定の温度や塩分を含む湿度などの雰囲気環境を、試験装置内の空間に作り出します。この試験環境内に試験片を入れることで、腐食が発生する経過を確認します。

塩水噴霧試験機の使用用途

塩水噴霧試験機は塩水噴霧試験の専用試験装置です。塩水噴霧試験の主な試験対象は金属材料、めっきや塗装などの被膜およびこれら被膜を施した製品です。

JISなどの工業規格では、定められた大きさの試験片での評価することが定められていますが、製品開発や品質管理の現場においては、実際の製品を使って試験されています。塩水噴霧試験機の具体的な使用用途は、以下の通りです。

1. 自動車分野

自動車分野では、めっきや表面処理した部品の耐食性評価に使われます。具体的には、ねじ部品や各種ブラケット部品、トランスミッションのオイルパンなどの耐食性評価のためです。

特に積雪が多い地方では、雪を溶かすために道路上に撒かれる融雪塩によって、自動車の外装や足回り部品などが、著しく腐食されることがあります。塩水噴霧試験は、このような外的環境に対する耐食性を評価します。

2. 建築分野

建築分野では、風雨などの自然環境による耐食性評価が行われます。例えば、沿岸部で潮風が強い地域の場合、金属製の家屋に使われる部品には、比較的短時間で錆が発生します。

古い家屋の屋根や壁に使われているトタン板や一般家庭用の物置などにも、錆が発生しているのを目にすることは多いです。塩水噴霧試験では、このような錆が発生するまでの期間を確認しています。

塩水噴霧試験機の原理

塩水噴霧試験機は、機器の庫内に試験対象物を置き、庫内に腐食を促進する酸性溶液をミスト化して、連続的に噴霧することでサンプルの腐食を促します。使用される酸性溶液は、塩化ナトリウム塩化カルシウム塩化マグネシウムなどです。酸性溶液をミストにすることで、試験サンプルに対して均一にいきわたり、局所的に偏ることなく腐食を促すことができます。

塩水噴霧試験では、塩化溶液の塩分濃度や試験温度が定められており、塩水噴霧試験機は定められた条件を満たすように雰囲気環境を維持、制御します。

塩水噴霧試験機のその他情報

1. 塩水噴霧試験の相当時間

塩水噴霧試験は、めっきや塗装、工業製品などが、製品として使われる日常環境において、錆の発生を抑えるための品質を確認する試験です。年単位で求められる耐食性を、時間単位で評価するための加速試験の一つです。しかし、各種工業規格では、自然環境と試験環境との相関については規定していません。

塩水噴霧試験の試験時間が、自然環境のどのくらいの経過時間に相当するのかという相関については、各製品の製造メーカーが、独自に基準を定めて運用しています。試験の方法や条件は各種工業規格に則り、規定された条件下での評価時間は、それぞれの会社や業界が定めています。

2. 塩水噴霧試験の判定方法

塩水噴霧試験を製品で評価する場合は、錆の発生を明確に定義しておくことも大切です。評価は、定期的に試験品を目視などで錆の発生の有無を確認しながら進めていきます。塩水噴霧試験装置は試験環境を作り出す装置であり、錆の発生を検知や判定する機能までは有していません。

また、錆の発生は、製品全面に発生せず、特定の部位から徐々に広がっていくことが一般的です。JISなどの工業規格では、定められた大きさの試験片を使い、錆が発生したと判定する基準として、表面積の割合で定めています。よって、実際の製品で試験を行う際には、「どの状態を錆が発生したと判定するのか」「錆が発生する部位や表面積の割合」などを、関係する会社と事前に取り決めておくことが大切です。

さらに、亜鉛めっきのように自己犠牲によって母材の錆を防ぐめっきの場合には、通常自己犠牲である白錆が発生した後に、母材が錆びたことを示す赤錆が発生します。そのため、塩水噴霧試験においても、白錆と赤錆それぞれが発生するまでの時間で評価します。例えば、白錆は72時間以内、赤錆は240時間以内に発生してはいけない等、2つの評価基準を用いて運用されています。

参考文献
https://www.espec.co.jp/products/trustee/test/saltwarter.html
https://www.keisokuten.jp/products/1679.html
https://www.sanyo-si.com/
https://www.oeg.co.jp/Rel/saltspray.html

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