電子ビーム描画装置とは
電子ビーム描画装置とは、LSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)の回路パターンを描くための装置です。
携帯電話・パソコンなどの電子機器にはLSIという半導体電子回路部品が組み込まれています。
LSIの回路を設計したあと、回路パターンをレチクル(銀塩写真でいうフィルムに相当)に電子ビームで焼き付ける工程が必要です。
このとき、寸法・位置誤差を2~5nm以内に抑える必要があります。
この精度で回路パターンをレチクルへ電子ビームを焼き付けるために利用されているのが、電子ビーム描画装置です。
電子ビーム描画装置の使用用途
電子ビーム描画装置は、LSIに使用される超微細回路の焼き付け工程に利用されています。
LSIは電子機器には必須とも言ってよい部品です。
たとえばLSIは、携帯電話・パソコン・ゲーム機・カメラなどの部品として使われています。
用途によりLSIの設計も変化し、通信機器・電源・音響処理・画像処理・センサー・AIなど、さまざまな分野に適したLSIが存在します。
幅広いLSIの設計パターンに対応するため、CAD(Computer Aided Design)で設計された回路パターンを電子ビーム描画装置でレチクルに焼き付けているのです。
電子ビーム描画装置の原理
LSIの工程は大きく設計・前工程・後工程に分けられます。
設計段階で回路パターンをレチクルに描き、前工程段階でシリコンウェーハ上に電子回路を高集積で形成し、後工程でウェーハから半導体を切り出して所定の位置に固定・封入します。
設計段階において、従来は銀塩写真のような光転写によりLSIの微細回路パターンをレチクルに焼き付けていました。
しかし光(可視光線)は約400nm~700nmの波長があるため、光の波長より細かい回路をレチクルに焼き付けられません。
時代とともにLSIは大規模化しており、いかに小さなLSIに多くの回路を集中させるかが研究対象でした。
そこで登場したのが電子ビームです。
電子ビームの波長は加速電圧10kVで0.012nmなので、光と比べて大幅に微細な回路パターンを描けます。
ただし高度に微細な回路パターンを描画するには、その分高精度に電子ビームの照準を合わせられる装置が必要とされます。
その装置として開発されたのが電子ビーム描画装置です。
電子ビーム描画装置にはラスター走査方式(テレビの画素のように「点」を並べていく方式)と、ベクター走査方式(円形・長方形などの形状を塗りつぶす方式)があります。
この電子ビーム描画装置により、高精細な回路パターンをレチクルに描画できるようになりました。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu1932/70/4/70_4_411/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1986/67/9/67_9_1403/_pdf/-char/ja