圧電アクチュエータ

圧電アクチュエータとは

圧電アクチュエータとは、アクチュエータの一種で、圧電素子によりIC等から出力された電圧などの電気的なエネルギーを、リニア動作や変形などの物理的な運動エネルギーに変換する機構のことです。

内蔵するピエゾ素子とも呼ばれる圧電素子を利用することで、電気的なエネルギーを物理的な機械エネルギーに変換できます。圧電アクチュエータは、一般に圧電セラミックスの変形を利用しているため、他のアクチュエータと比べて電磁ノイズなどが生じず、非常に高い精度を持っていることや高速で素早い応答速度を有していることなどが特徴です。

また、駆動のためのコイルなどが不要で、小型にできることも大きな特徴と言えます。消費電力が小さいことから、デジタルカメラや携帯端末といった小型化が求められている精密機器に利用されています。

圧電アクチュエータの使用用途

圧電アクチュエータは、特に精密機器を中心に工業用製品から身近な電化製品まで使用されています。小型化が可能なことや反応速度が速いこと、消費電力が小さいことなどの特徴を生かし、幅広い用途で使用されています。

具体的な製品への適用事例は、一眼レフのカメラなどの精密機器やハードディスクドライブなどの記憶媒体、インクジェットプリンター、医療機器、工業製品などです。

圧電アクチュエータの原理

圧電アクチュエータの原理は、圧電体の特徴である結晶に対して電界を与えることで力や歪みを生じる「逆圧電効果」と呼ばれる物理現象を用い、電気的な制御により精密な圧電体の変位を機構部品として利用する点にあります。

圧電アクチュエータに用いられている圧電セラミックスは、この逆圧電効果によって小さい駆動電圧にて大きな変位を得られるような技術的な工夫が施されています。特にセラミックス基板の厚みを薄くすることで、圧電アクチュエータの駆動電圧を比較的低電圧化することが可能です。

圧電アクチュエータのその他情報

1. 電磁式アクチュエータとの比較

従来から用いられているアクチュエータに電磁式アクチュエータがありますが、圧電アクチュエータと比較すると以下のようなメリットがあります。

  • 変位量を大きく確保可能
  • 駆動電圧の低電圧化が容易

しかしながら、電磁式アクチュエータには電磁用コイルが必要なため小型化が困難であり、アクチュエータとしての変位の精度やその制御性、および低消費電力化という点では圧電アクチュエータには及びません。従来の比較的大型の工業用製品や設備システムの機構箇所には電磁式アクチュエータが、精密性や小型化、低消費電力化が重要な箇所には、圧電アクチュエータが用いられているというすみ分けが現在は図られています。

2. 圧電アクチュエータのヒステリシス

ナノオーダーレベルの制御が原理的に可能な圧電アクチュエータですが、実はヒステリシス (履歴現象) という課題を有しています。ヒステリシスとは、制御電圧に対するアクチュエータの変位 (=ストローク量) が完全な比例関係を有していない現象を指します。

圧電アクチュエータにおいては、印加電圧に対するストローク量が曲線を描き、印加電圧の昇圧時と降圧時でそのカーブが一致していません。これを補正するには、外部にて高精度の位置決めのための機構 (ストレインゲージ等) で補う必要があります。ASICとともにゲージからの位置決めのFeedbackで、高精度なストローク量の制御を行う精密部品も多数存在している状況です。

3. エナジーハーベスティングへの応用展開

圧電素子は、機械的な変位から電圧などの電気的エネルギーを得る発電用途としても、開発検討がなされています。昨今のSDGsに代表される環境問題への関心の高まりから、圧電素子を用いた圧電アクチュエータに加える機械的な変位や振動を用いて、発電用に検討する研究開発が進められています。

このような技術をエナジーハーベスティング (環境発電) と呼び、振動エネルギー以外にも光、熱、電磁波なども注目されている状況です。振動発電での無線通信タグなどへの展開も進められており、圧電アクチュエータでの技術が応用展開されています。

参考文献
https://www.yuden.co.jp/jp/solutions/piezoelectric_actuator/
https://www.murata.com/ja-jp/products/mechatronics/actuator/basic
https://www.ngk.co.jp/product/electron/microactuator/
https://jpn.nec.com/techrep/journal/g06/n05/pdf/t060519.pdf
https://www.tokin.com/product/pdf_dl/sekisou_actu.pdf
https://www.matsusada.co.jp/column/words-actuator.html

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