カップシール機

カップシール機とは

カップシール機

カップシール機とは、カップ状の容器の開口部にシートやフィルムよりなるシール材を圧着させてカップの開口部に蓋をして密閉する装置です。

カップシーラーとも呼ばれています。シール材の圧着方法としては、熱圧着が一般的です。ほかには加熱や超音波による圧着もあります。

カップシール機の使用用途

カップシール機は、食品や化粧品等のカップを密閉するのに多く使用されています。カップの中身からの液体漏れの防止や中身への異物混入の防止、保存性の向上などに効果的です。また、シール材を透明にすれば視認性の向上も可能です。

例えば、プリンやゼリーなどの形が崩れやすい食品や、カップに入った飲料のようにこぼれてしまうものを密閉するのに使用されます。アイスクリームのように溶けるとこぼれてしまうものにも好適です。そのほか、カップラーメンのように湿気や匂いを避けるべき食品などにも使用されています。

食品以外にも、医薬品や化粧品などの製品にも使用されています。

カップシール機の原理

カップシール機の基本的な仕組みは、カップ状の容器の開口部にシール材を配置し、これを圧着する仕組みです。

シール材は、紙やアルミ蒸着処理がなされた紙、樹脂フィルムなどがあり、高い密着性が必要です。圧着方式には、熱圧着が一般的で、加熱や超音波などの方式もあります。シール材の形状では、カップの開口部に合わせた形状に成形されているもの、もしくはシート状のものが使用されています。シート状のものを使用する場合は圧着後に所定の形状にカットする工程が必要です。

圧着方式の中で最も使用されている熱圧着はヒートシールと呼ばれています。この方法では、カップにフィルムを被せて、一定の温度で、一定時間、一定の押しつけ圧力で挟み込んでカップとフィルムを圧着します。この温度や時間・圧力をコントロールして圧着部分が所定の強度となるよう調整可能です。

カップシール機のその他の情報

1. カップシール機の自動化

カップシール機には半自動タイプと全自動タイプがあります。

半自動タイプは、カップシール機の中でも、比較的小型で手作業が必要な少量生産向けの機械のことです。中身を充填したカップのセットやシールされたカップの取り出しなどを人間が行なう装置が多く見られます。半自動タイプには、小規模店舗や移動販売向けの可搬式の機種もあります。

全自動タイプは、カップのセットやシールされたカップの回収なども全て機械が行なうタイプのものです。カップシール機の中でも大型となり、連続での稼働が必要な食品製造ラインに組み込まれるような大量生産に向いている装置です。

2. カップシール機と類似している装置

カップ状の容器をシールする装置をカップシール機と呼びますが、これに類似した装置もあります。

カップよりも深さが浅い容器の開口部をシールする装置をトップシーラーと呼びます。例えば豆腐のパックや漬物のパックのような容器に好適です。トレー状の容器をシールする装置はトレーシーラーです。精肉や水産加工品、魚類、介護職や弁当などのシールに利用されています。

カップシール機とトップシーラー、トレーシーラーの明確な定義はなく、メーカーによって呼び方は多少変わります。カップシール機やトップシール機またはトレーシール機のいずれでも、型さえ用意できれば、四角や丸のような一般的な形状のものだけでなく様々な形状の容器に対応可能です。さらに、これら装置には、密封時にガス置換できるタイプもあります。密封する製品に窒素ガスを吹きかけて製品を日持ちさせます。肉・魚・惣菜など劣化しやすいものに好適です。

近年では、炭酸ガスによるガス置換も用いられています。そこで、これら装置に、炭酸ガスと窒素ガスの比率等を一定の割合で供給するガス混合器と併用すれば、容器内部の空間ガス組成もコントロール可能です。

参考文献
https://www.shokuken.or.jp/works/machines/cupsealer.html
http://www.jpml.jp/expert/knowledge/08.html

オイルトラップ

オイルトラップとは

オイルトラップ

オイルトラップとは、機械や装置内にある油や脂肪などの液体を捕らえるために使用される装置です。

主に工業分野で使用されており、機械の運転中に発生する油や脂肪が外部に漏れ出さないようにするために用いられます。オイル阻集器、ガソリントラップ、油水分離槽、油分離槽、油水分離桝、グリストラップなどと呼ばれています。

排水中への油分流出防止だけでなく、下水管や公共側溝の目詰まり防止も設置目的の1つです。一般的に金属やプラスチックで作られており、内部にフィルターや分離器を備えています。また、定期的にメンテナンスや清掃を行うことで、効果的な機能を維持することができます。

オイルトラップの使用用途

オイルトラップは産業において広く使用される装置の1つです。

機械部品や機構用の潤滑油は、機械の運転中に漏れ出すことがあります。石油や化学物質を扱う施設では、漏れが生じた場合に深刻な影響が生じることがあります。オイルトラップを使用することで潤滑油や石油を捕らえ、外部に漏れ出すことを防止することができます。

また、工業プロセスや飲食店などから排出される廃水中には、油や脂肪が含まれていることがあります。廃水中の油や脂肪を取り除くことで、廃水処理施設での処理負荷を軽減することが可能です。

自動車のメンテナンス時にも、エンジンオイルやトランスミッションオイルなどの液体が漏れ出すことがあります。オイルトラップを使用することで、車両周辺の環境への影響を軽減することができます。

オイルトラップの原理

オイルトラップで最も一般的な製品は、水と油の比重差で分離する種類です。

オイルトラップには、液体が流れ込む入口と清水が排出される出口があります。オイルトラップ内部にはバッフル (障壁) があり、液体の流れを遅らせます。バッフルによって液体中の軽い油や脂肪が上部に浮かび上がり、重い汚水は下部に沈殿します。

オイルトラップの上部には、油を取り除くためのオイルスキマーが設置されています。オイルスキマーは油や脂肪を表面から取り除き、別の容器に集めます。一方、オイルトラップの下部には、汚水を排出するためのバルブが設置されています。バルブを開くことで、汚水を排出することができます。

オイルトラップの種類

オイルトラップにはさまざまな種類があります。主な種類としては、フロート式、バイオ式、鉱油用などがあります。

フロート式は内部に浮力体を備えたオイルトラップです。浮力体は油や脂肪などの軽い液体が上部に浮かび上がると、オイルトラップ内部のバルブを開いて油を排出します。排出された油は別の容器に集めることが可能です。

バイオ式オイルトラップは廃水中の油や脂肪を微生物によって分解するための装置です。内部には微生物が生育するための培地や空気送風機が設置されます。微生物によって分解された廃水は後段の浄化設備で処理されます。

鉱物油用オイルトラップは機械部品や機構の潤滑油漏れを防止するために使用される装置です。油を捕捉するための特殊なフィルターや分離器が備わっている点が特徴です。高い油分離性能を発揮するオイルトラップです。

オイルトラップの選び方

オイルトラップを選定する際には、油種類、分離性能、メンテナンス性などを考慮して選定します。

オイルトラップは油の種類に応じて選定機器が異なります。機械部品や機構の潤滑油漏れを防止するために使用する場合は、鉱物油用オイルトラップを選ぶ必要があります。一方、飲食店や工場などで排出される廃水中に含まれる油や脂肪を分離する場合には、バイオオイルトラップの選定が必要です。

オイルトラップの分離性能は、使用されるフィルターや分離器の種類や設計によって異なります。選ぶ際には、分離性能が高く、環境への影響を最小限に抑えられるものを選ぶ必要があります。

設置スペースやメンテナンス性も重要な要素です。日常的にフィルタ清掃を実施する必要があるため、清掃やフィルター交換が容易に行える製品が好ましいです。大型機器は流量を大きく取れますが、フィルタ清掃が煩雑な上に専用スペースが必要な場合があります。

参考文献
https://www.isgnet.jp/greasetrap/column/53/
https://itoyogyo.co.jp/column/7617/
https://www.horkos.co.jp/product/con/con_03_01.php

エアチャック

エアチャックとは

エアチャック

エアチャックとは、空気圧システムで使用されるアクチュエータと類似ではありますが、被加工物をチャック (爪) でつかみ固定する機械装置のことです。

一般的に、空気圧で動作する装置を総してエアチャックと呼びます。装置構造は従来の機械式チャックと同様で、空気圧を用いて被加工物を挟む動作が自動化されます。

エアチャックの使用用途

エアチャックは、切削加工機やロボットマテハンへ製品を保持するために、空気圧を用いて被加工物を挟む目的で使用されています。被加工物をマシニングセンタNC旋盤へ固定するために活用したり、ロボットハンド先端に取り付けチャックを開閉することで被加工物を保持し、搬送手段で活用したりする場合もあります。

ただし、機械式チャッキングと異なり、被加工物の保持力は空気システム内のコンプレッサ能力で決まるため、エアチャックは製品重量と被加工部へ発生する応力や大きさを考慮した上での選定が必要です。

一般的にエアチャック大きさは、シリンダ内のチューブ内径 (φ6~φ63mm程度) です。その他、チャックの稼働範囲が被加工物をつかむことができるか否かを事前検討する必要があります。チャック保持力はエア圧とリンク等の変換機構で発生しますが、選択時には保持力や動作だけでなく保持点位置や搬送時モーメントを考慮します。

エアチャックの原理

エアチャックの基本原理は機械式とほとんど変わりませんが、チャック開閉に空気圧弁システムを用いて空気漏れを防ぎ、かつ開閉動作をセンサーで制御する点に特徴があります。開閉運動の方法によって、直線動作方式、回転動作方式、保持動作方式の3つに分類できます。

1. 直線動作方式

エアシリンダに類似しており、チャックを平行移動させて被加工物を保持します。汎用性が高いため、幅広い業界の空気圧機器のチャックとして採用されており、各種産業用ロボットに対応しています。

特に、小規模サブアッシーラインへの導入が簡易であるため使いやすいモデルです。被加工物に対し平行に取り付けるチャックなので、高い把持力が求められている作業や、2次元スカラーロボット等の平行回転運動を伴う機器への設置で活躍します。

2. 回転動作方式

エアモーターと揺動動作をするロータリアクチュエータがあり、いずれも円運動をする場合に使用します。円運動の場合は被加工物を保持して、回転させながらある程度の距離を移動させたり、他の加工を行ったりするため、構造が複雑になりがちです。被加工物が円形である場合や、平行チャックでは保持力が担保できない場合には、ロータリーアクチュエータを活用するケースが増えてきます。

エアチャックの種類

エアチャックは、平行開閉チャック、支点開閉チャック、幅広開閉チャックがあり、チャック爪数によって2ツ爪、3ツ爪、4ツ爪に分類されます。

1. 平行開閉チャック

平行開閉チャックは、フィンガ (爪) が平行移動するタイプで、開閉動作はリニアガイドやすべりガイド等の機構によって規制されます。基本的には被加工物の大きさ以下で使いますが、上限値設定で被加工物を挟むと保持力の低下が懸念されるため、ある程度の余裕をもって、開閉設定値を決める必要があります。

2. 支点開閉チャック

支点開閉チャックは、空気シリンダ直線運動をリンクやカムで動作変換を行います。ガイド機構が不要でコンパクトになりますが、チャック爪の設計と保持方法により、被加工部の保持力が変化する点に注意が必要です。

平行及び支点開閉チャックの両タイプともに、フィンガ開閉動作は複動シリンダタイプと単動シリンダタイプがあり、単動シリンダタイプは常時開形と常時閉形があります。

3. 幅広開閉チャック

幅広開閉チャックは、フィンガストロークが広い場合に使用します。シリンダ動作でダイレクトにフィンガを駆動しラック&ピニオン機構で左右フィンガの同期をとります。シリンダロッドとガイドロッドはすべり軸受でガイドされます。

この製品も基本的には被加工物の大きさ以下で使いますが、平行開閉チャック同様に保持力の低下が懸念される場面が想定されるため、ある程度の余裕をもった開閉設定値の設定が必要です。

参考文献
https://www.smcworld.com/products/subject/ja-jp/machine/door/chack.html
https://official.koganei.co.jp/image/02040000

エアーカップリング

エアーカップリングとは

エアカップリング

エアカップリングとは、空気を伝達するために使用される機械部品の一種です。

エアホース同士や空気圧機器と接続するための装置で、空気の流れを制御したり、異なる部品や装置を簡単に結合・切断したりするのに役立ちます。

異なる形状やサイズがあり、必要な空気圧や流量に合わせたバリエーションが用意されています。

エアカップリングの使用用途

エアカップリングの主な使用用途は以下の通りです。

1. 空気圧工具

エアカップリングは、空気圧工具と接続するために使用されます。空気圧工具にはエアリーガン、エアドリル、エアグラインダー、エアラチェットなどが含まれ、これらの空気圧工具は空気の力を利用して様々な作業を行うのに使われます。

2. エアコンプレッサー

エアカップリングは、エアコンプレッサーと空気圧工具や他の空気圧機器とを接続するために使用されます。エアコンプレッサーは空気を圧縮し、高圧の空気を供給する装置です。

3. 自動車の空気ブレーキ

自動車の空気ブレーキシステムでは、エアカップリングが使用されます。トラックやバスなどの大型車両では、空気圧を利用してブレーキを制御するシステムが一般的です。

4. 工業用空気圧機器

工業分野では、空気圧を利用して機械やプロセスを制御するための空気圧機器が使用されています。これには空気シリンダーやバルブ、エアーモーターなどが含まれ、これらの機器を接続するためにエアカップリングが利用されます。

5. 農業機械

農業用機械や農業機器でも、エアカップリングを使用する場合があります。

エアカップリングの原理

エアカップリングの動作原理は、カップリング内部に組み込まれたバルブ機構によって実現されます。カップリングを接続する際、プラグと呼ばれるカップリングの一方の部分を対応する部分に挿入します。これにより、カップリング内部のバルブが開く仕組みです。

一方、カップリングを切断する際、カップリングの片方の部分を引き抜くことによってバルブが閉じられ、空気の流れが遮断されます。この切断機構は、空気の漏れを防ぎ、作業時に効率的な制御が可能です。

なお、カップリング内部には、接続と切断の操作を制御するバルブが存在します。バルブは通常バネやシールなどで動作し、プラグを挿入することでバルブを開き、プラグを引き抜くことでバルブを閉じます。

エアカップリングは誤った接続を防ぐために、形状やサイズが異なるのが一般的です。種類が違うカップリング同士は、接続できないようになっています。

エアカップリングの種類

エアカップリングは、さまざまなバリエーションや特性を持つカップリングが存在します。使用環境や要件に合わせて適切な種類のエアカップリングを選ぶことが重要です。代表的な種類として、以下の7つが挙げられます。

1. プッシュロックカップリング

プラグを挿入するだけで接続が確立される簡単なカップリングです。プラグを引き抜くことで、切断されます。一般的に空気圧工具や圧縮空気ラインで使用されます。

2. バルブ式カップリング

バルブが内蔵されており、プラグを挿入することでバルブが開き、プラグを引き抜くことでバルブが閉じる仕組みです。空気流の制御がより正確に行えます。空気圧工具や空気圧機器に使用されます。

3. ユニバーサルカップリング

多くの種類のエアカップリングと接続できる汎用的なカップリングです。異なるサイズや形状のエアカップリングを同じカップリングシステムで接続できるため、柔軟性が高いです。

4. ワンタッチカップリング

名前の通り、ワンタッチで接続および切断が可能なカップリングで、プラグを挿入するだけで自動的に接続され、ボタンを押すことで切断されます。工業用の空気圧機器に使用されます。

5. セキュリティカップリング

誤った接続を防ぐために設計されたカップリングです。特定の方法を使用しない限り、カップリングを接続できないようになっています。

6. 高流量カップリング

大量の空気を効率的に伝達するために設計されたカップリングです。エアコンプレッサーなどの、高流量が必要な場面で使用されます。

7. 低流量カップリング

小さな空気流を制御するために設計されたカップリングです。精密な作業や制御が必要な場合に使用されます。

参考文献
http://www.yoshida-mfg.co.jp/pc/free03.html
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0102.html

ウレタンローラー

ウレタンローラーとはウレタンローラー

ウレタンローラーとは、金属製のロールにウレタンゴムを接着した部品です。

搬送コンベア、プリンターやフィルム包装機など精密機器の搬送部品として使われています。ウレタンローラーは様々な機械の搬送部品などとして使用されるため、使用する機械に応じて手のひらサイズの物から幅が1メートルを超える物までさまざまです。
  
素材として使用されるウレタンゴムは耐摩耗性や化学薬品への耐性を備えており、他の合成ゴムと比べると摩耗に最も強いです。そのため、繰り返し摩擦が生じる箇所に使用される部品として適しています。

ウレタンローラーの使用用途

ウレタンローラーは、搬送コンベア、プリンターやフィルム包装機など精密機器の搬送部品、産業用車両の車輪としても使用されています。摩耗に強い特徴を持つため、長年使う機械の部品に適しています。

繰り返し摩擦が生じる箇所によく使われており、プリンターなどの搬送ガイドやフィルム包装機のガイドローラーとして最適です。ガイドローラーとして使われる場合は、2つのロールを接触させてその間に紙やフィルムを挟み込んで押し出す構造になります。

この場合は常に2つのロールが接触した状態になり、摩耗が生じやすいため、耐摩耗性に優れたウレタンローラーが好適です。搬送コンベアも同様で、コンベアベルト部分と常に接触していることから耐摩耗性の高いウレタンロールが使用されます。

ウレタンローラーの原理

ウレタンローラーは、金属製の芯材の周りにウレタンゴムを圧入して製造します。この際、ウレタンゴムの表面を研磨すると、ウレタンローラーのサイズの微調整が可能です。また、ウレタンローラーの表面に溝を設け、滑り止めなどを作製する場合もあります。

なお、ウレタンローラーを形成するウレタンゴムは、耐摩耗性が高い上、耐油性や化学薬品への耐性も備えています。そのため、油や薬品を使う製品を包装する機械の部品としても向いています。

一方、ウレタンゴムは耐水性や耐湿性は低く加水分解を起こすため、水を使う場所や湿気の多い環境での使用には不向きです。また、通常のウレタンゴムは熱にも弱いため高温の箇所で使用すると熱変形してしまう可能性があります。

耐熱限界温度は100℃、耐熱安全温度は80℃と言われており、常時60℃で1時間に数回80℃に達する環境であれば使用に問題はないと言われています。それ以上の高温に達する箇所で使う場合は、耐熱性ウレタンゴムの使用が必要です。

ウレタンローラーのその他情報

1. ウレタンローラーの加工

ウレタンローラーは、その使用用途に応じて様々な表面溝加工が施されます。以下に代用的な例を挙げます。

ねじ切り溝加工
ねじ切り溝加工では、ローラー表面にネジ状の溝を形成して、ローラーの表面積を増大させています。薬品塗布などに用いられるロールコータ用に適用されています。

縦溝加工
縦溝加工では、ローラー表面に縦溝 (ローラー軸方向に垂直な方向の溝) を形成して、ローラー表面の放熱性を高めたり、摩擦係数を高めたりしています。縦溝加工をしたウレタンローラーは、段ボールのくわえ込みローラーやフィルム製袋用送りローラー、絞りローラーに使用されています。

横溝加工
横溝加工はローラー表面に横溝 (ローラー軸方向に沿った溝) を形成して、ローラーに軟らかさを付与することで摩擦係数を高め、ベルト等のスリップや蛇行を抑制しています。フィルムや段ボールのくわえ込みローラーに使用されています。

ヘリカル溝加工・ダイヤカット溝加工
ウレタンローラーの幅方向に斜めに連続した溝が加工されているヘリカル溝加工は、ベルトなどのスリップや蛇行の抑制やローラーの放熱性を高める目的で形成されます。なお、ウレタンローラー表面に幅方向に対して斜交する溝を複数設けたダイヤカット溝加工も同様です。

テーパークラウン加工・ラジアルクラウン加工・逆ラジアルクラウン加工
両端よりも中央部が太く、太い部分への移行がテーパー状となされているテーパークラウン加工は、ローラー本体のたわみの補正のために設けられています。両端よりも中央部を太くするラジアルクラウン加工は、ローラーの圧力を高めるなどの目的で施されます。

一方、両端よりも中央部が細い逆ラジアルクラウン加工は、搬送物の脱落を防止するためのガイドなどへの使用が好適です。

その他
ローラー表面にクレープ加工をすると、ローラー表面の面粗度が高まり、グリップ力や摩擦力の増強が可能です。低摩擦処理加工は、ゴムそのものの特長を損なわずにゴム表面の摩擦係数を小さくする加工方法です。ローラー表面へのゴミ・ほこりの付着防止やフィルム等の巻き付きを防止できます。

2. ウレタンローラーベアリング

ウレタンローラーベアリングは、小径・深溝玉軸受の外径に直接ウレタンゴムを装着した小型のウレタンローラーです。コンベアを中心とした搬送装置ソーターや自動車等生産ラインでの構内搬送機器、半導体製造工場内の天井搬送ラインの各種機器類、立体駐車場装置、各種金融機 (ATM) の紙幣識別・搬送機構、エレベータドアなどの各種開閉扉に使用されています。

参考文献
https://www.ontech.jp/column/theme01/column09.php
https://www.urethane.co.jp/products/roller/
https://urethane-gum.com/blog/20190311-3894.html
http://www.moritakaroller.co.jp/technology/
https://www.ntn.co.jp/japan/products/catalog/pdf/3021.pdf

インサートリング

インサートリングとは

インサートリングとは、油圧や空圧、水などの流体配管システムにおいて使用されるリング状の部品のことです。

特にパイプやチューブの内部に挿入される部品を指すことが多く、配管やパイプの接続部分で使用されます。密封や接続を強化するのが目的です。

例えば、チューブフィッティング (管継手) の接続部分には、収縮を防ぐためにもインサートリングが使用されることがあります。チューブフィッティングは、チューブを継手に取り付けるための部品で、しっかりとした接続と漏れの防止を目的としています。

インサートリングは配管のところどころで使用され、目的に応じて種類はさまざまです。

インサートリングの使用用途

インサートリングは多くの場合、異なる配管のつなぎ目で使用され、流体の漏れを防ぐ役割を果たします。

1. 液体やガスの配管システム

チューブやパイプを使用して液体やガスを輸送する際に、異なる配管を接続するためにインサートリングが使用されます。これにより、配管システムの漏れを防ぐことが可能です。

2. 圧力制御装置

圧力制御装置やバルブにおいて、配管の接続部分でインサートリングが使用されます。これにより、正確な圧力制御が実現され、漏れや圧力がかかりすぎるリスクが軽減されます。

3. 燃料供給システム

自動車や航空機の燃料供給システムにおいて、燃料ラインの接続部分にインサートリングが用いられ、燃料の漏れを防ぎます。

4. 冷却システム

冷却水や冷却液の循環を行う冷却システムにおいても、流体の漏れがあると冷却効果が損なわれるため、配管の接続部分でインサートリングが使用されます。

5. 化学プロセス

化学プロセスや製造工程において、異なる薬品や液体を適切に混合するための配管システムにおいてもインサートリングが使用されます。これにより、薬品漏れを防ぎます。

6. 医療分野

医療機器や医療用具において、液体やガスの供給や排出を行うために配管が使用されることがあります。これらの配管の接続部分にインサートリングを使用することで、安全な操作と衛生的な環境を実現しています。

インサートリングの原理

インサートリングは、配管同士や配管と継手との間に挿入されます。そして、配管を接続する際に継手や圧縮環によって挟まれ、圧力が加えられます。この圧力によって、インサートリングの材料は変形し、接続部分の周囲にしっかりと密着される仕組みです。

密着することで、配管や継ぎ手のわずかな隙間を埋め、密封性を確保します。これにより、液体やガスの漏れを防ぎ、システムの効率性と安全性を向上させます。

この密着性をを実現するため、インサートリングは弾性のある材料で作られるのが一般的です。この弾性材料が配管の接続部分に適切な圧力をかけ、周囲の面に密着して密封を実現します。

なお、チューブの収縮を防ぐ場合にも用いられ、この場合、チューブの内側に挿入され、金属などチューブよりも固い材料が用いられます。

インサートリングの種類

インサートリングの主な種類は以下の通りです。

1. フィッティングガスケット

管継手の接続部分に挿入されるガスケットです。液体やガスの漏れを防ぎながら、配管同士や配管と継手との間を確実に接続します。

2. チューブシールガスケット

配管の接続部分に挿入されるシールガスケットで、特に高圧や高温の環境で使用されます。ガスや液体の漏れを防ぎ、システムの安全性を確保します。

3. バルブステムパッキン

バルブのステム (操作レバーやハンドルと連動する部分) と本体の間に挿入されるガスケットです。バルブ操作時の漏れを防ぎ、適切な動作を確保します。

4. チューブエンドキャップ

配管の端を保護し、汚染や損傷から守るためのキャップです。特に、未使用の配管の一方の端を封じる際に使用されます。

5. スウェージリング

配管の径を拡張し、配管継手と接続する際に使用されるリングです。配管の先端を継手に挟み込むことで、強固な接続が形成されます。

参考文献
https://patents.google.com/patent/JPH0638636Y2/ja

LANモジュール

LANモジュールとは

LANモジュール

LANモジュールとは、コンピュータや機器をローカルエリアネットワーク (LAN) に接続するための部品です。

有線LANや無線LANなどの通信規格に対応したチップや回路を内蔵しており、コンピュータや機器の基板に取り付けるか、USBやPCIなどのインターフェースを介して接続します。LANモジュールを利用することで、コンピュータや機器はインターネットやネットワーク上の他のデバイスとデータのやり取りができるようになります。

LANモジュールには、有線LANに接続して使用するタイプと無線LANに対応するタイプ (無線LANモジュール) に分類されます。無線LANモジュールの場合、TCP/IP通信機能に加え無線通信モジュールを搭載し、無線通信だけでなく、暗号化対応としてWEPやTKIP、AESなどの暗号化通信にも対応しています。

LANモジュールの使用用途

LANモジュールはパソコンやスマートフォンをはじめとしてさまざまな機器で利用されています。パソコンやスマートフォン以外の代表的な使用用途を紹介します。

1. センサー

温度センサー、湿度センサー、照度センサーなど、さまざまなセンサーがLANモジュールを搭載して、センサーが収集したデータをLAN経由でサーバーに送信されます。これにより遠隔地からでもセンサーデータにアクセスできるようになります。

2. 家電機器

スマートスピーカー、スマートテレビなどのスマート家電はLANモジュールを使ってインターネットに接続されます。LAN接続により、これらの機器をスマートフォンなどから遠隔操作したり、オンラインサービスと連携させたりできます。

3. 産業機器

工場の生産設備や農業機械など、産業用途の機器にもLANモジュールが搭載されることがあります。LANを通じて収集した稼働データや動作ログを解析することで、機器の状態監視や保守管理が行われています。

 

このようにLANモジュールの用途は極めて幅広く、ネットワーク対応が必要なほとんどの機器で利用されています。IoT機器をインターネットに接続するための基礎技術として重要な役割を担っています。

LANモジュールの原理

LANモジュールは、デバイス間の通信を可能にするために以下のような動作原理を持っています。

1. データの送信

送信元デバイスがデータを送信する際、データリンク層でデータをフレームに分割し、物理層で電気信号や無線信号に変換して送信します。

2. データの受信

受信側デバイスでは、物理層で電気信号や無線信号をビットに変換し、データリンク層でフレームを再構築してデータを復元します。

3. エラーチェック

データリンク層では、フレームに含まれるエラーチェック情報 (CRCなど) を用いてデータの正確性を検証し、エラーがあれば再送要求を行います。

4. フロー制御

データリンク層では、送信側と受信側のデバイスが同期を取り、データの送受信速度を調整します。これにより、データの欠損や衝突を防ぎます。

LANモジュールのその他情報

1. LANケーブルのカテゴリ

有線のLANモジュールを利用する場合は、LANケーブルのカテゴリに注意する必要があります。LANケーブルのカテゴリとは、LANケーブルの規格です。数字が大きいほど通信速度が速くなります。

現在主流で用いられているのは、ギガビットイーサと呼ばれるCAT6やCAT5eのカテゴリです。また、最近では10GBASE-Tと呼ばれる10GbpsのCAT7などの利用も進んできました。最新のカテゴリは、CAT8と呼ばれる40Gbpsに対応したカテゴリです。

LANケーブルを選ぶ際には、利用する環境がどのカテゴリを前提に構築されているかに合わせて製品を選ぶ必要があります。環境より低いカテゴリにしか対応していない製品を選んでしまうと、性能を十分に生かし切ることができません。

2. IoT向けのLANモジュール

近年では、すべての機器や部品などがインターネットに接続するIoTが注目されています。その流れで、IoT向けのLANモジュールも多く発売されるようになりました。

IoT向けのLANモジュールの特徴は、サイズが小さく消費電力が少ないことです。実際に工場や現場で動作する機器に接続する必要があるため、スペースを取らない設計とする必要があります。IoT向けのLANモジュールのサイズ感は、20mm × 15 mm程度となります。

また、場合によっては電源供給がなくバッテリーで動作する環境に設置するケースもあるため、省電力性も重要です。

参考文献
http://www.silex.jp/blog/pr/2014/08/post-19.html
http://qa.elecom.co.jp/faq_detail.html?category=&id=3485
https://www.anritsu.com/ja-jp/test-measurement/technologies/wlan/wlanproductdesign

陽圧ダンパー

陽圧ダンパーとは

陽圧ダンパーとは、クリーンルームなどの内圧調整機器です。

差圧ダンパーもしくはリリーフダンパーと呼ばれることもあります。クリーンルーム内の陽圧を保つことを目的として、使用される機器です。

陽圧ダンパーの設置によってクリーンルームの外との差圧を調整し、クリーンルームなどの室内の気圧を常に一定の陽圧に保ちます。

陽圧ダンパーの使用用途

陽圧ダンパーは、クリーンルームなどで使用されています。外部からのホコリやチリの進入を防止するために、室内を陽圧にする必要があるからです。空気は、気圧の高い方から低い方へ流れるという性質があります。また、空気中のホコリやチリは空気の流れにのって拡散していきます。

そこで、クリーンルームでは室外の気圧よりも室内の気圧を高めることによって、室内から室外への空気の流れを作り出しています。これにより、クリーンルームへのホコリやチリの侵入を防止することが可能です。

しかし、室内の圧力が室外に比べて高すぎると、入出時にドアの開閉が困難になるなどの弊害も発生します。また、半導体製造に使われるクリーンルーム内では、常に2~3㎏の荷物を背負っていると言われるくらい作業員に負荷がかかります。

そのため、陽圧ダンパーを室外の空気との気圧差に応じて、時々開閉することによって、クリーンルームなどの室内の空気を常に一定の陽圧に保つことが可能になります。なお、設置方法によっては、逆に室内を陰圧にすることも可能です。

陽圧ダンパーの原理

陽圧ダンパーは、ダンパー本体、制御装置、アクチュエータから構成されています。 制御装置は、圧力センサからの情報に基づいてアクチュエータに制御信号を送る部分です。アクチュエータはこの制御信号に基づいて、ダンパーの開度を制御します。

そして、圧力センサがクリーンルーム内の気圧と外との気圧差を検知し、圧力差が一定程度になるように、ダンパー本体のバルブの開度を制御します。つまり、気圧が規定値よりも高くなるとダンパーを開いて空気を室外に排出し、気圧が低くなるとダンパーを閉鎖して、気圧を一定にします。

陽圧ダンパーの種類

クリーンルームで使用される主な陽圧ダンパーは、以下の通りです。

1. シャッターダンパー

開閉することで、気流の通り道を制御するタイプの陽圧ダンパーです。一般的には水平方向に設置され、開閉することでダンパーの開口部を調節します。シャッターダンパーは高速での開閉が可能なため、急激な気圧変化に対応することができます。

2. ダンパーユニット

クリーンルームの壁や天井に組み込まれた専用のダンパー装置です。ダンパーユニットには、制御可能な開口部があり、空気の供給と排気を制御します。ダンパーユニットは、ダンパーボックスや制御装置と組み合わせて使用されます。

3. オペレーティングシアターダンパー

複数のダンパーユニットを組み合わせたシステムです。このシステムは、クリーンルームの異なる領域ごとに気圧を調整するために使用されます。各領域ごとに独立した制御が可能であり、異なる清浄度レベルを維持できます。

4. レギュラトリーダンパー

気圧の制御だけでなく、風速や風量の制御も行うことができるダンパーです。これにより、クリーンルーム内の空気の動きをより詳細に調整することができます。レギュラトリーダンパーは、特に高度な制御が必要なクリーンルームに適しています。

5. 防火シャッター付きダンパー

特定の温度以上になると温度ヒューズが切れることで、開口部の羽根が自動的に閉じるタイプのダンパーです。空気の流れを遮断することが可能で、延焼防止や有毒ガスの充満を防ぐことが可能になります。

参考文献
https://www.hokuto-sk.co.jp/product/damper/
https://e-cleanbooth.jp/reference/damper.html
https://www.kankyo-eng.jp/recovery_room.html

バックプレーン

バックプレーンとは

バックプレーン (英: backplane) とは、コンピュータや通信機器などの電子機器で、基板やカードを接続するための配線基板のことです。

一般的には機器の背面に取り付けられ、差し込まれたカードやモジュールに電源や信号を伝送します。また、バックプレーンは基板を固定するためのブラケットや電源を供給するためのソケット、信号を伝送するためのコネクタなどで構成されています。

バックプレーンは、電子機器の性能を向上させるために欠かせないものです。基板をサポートして、基板の振動や熱の影響を軽減し、信頼性を向上させます。

バックプレーンの使用用途

1. サーバーとネットワーク機器

バックプレーンは、サーバーやネットワークスイッチ、ルーターなどのハードウェアで利用されます。これらの機器では、多数のコンポーネントが高速で並行してデータを処理する必要があります。バックプレーンは、これらのコンポーネント間でデータを効率的に転送し、システムのパフォーマンスを最大化します。

2. データストレージシステム

大量のデータを高速に処理し、保存するためのデータストレージシステムではバックプレーンの使用が一般的です。これにはRAIDアレイやSAN (ストレージエリアネットワーク) などが含まれます。

3. 産業用コンピュータ

製造業、エネルギー、交通などの産業で使用されるコンピュータシステムでも、バックプレーンは一般的です。これらのシステムでは、耐久性と信頼性が重要であり、バックプレーンはこれらの要件を満たすために使用されます。

4. テスト機器

テスト機器は、電子機器の性能や品質を測定するための機器です。テスト機器では、バックプレーンを用いて複数のテストカードを接続し、多種多様な測定項目や条件に対応できるようにします。

バックプレーンの原理

バックプレーンの基本的な仕組みを理解するためには、それがどのようにハードウェアコンポーネントを接続し、データ転送を行うのかを理解することが重要です。

1. コンポーネントの接続

バックプレーンは、基本的には1つまたは複数のプリント基板で構成されています。これらの基板には、コンピュータシステムの各コンポーネントを接続するためのスロットやポートが備えられています。

これらのスロットは、特定のタイプのコンポーネント (例えば、CPU、RAM、ハードドライブなど) に対応しているのが基本です。コンポーネントはこれらのスロットに物理的に接続され、バックプレーンを通じて他のコンポーネントと通信します。

2. データ転送

バックプレーンの主要な機能の1つは、コンポーネント間のデータ転送が可能です。これは、基板に配置された電子回路を通じて行われます。各コンポーネントは、これらの回路を使用してデータを送受信します。

バックプレーンの設計とコンポーネントの種類によっては、データは平行 (同時に複数のビットが転送される) またはシリアル (1度に1ビットずつ転送される) で転送されます。

3. プラグアンドプレイ

バックプレーンは、コンポーネントの追加や交換を容易にするため、プラグアンドプレイの機能を提供しているものもあります。これは、新しいコンポーネントを物理的にスロットに接続するだけでシステムがその存在を自動的に認識し、適切に動作可能にします。

 

これらの要素が組み合わさることで、バックプレーンはシステムの各コンポーネントが効率的に連携し、データを共有できるようにします。バックプレーンは、コンピュータシステムのパフォーマンスと拡張性にとって重要な役割を果たします。

バックプレーンの種類

バックプレーンには、さまざまな規格や形態があります。

1. 規格による分類

バックプレーンの規格には、PICMG、ISA、PCIなどがあります。PICMGは「PCI Industrial Computer Manufacturers Group」が策定した規格で、PCIやPCI Expressなどをサポートしています。ISAは「Industry Standard Architecture」規格で、初期のIBM PCなどに採用されたものです。

PCIは「Peripheral Component Interconnect」規格で、高速なデータ転送が可能なものです。
これらの規格は互換性がある場合もありますが、必ずしもそうではありません。バックプレーンと接続するカードやボードは同じ規格に対応している必要があります。

2. 形態による分類

バックプレーンの形態には、アクティブとパッシブがあります。アクティブ・バックプレーンは、スロット間の信号をバッファリングするチップを搭載しており、複雑なシステムに対応可能です。

パッシブ・バックプレーンは、回路を駆動するような機能を持たず、カードやボード側に調停回路を持ちます。アクティブ・バックプレーンはパッシブ・バックプレーンよりも故障の可能性が高くなります。

参考文献
https://contents.zaikostore.com/semiconductor/3912/

耐雷トランス

耐雷トランスとは

耐雷トランスとは落雷による大電流の流入 (雷サージ) や送電線事故などによる異常電圧から精密電気機器や人体を守るための装置です。

同じく異常電圧から機器を守るものとして、避雷器 (SPD) と呼ばれるものもあります。避雷器は雷サージを地面に放電して電気機器を保護しますが、耐雷トランスは雷サージを地面に放電しつつトランスで絶縁して機器を雷サージから保護します。

耐雷トランスの使用用途

耐雷トランスは様々な場所で使用されています。以下が使用用途の一例です。

  • 無線中継所や変電所などで使用される電源装置
  • コンピュータおよびテレメータの電源
  • 監視カメラなどのセキュリティシステム
  • 鉄道や航空機および道路などの交通通信機器や制御機器

雷多発地区などでは、特に精密機器を異常電圧から保護するために重要な機器です。耐雷トランスは電源線と被保護装置の間に設置され、保護対象機器を異常電圧から保護します。

耐雷トランスの原理

耐雷トランスには大きく分けて「絶縁型」と「接地分離型」の2種類が存在し、それぞれ原理が異なります。

1. 絶縁型耐雷トランス

絶縁型耐雷トランスは、電源側から進入した雷サージによる異常電圧を避雷器によって大地へ逃がしつつ、対地間の電圧差を絶縁トランスによって低減させます。

2. 接地分離型耐雷トランス

接地分離型耐雷トランスは、複数の避雷器によって線間および対地間の雷サージ流入を低減しつつ、絶縁トランスによって高絶縁化して更に機器を保護します。なお、接地分離型はサージシェルターとも呼ばれます。

いずれも被保護装置側は雷サージに対して耐電トランスで完全に絶縁され、雷サージが流入しません。耐雷トランスによってサージ移行率は100分の1から10,000分の1にまで低減されるので、避雷器のみの設置よりも効果的です。また、異常電圧への耐電圧は数十キロボルトと非常に高く、優れた保護機能を備えています。

耐雷トランスのその他情報

1. 耐雷トランスと避雷器の違い

耐雷トランスと避雷器は、どちらも雷サージから装置を保護するための機器です。ただし、耐雷トランスと避雷器には構造上の違いがあります。

避雷器は、保護対象装置と並列接続され、避雷器自体は接地されます。通常時に避雷器は絶縁物として動作しますが、雷などのサージ電圧が発生した際に、避雷器が導電性となって大地へとサージ電圧を逃がす構造です。避雷器の材料としては、ZnO (酸化亜鉛) がよく使用されます。

耐雷トランスも同様に、電源側をZnOによって接地します。ただし、耐雷トランスは変圧器によって1次側と2次側を絶縁する構造です。したがって、制限電圧を著しく低減することが可能です。上記構造の違いから、雷サージに対しては耐雷トランスの方が優れています。

2. 耐雷トランスのデメリット

耐雷トランスは雷保護の観点から、避雷器よりも優れています。ただし、以下3点ほどのデメリットも存在します。

  • 避雷器と比較して部品点数が増加する
    部品点数が増加すると、故障のリスクが増加するのみならず、メンテナンスコストも増加する傾向にあります。設置スペースも大きくなり、導入コストもかかります。
  • 変圧器によって上位力率が低下する
    変圧器は誘導性負荷のため、無効電流が大きくなります。対策として電力用コンデンサを並列接続することは可能ですが、やはりコストが増加します。
  • 接地極を負荷と別にとる必要がある
    大抵の負荷には筐体等に接地をとらなければなりませんが、耐雷トランスは雷サージ用に更に1つ接地極が必要です。雷サージ用接地極と負荷側接地極を一緒にすると、雷サージ時に負荷電線と対地間の電位も上昇してしまいます。接地極を分けると、接地埋設作業が増える上に、系統も煩雑になるというデメリットがあります。

上記メリットとデメリットを踏まえて、避雷器を使用するか、耐雷トランスを使用するかを決定します。

参考文献
https://www.fujielectric.co.jp/technica/faq/thunder/03.html
https://www.m-system.co.jp/mstoday/backnum/2013/01/mame/index.html
https://www.otowadenki.co.jp/basic5/