CNC旋盤

CNC旋盤とは

CNC旋盤

 

CNC旋盤とは、汎用(普通)旋盤にコンピューター制御装置を取り付け、自動制御で切削加工を可能にする加工装置です。

CNC旋盤のCNCとは、Computerized Numerical Control(コンピューター数値制御)の省略で、コンピューター制御で旋盤加工を行うことをあらわします。

ATC(Automatic Tool Changer=自動工具交換)装置を取り付け又は、オプションで選ぶことによりツール交換も自動的に行われます。

CNC旋盤の使用用途

CNC旋盤は、無人加工機とも呼ばれ、大量に必要な部品などの同形状の物を加工する際に使用されます。

主に棒状加工(バーワーク)、素形材加工(チャックワーク)の加工に使用されます。

代表的な加工方法は下記になります。

自動車の部品や、航空機などの部品などの精密な部品、調理器具や工具など身近な物まで幅広く、さまざまな部品の加工に使用されています。

CNC旋盤の原理

ここではCNC旋盤の原理について説明します。

CNC旋盤はコンピューター制御のため、汎用(普通)旋盤のように手動での使用は想定されていません。
そのため、適切に加工動作をさせるには、作成する部品の図面内容からプログラムを作成し、
加工内容や工具の選択などさまざまな定義や指令を行う必要があります。
指令コマンドには工具の移動や主軸の回転数などに関する指令などが含まれます。

また、CAMを用いることで自動加工機の加工プログラムを作成することも出来ます。
CAMは、自動加工機のデータを簡単に出力出来る支援ソフトとして利用できます。
主に三次元CADで設計した形状に対して設定を行い、工具の可動情報を作成すれば、プログラムを生成することが出来ます。

機構の構成については、背面主軸、送り機構、刃物台、ガイドブッシュ装置、主軸(チャック、主軸台)、操作盤、素材供給装置、ベッド、により構成されています。

CNC旋盤とマシニングセンタ

マシニングセンタとは、加工物を台座にセットし、刃物を回転させて切削加工を行う加工機です。また、NC旋盤と共に数値制御を行う事ができますが加工方法が異なります。

現在は、NC旋盤とマシニングセンタの特徴を兼ね備えた「複合機」も存在します。

参考文献
http://www.kikakurui.com/b0/B0106-1996-01.html
https://kikakurui.com/b0/B0181-1998-01.html
https://www.kousakukikai.tech/lathe/
https://cmj.citizen.co.jp/special/https://www.fact-cam.co.jp/document/column/archives/000282.html
http://www.toyoview.co.jp/sub3.html
https://www.nakamura-tome.co.jp/2020/11/18/article_00005/

卓上ボール盤

卓上ボール盤とは

卓上ボール盤

卓上ボール盤とは、卓上に設置される小型のボール盤です。

モーターで回転するスピンドルに取り付けられたドリルビットを使用して、材料に対して垂直に穴をあけます。卓上ボール盤は手作業での穴あけのために使用され、材料はテーブルに固定されます。

持ち運びやすく、また小型のためスペースをとらずに卓上に置いて作業できるため、作業効率の向上に効果的です。ただし、材料に応じて適切なドリルビットの選択したり、適切な送り速度を設定したりする必要があります。

卓上ボール盤の使用用途

以下は卓上ボール盤の代表的な使用用途の一部です。

  • 穴あけ
    金属製の部品や家具の部品などの穴あけ、木材やプラスチックの穴あけ
  • タップ (ネジ穴製作)
    金属板やアルミ板などへのネジ穴の製作
  • 溝彫りや表面仕上げ
    金属やプラスチックの部品の溝彫りや溝の拡張、切削や研磨による部品の表面仕上げ
  • 金属やプラスチックの切削
    金属・ラスチックの棒・板の切削、材料の形状加工
  • 研磨や研削
    金属やプラスチックの部品の研磨や研削、砥石や研磨用具を使用した表面仕上げ
  • 電子部品などの微細な加工
    基板への穴あけ、電子部品の実装や取り外しのための穴あけ

卓上ボール盤の原理

卓上ボール盤での穴をあける過程は以下のようになります。

1. 材料の固定

材料を、卓上ボール盤のテーブル上の正確な位置に置きます。クランプやバイスなどを使用して材料をしっかりと固定し、ずれや動きを最小限に抑えます。材料が固定されていないと、加工精度や安全性に問題が生じる可能性があり危険です。

2. ドリルビットの選択

穴のサイズや材料に合わせて適切なドリルビットを選択します。ドリルビットは異なる直径やタイプがあり、加工する材料に適したものを選びます。

3. ドリルビットの取り付け

選んだドリルビットをボール盤のドリルチャックに取り付けます。取り付け時には適切に締め付け、ドリルビットが安全に固定されていることを確認する必要があります。

4. 加工条件の設定

加工する材料の種類とドリルビットのサイズに応じて、適切な回転速度と送り速度を設定します。ボール盤には一般に回転速度と送り速度を調整するためのダイヤルやレバーが備わっています。

5. 穴あけの開始

加工条件を設定したら、スイッチやレバーを操作してモーターをオンにし、ドリルビットを回転させます。ドリルビットの先端を材料の表面に軽く当てた後、少しずつ圧力をかけながらドリルビットを下げていきます。

6. 穴の加工

ドリルビットを少しずつ進めながら穴を加工し、一定の進行深さに達したらドリルビットを引き上げて切りくずを取り除きます。これにより加工粉や切りくずの堆積を防ぎ、正確な穴あけが可能です。

7. 穴あけの終了

穴の加工が完了したらボール盤のモーターを停止させ、ドリルビットをゆっくりと引き上げながら材料から取り外します。ドリルビットを引き上げる際には、ボール盤の移動ハンドルやクランクを使用してドリルビットを正確な位置まで移動させます。

8. 材料の取り外し

穴あけが完了した材料をボール盤から取り外します。クランプやバイスを緩めて材料を慎重に取り扱いながら取り外します。材料を取り外す際には、怪我や破損を防ぐために十分な注意が必要です。

卓上ボール盤の構造

卓上ボール盤の基本構造は,以下ような要素で構成されています。

1. ベース

卓上ボール盤のベースは、機械の基盤となる部分です。ベースは一般に鋳鉄や鋼材で作られており、ボール盤の全体の安定性を確保するための部品です。

2. スピンドル

スピンドルはボール盤の中心軸であり、ドリルビットを保持して回転させます。スピンドルはモーターに接続され、回転力を伝えます。また、上下に動かせる機構 (クイル) を備えており、ドリルビットの位置調整が可能です。

3. ドリルチャック

ドリルチャックはスピンドルに取り付けられ、ドリルビットを固定します。ドリルチャックは一般的にキー付きチャックやキーレスチャックの形式があり、適切なサイズのドリルビットを締め付けて固定します。

4. クイル

クイルはスピンドルの上下動を制御する部品であり、ドリルビットの垂直方向の移動が可能です。クイルには手動式と電動式の2つのタイプがあります。手動式の場合はクイルを回転させながら上下に動かしてドリルビットの深さを調整し、電動式の場合はモーターによってクイルが自動的に上下に動きます。

5. テーブル

テーブルは材料を置くための平らな面であり、ドリルビットの下に配置されます。テーブルは上下左右に動かせるため、材料の位置を正確に調整可能です。クランプやバイスなどを使用して材料をテーブル上に固定します。

6. モーター

モーターは卓上ボール盤の動力源であり、スピンドルを回転させます。一般的には電気モーターが使用され、モーターの性能によって回転速度やトルクが決まり、加工作業の効率や精度に影響を与えます。

卓上ボール盤のその他情報

1. 卓上ボール盤の長所

卓上ボール盤は、小型であるため作業スペースの制約がある場所でも使用可能で、軽量なため移動や保管も容易です。また、初心者でも取り扱いやすいことも長所であり、操作方法が比較的簡単で基本的な穴あけ加工を行うのに適しています。作業台の上に設置されるため、作業物を手軽に固定できることも長所の1つです。

さらに、通常卓上ボール盤には、様々なサイズのドリルビットに対応できるドリルチャックが備わっていることが多く、異なるサイズの穴をあけられます。ドリルビットを材料や加工目的に合わせて選択することで、卓上ボール盤は、木材やプラスチック、金属など広範囲の材料に対応できます。

2. 卓上ボール盤の短所

卓上ボール盤は一般的に小型であるため、大きな作業物を加工できません。作業スペースが制限されているので、大きな材料や長い作業物を固定するのは難しく、加工対象物の寸法に制限があります。

主に軽作業や精密作業に適していますが、大量の穴加工や重い材料の加工には向いていません。長時間連続して使用する場合や高負荷の作業には制限があります。限られた加工範囲内での作業に特化しているため、複雑な形状や角度での加工が必要な場合には、他の種類の工作機械が必要になることがあります。

一部の卓上ボール盤は、モーターの出力が限られています。高速回転や高負荷の加工には制約があり、速度やパワーが必要な場合には、より強力な工作機械を選択しなければなりません。

3. 卓上ボール盤の稼働方式

手動式
手動式は、オペレーターがスピンドルの上下移動やテーブルの移動を手で行いながら加工精度を手動で調整する必要があるタイプです。オペレーターは、加工する材料のサイズや形状に応じて、クイルとテーブルの高さを調整できます。

手動式は、加工物に合わせて調整できる柔軟性が高い一方で、加工に時間がかかって生産性が低くなることがあります。

自動式
自動式は、クイルとテーブルが自動で操作されるため、高精度な加工が可能なタイプです。オペレーターは材料をセットするだけで、機械によって自動的に加工が行われます。自動式は高度な制御技術を必要とするため高価です。自動式は大量生産に適しており、高精度の加工が必要な場合に最適です。

トルクヒンジ

トルクヒンジとは

トルクヒンジ

トルクヒンジとは、扉の開閉などで使用されるヒンジの1種です。

ヒンジ部分に機構が設けられており、単純な扉の開閉軸としての機能以外にも、開閉を補助する付加機能を持っています。例えば、大きくて重たい蓋を閉める際に、蓋の重さで勢いよく蓋が閉まってしまうのを防ぐ機能です。

このような機能は、ヒンジとは別の部品でつけることもできますが、機能をヒンジに組み込むことで、設計上の手間やスペースを有効に活用できます。また、別部品が付かないため、デザインがすっきりするなどの効果も期待できます。

トルクヒンジの使用用途

トルクヒンジは、さまざまな機械のカバー類、工作機械や計測機器などのモニターや照明の角度調整に使用されています。住宅建材のドアにも用いられますが、これはドアがゆっくりと開閉することによって、高級感を演出できるからです。

トルクヒンジの原理

トルクヒンジには、いくつかの構造があります。代表的な構造は、以下の3つです。

1. ばね付きタイプ

ばね付きタイプのトルクヒンジが使われるのは、重い扉を少ない力で開閉させたい場合や扉が開きっぱなしにならないように、強制的に扉を閉める場合などです。

ばね付きタイプの原理は、ヒンジの中心軸周りにねじりコイルバネが挿入されており、常に片側に力が加わるようになっています。開く方向に取り付けることで、重たい扉を開くときの補助となります。

反対に、閉じる方向に取り付けると、開けた扉を自動で閉めることが可能です。

2. ダンパー付きタイプ

ダンパー付きタイプのトルクヒンジは、扉をゆっくりと開閉させたい場合に使用します。扉の開閉する際に、誤って指を挟まないようにするのが目的です。

ダンパー付きタイプのトルクヒンジには、ヒンジの中心にロータリーダンパーなどの減衰力を得られる機構が設けられています。ただし、あくまでダンパーなので、機能は動作速度を制限するのみです。

組み込まれるダンパーは両方向に効くものと、片方向に効くものがあります。両方向に効くものは、開けるときにもダンパーが効いてしまうので、片方向に効くものが使いやすいです。

3. トルク調整式タイプ

トルク調整式タイプのトルクヒンジは、扉の位置や液晶ディスプレイ、照明などの角度を固定するために使われます。ヒンジの中心にディスクタイプのトルクリミッタのような機構を備えており、扉にトルクリミッタよりも大きな力が加わらない限り、扉の角度は変化しません。

必要になるトルクの大きさは、扉の重さと用途によって変わるので、多くのものはトルクの調整機構が設けられています。調整値によってはダンパータイプと同じように、動作速度を制限する働きもあります。

ただし、あくまでブレーキのような構造のため、扉の開閉途中で止まってしまい、速度制限の用途には向いていません。

トルクヒンジのその他情報

1. トルクヒンジの長所

トルクヒンジの長所は、主に以下の3つがあります。

作業効率が向上する
例えば、自動車のトランクやハッチバックのように収納箱の上面が蓋になっている場合、扉を手で支えておかなくても蓋が開いた状態を保つことができます。

デザイン性が高い
扉の動きを止めるためのステーが不要なので、すっきりとしたデザインになります。また、ステーによって収納スペースなどが削減されることもありません。

安全性が高くなる
重たい蓋が急に閉まり、手指などが挟まれてしまうような事故を防ぐことができます。

2. トルクヒンジの付加機能

トルクヒンジには扉などをゆっくり動作させるだけでなく、以下のような付加機能もあります。

ワンウェイトルクヒンジ
例えば持ち上げて開く扉の場合、扉を閉める方向にだけトルクが発生し、持ち上げる動作にはトルクが発生しません。

調整機能付きトルクヒンジ
調整機能付きトルクヒンジは、扉の重さや操作感に応じて、扉に発生するトルクの大きさを調整できます。

ディテントトルクヒンジ
ディテントトルクヒンジは、扉をぴったり閉めたい場合に有効です。常にトルクが発生するとスプリングバックによって、扉の締まり際に扉が開く方向にトルクが発生してしまいます。 (スプリングバック)

ディテントトルクヒンジなら、扉の締まり際にトルクが解放されて、スプリングバックが生じません。

参考文献
https://www.takigen.co.jp/products/list/12090

ダイヤモンドパウダー

ダイヤモンドパウダーとはダイヤモンドパウダー

ダイヤモンドパウダーとは、人工的に作られたナノメートルもしくはマイクロメートルサイズのダイヤモンド結晶のことです。

ダイヤモンドパウダーは、主に研磨剤として利用されています。

ダイヤモンドパウダーの使用用途

ダイヤモンドパウダーの主な使用用途は、そのまま砥粒として使用されるケースと、カッター刃先に埋め込んでダイヤモンドカッター・ブレイドおよびソーワイヤーとして使用されるケースの2通りです。ダイヤモンドパウダー砥粒、ダイヤモンドカッター・ブレイドおよびソーワイヤーも基本的には、工業用および現場作業向けの製品です。

しかしながら、近年では比較的安価なダイヤモンドカッターが流通しており、日曜大工 (DIY) で使用されるようになってきました。砥粒として利用される場合には、遊離砥粒 (ラッピング) でよく使用されています。遊離砥粒とは、工具 (ラップとも言う) と試料の間に研磨剤を入れて擦り合せ、試料表面の凸部を微量に取り除きながら滑らかな表面を得る技術です。ポリッシングとも称されます。

ダイヤモンドパウダーの原理

ダイヤモンドパウダーには大別して「単結晶ダイヤモンドパウダー」と「多結晶ダイヤモンドパウダー」があります。順番に解説します。

1. 単結晶ダイヤモンドパウダー

単結晶ダイヤモンドパウダーは、高温高圧条件下にて合成される人工ダイヤモンドを含有したダイヤモンドパウダーです。単結晶ダイヤモンドパウダーは、非常に強固な物質であることがメリットです。一方、天然ダイヤモンドと同様に、劈開性 (特定方向への割れやすさ) を有することがデメリットとなります。

2. 多結晶ダイヤモンドパウダー

多結晶ダイヤモンドパウダーは、ナノサイズの微小ダイヤモンドが集合体となり、強固に結合した塊状構造をもちます。単結晶のように劈開性がなく、無数の細かい刃を持つため、層状構造の試料に有効な研磨剤です。

ダイヤモンドパウダーのその他情報

1. ダイヤモンドパウダーの製造方法

ダイヤモンドパウダーは人工的に製造されるもので、その製造方法にはいくつか方法があります。製造方法としては、単結晶が得られる「高圧・静的合成法」と多結晶を得られる「衝撃圧縮法」が代表的です。それぞれ説明します。

高圧・静的合成法
高圧・静的合成法は、自然界のダイヤモンドの生成方法を人工的に再現した方法で、単結晶ダイヤの製造方法です。まずは、黒鉛とHBN (六方晶窒化硼素) および溶媒金属などよりなる原料を容器に詰め、これに油圧プレスなどで加圧した上でさらに高温で焼成します。

そして、焼成された合成物の中から、単結晶ダイヤとCBN (立方晶窒化ホウ素) を取り出し、ダイヤのみがダイヤモンドパウダーとして製品化されます。この装置は、原理は非常に単純ですが、加圧と加熱が必要で、装置が大掛かりになることがデメリットです。

衝撃圧縮法
衝撃圧縮法は、多結晶ダイヤモンドを製造する方法です。まずは、高圧・静的合成法と同様に、黒鉛とHBN (六方晶窒化硼素) および溶媒金属などよりなる原料を容器に詰め、密閉した状態とします。これを超高温で加熱したうえ、爆薬による爆発で瞬間的 (数マイクロ秒) に加圧することが特徴です。

この加熱加圧により生成される合成物の中からダイヤモンドを回収し、ダイヤモンドパウダーとします。この手法で生成されたダイヤモンドパウダーは数十~数千ナノメートルレベルの非常に小さい粒子ですが、粒子が小さいことにより、砥粒として非常に優秀な性能を持ちます。

しかし、どちらの手法も製造方法としては改善の余地があると考えられており、現在も新しい製造方法が研究されています。

2. ダイヤモンドパウダーの販売形態

ダイヤモンドパウダーは様々な形態で販売されています。砥粒として使うにあたり、ダイヤモンドパウダーをそのまま砥粒として使用できるよう販売する場合もあれば、砥石に加工している場合もあります。砥石は、ダイヤモンドパウダー及びボディとなる主原料 (樹脂や金属) とダイヤの結合剤を均一に混ぜ合わせた上で、成型・焼成・仕上げ (磨き) て製造されています。

この他、美容関係でのネイル用として、フェイスパウダーや香水や保湿剤に含有させる用途や、手作りアクセサリ用途などにそのままの状態で販売されています。

参考文献
https://www.bildy.jp/mag/diamond_blade/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rpsj1986/45/4/45_4_285/_pdf/-char/en
https://patentimages.storage.googleapis.com/4b/37/c7/15f86d29cd6f31/JP2010254506A.pdf
https://www.adamas-japan.co.jp/publics/index/60/
https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/kakougenba_0402/
https://www.technorise.ne.jp/products/diamondpowder.php

転造盤

転造盤とは

転造盤

転造盤 (英: rolling machine) とは、素材に強い力を加えることにより、盛り上げて塑性加工する工作機械です。

金属には、ある程度以上の力を加えると元の形に戻らない塑性という性質があります。その性質を活かした加工方法が塑性加工です。転造盤は、ダイスと呼ばれる工具を回転している被加工物に強く押し当てて、その形状を転写し必要な形に塑性変形させます。

ねじなどの成形加工に使用される場合が多いです。比較される加工方法として、被加工物を切って加工する切削加工が挙げられます。転造加工は切削加工と異なり、切りくずが出なく、材料の無駄が出ません。

また、加工時間が短く工具寿命も長いメリットがあり、切削と比べて生産性が高い効率的な加工法です。さらに、素材のファイバーが切れることなくつながっているため、強度を上げられます。

転造盤の使用用途

転造盤は、ねじや歯車インボリュートスプライン・セレーションの成形に使用されます。ダイスは、製品の仕様や形状に合わせて用意する必要があるため、初期投資が必要です。

また、品種の切り替えのために行う、段取り時間が長くなりがちです。したがって、少量多種の生産には不向きと言えます。

一度セットアップを行えば、工具寿命が長く製品精度も安定するため、小種多量の生産に優位になります。また、加工時間も切削加工と比較して短くすることが可能です。

転造盤の原理

転造盤による加工は、丸ダイス転造、平ダイス転造、プラネタリー転造に大別されます。

1. 丸ダイス転造

丸ダイス転造は、同じ速度で回転する2つもしくは3つの丸いダイスに、被加工物を挟み込むことで成形する加工方法です。ダイスを被加工物に油圧などの力で押し付けることで成形する原理は変わりません。

ダイス間の距離を変えることで、被加工物の寸法を任意に調整することが可能です。また、加工の応用性に優れているため、ねじ転造以外の加工にも広く使われます。一方、加工する素材の供給と排出が同一場所になるので、生産性は他の転造加工法よりも劣ります。

丸ダイス転造には、その加工方法によって3種類に分けられます。ダイス間が開いている状態で被加工物を挿入し、その後ダイス間をゆっくりと閉じていくことで成形する「寄せ転造」、ダイス間が閉じた状態で被加工物を油圧などで押し込んでいく「押し込み転造」、及び閉じたダイス間を通り抜けていくことで成形する「通し転造」です。

通し転造は、ねじやウォーム歯車のようにリードを有する被加工物に使われます。製品の形状を考慮して、最適な加工方法を選定することが重要です。

2. 平ダイス転造

平ダイス転造は、一対の平ダイスで被加工物を挟み込み、被加工物が回転するように平ダイスを平行に動かすことで成形する加工方法です。

生産性の高い加工方法であり、汎用ねじなどの大量生産に向いています。

3. プラネタリ転造

プラネタリ転造は、固定されたダイスの内側と回転する丸ダイスとの間に、加工物を送り込んで加工する方法です。

ダイス間の距離の変更ができないので、加工の応用性は少ない短所があります。しかし、生産性は高く、汎用ねじの大量生産の現場でよく用いられます。

転造盤のその他情報

1. 転造盤の自動化

転造盤は、ねじ以外にもさまざまな部品加工に応用可能な加工装置です。さらに、高度な転造加工にも対応可能な数値制御で自動化された「転造機」も存在します。その背景には材料の無駄が出やすい切削加工から、歩留まりの良い塑性加工へと部品加工をシフトさせたい産業界の意向があります。

コンピューター制御型の転造機は、左右の主軸台によって、ラムに設置された2つのダイスが芯間距離を保ったまま、荷重変動を吸収しつつ加工を進めることができるため、従来の転造盤よりも高い製品精度の実現が可能です。

さらに、工具軸の制御軸数の増加に対応できる点が注目点です。例えば、7軸のコンピューター制御転造機の場合、主軸回転、傾斜角、主軸間距離などそれぞれが独立制御可能なため、一般的な丸ダイス転造で用いられる寄せ転造や通し転造よりも、複雑で高精度な動きを難なく行えます。

2. 進化した転造盤のダイス制御

転造盤の自動化によって、レシプロ転造や複数転造などの、従来の丸ダイス転造を発展させた加工方法が生まれました。

レシプロ転造とは、同一方向に回転するダイスが同期を取りつつ、正転と逆転を交互に繰り返しながら加工を進める転造のことです。被加工物の歩みに伴う移動量を抑制し、非加工部への接触を回避できるメリットがあるため、繰り返し加工が必要となる加工山の高い品物の製造も容易となります。

複数転造とは、一度の処理で複数箇所に異なるパターンを転造できる加工方法です。サーボ制御されたスライド台によって被加工物を正確な位置に送り込むことで実現しています。従来の転造盤では2台以上必要となる複数箇所への加工が、複数転造では1台で済みます。

参考文献
https://www.nisseiweb.co.jp
https://www.nachi-fujikoshi.co.jp/kos/pre/index.htm
https://www.tsugami.co.jp/product/rolling
https://www.nisseiweb.co.jp/formrolling.php?page=fmnissei
https://www.nisseiweb.co.jp/pdf/tenzo_thesis.pdf

ポータブルpH計

ポータブルpH計とは

ポータブルPH計

ポータブルpH計は、pH計の中でも特に、持ち運びに特化したpH計です。基本的には、実験室の据え置き用のpH測定器と測定のメカニズムに違いはありません。ガラス電極を用いてpHを測定します。電極と、pH計本体がケーブルで繋がっています。pH計本体は、片手で持てるサイズとなっており、据え置き用のpH測定器と違い、電極を固定するためのスタンドはありません。

ポータブルpH計の使用用途

ポータブルpH計は、フィールドでの水質測定等、野外での測定に耐えうるように設計されていますが、もちろん、実験室でも利用可能です。様々な利用条件を考慮して、設計されており堅牢です。防水・防塵加工がされており、落下衝撃への耐性もあります。また、持ち運びに便利なキャリングケースとともに販売されている場合が多いです。人間工学的に基づいて設計されており、片手に収まるサイズなので、生産ラインなどの実務の現場でも利用できます。

ポータブルpH計の原理

pHは、水素イオン濃度を表す指標です。ポータブルpH計で広く利用されている、ガラス電極によるpHの測定方法について説明します。pHの測定に使うガラス電極は、水素イオンに反応するガラス膜で作られています。この電極を、試料に入れると、ガラス膜の表面で水素イオン濃度に対応した起電力が生まれます。この起電力を単独で取り出すことは理論上できません。ですので、基準となる電極(比較電極)とガラス電極の間に電圧計を挟み、この電位差を電圧計に表示させます。試料を測定する前に、pH濃度がわかっている液体(pH標準液)を測定し、起電力との検量線を作成することで、pHを知ることができます。ただし、pHと電位差の関係は温度によって微妙に変化します。電極の内部に温度素子が内蔵されており、電極の変化を補正します。これによってpH標準液や試料によって温度が異なっていた場合でも、安定してpHを測ることができます(これを温度補償と呼びます)。pH標準液や試料の温度を、恒温槽を用いて均一にする、という方法もありますが、フィールドでの使用を想定している、ポータブルpH計にとって、温度補償は重要な機能であるといえます。

参考文献
https://www.tactec.co.jp/download/hamilton_dl/hamilton_pH_info_1.pdf
https://www.toadkk.co.jp/support/useful/index.html
https://www.horiba.com/jp/application/material-property-characterization/water-analysis/water-quality-electrochemistry-instrumentation/the-story-of-ph-and-water-quality/the-basis-of-ph/measuring-ph-using-a-glass-electrode/
https://www.horiba.com/jp/ja/cafe/06/

プラズマCVD装置

プラズマCVD装置とは

プラズマCVD装置とは、化学気相成長法の一種を行う装置です。

プラズマCVDはPlasma-Enhanced Chemical Vapor Depositionの略で、原料ガスを低温プラズマ状態 (陽イオンと電子に電離したグロー放電) にし、活性なイオンやラジカルを生成して基盤上で化学反応を起こし、堆積させて薄膜を形成します。

プラズマCVD装置の使用用途

プラズマCVD技術は、切削工具の強化膜 (窒化チタン、窒化炭素、DLC (英: Diamond Like Carbon) ) 、半導体の絶縁膜・保護膜・配線・電極材料 (窒化シリコン、酸化シリコン、アルミニウム、タングステン、多結晶シリコン、化合物半導体など) などに使われています。経済・産業発展の鍵を握るエネルギーの制御や供給を行うための高性能パワーデバイスへの活用も急速に広がっています。

プラズマCVD装置への供給ガスには通常、水素、窒素、アルゴンアンモニアなどのキャリアガスに、SiH4 (シラン) 、WF6 (六フッ化タングステン) などの原料ガスを混入させたものを用いる場合が多いです。

1.  酸化物

二酸化ケイ素 (SiO2) はシリコンの酸化物です。電気絶縁性と熱安定性に優れており、半導体デバイス層間絶縁膜で使われています。

半導体の薄膜化により、電流が予定していない箇所から漏れ出してしまうリーク電流が発生しやすくなります。SiO2があることで、リーク電流の防止につながります。

2. 窒化物

窒化ケイ素 (Si3N4) はシリコンの窒化物です。強度や熱伝導率に優れており、熱量が多く発生するパワーデバイス向けの基板材料に用いられています。

窒素、アンモニアはSiH4とともに窒化物を形成する際に用いられているため、原料ガスの役割も持っています。一般的な半導体はメモリなど、演算や記憶に関する働きをします。一方パワーデバイスはダイオードのように、ためのものです。

3. 炭化物

炭化ケイ素 (SiC) はGaN (窒化ガリウム、ガン) 、AlGaNなどとともに化合物半導体の仲間でシリコンの炭化物です。Si3N4同様、強度や熱伝導率に優れていることから、SiのIGBTに代わってパワーデバイス向けで使われています。

シリコン化合物に比べて電力損失が少なく、装置の小型化につながります。

4. 金属・金属化合物

トランジスタのゲートはゲート酸化膜 (熱酸化で形成します) とゲート電極 (多くは多結晶シリコン) から形成されます。ゲート電極、ソース・ドレインのコンタクトに使われるタングステンプラグはプラズマCVDで形成されます。 (図3参照)

プラズマCVD装置の原理

図1. プラズマCVD装置の基本構成

原料ガスは目的に応じて10-4~100Pa程度の幅のある減圧範囲から目的に応じた条件を選びます。最も一般的にプラズマ励起に用いられている電源周波数は13.56 MHz (RF:Radio Frequency) であり、放電形式は図1に示すように平行平板電極を用いた容量結合型になります。

並行平板の一方をプロセスガスを供給するシャワーヘッドに用いたり、一方にヒータを入れて温度調節したりする場合もあります。電源周波数、並行平板型以外の電極構造、原料ガスの組成、吐出量、温度など、コントロール可能なパラメータは多いです。そのため、無機物質から有機物質まで、様々な機能性を持たせた各種の薄膜の成膜が可能です。

プラズマCVD装置のその他情報

1. 半導体デバイスの構造と製法

図2. 半導体デバイス (メモリ) の基本構造

プラズマCDV装置は半導体デバイスの製造に多用されますが、例えばメモリデバイスの場合は、図2に示すように基板 (ウエハー) 上に形成されたMOSFET (Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor) の上に多層の複雑な配線層が形成され、層間絶縁膜で分離されています。

MOSFETのゲート電極、配線層、層間絶縁膜などの形成にプラズマCVD装置が主として用いられますが、成膜後に細かいパターン形成が必要です。パターン形成には、基本的には印刷技術が用いられ、図3に示すように以下の手順の繰り返しになります。

図3. 半導体デバイスの基本成膜プロセス

    1. 下地のパターンの上に、新たに形成するパターンの材料 (多結晶シリコン、Al、 C、W、 SiO2、Si3N4など) を均一にCVDで成膜します。
    2. 1の成膜の上に、 (ポジまたはネガ) フォトレジスト膜を形成します。ポジ膜は励起光のよって、溶剤に溶けにくくなり、ネガ膜は溶けやすくなります。
    3. レジストを溶かし、成膜の上に溶け残ったレジストのパターンを形成します。
    4. パターン上部からエッチング (剥離工程) をかけ、成膜を除去します。
    5. レジストを除去します。
    6. 成膜にパターンが形成されます。

以上のプロセスを繰り返すことによって、図2に示したような半導体デバイスが形成可能です。

2. 熱CDVと光CDV

与えるエネルギーによって、プラズマCVD、熱CVD、光CVDに分類できます。

  • 熱CVD
    供給ガスを高温で処理することにより、成分を熱分解・化学反応させ、成膜する方法です。基板がプラスチックなど、熱に弱いものには使えません
  • 光CVD
    レーザー光や、紫外線のエネルギーを用いて科分解・化学反応を活性化する方法

ファイバーレーザー

ファイバーレーザーとは

ファイバーレーザー

ファイバーレーザーとは、光ファイバーをレーザー媒体として使用する先進的な技術です。

希土類元素をドープされた光ファイバーをレーザー媒体として利用し、1030~1070nmの基本波長を発振させることが可能です。ファイバーレーザーは、発振形式として連続発振 (英: CW, Continuous Waves) とパルス発振の2種類が存在します。連続発振は高出力であるため主に溶接や切断加工の分野で活用されており、パルス発振は低出力であるためマーキングや微細加工に適しています。

ファイバーレーザーの特徴は、従来の固体レーザーやガスレーザーに比べて、効率が良く、コンパクトで、メンテナンスが容易であることです。また、光ファイバーを通してエネルギーが伝達されるので、光の損失が少なく、高い出力が得られるという利点があります。

ファイバーレーザーの使用用途

ファイバーレーザーの主な使用用途は溶接、切断、マーキング、溶着などです。アルミや銅、真鍮といった反射が強く加工しにくい素材も、ファイバーレーザーを使用することで効率的に加工可能です。

ファイバーレーザーはビーム品質が高く、レンズによって集光しやすい特性を持っているため、小さなスポット径を実現できます。また、パルス発振のファイバーレーザーはマーキングにも適しており、金属やプラスチック、樹脂などさまざまな素材に対応しています。

部品への印字やバーコード印字など、多岐にわたるマーキング方法に対応できるのも、ファイバーレーザーの大きな魅力の1つです。具体的には、深掘り、黒色マーキング、白色マーキング、表面層剥離など、さまざまなマーキング方法を利用できます。

ファイバーレーザーの原理

レーザーは共振器、レーザー媒体、励起源、共振ミラーで構成されていますが、レーザー媒体の違いによって大きく分類されます。媒体にガスを使用する気体レーザーと結晶を使用する固体レーザーの2種類です。

ファイバーレーザーはレーザー媒体に光ファイバーを使用しています。コアは希土類元素がドープされたダブルクラッドファイバーと呼ばれるものです。ファイバー内の内側を第一クラッド、外側を第二クラッドと呼び、LDで励起された光がこの2つの境界で反射します。

励起光が反射を繰り返すとコアに吸収され、そこで誘導放出が行われます。ファイバーの両端には共振ミラーが配置されており、十分に増幅された光が発振されます。ファイバーレーザーは発振方式によって、発振器の構造が異なります。

1. 連続発振 (CW) 

連続発振のファイバーレーザーは、励起LDから光がポンプコンバイナを通して共振器に届きます。ここでは共振ミラーでなく、ファイバーブラッググレーティング (英: Fiber Bragg Grating) が用いられているのが特徴です。

増幅された光は、出力ファイバーを通して発信されます。共振器内にミラーがないため光学調整の必要がなく、メンテナンスの時間もコストも抑えることができます。

2. パルス発振

パルス発振のファイバーレーザーの構造のひとつに、MOPA (英: Master Oscillator Power Amplifier) 型があります。これは種光 (シード光) のLDをパルスジェネレータでパルスにし、光ファイバーアンプを通して2段階で光を増幅させます。

MOPA型ではパルス幅や繰り返し周波数を調整できる特徴がありますが、これはパルスジェネレータで制御しているためです。

ファイバーレーザーのその他情報

1. ファイバーレーザーとCO2レーザーとの違い

ファイバーレーザーでは CO2レーザーのような放電準備と冷却用の電気コストが不要になります。一般の試算では、例えばCO2レーザーは スタンバイ時においても20KW以上の電力を消費します。ファイバーレーザーでは、5KW未満の消費電力と約25%未満の電力消費に抑えることが可能です。

CO2レーザーで必要とされるレーザーガスは、ファイバーレーザーには不要です。また、CO2レーザーの光学系は複雑であり、長年使用する際のメンテナンス費用はかさみます。ファイバーレーザーでは、ファイバーに光を集光させる原理から、高い変換効率によりレーザー加工時間の短縮が可能です。

CO2レーザーと比較して約5倍のスピードで切断できます。一方で、ファイバーレーザー加工機はまだまだ高価であり、初期投資費用は2倍程度は必要です。また、厚い金属を切断する場合、集光が良すぎるため切断面を綺麗に仕上げるのは困難です。

2. ファイバーレーザーでの溶接

近年は金属の溶接に、従来用いられてきたCO2レーザーからファイバーレーザーが着目されてきています。その理由はCO2レーザと比較してレーザーの発光効率が高いため、安価なランニングコストが期待されているからです。また、ファイバーに光を閉じ込めて集光させ、発光出力を大きくできるので、異種金属や厚い金属等を比較的短時間で溶接できることも理由として挙げられます。

ファイバーレーザーでは長年スパッタと呼ばれる溶接時の金属屑の飛散に悩まされてきましたが、それも近年のレーザー加工技術の向上で集光ビーム近傍にも出力の比較的弱いレーザ-照射を行う技術が開発されたおかげで、対策されつつあります。

3. ファイバーレーザーの価格

ファイバーレーザーの光源本体においては、一般的に数十万円の価格帯で取引されています。ただし、レーザー加工装置になると、仕様にも大きく依存しますが、数百万円以上になることも珍しくありません。

参考文献
https://www.fiberlabs.co.jp/tech-explan/about-fiber-laser/
https://uw-j.co.jp/fiber-laser-features/
https://www.keyence.co.jp/ss/products/marker/lasermarker/basics/fiber-laser.jsp
https://www.keyence.co.jp/ss/products/marker/lasermarker/processing/surface.jsp

パルスレーザー

パルスレーザーとは

パルスレーザー

パルスレーザーとは、レーザー光がパルスとして発振されるレーザーの総称です。

一定時間のパルスが周波数として、繰り返し発信されます。パルス発振ではないレーザーは連続発振 (英: Continuous Waves) と呼ばれます。

パルス幅の違いから、ナノ秒レーザー、ピコ秒レーザー、フェムト秒レーザーなどの区別も可能です。1パルスのエネルギー、パルス幅、周波数、波長などのパラメータからそれぞれ適した加工や研究に選定されます。

パルスレーザーの使用用途

パルスレーザーは身近なところから産業、理科学業界まで、幅広く使用されています。それぞれ波長、繰り返し周波数、パルス幅、パルスエネルギーはさまざまです。

以下は使用用途の一例になります。

  • ドリリング、スクライビング、ダイシングなどの微細加工
  • マーキングや表面変質
  • レーザー加工機発振器
  • 皮膚科でのシミやあざの除去
  • 医療用メス
  • LIDER
  • 非破壊検査光波測距儀
  • レーザー核融合
  • 顕微鏡
  • レーザーアブレーション
  • 超短パルスによるMEMSの加工

パルスレーザーの原理

パルスレーザーのパルスは、以下のいずれかの方法で生成しています。

1. 直接変調法

連続発振している光をシャッターのオンオフで区切る方法です。電流を制御することで、パルス形状を制御する方法もあります。パルス形状を正確に制御できることから、電流制御による方法が現在は主流です。

2. Qスイッチ (英: Q-Switching) 法

基底状態の粒子の数よりも、励起状態の粒子が多い状態である反転分布を利用しているのがQスイッチ法です。レーザーの共振器は、Q値と呼ばれる指数で性能が評価されます。

Q値は共振器内部で損失が低い程高い値を取る指数です。シャッター等を閉じて光を閉じ込めることで、共振器内部で光の強度を高めます。媒質の中で十分な反転分布が起こりエネルギーが溜まると、一気に光を放出させます。Qスイッチ法では大きなエネルギーのパルスが作り出せます。

3. モードロック (モード同期)

レーザー光のスペクトルはとても細かいスペクトルの集まりで、ほんのわずかに異なる波長が多数存在しています。これを縦モードと呼びます。この縦モードを同期させて発振させる方法が、モードロックです。この方法は短パルスを作り出すことができるため、フェムト秒レーザーやピコ秒レーザーに使用されています。

これらの他に、フラッシュランプ等を用いてレーザー媒体をパルス状に励起する方法などもあります。

パルスレーザーの種類

パルスレーザーは使用する共振器によって次の種類に分類されます。

1. 固体レーザー

YAGレーザー等の固体結晶を共振器に使用しているレーザーです。結晶内の原子に光を当てて、原子を励起させて誘導放出させることで光を増幅させています。

小さい共振器でも、大きな出力を得られる点がメリットです。産業用に使用されることもあれば、研究機関などでは原子に高出力レーザーを当てることでプラズマ化させる等の用途で使用される場合もあります。

2. ガスレーザー

ヘリウムや窒素などの混合気体を媒質として使用した共振器のレーザーです。共振器を大型化することができ、高出力のレーザーを出力することが可能です。

3. 光ファイバレーザー

光ファイバを用いて光を伝達するレーザーです。光ファイバの使用により、光の損失を少なくすることができます。現在は産業用分野で広く使用されているレーザーです。

パルスレーザーのその他情報

超短パルスレーザー

パルスレーザーの一種として、超短パルスレーザーと呼ばれるものがあります。一般的に知られるレーザー波長よりも短い波長を持ち、ピコ単位やフェムト単位の波長を持つパルスレーザーです。

超短パルスレーザーは波長が短いことから、大きな出力を持つことが特徴です。そのため、レーザー加工時に発生する熱融解が比較的少なくなります。

レーザー加工で金属表面に精密な模様を加工する際に熱融解が課題で意図した加工ができないことが課題でした。しかし、超短パルスレーザーでは熱融解を少なく設計通りの模様を加工することが可能です。使われ始めた当初は加工に時間がかかってしまうことがデメリットとしてありましたが、改善が続けられています。

参考文献
https://optipedia.info/laser/lasercont/pulse/
http://mh.rgr.jp/memo/oe0017.htm
https://www.fiberlabs.co.jp/tech-word/mode-locked-laser/
https://www.fiberlabs.co.jp/tech-word/longitudinal-mode/

温水循環装置

温水循環装置とは

温水循環装置とは、温水を効率的に供給する装置です。

低温に冷却する目的で使う装置は冷水循環装置、常温より高く加熱する目的で使う装置は温水循環装置と呼びます。温水循環装置は常温から+200℃の高温液の循環まで幅広い温度域と流量を持つ様々な種類があるので、目的に応じて適切な機種を選ぶことが可能です。

また、温水循環装置は自動制御システムを備えています。センサーやタイマーを利用して、需要が少ない時間帯にはポンプの動作を抑制し、必要な時にのみポンプを起動させることもできます。

温水循環装置の使用用途

温水循環装置は主に化学実験や研究、産業プロセスなど、さまざまな用途で重要な役割を果たしています。

1. 化学反応の温度制御

温水循環装置は、化学反応の温度制御に欠かせない装置です。例えば、反応物の加熱や冷却を必要とする反応において、適切な温度条件を維持することが重要です。

温水循環装置は、反応容器やジャケット付き反応器に温水を循環させることで、反応温度を正確に制御します。

2. 蒸留や蒸気供給の補助

温水循環装置は、蒸留や蒸気供給の際に補助的な役割を果たします。蒸留過程で冷却を行う際に、温水循環装置を使用して適切な温度条件を維持することが可能です。

3. 水浴装置の温度制御

水浴装置の温度制御にも広く用いられます。水浴装置は、試験管やフラスコなどの実験容器を水浴させ、一定の温度で反応や加熱を行うための装置です。

温水循環装置は水浴装置に温水を供給することで、温度を正確に制御し、実験の安定性と精度を高めます。

4. 化学プロセスの加熱や冷却

化学プロセスにおいても、温水循環装置は加熱や冷却に活用が可能です。例えば、反応槽やリアクター内の温度を制御するために温水循環装置を使用します。その他、特定の化学プロセスに必要な温度条件を提供するためにも利用されます。

 

これらの使用例からもわかるように、化学機器における温水循環装置は、正確な温度制御や冷却を実現することで、安全性や効率性を向上させるため、実験や産業プロセスにおいて重要な装置です。

温水循環装置の原理

温水循環装置は、ポンプ、加熱装置、配管、制御システムの4点構成です。正確な温度制御により、反応の安定性や再現性を高め、品質の向上に貢献することから、化学分野での研究や生産において、温水循環装置の重要性はますます高まっています。

1. 温水供給ポンプ

温水循環装置では、温水供給ポンプが主要な役割を担います。このポンプは、温水をボイラーまたは加熱装置から取り込み、配管を通じて化学機器に供給します。温水供給ポンプは、適切な流量を維持しつつ、安定した温水供給を実現するために欠かせません。

2. ボイラーまたは加熱装置

ボイラーや加熱装置では、大量の水を一括して加熱し、一定の温度に保ちます。ボイラーは燃料を燃焼させて熱を発生させるか、電気を利用して加熱します。

3. 温水配管

循環装置では、配管網も必要です。配管を通じて温水が化学機器に供給され、反応容器やリアクター内の温度制御に使用されます。配管は耐腐食性や高温耐性が要求されるため、適切な素材を使用することが必須です。

4. 制御システム

温水循環装置には、効率的な制御システムも組み込まれています。温度センサーやプログラムされた制御装置を使用して、温水供給ポンプやボイラーの動作を適切なタイミングで制御します。これにより、化学実験や産業プロセスの要求に合わせて温水の供給を調整することが可能です。

温水循環装置の特徴

温水循環装置は、1つの装置が複数の化学機器に対応できるというメリットがあります。例えば、複数の反応容器やリアクター、水浴装置などに温水を供給することが可能です。これにより、複数の実験を同時に行ったり、大規模な実験設備に対応する際に効率的な温度制御が実現できます。

また、近年の温水循環装置は、エネルギー効率の向上が進んでいることから省エネルギー機能が組み込まれており、必要な時に適切な温度を提供することで、エネルギー消費を最適化します。