パルスレーザーとは
パルスレーザーとは、レーザー光がパルスとして発振されるレーザーの総称です。
一定時間のパルスが周波数として、繰り返し発信されます。パルス発振ではないレーザーは連続発振 (英: Continuous Waves) と呼ばれます。
パルス幅の違いから、ナノ秒レーザー、ピコ秒レーザー、フェムト秒レーザーなどの区別も可能です。1パルスのエネルギー、パルス幅、周波数、波長などのパラメータからそれぞれ適した加工や研究に選定されます。
パルスレーザーの使用用途
パルスレーザーは身近なところから産業、理科学業界まで、幅広く使用されています。それぞれ波長、繰り返し周波数、パルス幅、パルスエネルギーはさまざまです。
以下は使用用途の一例になります。
- ドリリング、スクライビング、ダイシングなどの微細加工
- マーキングや表面変質
- レーザー加工機の発振器
- 皮膚科でのシミやあざの除去
- 医療用メス
- LIDER
- 非破壊検査光波測距儀
- レーザー核融合
- 顕微鏡
- レーザーアブレーション
- 超短パルスによるMEMSの加工
パルスレーザーの原理
パルスレーザーのパルスは、以下のいずれかの方法で生成しています。
1. 直接変調法
連続発振している光をシャッターのオンオフで区切る方法です。電流を制御することで、パルス形状を制御する方法もあります。パルス形状を正確に制御できることから、電流制御による方法が現在は主流です。
2. Qスイッチ (英: Q-Switching) 法
基底状態の粒子の数よりも、励起状態の粒子が多い状態である反転分布を利用しているのがQスイッチ法です。レーザーの共振器は、Q値と呼ばれる指数で性能が評価されます。
Q値は共振器内部で損失が低い程高い値を取る指数です。シャッター等を閉じて光を閉じ込めることで、共振器内部で光の強度を高めます。媒質の中で十分な反転分布が起こりエネルギーが溜まると、一気に光を放出させます。Qスイッチ法では大きなエネルギーのパルスが作り出せます。
3. モードロック (モード同期)
レーザー光のスペクトルはとても細かいスペクトルの集まりで、ほんのわずかに異なる波長が多数存在しています。これを縦モードと呼びます。この縦モードを同期させて発振させる方法が、モードロックです。この方法は短パルスを作り出すことができるため、フェムト秒レーザーやピコ秒レーザーに使用されています。
これらの他に、フラッシュランプ等を用いてレーザー媒体をパルス状に励起する方法などもあります。
パルスレーザーの種類
パルスレーザーは使用する共振器によって次の種類に分類されます。
1. 固体レーザー
YAGレーザー等の固体結晶を共振器に使用しているレーザーです。結晶内の原子に光を当てて、原子を励起させて誘導放出させることで光を増幅させています。
小さい共振器でも、大きな出力を得られる点がメリットです。産業用に使用されることもあれば、研究機関などでは原子に高出力レーザーを当てることでプラズマ化させる等の用途で使用される場合もあります。
2. ガスレーザー
ヘリウムや窒素などの混合気体を媒質として使用した共振器のレーザーです。共振器を大型化することができ、高出力のレーザーを出力することが可能です。
3. 光ファイバレーザー
光ファイバを用いて光を伝達するレーザーです。光ファイバの使用により、光の損失を少なくすることができます。現在は産業用分野で広く使用されているレーザーです。
パルスレーザーのその他情報
超短パルスレーザー
パルスレーザーの一種として、超短パルスレーザーと呼ばれるものがあります。一般的に知られるレーザー波長よりも短い波長を持ち、ピコ単位やフェムト単位の波長を持つパルスレーザーです。
超短パルスレーザーは波長が短いことから、大きな出力を持つことが特徴です。そのため、レーザー加工時に発生する熱融解が比較的少なくなります。
レーザー加工で金属表面に精密な模様を加工する際に熱融解が課題で意図した加工ができないことが課題でした。しかし、超短パルスレーザーでは熱融解を少なく設計通りの模様を加工することが可能です。使われ始めた当初は加工に時間がかかってしまうことがデメリットとしてありましたが、改善が続けられています。
参考文献
https://optipedia.info/laser/lasercont/pulse/
http://mh.rgr.jp/memo/oe0017.htm
https://www.fiberlabs.co.jp/tech-word/mode-locked-laser/
https://www.fiberlabs.co.jp/tech-word/longitudinal-mode/