転造盤

転造盤とは

転造盤

転造盤 (英: rolling machine) とは、素材に強い力を加えることにより、盛り上げて塑性加工する工作機械です。

金属には、ある程度以上の力を加えると元の形に戻らない塑性という性質があります。その性質を活かした加工方法が塑性加工です。転造盤は、ダイスと呼ばれる工具を回転している被加工物に強く押し当てて、その形状を転写し必要な形に塑性変形させます。

ねじなどの成形加工に使用される場合が多いです。比較される加工方法として、被加工物を切って加工する切削加工が挙げられます。転造加工は切削加工と異なり、切りくずが出なく、材料の無駄が出ません。

また、加工時間が短く工具寿命も長いメリットがあり、切削と比べて生産性が高い効率的な加工法です。さらに、素材のファイバーが切れることなくつながっているため、強度を上げられます。

転造盤の使用用途

転造盤は、ねじや歯車インボリュートスプライン・セレーションの成形に使用されます。ダイスは、製品の仕様や形状に合わせて用意する必要があるため、初期投資が必要です。

また、品種の切り替えのために行う、段取り時間が長くなりがちです。したがって、少量多種の生産には不向きと言えます。

一度セットアップを行えば、工具寿命が長く製品精度も安定するため、小種多量の生産に優位になります。また、加工時間も切削加工と比較して短くすることが可能です。

転造盤の原理

転造盤による加工は、丸ダイス転造、平ダイス転造、プラネタリー転造に大別されます。

1. 丸ダイス転造

丸ダイス転造は、同じ速度で回転する2つもしくは3つの丸いダイスに、被加工物を挟み込むことで成形する加工方法です。ダイスを被加工物に油圧などの力で押し付けることで成形する原理は変わりません。

ダイス間の距離を変えることで、被加工物の寸法を任意に調整することが可能です。また、加工の応用性に優れているため、ねじ転造以外の加工にも広く使われます。一方、加工する素材の供給と排出が同一場所になるので、生産性は他の転造加工法よりも劣ります。

丸ダイス転造には、その加工方法によって3種類に分けられます。ダイス間が開いている状態で被加工物を挿入し、その後ダイス間をゆっくりと閉じていくことで成形する「寄せ転造」、ダイス間が閉じた状態で被加工物を油圧などで押し込んでいく「押し込み転造」、及び閉じたダイス間を通り抜けていくことで成形する「通し転造」です。

通し転造は、ねじやウォーム歯車のようにリードを有する被加工物に使われます。製品の形状を考慮して、最適な加工方法を選定することが重要です。

2. 平ダイス転造

平ダイス転造は、一対の平ダイスで被加工物を挟み込み、被加工物が回転するように平ダイスを平行に動かすことで成形する加工方法です。

生産性の高い加工方法であり、汎用ねじなどの大量生産に向いています。

3. プラネタリ転造

プラネタリ転造は、固定されたダイスの内側と回転する丸ダイスとの間に、加工物を送り込んで加工する方法です。

ダイス間の距離の変更ができないので、加工の応用性は少ない短所があります。しかし、生産性は高く、汎用ねじの大量生産の現場でよく用いられます。

転造盤のその他情報

1. 転造盤の自動化

転造盤は、ねじ以外にもさまざまな部品加工に応用可能な加工装置です。さらに、高度な転造加工にも対応可能な数値制御で自動化された「転造機」も存在します。その背景には材料の無駄が出やすい切削加工から、歩留まりの良い塑性加工へと部品加工をシフトさせたい産業界の意向があります。

コンピューター制御型の転造機は、左右の主軸台によって、ラムに設置された2つのダイスが芯間距離を保ったまま、荷重変動を吸収しつつ加工を進めることができるため、従来の転造盤よりも高い製品精度の実現が可能です。

さらに、工具軸の制御軸数の増加に対応できる点が注目点です。例えば、7軸のコンピューター制御転造機の場合、主軸回転、傾斜角、主軸間距離などそれぞれが独立制御可能なため、一般的な丸ダイス転造で用いられる寄せ転造や通し転造よりも、複雑で高精度な動きを難なく行えます。

2. 進化した転造盤のダイス制御

転造盤の自動化によって、レシプロ転造や複数転造などの、従来の丸ダイス転造を発展させた加工方法が生まれました。

レシプロ転造とは、同一方向に回転するダイスが同期を取りつつ、正転と逆転を交互に繰り返しながら加工を進める転造のことです。被加工物の歩みに伴う移動量を抑制し、非加工部への接触を回避できるメリットがあるため、繰り返し加工が必要となる加工山の高い品物の製造も容易となります。

複数転造とは、一度の処理で複数箇所に異なるパターンを転造できる加工方法です。サーボ制御されたスライド台によって被加工物を正確な位置に送り込むことで実現しています。従来の転造盤では2台以上必要となる複数箇所への加工が、複数転造では1台で済みます。

参考文献
https://www.nisseiweb.co.jp
https://www.nachi-fujikoshi.co.jp/kos/pre/index.htm
https://www.tsugami.co.jp/product/rolling
https://www.nisseiweb.co.jp/formrolling.php?page=fmnissei
https://www.nisseiweb.co.jp/pdf/tenzo_thesis.pdf

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