非接触温度センサー

非接触温度センサーとは

非接触温度センサー

非接触温度センサーとは、測定対象に直接取り付けずに温度を検出できるセンサーです。

物体が放出する赤外線や中性子を入射したときの散乱などを利用します。市場に出ている非接触温度センサーはほとんどが赤外線を利用したセンサーです。検出素子を用いて赤外線を検出し、放射率を使用して測定対象の温度を算出します。放射率は物体ごとに決まっている表面温度に対する赤外線量のことであり、非接触温度センサーの使用時に必要です。

非接触センサーは測定可能な範囲や距離が決まっており、測定できる範囲はスポット径と呼ばれます。計測する物や人よりスポット径が小さい方が安定して温度を測定することが可能です。また、高温な物体を測定する場合は非接触温度センサー自体が熱せられることによる破損を防ぐため、冷却を行うなどの工夫が必要です。

非接触温度センサーの使用用途

非接触温度センサーは日常生活から産業用途まで幅広く使用されます。以下は非接触温度センサーの使用用途一例です。

  • 食品工場における焼き工程の食品温度測定
  • 工業製品塗装後の乾燥度合いを測定するための温度測定
  • 旋盤中の製品温度分布測定
  • 体温測定

接触式の温度センサでは測定しにくい状況や測定できない測定対象に対して使用されます。具体的には、移動や回転する物体に使用します。

また、体温測定にも活用されます。飲食店やオフィス出勤時など、数多くの場面で利用されています。脇に挟む接触型体温計と比較して、温度計測が早い点や使用後に都度消毒する手間が不要で衛生的な点がメリットです。

一方で、赤外線を利用するため、環境温度や日光などの外的環境の影響を大きく受けます。また、接触型に比べると正確性は劣ります。実際に非接触センサーを活用する場所を考慮しながら、温度算出方法の調整や環境整備などの工夫が必要です。

非接触温度センサーの原理

赤外線を利用した非接触温度センサーは、集光レンズ、サーモパイル、増幅アンプ、演算装置で構成されています。以下の順序で温度を測定します。

1. 赤外線の集光

 赤外線は0.7~1,000μmの不可視光です。この周波数範囲において、0.7μm~20μmの周波数のみが実用的な温度測定に用いられます。

これを赤外線集光レンズを用いて集光します。サーモパイルが検出可能な波長帯の赤外線を集光することで、測定精度を向上させることが可能です。

2. 電気信号への変換

 サーモパイルを用いて赤外線を電気信号に変換して出力します。赤外線によって温められた温度に応じて、電気信号の出力を行う赤外線検出素子がサーモパイルです。

サーモパイル内では複数の熱電対が温接点を中心部に向けた状態で直列接続されており、その温接点が向かう中心部には赤外線吸収膜が設置されます。レンズで集められた光は温接点部分にのみ当たるため、外側にある冷接点側との間に温度差が生じます。これによりゼーベック効果によって電圧差が生まれ、温度測定ができる仕組みです。

3. 電気信号の増幅 

増幅アンプを用いてサーモパイルから発せられた電気信号を増幅します。増幅することにより、より高精度の検出が可能です。

4. 放射率から温度を算出

 測定対象の温度を算出を行うために補正を行います。補正には放射率を用います。放射率は物体ごとに一定値をとる、物体の表面温度に対する放出する赤外線量の割合です。

サーモパイルが変換した電気信号から検出した赤外線の量と、あらかじめ測定しておいた測定対象の放射率を用いて計算することで測定対象の温度を算出します。

非接触温度センサーの種類

非接触温度センサーは携帯型と設置型に大分されます。

1. 携帯型

人が手に持って測定します。電源が不要のため、手軽に持ち運びが可能です。軽量かつ小型で、およそ数千円~数万円の安価な製品が多いです。

2. 設置型

測定対象が機器の前を通ることで人を介さずに自動で温度を測定が可能です。サーモグラフィーカメラなどを組み合わせた製品が多く、およそ数十万から数百万円など高額な製品が多いです。測定のために機器に触れる必要がなく、機器によっては0.5~1.5 mほど離れての測定も可能です。

参考文献
https://www.jp.omega.com/techref/pdf/principles-ir-thermometers.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/32/5/32_5_364/_pdf
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/lab/thermometry/radiation.jsp
https://www.arts-crafts.co.jp/post-3657/
https://i-focus.co.jp/2020/07/17/thermoseries/
https://kujira-zaitaku.clinic/blog/797.html

流体解析

流体解析ソフトとは

流体解析

流体解析ソフトとは、空気や水などの流体の流れをシミュレーションによって解析するものです。

流体解析ソフトは、実験と比べてコストや時間がかからないため、設計段階で活用されています。また、一般に、液体や気体などの流体の流れる動きを実験などを通して読み取るのは難しかったりコストが多くかかります。

そこで、計測器が計測できないような高温・高圧の環境での流体の動きや、津波や河川などの大規模で実験ができない環境でも活用できる流体解析ソフトが重宝されています。

流体解析ソフトの使用用途

流体解析ソフトは、様々な製品の研究開発の現場、生産ラインの現場、天気予報などで使用されます。自動車のエンジン内部の流れや圧力の状態、自動車が受ける抵抗を小さくするための解析、CPUなどの冷却機構の開発など幅広くあります

  • 自動車が走行中に空気によってうける力の解析
  • 空調使用時の部屋の気流の解析
  • 熱を発する機械の冷却機構の効率性の向上に向けた気流の解析
  • 天気予報における風向きや気圧の解析
  • スクリュー羽根などの回転の解析

流体解析ソフトの原理

Fig1 流体解析の原理

図1. 流体解析の原理

流体解析ソフトは、以下にあげる2つの基礎方程式をコンピュータによって数値計算することで、流体の流れを分析します。

1. 連続の式(質量保存)

流体が何も無い空間中から勝手に湧き出してきたり,何も無い空間中で突如消えたりするという,いわゆる「無から有を生じる」ことは無いという規則です。急に水が湧いて出てきたりしないということです。

2. 運動量保存則 (ナビエ・ストークス方程式) 

物体の運動の激しさというのはなにか外から力を与えない限り変化しないという法則です。実はニュートンの運動方程式から導かれます。

さらに、温度なども分析する場合にはエネルギー保存測も含めた式を解きます。

流体解析ソフトの構成

Fig2. 流体解析の構成

図2. 流体解析の構成

商用の流体解析ソフトは、モデル作成部分と、シミュレーション実行部分、さらにポスト処理部分がセットになっていることが多いですが、シミュレーション実行部分 (ソルバ) だけのものやモデル作成部分専用のソフトなどもあります。また

1. 前処理・モデル作成部分

モデル作成とは、流体解析を行う形状を作成する工程です。多くの場合、3DCADでつくったSTEPやIGES,Parasolidなどのファイル形式を利用できます。熱流体解析ソフトでは、さらに作成した構造のどこが流体の流入する部分なのか、どこが温度一定の部分なのかといった境界条件を設定する機能が備わっています。

計算を実行するために、モデルの形状をメッシュとよばれる格子で表現します。このメッシュを綺麗に作成することが解析の速度を上げ精度を高める重要な要素です。モデル作成ソフトでは、大きさなどを簡単に選択して、自動的に品質の高いメッシュを生成する機能が備わっています。

2. シミュレーション実行部分

ここでは、通称ソルバと呼ばれる部分を指しています。狭義での流体解析ソフトとはこの部分のみを指します。ソルバは連続の式や運動量保存式、エネルギー保存式などを解く機能が備わっています。

昨今はより複雑なモデルを解く機能が備わっていたり、コンピュータの性能の向上に対応しで計算を高速で行えるようになっています。

3. ポスト処理部分

解析結果を3Dモデルなどで可視化することで、より直感的に解析結果を理解することができます。解析機能は製品によって特長が分かれる部分です。

計算結果から圧力や温度の分布を色の違いで示したコンター図や流れの様子を矢印で示したベクトル図、線で表した流線図などを作成します。

流体解析ソフトの種類

Fig3. 流体解析の種類

図3. 流体解析の種類

まず流体の表現方法として、空間を離散化する方法があります。離散化の手法としては、有限要素法、有限体積法が有名です。一方、流体を粒子の集合体として表現する粒子法という手法も存在します。

このように様々なCAE特有の手法や技術・機能があるため、シミュレーションしようと思う現象に応じて、その都度最適な手法や条件を設定する必要があります。熱流体解析ソフトにもシンプルで扱いやすく設計されたものから、熱流体解析のプロが扱うような多機能なものが存在しています。

各社様々ですが、おおよその目安として以下の点で違いがでることが多いです。

  • 乱流モデルの数
  • 混相流解析機能の有無
  • 非ニュートン流体解析機能の有無
  • 連成解析機能の有無 (構造解析など) 
  • 圧縮性流体の扱い機能の有無 

そのほかライセンス体系にも違いがあります。使用目的と必要な機能を明確にして、最適なソフトを選定しましょう。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaib1979/53/491/53_491_1869/_pdf/-char/ja
https://www.yokendo.com/books/9784842505268/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jksna/2003/239/2003_239_239_81/_pdf

機械用CAD

機械用CADとは

機械用CAD

機械用CADは、コンピュータを利用して機械製品の製図や設計をするシステムです。

機械用CADの特徴として、紙を使って手書きで行う製図に比べて「データを他人と共有しやすい」「寸法のミスを無くせる」「変更時の手間がかからない」「解析ソフトにデータを転送できる」点が挙げられます。大手企業を中心に機械用CADが採用されたことで、その取引先の関連企業でも採用されるようになり、現在設計や製図は機械用CADで行うことが一般的です。

機械用CADを使用することで、ものづくり工程での設計製図作業や生産プロセスの効率が向上し、作業効率化がアップします。

機械用CADの使用用途

機械用CADは、家電や電子機器、自動車、ロボット、機械部品など製造業を中心に機械設計が必要な場面で使用されます。

機械用CADを使用することで、開発のスピードが速くなります。また、使用したい製品のCAD図を入手することで、制作している製品にCADデータを取り入れながら設計を行えるようになります。機械用CADは性能により、ハイエンドモデルから、ミドルレンジモデル、ローエンドモデルまであり、使用用途に応じて適切に選定することが大切です。

代表的なタイプは、以下のものがあります。

  • 製品設計向けCAD
    製品設計向けCADは、量産製品設計を専門としたCADです。代表的な製品としては、CATIA、Solid Worksなどがあります。 
  • 設備設計向けCAD
    設備設計向けCADは、一品物の機械装置や治具、自動機や生産設備等の設計を専門としたCADです。代表的な製品としては、IRONCADなどがあります。

機械用CADの原理

機械用CADの基本的な操作は、線を引いて概形を作成し、寸法を確定させて、図面を作成していく流れとなります。機械用CADは、2D CADと3D CADに分類され、それぞれ原理が異なります。

1. 2D CAD

2D CADは、2次元CADとも言われており、正面図・平面図・側面図の3つに分けて線や円弧を使用して、書かれる三角法という方法で製図が行われます。手書きの製図と同じ方法になります。コンピューターで作成することで、データの共有や書き換えが容易になりました。

2次元CADは制限なく無料で使用できるソフトもあり導入が容易です。3次元と違い形状をイメージしながら作図を行うので、作図の基礎を学ぶには2次元CADの方が最適です。

2. 3D CAD

3D CADは、3次元CADとも言われており、3次元の立体モデルをCADソフトの中で作成します。球や直方体などを使用して立体的に表現するCADです。対象を輪郭線のみで表現するワイヤーフレームモデル、対象を表面のみで表現するサーフェスモデル、対象の中身まで表記するソリッドモデルに分けられます。

CADソフトによっては、質量や重心、表面積などを出力することも可能で、設計に生かすことができます。3次元CADは2次元CADに比べて製品の完成イメージがしやすいことから、多くの現場で導入されています。一方で、コストは2次元CADに比べて導入コストが高いです。

機械用CADのその他情報

機械用CADのメリット

1. 作業効率化に繋がる
機械用CADを用いることで、手作業での作図に比べて、大幅に作業を効率化できます。紙図面を手作業で書く場合では、修正や変更作業を手書きで行うため時間がかかります。また、鉛筆跡などの汚れが残り、図面が見えにくくなることも多いです。

一方で、機械用CADの場合は、記入したデータはす簡単に変更できるため、手書きに比べ修正作業を楽に進められます。部品のCADデータを利用できるので、部品の外形を書く必要もありません。

2. 図面データの管理ができる
機械用CADの場合は、図面は紙ではなくデータとして管理されるため、データを使って共有が可能となり生産プロセス全体として品質担保と効率化に繋がります。過去に作成した類似製品のCAD図面を流用して再利用することも可能で、検索の作業性が高まります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaic1979/57/544/57_544_4023/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1986/58/5/58_5_811/_pdf
https://d-engineer.com/3dcad/cadsyurui.html

構造解析

構造解析とは

構造解析

構造解析とは、解析対象となる構造物に荷重が加わることによって変化する物理量を計算し、得られた計算結果に基づいた評価、分析を行う一連の工程のことです。

計算される物理量には変形量、内力 (応力) 熱や振動数などがあります。構造解析を行う目的は、実際に作成したい構造物などを作成する前に結果を予測することにより、失敗するリスクを低減することです。

また、より良い構造にするためのヒントも得られます。また、簡単には実験ができないような大規模な構造物についても、構造解析によって結果を予測することが可能になります。

構造解析の使用用途

構造解析が多く用いられている分野には、自動車の開発や生産、建築や土木分野、金属加工の生産検討、ゴム製品の開発などがあります。

1. 自動車

現在の自動車開発において、構造解析は欠かすことができない技術です。運動性能の向上、安全性の確保、省エネルギー化、低コスト化のために、多くの部品について構造解析が用いられています。

2. 建築・土木分野

建築や土木分野において構造解析は、様々な建築物の強度、耐震、耐風性能、耐火設計に用いられています。建築においては、機械部品のような試作はほぼできません。構造解析を有効に活用する必要があります。

3. 金属加工

金属加工では、塑性加工やプレス加工が行われます。かつては、ベテランの経験によって難易度の高い製品が作られてきました。現在では、構造解析を有効活用することにより、技能伝承とともにより高度なものづくりが可能になっています。

4. ゴム製品

ゴム製品は荷重を受けた際の変形が大きく、また変形時には他の製品との接触も伴います。構造解析の中でも、非線形解析が多く用いられます。

構造解析の原理

構造解析の作業は、解析対象の作図、メッシュを切る、モデル化、物理量を入力、解析、出力という手順で進みます。

1. 測定対象の作図

CADなどのソフトを用いて解析対象を作図します。主に3D CADを使用します。使用しているCADがある場合は、CADのファイル形式が使用する構造解析ソフトに対応しているかを調べておくことをおすすめします。

2. メッシュを切る

解析対象をメッシュと呼ばれる格子状に分解します。この分解の精度によって、計算の精度やスピードに影響があるので、注意が必要です。

3. モデル化

解析対象をモデル化します。メッシュごとの境界面をばねとみなすことが一般的です。

4. 物理量を入力

解析対象のヤング率や比熱、膨張係数、密度などを入力します。この物理量は、事前に実験などで測定しておきます。

5. 解析

解析には、いくつかの種類があります。f=kxというフックの法則を基本とした静解析、F=maというニュートンの運動方程式を基本とした動解析があります。

動解析には時間の概念が存在し、比較的容易な陰解法と、複雑な連立1次方程式を解く陽解法に分けることができます。

6. 出力

ほとんどの構造解析ソフトは、解析結果を可視化できます。可視化することで、解析対象の変位や集中的に力が加わる場所を発見できます。

構造解析の種類

構造解析にはさまざまな種類があります。代表的なものは、以下のとおりです。

1. 静解析

静解析は、構造物に力が作用した際の変形量や応力を計算します。部品の使われ方に適した形状にするためのヒントが得られます。

2. 固有値解析

固有値解析は物体の固有値を計算します。固有値とは共振が起こる周波数で、固有値が高ければ共振が起こりづらいと判断できます。

精密装置の架台では、振動が機能に影響を与えるため固有値解析を行い、固有値がなるべく高くなるように形状を決めていきます。

3. 伝熱解析

伝熱解析は、物体の熱分布がどのようになるのかを計算します。例えば、ヒータープレートの温度分布を計算することで、温度均一性を予測することができるため、部品製作することなく最適設計が行えます。

構造解析のその他情報

構造解析の注意点

構造解析は専用ソフトウェアを使用しますが、実際の状態に近い解析結果を得るためには、いくつか注意する項目があります。

1. 3Dモデルの作り方
実際の形状と全く同じにすることで、メッシュ処理でエラーが出たり、解析に時間がかかりすぎたりして、うまく解析結果が出ない場合があります。モデルは何を解析するかによって細かく作成する部分と省略する部分を使い分けなければなりません。

2. 解析の条件
条件にはいろいろなものがあり、この設定がうまくできていないと、実際の値とかけ離れた解析結果が出てしまいます。解析ソフトウェアが優れたものでも、モデルや条件設定が悪いと現実に近い結果を得ることができません。

解析ソフトウェア会社のセミナーなどに参加して、ソフトウェアに合わせた手法を用いることが重要です。また実験が可能な場合には、構造解析結果と実験結果とをすり合わせる相関取り (コリレーション分析) も大切な技術になります。

 参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaic1979/50/449/50_449_37/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1933/42/502/42_502_955/_pdf
http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00037/246/246-123131.pdf
https://www.cts-inc.co.jp/lecture/kaiseki/index.html

フォースゲージ

フォースゲージとは

フォースゲージ

フォースゲージとは、測定対象に作用する圧縮力や張力を測定する機器です。

ハンディタイプが主流で、電源の必要がないアナログ式のフォースゲージと、正確に数値を読むことができるデジタル式のフォースゲージがあります。デジタルタイプは、パソコンなどに接続しながら測定し、データの記録や解析に使うことができます。

測定方法は、手にもって測定対象に引掛ける、または押し当てることで測定する方法と、フォースゲージ用のスタンドに取り付けて測定する方法の2通りです。

フォースゲージの使用用途

フォースゲージの使用用途は、産業用機械・混相容器・食品・衣類・医薬品・スポーツ用品など多岐に渡ります。製品の品質の保証や、測定対象の物性を調査する際に使用されます。

フォースゲージの具体的な使用用途は以下の通りです。

  • 衣類のボタンの引張り強度の測定
  • パンやスポンジケーキの弾力の測定
  • 医療用ピンセットのつまみ力の測定
  • 圧縮強度や引張強度を測定する試験

フォースゲージで測定できる数値として、以下が挙げられます。

  • 圧縮力
  • 引張力
  • 剥離力
  • 挿抜力
  • たわみ力
  • 粘着力
  • 摩擦力 (摩擦係数) 等

使用用途に応じて、定格容量・対応する物理量・耐久年数を考慮し、フォースゲージを選定する必要があります。

フォースゲージの原理

フォースゲージは、アナログ式・デジタル式・スタンド使用の3つに分けられます。

1. アナログ式フォースゲージ

アナログ式フォースゲージは、測定用のばねの変位を機械式に指示する方式です。測定対象に引っ掛けるためのラック、または押し当てるための工具が付属します。電源が不要で、手軽に力を測定できることが特徴です。

2. デジタル式フォースゲージ

デジタル式フォースゲージは、測定用のロードセル、及び測定対象に取り付けるための工具などで構成されます。測定対象が力によって変形し、変形によるロードセルの電気抵抗などの変化を計測して、力を検出する方式です。

パソコンにデータを保存し、解析できる機種もあります。測定する対象物によっては、ロードセルが本体と分離したタイプも使われます。

3. スタンド使用フォースゲージ

フォースゲージが取り付け可能なスタンドを使用することにより、正確な弾力や破壊時の応力を測定する方式です。スタンドには、往復試験が可能な機種もあり、疲労強度を測定することもできます。

フォースゲージのその他情報

1. フォースゲージの単位

フォースゲージは、測定値を「力」のSI単位「N」ニュートンで表示します。フォースゲージの容量により、「mN」「kN」が使われる場合もあります。

SI単位施行以前には「kgf」が使われていましたが、計量法の改定により1999年10月以降、日本国内では使用できません。

2. フォースゲージの価格

アナログタイプのフォースゲージは、安価で壊れにくく、電源が不要という特徴があり、おおよそ3万円台からあります。 デジタル出力を有する機種は、ソフトウェアによりPCとの接続が可能です。日本製で約6万円台からで、高機能な製品では10万円を超えるものもあります。

約1kNまでの容量のデジタルフォースゲージでは、機種ごとによる価格差は、主に機能の差で、容量の違いによる差はあまりないと言えます。近年では、安価な外国製品もネット販売等で出回っている状態です。

アタッチメントの価格は、機種形状によってさまざまですが、生産量が少ないためか、見た目の印象よりも高価と感じるものが多いと言えます。スタンドは手動タイプが5万円台から、電動タイプで20万円台からあります。

3. フォースゲージのアタッチメント

フォースゲージには、標準付属品としていくつかの測定用アタッチメントが同梱されています。 同梱されているのは、引張測定用のフックが1種類、押し試験用に形状が違う押し治具が数個、作用点を延長するための延長棒などです。

製品付属のアタッチメントは、測定用途に合わないことが多々あります。特に引張測定では、測定物を掴むことができないため、測定用途に合わせたチャック・バイス・グリップ等の掴み具が、オプションで用意されています。選定には 測定物の形状・表面の滑りやすさ・耐荷重などを考慮します。 

圧縮力測定では、平面や球状など形状の違い・圧縮面の大きさ・金属や樹脂など硬さの違いなどから、アタッチメントを選択します。また、剥離試験・摩擦計測・3点曲げ試験などの専用用途のアタッチメントが用意されています。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/productinfo/force_gauge/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmbe/49/1/49_1_245/_pdf
https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun/techno_infra/11_gaiyou_tani3.html
https://kakaku.com/

力覚センサー

力覚センサーとは

力覚センサー (英: force sensor) とは、力やモーメントの大きさを測定するセンサーです。

物理的な力の量とその方向を検出し、人間の触力覚を再現する目的で使用されます。おもな用途は、ロボットです。

力をX、Y、Zの3方向に分けて検出し、またX、Y、Zの各軸回りのモーメントも検出するため、6軸型の力覚センサーが基本です。

力覚センサーの使用用途

力覚センサーは、産業用ロボットなどに使用され、従来人手に頼らざるを得なかった作業を自動化できるようになります。

1. 外力・反力の検出

力覚センサーは、力とモーメントを同時に測定することが可能です。ロボットの作業端に設置し、外力・反力を測定しながら、適切な力で作業ができます。

2. 精密作業の自動化

力覚センサーで正確な力やモーメントが測定できるので、ロボットが適切な力で作業ができます。精密作業のロボットによる自動化が出来るようになります。

具体的な作業は、端子が柔らかい電子部品やコネクタの挿入、遊びが少ない嵌合、精密なねじ締め、バリ取り、微妙な力加減での研磨、ピッキング作業、2足歩行ロボットの自立制御などです。

3. 触覚診断・遠隔診療

力覚センサーを取り付けた端末を患者側に配置し、力覚センサーで読み取った力やモーメントを医師側が読み取ることで、遠隔触覚診断が可能です。

力覚センサーの原理

力覚センサーは、力によって生じる変形量を検出して、力やモーメントに換算します。

力覚センサーの検出方法の中で、ひずみゲージ式、圧電式、光学式、静電容量式が代表的です。

1. ひずみゲージ式力覚センサー

ひずみゲージ式は、センサー部にかかる引張力・圧縮力により、電気抵抗が変化する金属抵抗材料の性質を利用して、力やトルクに換算する方法です。小型で精度が高く、応答性も高いことから、力覚センサとして、多く使われる方式です。

2. 圧電式力覚センサー

圧電式は、水晶やPZT (ジルコン酸チタン酸鉛) などの圧電効果を有する材料をセンサー部に使用して、力を測定する力覚センサです。小型で応答性が高く、コストも比較的優れています。ただし、精度は、ひずみゲージ式や静電容量式には及びません。

3. 静電容量式力覚センサー

静電容量式の構造は、センサー部を金属材料の電極が向かい合わせに配置されたコンデンサ型としたものです。力により、導体間にひずみが生じて距離が変わることによる静電容量の変化を検知する方式です。

静電容量式は、構成が比較的簡単で低コストなことが特徴です。電極をフィルム状にすると、小型化・薄型化が可能です。精度や応答性も優れています。

4. 光学式力覚センサー

光学式は、計測対象物に一定間隔で模様をマーキングしておき、力が加わった時に生じる模様の変化を、カメラやレーザーなどの光学センサで検出して、力の大きさを計算して求める方式です。

光学式は、非接触で測定できることが最大のメリットです。一方、精度、応答性、小型化、コストは、他の方式より劣ります。非接触測定が必要な特殊な用途に限定されます。

5. HDR力覚センサー

HDR (ハイダイナミックレンジ) 力覚センサーと呼ばれるものがあります。HDR力覚センサーは、ダイナミックレンジが、例えば10gから20kgまでの広範囲であることが特徴です。

AIとロボット技術にHDR力覚センサーを組み合わせることによって、微小な力を調整しながら、細微な組み立て作業ができます。生産現場では、ロボットによる組み立て作業の自動化・高度化が進んでいます。

6. 静電容量型力覚センサー

静電容量型力覚センサーの特徴は、2枚の平行板の距離変化の検出により6軸成分を測定できる点です。シンプルな構造を実現でき、かつ価格を安価に抑えることが可能です。

また、過負荷対策ストッパー機構がセンサー内部に搭載された力覚センサーがあります。最近では産業用ロボット分野で多く利用されます。製造業では自動化が進んでいることから、ますます需要が伸びていくことが予想されます。

力覚センサーのその他情報

力覚センサーの活用

力覚センサーを使用したロボットを、人が操作することによって、人とロボットとの協調作業が実現可能です。微小な力加減を必要とする細かな作業もできます。

特に製造現場では、熟練の職人しかできない作業を力覚センサーを用いることによって、作業の自動化を実現し、生産性を向上させています。医療分野での活用例では、患部の状態を触覚診断により把握する遠隔診療に、力覚センサーの活用が期待されます。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/84/4/84_303/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrsj1983/9/6/9_6_759/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jacc/49/0/49_0_361/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/84/4/84_307/_pdf/-char/ja
https://www.mirai-lab.co.jp/info/4741
https://www.adcom-media.co.jp/news/2020/01/25/33224/
https://robotaward.jp/archive/2014/prize/robot02.pdf
https://wacoh-tech.com/solution/movie.html

洗浄装置

洗浄装置とは

洗浄装置

洗浄装置 (英:cleaning system) とは、化学的・物理的な性質を利用して材料表面に付着している不要なものを取り除く装置です。

精密機器や半導体、ディスプレイなどの製造過程に使用されます。洗浄装置を適切に使用しなければ、不良品や歩留りが多発する可能性があります

洗浄の方法は、超音波洗浄、スプレー洗浄、ブラシ洗浄、ドライ洗浄、溶剤洗浄などさまざまです。半導体の製造の場合、製造工程数は500以上ありますが、その中で洗浄工程が30%~40%を占めると言われています。

洗浄装置の使用用途

具体的な洗浄装置の使用例は、次の通りです

  • 半導体プロセスにおけるシリコンウェーハの洗浄
  • 金属フィルタのメッシュに付着した汚れの洗浄
  • 切削後の金属表面に付着した金属粉の除去

洗浄装置は、汚れの種類、洗浄対象の大きさ、洗浄時間、洗浄精度などを考慮して選択します。また、洗浄方法や使用する洗浄剤、乾燥方法なども重要です。

洗浄装置の原理

半導体プロセスの場合、洗浄の役割はウェーハの汚れを除去することです。汚れはパーティクルと呼ばれる目に見えない小さなごみ、人の垢・フケに含まれる有機物、汗などの油脂、工場内で使っている金属による汚染などがあります。

洗浄装置は、この汚れを溶剤や純水で洗い流します。洗浄後は、乾燥が必須です。ドライイン・ドライアウトと呼ばれ、必ず乾燥させてから、ウェーハを装置から出します。

洗浄装置で代表的な方式は、超音波洗浄、スプレー洗浄、ブラシ洗浄、ドライ洗浄、溶剤洗浄などです。

1. 超音波洗浄装置

超音波洗浄装置は、薬液中に洗浄対象物を入れ、内部を超音波で振動されることで洗浄する装置です。洗浄対象により、振動の大きさや周波数を選定します。

2. スプレー洗浄装置

スプレー洗浄装置は、ノズルから気体や液体を噴出させて対象物を洗浄する方式です。ハンディタイプの洗浄装置もあり、洗浄対象が大きくても対応が可能です。

3. ブラシ洗浄装置

ブラシ洗浄装置は、ブラシを用いて汚れを取り除いた後、溶液やスプレー洗浄を用いて汚れを洗い流す装置です。ブラシという物理的な方法で洗浄するため、取り除きにくい汚れを洗浄することができます。

4. ドライ洗浄装置

ドライ洗浄装置は、UV (紫外線) を洗浄対象物に照射して、オゾンと活性酸素を生成し、活性酸素と汚れを反応させて、汚れを取り除く方式です。半導体やディスプレイの製造現場で主に使用されます。

5. 溶剤洗浄装置

溶剤洗浄装置は、溶剤の溶解力を利用することにより、汚れを溶かして取り除く装置です。非常に危険な溶剤を使用する場合があるので、注意が必要です。

洗浄装置の構造

洗浄装置の基本的構成は、搬送系、処理槽、純水槽、乾燥ステージです。搬送系は対象物を搬入・搬出する装置で、処理槽の中で対象物を洗浄します。純水槽は対象物に付着した薬液を洗い流す槽、乾燥ステージは対象物を乾燥させる装置です。

1種類の処理液で洗浄できる汚れは1つが原則であり、複数の汚れを洗浄する場合は、複数の処理槽と純水槽が必要です。半導体の製造プロセスでは、複数のウェーハをまとめて処理するバッチ式と、ウェーハを1枚ずつ処理する枚葉式の装置が使われます。

バッチ式は、キャリアと呼ばれるケースにウェーハをまとめて入れ、キャリア毎処理層に入れて洗浄します。また、枚葉式は、ウェーハを1枚ずつ回転させながら、スプレー式の洗浄を行います。

洗浄装置のその他情報

洗浄装置に使用する洗浄剤

半導体の洗浄は、複数の処理液を使用します。各処理液で除去可能な汚れが異なります。各処理の後に純水で洗い流しを行います。

  • SPM
    硫酸と過酸化水素の混合物で、有機物の除去用です。
  • APM
    アンモニアと過酸化水素の混合物で、パーティクルと有機物を除去します。さらに、超音波を加え、パーティクルの除去率を高めます。
  • DHF
    フッ酸と純水の混合物で、金属や酸化膜を除去します。フッ酸は、強酸であり、シリコンも溶かしてしまうので、純水で希釈したものを使って、ウェーハの表面のみを処理します。
  • HPM
    塩酸と過酸化水素の混合物で、残った金属や酸化物を除去し、表面に不働態化層を作って、汚れの再付着を防止します。

最後にウェーハを純水で洗い流して、乾燥工程を行います。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/60/2/60_2_103/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/60/2/60_2_95/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejjournal1888/85/924/85_924_1595/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/60/2/60_2_103/_pdf

真空ポンプ

真空ポンプとは

真空ポンプ

真空ポンプは、装置や容器から空気を排出し、真空にするための装置です。真空ポンプは、ポンプ、排気口、吸気口で構成されています。ポンプには、真空にするための仕組みが多く開発されています。

真空度には低真空、中真空、高真空などがあり、必要な真空度や、真空に到達するまでの時間、使用する温度環境を考慮して、使用する真空ポンプを適切に選定する必要があります。油を使用するかどうかで、ドライポンプとウェットポンプに分けられます。

真空ポンプの使用用途

真空ポンプは、医療機器や医療機器の製造過程、食品工場、電気機器、半導体の製造過程などで使用されます。また、真空を必要とする医療機器や理化学機器の補器としても使われます。真空ポンプは10種類以上の原理が開発されており、それぞれの特性を理解して適切に選定する必要があります。

真空ポンプの主な使用用途は以下の通りです。

  • 歯科医療時の唾液の吸引機
  • 魔法瓶における真空部の作成
  • 半導体プロセスにおけるプラズマ使用時の真空環境作成
  • 食品梱包材の接着時
  • 理化学研究機器用の真空源( エバポレータ、ろ過、真空乾燥器、デシケータ、等 )
  • 工場における生産設備用大容量真空ポンプ

真空ポンプの原理

真空ポンプを動作原理により分類し、そのうち代表的なものの動作原理を説明します。

1. 油回転真空ポンプ

油回転真空ポンプは、回転するローターなどの働きで吸入した空気を押し出すようにして排気する真空ポンプで、気密性を高めるために油を使うウェットポンプの総称です。ロータリー真空ポンプとも呼ばれます。

詳細な形式として、回転翼型油真空ポンプ、カム形油回転真空ポンプ、揺動ピストン型油回転真空ポンプなどがあります。回転翼、カム、ピストンに結合した揺動部と、空気と接する部位の形は異なりますが、いずれの形式でも、ローターの回転に伴って空気を排出することで真空を作ります。

油を使う以上、油の蒸気圧が真空の限界となりますが、油の働きで安定した性能を発揮でき、小型の装置で容易に中真空を得ることができます。

2. 油拡散真空ポンプ

油拡散真空ポンプは、ボイラーとジェットノズル、凝縮機で構成されています。ボイラーで加熱して蒸気になった油をジェットノズルにより超音速で噴射し、ポンプ内の空気分子を排気口に押し出します。蒸気になった油は凝縮器で液体の油となり再利用されます。

3. 回転翼型ドライ真空ポンプ

回転翼型ドライ真空ポンプは、回転するローターとベーンが吸気口から吸入した空気をかき出すようにして排気する真空ポンプで、油を使わないものです。空気の逆流を防ぐことが出来ないため、低真空状態が限界になりますが、大きな排気速度を得ることができます。

4. 揺動ピストン型ドライ真空ポンプ

揺動ピストン型ドライ真空ポンプは、偏心回転軸に連動するピストンによって、空気を押し出すようにして排気する真空ポンプです。構造上、空気の逆流を防ぐことができないため、低真空状態が限界になりますが、メンテナンスが容易です。

5. ダイアフラム型ドライ真空ポンプ

ダイヤフラムポンプ( 膜ポンプ )とは、ゴム、樹脂、金属といった素材から成るダイアフラムの往復運動と逆止弁を組み合わせて流体を輸送するポンプです。真空ポンプとする場合、逆止弁があるため気密に油を用いる必要が無く、ドライポンプとすることができます。往復運動に伴い、真空にしたい側から空気を吸い込み、大気側に吐き出すことを繰り返して真空を作ります。

6. スクロール型ドライ真空ポンプ

スクロール型ドライ真空ポンプは、渦巻型のステータとローターの運動の組み合わせによって排気するドライ真空ポンプです。渦巻の運動により、空気を中央に寄せて、中央部から排気します。

7. ターボ分子ポンプ

ターボ分子ポンプは、タービンの形をしたドライ真空ポンプです。タービン翼を分子の熱運動に近い速度で高速回転させ、タービン翼の傾きに応じた分子運動の偏りを作ることで排気を行います。タービン翼の高速回転を可能とするため、ある程度の真空中で使用する必要があり、他の真空ポンプと組み合わせて使われます。

真空ポンプの選び方

真空ポンプの選定では、到達真空度、排気時間、排気容量などを考慮してポンプの種類を決定します。真空度には低真空、中真空、高真空などがあり、それぞれに合った真空ポンプがあります。

1. 低真空用の真空ポンプ

低真空用では、ダイアフラム型ドライポンプ、揺動ピストン型ドライポンプ、回転翼型ドライポンプなどがあります。ダイアフラム型は回転翼型ドライポンプのような摺動部がないので煽動による微粒子が発生せず、クリーンな真空を得ることができます。揺動ピストン型は構造がシンプルでメンテナンスが容易です。回転翼型は大きな排気速度を得ることができます。

2. 中真空用の真空ポンプ

中真空用では、スクロール型、油回転型などがあります。スクロール型は多くの製品で2段圧縮により効率を確保しており、低振動、低騒音なものとなっています。油回転型は名前の通り、油により潤滑、密封を行っているため効率が良く、真空度の安定性が良いポンプです。

3. 高真空用の真空ポンプ

高真空用では、2つのローターを回転させて吸引、圧縮するルーツ型( メカニカルブースター )真空ポンプ、多段のルーツ型ポンプを一体化した多段ルーツ型真空ポンプ、構造がシンプルで排気速度が大きい油拡散型真空ポンプなどがあります。更に超高真空用と呼ばれるものにターボ分子ポンプやクライオポンプなどがあります。

このように様々な種類の真空ポンプがあるため、その特徴や特性を良く理解し、用途に合ったものを選択することが大切です。

真空ポンプの使い方

真空を使用した設備では、到達真空度、排気時間を考慮して真空ポンプを選定します。しかし、一般的に真空度が上がると排気速度が遅くなること、高真空用ポンプの中には大気圧状態では使用できないものがあることから、真空ポンプ単独ではなく、組み合わせて使用する場合があります。

例えば、「低真空で排気速度の速いポンプ」と「高真空のポンプ」を切り替えて併用したり、同時使用したりすることで、高真空でもある程度の排気速度が得られます。

具体例としては、油回転型で低真空領域まで真空引き( 粗引き )し、その後、メカニカルブースターポンプに切り替えて高真空まで真空引き( 本引き )する方法が挙げられます。

また、2種類の真空ポンプを連結し、中低真空用ポンプを介することで大気圧でも高真空用ポンプを使用できるようにすることもあります。

真空ポンプのその他情報

真空ポンプのオイル

油回転真空ポンプは、正しく使えば安定した性能を発揮しますが、オイルの管理が重要です。気体を吸引して真空をつくる性質上、どうしても吸引したものの中にある不純物( 水など )がオイルに混入してしまいます。このような不純物がオイルの性能を劣化させます。

ほとんどの油回転真空ポンプには、ガスバラストといって揮発性の成分を蒸発させる機能があるので、定期的にガスバラストを行うとよいでしょう。オイル量の日常点検、定期的なオイル交換も重要です。また、「オイルを汚染しやすい用途であるが安価なのでとりあえず油回転真空ポンプを設置していた」など、状況によっては近い性能のドライポンプに置き換えるなどの見直しも意義があるかもしれません。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvsj2/56/6/56_13-LC-014/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tsj1973/23/11/23_11_657/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tsj1973/23/11/23_11_670/_pdf
https://ulvac-kiko.com/support/pump_types.html

マイクロポンプ

マイクロポンプとは

マイクロポンプとは、小型で精密なポンプです。

微小な液体の制御や操作を行うための装置として、分析機器や医療、バイオ、ナノテクノロジーの分野で使用されています。マイクロポンプは、機械的な動力機構を必要とする機械式と、物理的な外力により駆動させる非機械式に分類できます。

マイクロポンプの使用用途

マイクロポンプの使用用途は、精密機器や医療機器、バイオ機器、ナノテクノロジーなどです。また、小型化が進む機器の中で重要な役割を果たしています。

例えば、医療機器では、人工心臓に組み込まれたインスリンの注入や人工腎臓などに使用されています。その他、希少な化学薬品を用いた実験における薬品の制御など、さまざまな分野で活躍できる性能を兼ね備えていることが特徴です。

一般的に販売されているマイクロポンプは、機械駆動の電圧式マイクロポンプです。ただし、使用用途に応じて、非機械駆動のマイクロポンプも採用するなど使い分ける必要があります。

マイクロポンプの原理

マイクロポンプは、主にポンプヘッドとドライバーで構成されています。ポンプヘッドは、流体を移送するための部品で、通常はシリコン製です。ドライバーは、ポンプヘッドを動かすための部品で、一般的には電気信号を利用して制御されます。そのほか、制御回路や電源などの電子部品も必要です。

また、圧力差を利用した圧力駆動型ポンプから、非機械式の光駆動のマイクロポンプ、ナノモーターで作動するマイクロポンプ、毛細管現象を利用するマイクロポンプまであります。

1. 圧力駆動型ポンプ

ポンプ内外の圧力差を利用して液体を移動する圧力駆動型ポンプは、液体を移動するために圧力差を利用するポンプの1種です。液体を押し出すために、ポンプ内部の圧力を高くすることで、外部の低圧によって液体を吸い出す力を生み出します。

圧力駆動型ポンプは、高い精度と信頼性を持ち、さまざまな用途に応じた種類が多数存在していることも特徴です。例えば、高圧を扱うために設計されたポンプや微小な液体の移動に適したマイクロポンプなどがありますが、構造が比較的シンプルであるため、製造コストが低く、幅広い用途に適しています。

2. 光駆動式マイクロポンプ

光駆動型ポンプは、光エネルギーを利用して液体を移動するポンプの1種です。光を照射することで、液体の表面に生じる光圧を利用して、液体を移動させます。バイオ分野に主に利用されており、微小な流路内に液体を送り込むことが可能です。

ただし、光駆動型ポンプは、光源が必要であるため、外部の影響を受けやすく、光源の光強度や方向によって性能が変化する可能性があります。

3. ナノモーター式マイクロポンプ

ナノモーター式マイクロポンプは、細胞内のエネルギーを機械的な動きに変換できるナノモーターを利用して液体の輸送を行う仕組みを持つポンプです。磁場や電場などのエネルギー源によって駆動され、非常に小さな空間でも動作することができます。

4. 毛細管現象式マイクロポンプ

毛細管現象式マイクロポンプは、微小な流路内に毛細管現象を利用して液体を移送するポンプです。微小な流路内に細い管を設置し、その内部に液体を充填します。

そして、細い管を曲げることで、管内壁と液体の表面張力が作用して、液体が上昇する方向に移動するという原理を利用しています。それにより、微小な流路内の液体を移送することが可能です。

マイクロポンプの特徴

マイクロポンプの最大の特徴はその小型性です。これらのポンプは、非常に小さな流路内で流体を移動させることができます。この小型性により、マイクロフルイディクス研究や微細なバイオチップの開発など、多くの微小スケールアプリケーションに利用されます。

また、マイクロポンプは低コストで製造することができます。これは、ポンプに必要な部品の数が少なく、製造が比較的容易であるためです。これにより、大量生産が可能であり、医療や生物学などの分野で広く使用されています。

エンコーダ

エンコーダとは

エンコーダ

エンコーダ (英: Encoder) とは、位置の変化を電気信号に変換して出力する装置です。

測定する位置の対象は回転角と直線変位で、回転角を測定するエンコーダはロータリーエンコーダ、直線変位を測定するエンコーダはリニアエンコーダと呼ばれています。

位置の変化を計測する方法はインクリメンタル方式とアブソリュート方式に分類できます。測定には光や磁力、電磁誘導などを用いるのが一般的です。

エンコーダの使用用途

エンコーダは、モーターを使用する機械で主に使用されます。その中でもエンコーダを使用する代表的なモーターはステッピングモーターサーボモーターです。

1. ステッピングモーター

ステッピングモーターはパルス信号によって回転速度・回転角度を正確に制御できるモーターです。

パルスの間隔とモーターに加えるパルス信号の数がモーターの回転角・速さを決め、正確な位置決めが可能です。主に製造現場などで使われています。

エンコーダを使わずフィードバック制御しないオープンループ方式と、エンコーダを使ってフィードバック制御するクローズドループ方式の2種類があります。

オープンループ方式はクローズドループ方式に比べてシステムが簡略化されていますが、パルス速度に追従できなくなる「脱調」が起きないよう常に最大電流を流しています。

2. サーボモーター

サーボモーターは1回の制御の移動距離・回転角を正確に制御して、連続的な直線運動や回転運動の速さを一定に保つ仕組みを持つモーターです。

エンコーダ・ブラシレスACモーターまたはDCモーターサーボアンプ (ドライバー) の3点セットで構成されますが、現在はACモーターが主流になっています。また、使用される機械としては精密な動作制御が必要な機械が挙げられます。具体的には産業用ロボットや自動車、エレベーター、無人搬送機などです。特に工場で多く使用されます。

エンコーダを選定する際には、測定精度や分解能、反応時間、大きさや形状、振動や衝撃に対する耐久性、使用環境に対する保護機能を考慮しましょう。

エンコーダの原理

エンコーダは検出方法によって、光学式、磁気式、電磁誘導式に分けられます。

1. 光学式エンコーダ

回転軸に取り付けた等間隔に穴の開いた回転円盤に光を当てて、穴を通過する光の周期を検出することで、変位を測定可能です。光は機械に対する影響が少ないため、一般的に広く利用されています。

また、光学式のエンコーダは出力の信号によりインクリメンタル方式とアブソリュート方式の二つに分類できます。それぞれの方式について説明します。

  • インクリメンタル方式
    インクリメンタル方式は、回転円盤の穴を光が何回通過したかを測定することで、位置の変位を測定する方法です。
  • アブソリュート方式
    アブソリュート方式は、回転円盤の穴にそれぞれ絶対位置の信号が割り振られており、その信号を検知することで位置の変位を測定する方法です。

2. 磁気式エンコーダ

回転軸に取り付けた磁石の磁界が回転して変動することを利用して変位の測定を行います。

3. 電磁誘導式エンコーダ

回転軸の周りに取り付けられたコイルに発生する電磁誘導を検出することで変位の測定を行います。

エンコーダのその他情報

1. エンコーダの分解能

エンコーダの分解能とはロータリエンコーダを1回転させた場合に出力されるパルス数のことを指します。分解能の単位は「パルス数/回転数」で表され、分解能を向上させるためには1回転あたりのパルス入力数を多くする必要があります。

高分解能のエンコーダを選ぶことで、より精密な制御が必要なロボットや工作機械などの角度制御能力を大きく向上させることができます。

2. エンコーダとサーボアンプ間の通信

エンコーダとサーボアンプ間の通信はブラシレスACモータまたはDCモータと、パラレル伝送方式とシリアル伝送方式の2種類があります。

  • パラレル伝送方式 (英語:parallel communication)
    ロータリエンコーダから出力されるA・B・Zパルスをパラレルに伝送する方式で、並列伝送方式とも呼ばれます。
  • シリアル伝送方式 (英語:serial communication)
    位置データをシリアルで伝送する方式で、直列伝送方式とも呼ばれます。

シリアル伝送方式はパルス伝送方式と比較して配線が少なく、位置ずれを起こしにくいです。そのため最近は高分解能エンコーダはシリアル伝送方式を用いることが多くなりました。

3. エンコーダの活用事例

モーター制御の効率改善
エンコーダはステッピングモーターのパルス応答に追従できなくなる脱調を防ぐ目的で使用されていますが、最近のトレンドとしてはモーター制御の効率改善の目的に用いられるケースが多いです。

エンコーダのないオープンループ制御の場合は、非回転時にも誤動作防止用に励磁電流や、脱調防止のためにモーターに最大電流を流し続ける制御が一般的です。ただしこの場合、モーター停止やモーターが低負荷の状態でも無駄に電流を流すことにつながってしまいます。

そのためエンコーダを用いてモーター制御を負荷に応じて詳細にクローズドループ制御することで、システム全体の電流抑制と高効率化が実現可能です。EV (電気自動車) でもモーターを用いた低消費電流化は走行可能距離に密接に繋がるため、エンコーダ活用の効率改善が検討されています。

エンコーダの小型薄層化
これまでのエンコーダは内部部品がディスクリートで構成されており、それらを実装しシステムとして実現するための回路基板が必要でした。しかし、近年では受光素子やLED等の発光素子、周辺の回路を一つのIC内にまとめた反射型エンコーダICが登場し、小型薄層化が進んでいます。

このICと反射スリット板でエンコーダの機能が実現できます。リニアエンコーダとしての超小型アクチュエータや、小型のロボットに用いるためにこの反射型エンコーダICが活用され始めています。

参考文献

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1986/57/8/57_8_1369/_pdf
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/lab/pulse/glossary.jsp
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2014/pr20140423/pr20140423.html