力覚センサーとは
力覚センサー (英: force sensor) とは、力やモーメントの大きさを測定するセンサーです。
物理的な力の量とその方向を検出し、人間の触力覚を再現する目的で使用されます。おもな用途は、ロボットです。
力をX、Y、Zの3方向に分けて検出し、またX、Y、Zの各軸回りのモーメントも検出するため、6軸型の力覚センサーが基本です。
力覚センサーの使用用途
力覚センサーは、産業用ロボットなどに使用され、従来人手に頼らざるを得なかった作業を自動化できるようになります。
1. 外力・反力の検出
力覚センサーは、力とモーメントを同時に測定することが可能です。ロボットの作業端に設置し、外力・反力を測定しながら、適切な力で作業ができます。
2. 精密作業の自動化
力覚センサーで正確な力やモーメントが測定できるので、ロボットが適切な力で作業ができます。精密作業のロボットによる自動化が出来るようになります。
具体的な作業は、端子が柔らかい電子部品やコネクタの挿入、遊びが少ない嵌合、精密なねじ締め、バリ取り、微妙な力加減での研磨、ピッキング作業、2足歩行ロボットの自立制御などです。
3. 触覚診断・遠隔診療
力覚センサーを取り付けた端末を患者側に配置し、力覚センサーで読み取った力やモーメントを医師側が読み取ることで、遠隔触覚診断が可能です。
力覚センサーの原理
力覚センサーは、力によって生じる変形量を検出して、力やモーメントに換算します。
力覚センサーの検出方法の中で、ひずみゲージ式、圧電式、光学式、静電容量式が代表的です。
1. ひずみゲージ式力覚センサー
ひずみゲージ式は、センサー部にかかる引張力・圧縮力により、電気抵抗が変化する金属抵抗材料の性質を利用して、力やトルクに換算する方法です。小型で精度が高く、応答性も高いことから、力覚センサとして、多く使われる方式です。
2. 圧電式力覚センサー
圧電式は、水晶やPZT (ジルコン酸チタン酸鉛) などの圧電効果を有する材料をセンサー部に使用して、力を測定する力覚センサです。小型で応答性が高く、コストも比較的優れています。ただし、精度は、ひずみゲージ式や静電容量式には及びません。
3. 静電容量式力覚センサー
静電容量式の構造は、センサー部を金属材料の電極が向かい合わせに配置されたコンデンサ型としたものです。力により、導体間にひずみが生じて距離が変わることによる静電容量の変化を検知する方式です。
静電容量式は、構成が比較的簡単で低コストなことが特徴です。電極をフィルム状にすると、小型化・薄型化が可能です。精度や応答性も優れています。
4. 光学式力覚センサー
光学式は、計測対象物に一定間隔で模様をマーキングしておき、力が加わった時に生じる模様の変化を、カメラやレーザーなどの光学センサで検出して、力の大きさを計算して求める方式です。
光学式は、非接触で測定できることが最大のメリットです。一方、精度、応答性、小型化、コストは、他の方式より劣ります。非接触測定が必要な特殊な用途に限定されます。
5. HDR力覚センサー
HDR (ハイダイナミックレンジ) 力覚センサーと呼ばれるものがあります。HDR力覚センサーは、ダイナミックレンジが、例えば10gから20kgまでの広範囲であることが特徴です。
AIとロボット技術にHDR力覚センサーを組み合わせることによって、微小な力を調整しながら、細微な組み立て作業ができます。生産現場では、ロボットによる組み立て作業の自動化・高度化が進んでいます。
6. 静電容量型力覚センサー
静電容量型力覚センサーの特徴は、2枚の平行板の距離変化の検出により6軸成分を測定できる点です。シンプルな構造を実現でき、かつ価格を安価に抑えることが可能です。
また、過負荷対策ストッパー機構がセンサー内部に搭載された力覚センサーがあります。最近では産業用ロボット分野で多く利用されます。製造業では自動化が進んでいることから、ますます需要が伸びていくことが予想されます。
力覚センサーのその他情報
力覚センサーの活用
力覚センサーを使用したロボットを、人が操作することによって、人とロボットとの協調作業が実現可能です。微小な力加減を必要とする細かな作業もできます。
特に製造現場では、熟練の職人しかできない作業を力覚センサーを用いることによって、作業の自動化を実現し、生産性を向上させています。医療分野での活用例では、患部の状態を触覚診断により把握する遠隔診療に、力覚センサーの活用が期待されます。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/84/4/84_303/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrsj1983/9/6/9_6_759/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jacc/49/0/49_0_361/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/84/4/84_307/_pdf/-char/ja
https://www.mirai-lab.co.jp/info/4741
https://www.adcom-media.co.jp/news/2020/01/25/33224/
https://robotaward.jp/archive/2014/prize/robot02.pdf
https://wacoh-tech.com/solution/movie.html