凍結保存容器についての概要、用途、原理などをご説明します。また、凍結保存容器のメーカー15社一覧や企業ランキングも掲載しておりますので是非ご覧ください。凍結保存容器関連企業の2023年11月注目ランキングは1位:日本フリーザー株式会社、2位:日本エア・リキード合同会社、3位:株式会社池田理化となっています。
早稲田大学大学院でMBE法による窒化物半導体成長に関する研究に従事。2016年に大学院を修了後、非鉄金属系メーカーへ入社。金属製錬工場における設備保全・エンジニアリングの業務に従事。2022年に化学系メーカーへ転職。同様の業務に従事。
前田 理也のプロフィール
凍結保存容器とは、生物学的試料を−60℃~−160℃の超低温条件下で長期保存するための専用容器です。
凍結保存とは、生物学的試料を液体窒素 (−196℃) を入れた専用の容器に格納して保存することを指します。簡便法としては、−80℃の冷凍庫を利用する場合もあります。凍結保存は、生物学的試料や医薬品を長期間保存するための効果的な方法です。
液体窒素や液体窒素蒸発器を使用して非常に低い温度で保存するため、試料の劣化が最小限に抑えられます。また、低温での保存により、生物学的反応や酵素活性が停止し、試料の品質が維持されます。このため、後の実験や解析において正確な結果を得ることが可能です。
ただし、凍結保存容器は非常に低い温度で使用されるので、容器の材質や耐久性が重要です。適切な材質でない容器を使用すると破損する可能性があります。
凍結保存容器はさまざまな用途で使用されます。主な使用用途は以下の通りです。
生物学研究では、細胞や組織などの生物学的試料を凍結保存することが一般的です。試料内の生物活性を保持しながら長期間保存します。凍結保存により、細胞の活性やタンパク質の構造が保存され、後の実験や解析に利用可能です。
また、バイオバンクでは大規模な生体試料の凍結保存が行われます。疾患研究や個別治療のためのリソースとして活用されています。
医薬品の製造プロセスでは生体材料や中間生成物を凍結保存することで、安定性を保ちつつ製品の品質を確保することが必要です。バイオ医薬品などの高度な製品は、温度の変動に敏感であるため、凍結保存が特に重要です。また、臨床試験用の試料も凍結保存され、後の分析や検証に使用されます。
臓器移植においては、一部の臓器や組織は非常に低い温度で保存することが必要です。心臓や腎臓のような臓器は液体窒素の温度で凍結保存され、移植時に生体活性を保持するための保存が行われます。凍結保存により、臓器提供者と受信者のマッチングが行われるまでの時間を延ばすことが可能です。
また、再生医療は、幹細胞や組織工学的な治療法の開発を含む領域です。これらの治療法では、患者自身の細胞や組織を採取して加工し、再び利用する場合があります。この際、凍結保存により試料を長期保存し、必要な時に利用できるようにしています。
冷凍保存容器の原理は、低温状態で試料や物質を保存することによって生物学的な反応や化学的な変化を停止し、劣化や変性を最小限に抑えることです。一般的な冷凍保存容器には、液体窒素や液体窒素蒸発器を利用して非常に低い温度を維持する仕組みが利用されます。
液体窒素は-196℃で沸騰する非常に低温の液体です。凍結保存容器には液体窒素が充填されており、試料や物質は液体窒素の蒸気によって冷却されます。液体窒素は蒸発する際に非常に冷たい気体を発生させるため、試料を非常に低温に保つことが可能です。
冷凍保存容器の中では試料や物質は実質的に液体窒素の温度に達するため、周囲の温度変化に対して安定しています。液体窒素の低温によって試料中の分子運動が大幅に低下し、生物学的な活性や化学的な変化を停止させることが可能です。これにより、試料の品質を長期間にわたって保つことができます。
凍結保存容器は、特殊な材料や設計がされており、液体窒素の蒸発を最小限に抑えるように工夫されています。また、密封性の確保や容器の耐久性なども重要な要素です。これらの要素が備わっていることで、試料の品質を劣化させずに効果的に冷凍保存できるようになります。
凍結保存容器を選ぶ際は、資料の種類や温度帯、容量などを考慮します。凍結保存する試料の種類や性質によって、適切な容器の種類を選ぶことが必要です。
細胞や組織の保存には、専用の細胞冷凍保存容器があります。また、液体試料を保存する場合には液体窒素耐性の容器が必要です。
凍結保存容器は非常に低温で使用されるため、対応範囲も確認します。液体窒素を使用する場合、容器は液体窒素の蒸気温度に耐えることが求められます。
その他、使用する試料の量や保存する量に応じて、適切な容量の容器を選ぶことが必要です。容器の大きさや形状が、試料を効率的に収容できるかどうかを判断する上で影響を与えます。
参考文献
https://www.labinox.co.jp/item_thermolyne_02.html
http://www.nikko-hansen.jp/download/Catalog/cat/cat_Locatour_201704.pdf
https://www.oakclinic-group.com/baiyoushitu/container.html
https://www.monotaro.com/s/c-85729/
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles/news/docs/akiyama_190328.pdf
https://cellbank.nibiohn.go.jp/legacy/information/history/takaoka/sect24.htm
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/30/7/30_7_441/_pdf
https://assets.thermofisher.com/TFS-Assets/LPD/brochures/sample-storage-products-catalog-2019-ja.pdf?CID=Social_LAB
https://www.wakenbtech.co.jp/topics/post-7382
Metoreeに登録されている凍結保存容器が含まれるカタログ一覧です。無料で各社カタログを一括でダウンロードできるので、製品比較時に各社サイトで毎回情報を登録する手間を短縮することができます。
エーテック株式会社の「CRIC(クリック)シリーズ」は液化窒素貯蔵・輸送用の小型タイプの容器で、液化窒素のロスが非常に少なく軽量なため、手軽に移動させることができます。
超低温研究や医学研究用などにおいて、少量サンプルを運搬、貯蔵する用途に適しています。
内容積によって5L容器、10L容器、25L容器の3種類に分かれており、液体窒素の注入口は共通してφ24mmに設計されているため、使用量や持ち運びの頻度、距離など使用条件に合わせて選ぶことができます。
液体窒素による一時凍結保存容器「Thermo」シリーズは、真空断熱方式によるすぐれた温度安定性をもっており、研究室内などの短距離での液体窒素の共有、定期的な液体窒素の補充、一時的なサンプルの凍結保存などに適しています。
軽量かつ耐久性のアルミニウムから作られているため、容易に取り扱うことができます。
液体窒素容量によって5L、10L、20L、32Lの4種類のラインナッがあり、小型タイプ(Thermo 5・10)には持ち運び用のハンドルが付いています。
「CryoHandy MR-LN-500」は、1~2mLのチューブサンプルを液体窒素の凍結条件下で搬送するための容器で、ふた天面についている温度センサーから内部の温度を確認することができます。
極めて小型で持ち運びしやすく、-150℃以下を4時間まで維持できることから、細胞を取り扱う研究機関、病院やクリニックなど短時間の施設間搬送に適しています。
細菌が繁殖しにくく、気化した窒素を内部にため込まない構造になっており、ふたを閉めたままでも内圧が上昇する心配はありません。
AIR LIQUIDE社の「GTシリーズ」は、液体窒素による凍結保存用のアルミ製容器で、液体窒素の蒸発によるロスが少なく、低温域でサンプルを取り扱うことができ、生物学、生理学、免疫学、獣医学などあらゆる研究分野において活用されています。
電気容量式液面計と温度計がスタンダードで装備されており、また過去に生じた警報をアラームリストにて確認できるため、オンラインに接続すれば、クライオメモに保管されたデータも見ることが可能です。