電動バランサーとは
電動バランサーとは、重量物をサーボモーターの力で吊り上げ、無重力のように扱う搬送装置です。
この装置は、荷重センサーとサーボモーターの協調制御により、吊り下げたワークの重量を瞬時に感知します。そして従来のエア式バランサーや電気チェーンブロックとは異なり、慣性や摩擦の影響を電気的に補正するため、作業者は指先で軽く押す程度の力で、数十kgから数百kgの重量物を自在に移動できます。
特に、手を離した場所でワークがピタリと静止する位置決め精度の高さは、精密な組付作業において大きな利点となります。また、ワークの重さが変化しても自動でバランス状態を維持する機能も、作業効率の向上に寄与します。作業者の負担軽減と生産性の向上を同時に実現する次世代の搬送装置として、多くの製造現場で導入が進んでいます。
電動バランサーの使用用途
電動バランサーの主な使用用途を以下に示します。
1. 自動車・輸送機器分野
自動車製造の現場では、エンジン・トランスミッション・EV用バッテリー・シートといった重量部品の組付工程で多用されます。
電動バランサーが持つ超低速制御と、ワークを直接操作できるフローティング機能により、ボルト穴の微細な位置合わせや、フロントガラスのようなデリケートな部品の嵌め込みを、製品や車体を傷つけることなく円滑に遂行できます。
2. 金属加工・機械加工分野
金属加工の現場では、マシニングセンタや旋盤に対する重量ワークの搬入出 (ローディング・アンローディング) に活用されます。
チャックへの装着時に発生しやすい接触時の衝撃をモーター制御で抑制できるため、高価な設備や治具の破損を防ぎつつ、正確な芯出し作業を支援します。また、鋳造や熱処理工程など、高温環境下での重量物の移動においても、安全性を確保する手段として広く採用されています。
3. 物流・一般産業分野
物流倉庫や化学・食品工場では、段ボール箱・一斗缶・原料袋のパレタイズ (積み付け) 作業に導入されています。
作業者の動きに遅れずに追従する高い応答性が、頻繁な反復作業による疲労の蓄積や腰痛のリスクを大幅に低減します。さらに、排気を出さない電動式の特徴を活かし、医薬品製造や半導体関連など、高い清浄度が求められるクリーンルーム内での搬送作業にも利用範囲が広がっています。