安全ブロック

安全ブロックとは

安全ブロックとは、高所作業時の墜落を防止する巻取式の墜落制止用器具です。

ロック機構付きの巻取式ランヤードを備え、JIS T 8165で構造や性能要件が規定されています。これらの安全ブロックは、通常時はワイヤロープやストラップがスムーズに伸縮し、墜落時には内部の遠心ブレーキやロック機構が瞬時に作動して繰り出しを停止させます。自由落下距離を短く抑えることで、身体への衝撃荷重を大幅に低減できるのが特徴です。

巻取り機構によりランヤードが常に最短の長さに保たれるため、作業中の引っ掛かりや足元の妨げが少なくなります。このため、建設現場やプラント設備において不可欠となっています。親綱が張りにくい場所でも、単管パイプや構造物にメーカーの指定通りに設置することで安全を確保できます。

安全ブロックの使用用途

安全ブロックの主な使用用途を以下に示します。

1. エネルギー・通信インフラ分野

風力発電設備・送電鉄塔・通信用アンテナ塔・火力発電所の煙突など、垂直方向への移動が多い施設で広く採用されています。

これらの施設に設置された梯子を昇降する際、最上部に安全ブロックを固定し、フックを作業者のフルハーネスに接続することで安全を確保します。安全ブロックは、ロリップなどの垂直親綱用グリップとは異なり、事前の親綱設置作業が不要です。そのため、定期点検や緊急メンテナンスにおいて作業効率を落とさずに墜落防止措置を講じられます。厚生労働省が推奨する昇降時の安全対策としても、この分野での導入が進んでいます。

2. 建設・製造・物流分野

建設現場における鉄骨建方や屋根上作業・工場内の機械設備メンテナンス・物流拠点でのトラック荷役作業などで利用されます。

水平親綱の設置が技術的に困難な場所や、高所作業車が進入できない狭隘なエリアにおいて、建屋の梁や単管に安全ブロックを設置し、作業者の移動範囲をカバーします。特にトラックの荷台作業では、上部から吊り下げる形で使用され、墜落リスクを管理します。ただし、支点から離れすぎると落下時に振り子のように振られる「スイングフォール」が発生するため、使用角度の管理が重要視されます。

3. 化学・環境・プラント分野

化学工場のタンク・下水道のマンホール・貯蔵用サイロといった密閉空間 (コンファインドスペース) での入槽および出槽作業において広く利用されます。三脚 (トライポッド) 等の支持器具と組み合わせて使用されることが一般的です。

また、この分野では、墜落防止機能に加え、緊急時に被災者を地上へ引き上げるためのウインチ機能が付加されたモデルが選定されます。酸素欠乏症や硫化水素中毒などの危険性が潜む現場において、迅速な救助活動を支援し、二次災害を防ぐ役割も担っています。