ホースガイド

ホースガイドとは

ホースガイド

ホースガイドとは、ホースを使った散水、灌水資材です。

名前の通り、ホースの設置ラインを決めることができます。特に散水時に引っ張ったホースが畝に乗り上げて、作物を傷めてしまわないように用いられています。また、農作物との接触でホース自体も損傷するため、枝やトゲが出ているような作物を育てている場合にも効果を発揮します。

ミニトマトやキュウリなどの地面から少し高い位置にある作物に対しては、その上部を通らせるために、30~40cmの高さのホースガイドが適しています。ホースガイドローラーが付いたものが主流で、ホースが引っ張られるとホースガイドが回転しホースとの摩擦を抑え、ホースを傷めることがありません。

ホースガイドの使用用途

ホースガイドは、農園、花壇などに水を散布する際に、ホースの動線を確保するために用いられます。ホースが縦横無尽に配置されていると、引っ張ったときに地面と擦れてしまいます。その際、農作物へのダメージにつながるため注意が必要です。

特に地上に実を付ける果物や野菜、花の栽培に重宝されます。また、ホースが地面と接触するとホース自身の損傷にもつながります。小石が多い地質や杭やアンカーピンを打ち付けてある農地は、ホースガイドを活用するのが望ましいです。

畝と畝との間にホースを通す場合や畑のコーナーを通る場合など、ホースを曲げる必要があるポイントにホースガイドを設置して使用します。

ホースガイドの特徴

長所

ホースガイドの長所は、作業員の負担を減らせることです。防除で使用する動力噴霧器には、背負いタイプや場所を固定して使用するタイプなどがあります。

場所を固定するタイプの動力噴霧器で使用するホースは長いもので約100メートルのものまであります。このような長いホースを使用して散布をする場合、畝を傷つけないためにホースを支える補助員が必要となります。

しかし、ホースガイドを使用すれば、この補助員の役割をホースガイドがしてくれるため、作業員の人数を減らすことも可能です。

短所

ホースガイドの短所は、いくつも畝がある畑で使用する場合、畝ごとにホースガイドを移動させる必要があることです。また、使用している過程でホースとホースガイドが絡まってしまう可能性もあります。特に固いホースは、絡まりやすいため注意が必要です。

ホースガイドの種類

ホースガイドには、大きく分けてガイド部固定タイプとガイド部回転タイプの2種類があります。

1. ガイド部固定タイプ

ホースガイドの上部が固定されているため、ホースの往復通過が可能です。畝と畝との間を通過する際に便利です。

2. ガイド部回転タイプ

ホースガイドの上部が水平に回転するため、あらゆる方向からの作業が可能です。ただし、往復通過には適していません。

ホースガイドの選び方

性能に大きな違いはないため、基本的にはどれを選んでも問題はありません。しかし、ネギなどの畝が多く往復通過が多い圃場ではガイド部固定タイプがおすすめです。

ガイド部回転タイプは、自動巻取り機能のついた動力噴霧器を使用する際に役立ちます。サイズはさまざまなものがありますが、ホースのサイズに合わせて決めるのが理想です。

往復通過が必要な圃場では、ホースガイドを大きめのサイズにするとホースが絡まるリスクが軽減されます。スムーズにホースを送るためには、ホースガイドを複数使うことがおすすめです。

特に畝の多い圃場では、移動している畝間の入り口以外にも、次に入る畝間の入り口にホースガイドを設置しておくと、移動がスムーズになります。また、ホースガイドにはホースの外れ防止のための付属品も販売されています。付属品と併用することで、よりスムーズにホースを送れるようになります。

パッカー

パッカーとは

パッカーとは、ビニールハウスで用いられる軟質フィルムを骨組みに留める部材です。

ハウスの妻面、側面のパイプに対してフィルムをあてがい、その上からパッカーをはめます。パッカーを用いれば、フィルムに穴を開けず簡単に固定させることができます。一般的にパッカーは、フィルムが破れないように両サイドが半円状です。

風による強い圧力にも外れずにしっかりと固定するために、金属のバネ材を外部や内部に装着した製品もあります。なお、パッカー取外し専用工具を用いることで、フィルムを傷つけずに取り外すことができます。

パッカーの使用用途

パッカーは、ビニールハウスを利用する作業全般に適用されています。例えば、農業、造園業、家庭の農作業や園芸などです。

フィルムとパイプなどの骨組とを強固に固定する治具なので、農業用ビニールの様な強度のあるフィルムに適しています。反対に、POフィルムは強度が弱いため、摩擦などで破れやすいため適用外となります。

フィルムだけでなく、ネット類も同様に設置可能です。防虫ネットや、遮光ネットなどもパッカーで固定して機能性を発揮します。

パッカーの特徴

パッカーは挟む力が強く、ビニールや不織布など、パッカーで留めておきたいフィルムを傷つけてしまう恐れがあります。フィルムに穴が開くとビニールハウスやトンネルとしての効果を十分に得られなくなってしまうため、フィルムの素材との相性や耐久性に注意する必要があります。

パッカーは固定のために用いる器具なので、頑丈なつくりになっているものが多いです。曲線のあるパイプを使用する際には、柔らかい特徴のあるパッカーを選ぶとスムーズに使用することができます。

また、口幅や長さの種類が非常に多く、メーカーや商品によって特徴も大きく異なることから、使用する場面を想定し慎重にパッカーを選ぶことが大切です。

商品によって異なりますが、下記のような特徴が代表的です。

長所

  • ステンレス製のものは錆びにくく、グリップ力が持続する
  • 柔らかく作業性が良い
  • 取っ手付きで着脱しやすい
  • 対候性、耐衝撃性、耐薬品性に優れる
  • カーブしやすく、トンネルハウスにも使用可能

短所

  • サイズが様々で、骨組みを変えると使いまわしが出来ない
  • パッカーを取り外す際にビニールが破れることがある
  • 冬場は硬くなりやすく、作業性が下がる

パッカーの種類

パッカーはメーカーによって様々な商品が販売されており、使用できるパイプサイズや長さ、口幅などがメーカーや商品によって異なります。その他の特徴として、黒、グレー、青、緑、橙、黄といった様々な色があり、カラーバリエーションが非常に豊富です。

パッカーの選び方

パッカーを選ぶ際は、大きさや素材を吟味することが重要です。サイズが合わないものを選んでしまうと、パッカーがパイプに密着せず、効果が半減してしまったり、使用できなくなったりというアクシデントにつながります。そのため、使用するパイプの大きさを前もって計測しておくことが非常に重要です。

支柱に特化したパッカーは、トンネル支柱、アーチ支柱、新ねぶし竹など様々な支柱に使用することができます。ビニールハウスで使用するパッカーは、しっかり押さえ込むばね付きのものや、ふくらみがあり素手での取り外しがしやすいパッカーが最適です。

ビニールハウスに巻き上げをして使用する際は、ふくらみや突起がなくなだらかなパッカーや内側に凹凸加工が施されており、把握力が強いパッカーが適しています。パッカーの性能にあまりこだわりがない場合は、ビニールハウスによって様々なカラーで使い分けて、外観を楽しむ方法もあります。

パッカーの使い方

ビニールハウスやトンネルのビニールとパイプ、支柱といった骨組みを固定する際に幅広い状況下で用います。クリップタイプのものは、ビニールを骨組みにあてがい上からクリップで挟むだけで簡単に装着することができます。

その他の形状のものは、同じようにビニールを骨組みにあてがい、骨組みに向かって押し付ける形で装着します。また、パッカーを取り外す際は素手で引っ張って外す方法の他に、パッカーとビニールの間に先端を差し込み、てこの原理で簡単に外すことのできる器具を使用する方法があります。

ハウスバンド

ハウスバンドとは

ハウスバンドとは、温室ハウスのフィルムのばたつきを防ぐためのバンドです。

材質はHDPE (高密度ポリエチレン) やLDPE (低密度ポリエチレン) が用いられており、全天候に対応しています。マイカ線という名称で広く知られておりますが、これは石本マオラン株式会社が販売するハウスバンドの登録商標名です。

ハウスバンドの使用用途

ハウスバンドは、ビニールハウスやトンネルハウス、小トンネルのハウスフィルムを押さえるために利用されています。ハウスバンドでハウスフィルムを固定する際に、強風対策のため地面に杭を打ち、その杭にハウスバンドを結びつけるやり方が一般的です。

ハウスバンドは手で結ぶこともできますが、作業時間の短縮や仕上がりを綺麗にするという目的で、ハウスバンド用の留め具も多数販売されています。丈夫であることと作業性の良いことが特徴で、ハウスフィルムの固定以外にも作物を支える支柱の固定や作物の誘引、荷物の結束などに使用されます。

ハウスバンドの特徴

長所

1. 伸縮性がある
ハウスフィルムは伸縮性のある材質であるのに対し、ハウスバンドは伸縮しにくいという特徴を持っています。夏場の気温が高い時期はハウスフィルムが伸びてバタついてしまいますが、ハウスバンドで押さえることにより、ハウスフィルムのバタつきを軽減できます。

2. 耐候性・絶縁性・耐水性・柔軟性に優れている
ハウスバンドは対候性にも優れており、直射日光に晒される環境でも劣化しにくいです。また、モノフィラメントが入っており、柔軟性に長けているため、結びやすいことが特徴です。

余計な伸びがなく、締め直しの手間が省けます。その他、絶縁性や耐水性に優れていることも長所として挙げられます。

3. 摩擦が少ない
ハウスバンドの表面はソフトでフラットな形状が主流です。摩擦が少ないのでハウスフィルムを傷付けずに、押さえることができます。

短所

強風時や豪雨時の作業には向いていません。ハウスバンドが風で煽られたり、濡れたハウズバンドが滑ったりするため、作業効率が落ちます。天気の良い日に作業を行うのが望ましいです。

ハウスバンドの種類

ハウスバンドは、「マイカ線」や「ハウスベルト」など、様々な名称で販売されております。ハウス用や露地トンネル用、農業POフィルム用など用途によって種類が分かれているので、適したものを選定する必要があります。

ハウスバンドの強度やサイズにおいては、以下に挙げるような違いがあります。

1. 芯の数による分類

ハウスバンドには、数本のモノフィラメントをまとめた芯のような構造があります。この芯の本数を2芯や3芯~5芯というように表記しています。

芯を構成するモノフィラメントの本数や芯の数は、強度を左右する要素です。 一般的に、芯の本数が多いほど強度は強いですが、その分コストも高くなります。

芯の数が多くても、1芯に使われているモノフィラメントの数が少ない場合もあるため、注意が必要です。1つの芯に使われているモノフィラメントの本数と芯の数の積で強度が比較できます。

2. 幅 (巾) による分類

ハウスバンドの幅 (巾) は、9mmから50mmまで幅広くあります。幅が広いものほどハウスフィルムをより安定して押さえることができるため、ハウスフィルムとの摩擦が減り、ハウスフィルムの損傷を抑える効果があります。

幅 (巾) が広いものは、ハウスパイプや杭に結び付ける場合、専用の留め具を使用するのがおすすめです。幅が広いハウスバンドに透明なものが多いのは、ハウス内に影を作らないためです。

ハウスバンドの選び方

ビニールハウスは目的の違いからフィルムの種類が異なるため、適切なハウスバンドを選択する必要があります。例えば、農業ビニール用のバンドを農業POフィルムに使用できません。

農業POフィルムは性質上、スレ、コスレに弱いため、農業ビニール用ハウスバンドを使用すると破れてしまう場合があります。台風の多い地域のビニールハウスは、できるだけ強度の強いものを、作物の誘引やトンネルハウスには柔軟性の高いものがおすすめです。

超電導ケーブル

超電導ケーブルとは

超電導ケーブルとは、電気抵抗がない導体を使用して電力を送電するためのケーブルです。

現時点では技術的に実用化されていますが、商用化されて一般に広まるまでには冷却システムの技術確立やケーブル間の接続技術の確立などの課題があります。

超電導ケーブルは理論的には電気抵抗がないため、送電による損失が発生しません。そのため長距離の送電システムを構築可能です。しかし実際には交流送電を大電流で行うと、現行のケーブル程ではないもののケーブル損失が発生します。

超電導ケーブルの使用用途

超電導技術を応用して作られた超電導ケーブルの使用目的は電力の送電です。

理論的には超電導ケーブルによる大電力送電を行っても、ケーブルに電気抵抗がないため発熱がなく、電圧降下も発生しません。このため送電距離に関係なく大電力を送電可能です。しかし実際には僅かな損失があり、交流損失と呼ばれます。

超電導ケーブルを使用して交流送電を行う場合、僅かな損失はありますが、従来の銅製ケーブルと比較すると送電損失を約95%削減可能です。 

超電導ケーブルの原理

理論的に超電導ケーブルの抵抗値は0であり、送電ケーブルの断面積を非常に小さくできます。このため、電力送電インフラである巨大な送電施設や送電鉄塔、送電ケーブルなどをすべて小型化でき、メリットが非常に大きいです。

長距離送電で電圧降下がないため、現在のような高電圧送電ではなく低圧でも大電力を送電可能になります。現在では電力送電を交流で行っていますが、超電導ケーブルを使用すると直流電力送電を行うことが可能です。

超電導ケーブルを使用した直流送電は実験段階ですが、日本国内だけではなく世界中で技術開発が進められています。

超電導ケーブルの種類

イットリウム系の超電導ケーブルは液体窒素によって超電導になる材料です。臨界電流が高く磁界特性が良いため、電力ケーブルや変圧器のような超電導電力機器用の線材としての応用が期待できます。高効率送電技術として従来のケーブルより、送電損失をおよそ4分の1に低減可能です。大容量の超電導ケーブルだけでなく、コンパクトで軽量なケーブルもあります。

超電導ケーブルの選び方

超電導ケーブルは非常に少ない損失で大電力を送電できますが、超電導ケーブルには解決しなければならない問題があります。

超電導ケーブルを使用して交流送電を行うと、ケーブル損失が発生します。このケーブル損失も送電する電力量で変化するため、大電力を送電する場合には対応が必要です。また、現在では超伝導の臨界温度が-196°Cと上がっていますが、液体窒素などで冷却するシステムの技術の確立が重要です。

太陽光発電などの自然エネルギー発電の多くは直流であり、発電した電力を交流に変換して送電し、一般家庭まで送電した後、再度直流変換して使用しています。超電導ケーブルによる直流送電では、交流送電に対して送電損失を半分程度に抑えられます。

超電導ケーブルの構造

高温超電導線材を使った超電導ケーブルは、ケーブルの中心のフォーマの周囲に螺旋状にテープの超電導線材が多層巻き付けられ、超電導導体層が作られています。フォーマはケーブルの機械的強度を担い、電力系統事故で生じた電流を通電するバイパスとして働く銅より線です。

超電導導体層の外側には電気的な絶縁材料を巻き付けられ、電気絶縁層が作られています。その上の超電導シールド層には螺旋状に超電導線材が巻き付いています。

超電導シールド層には逆向きの誘導電流が流れ、外側に磁界を漏らさない状態で超電導導体層を流れた電流による磁界を遮蔽することが可能です。外側には銅線で構成される保護層があり、一相分のケーブルコアが形成され、断熱管の中に収納されています。断熱管はステンレス製の波付け管による2重管構造で、真空状態を保って外部からの侵入熱を防ぎます。

超流動ヘリウム

超流動ヘリウムとは

ヘリウムを極低温(2.17 K)以下にした場合、粘性が無い液体状のヘリウムになります。
この状態のヘリウムを超流動ヘリウムと呼びます。

ヘリウムは温度を下げると気体から液体の相転移を行います。さらに温度を下げると二次の相転移を起こし超流動となります。この時の転移温度をλ点と呼びます。

超流動ヘリウムには非常に特異な性質があります。
超流動状態では原子間の力が非常に小さくなります。このためヘリウム原子一個でも通過可能な空間があればヘリウム原子は侵入することが出来ます。その他に粘性が無くなることにより通常では起こらないような現象が起こります。

現在までに、ヘリウム3、ヘリウム4はλ点が異なりますが超流動ヘリウムになることが確認されています。

超流動ヘリウムの使用用途

超流動ヘリウムの使用用途は冷却に使用します。
超流動ヘリウムは非常に高い熱の伝導性があります。理論的には熱伝導度が無限大となるため発熱体の冷却には最適な媒体となります。

しかし、実用化する場合、超流動ヘリウム状態を保つための温度管理費用が大きくなるため、現在では液体ヘリウムの状態で使用されることもあります。

超流動ヘリウムが有望視されている物には、MRIなどの超伝導ヘリカルコイルなどの冷却に使用することを想定しています。
このような装置は高磁界を発生させるためマグネットなどが高温になります。この時、超流動ヘリウムにより効率的に冷却すると液体ヘリウムでは実現できない強磁界が発生するので測定精度が向上します。

また微小な信号測定装置に使用されている機器内では、僅かな熱の発生により測定精度に影響が出るため、超流動ヘリウムで効率よく冷却する必要があります。

超流動ヘリウムの特徴

超流動ヘリウムは液状ですが、超流動の状態では原子間の摩擦が無くなります。このため液状ヘリウムには粘性が無くなります。

この理由は原子間の相互作用が無くなるため原子単独で移動できるようになります。その結果、原子サイズの空間であれば侵入することができます。また、原子が自由に動けるため超流動ヘリウムの容器壁を這い上がり容器からこぼれ落ちる現象が起こります(超流動現象)

超流動ヘリウムの特徴として液体の粘性が無いため流れ始めると永遠に流れ続けることが出来ます。これは、超伝導の特性として超伝導体に一瞬電流を流すと永遠に流れ続ける現象と同様に超流動ヘリウムも永久流の特性があります。
超伝導体に電流を流すのと同じように、超流動ヘリウムを高速回転させると永久に回転を続ける特性があります。
さらに、超流動ヘリウムには粘性が無いため非常に細い管などに流すと圧力に関係なく一定流量で流れる特徴があります。(超流動)

また、超流動ヘリウムは熱的均衡が生じないため熱交換による高効率な冷却システムの構築が可能になります。(超熱伝導)

超流動ヘリウムの特性を得るには極低温を保持する必要があります。超流動ヘリウムが超流動を保つ温度(λ点)を超えた瞬間に超流動ヘリウムの性質が失われてしまいます。このような点が超流動ヘリウムを扱う上で課題となります。

このように超流動ヘリウムには通常空間では見られない特異な特徴が発現します。
現在のところ超流動ヘリウムは冷却に使用されることが主な用途ですが、その他の性質を生かせる技術の開発が進んでいます。

磁壁

磁壁とは

通常の磁石は強磁性体と呼ばれる材料より構成されており、この強磁性とは磁石に物体が引き付けられる性質を言います。

強磁性を有する物質は、磁気モーメントと呼ぶ磁力の大きさを表すベクトル量を有する原子層レベルの磁石が詰まっていますが、磁性体がすべて、磁石の性質を表さないことからもわかるように、強磁性体内部は異なる磁気モーメントのそろった領域に分かれています。

この磁気モーメントのそろった領域を磁区といい、異なる方向の磁区の間の境界層のことを磁壁といいます。

磁壁の使用用途

磁区や磁壁は強磁性体やフェリ磁性体の挙動を解析し、実際に活用するための非常に重要な概念です。

身近なところで使用している事例としては、クレジットカードの裏面の帯やPCのハードディスク、電車やバスの切符や定期券の裏などがあげられます。これらの箇所には強磁性体が塗布されており、磁壁(磁区)の情報を0と1の人工的なデジタル情報として記録し、これらの記録媒体と情報を統合して扱うシステムとの固有のデータのやり取りに活用しています。

磁壁の原理

磁壁の原理を理解するために、わかりやすい事例としてよくあげられる事例に金属製の針やクリップでの物理現象があります。

購入したばかりの金属針やクリップは、それ自体は特に磁石の性質は有していませんが、これらを磁石でこするとクリップや金属針が互いに引き寄せられ、まるでそれ自体が磁石の性質を有したような挙動を示す事例をご存知でしょうか。

購入したばかりのクリップや針と、磁石でこすった後のそれらとは、実は内部の磁区や磁壁の分布が変化しています。前者は通常では左右(上下)に対称的な磁区の状態を有していますが、磁石でこすることで、これらの磁壁の分布は変化してしまいます。これは磁石と接した際に現れたS極とN極からなる磁場により、クリップや針内部の磁区や磁壁の分布が変化するため、磁石から離したとしても、格子欠陥や不純物により磁壁が途中でひっかかってしまい、最初のように対称的な磁区の状態に戻ることがないためです。

よって対称的な磁区の状態から崩れたクリップや針からは表面に磁極が残ります。つまり磁力線が外部に放出され、他のクリップや針などを引き付けるあたかもそれ自体が磁石になったかのような挙動を示すのです。

よく裏面の帯を有するクレジットカードや切符などを磁石に近づけないでくださいという注意がなされるのは、この磁壁(磁区)の状態が変化して元に戻らなくなることを避けるためです。

なお、新規の強磁性体材料やフェライトなどの製品の、磁気特性を解析するためにも、この磁壁の概念は用いられています。

焼結助剤

焼結助剤とは

焼結助剤とは、金属やセラミックの粉末を焼結成形する際に使用する添加剤で、焼結を促進し安定化させるために使用するものです。焼結する材料より融点が低い添加剤を用いるのが一般的です。

焼結が困難な材料を焼結したい場合や、焼結後の密度を上げ、強度を上げたい場合などに、材料特性に悪影響がない範囲で焼結助剤を粉末に加えます。焼結助剤には、ホウ素や炭素などが使われます。セラミックスの焼結にはアルカリ土類金属や希土類の酸化物などを添加する方法があり、緻密化、高熱伝導化に効果があります。

焼結助剤の使用用途

焼結助剤が多く使われているのは、セラミックスの製造です。融点の高い金属の成形やセラミックスは、切断、接着や溶融などの工法では造るのが不可能であり、焼結で製造されます。炭化ケイ素や窒化ケイ素などのSi系の材料は、焼結が難しい特性があり、この場合焼結助剤を粉末材料に添加します。焼結助剤は、加熱時に材料粉末より低温で液体になり、緻密化を促進します。

ファインセラミックスは、さらに焼結性が悪いので、炭化ケイ素などをさらに微粒子化し、ボロンとカーボンなどを焼結助剤として添加します。窒化ケイ素のセラミックスの製造では、焼結助剤に窒化ケイ素ベリリウムを使う場合もあります。

また、家庭用の陶芸セットが商品化されています。陶芸粘土と焼結助剤を混ぜて好みの形状に成形し、電子レンジで焼結する商品です。

焼結助剤の原理

焼結の工程は、まず原料を粉砕して粉末を混合します。特に焼結が難しい材料の場合は、この段階で焼結助剤を混ぜ合わせます。そして、金型などに入れて加圧することで、所定の形状に成形します。粉末の成形を容易にするためにワックスなどを加えたりします。また、粉末の粒子が小さいと、型の中で密度むらが生じる場合があり、粉末と成形助剤を混ぜて噴霧して顆粒状にした原料を成形することもあります。

次に、成形時に有機物を添加した場合は、400℃ぐらいまでゆっくり加熱して有機物を取り除きます。その後高温に加熱して焼結を行います。このとき、アルミナジルコニアなどの酸化物セラミックスの場合、多くは大気中で加熱されます。鉄鋼材料などの金属や窒化ケイ素などの非酸化物セラミックスの場合は、酸化を防止するため不活性ガス中や真空中で焼結が行われます。

焼結は、粉末成形体を加熱すると原料の粒子同士が接合して粒子間の隙間が小さくなって固まる現象です。固体の金属やセラミックスでは拡散と呼ばれる現象によって物質が移動し、焼結が進行します。SiCやSi3N4などの焼結が困難な材料では、焼結助剤を加えないと温度を高くしても緻密化が中々進行しない現象があります。この理由は従来の理論では説明がつかなく、新しい自由エネルギー理論では、粒界エネルギーが高いと焼結の熱力学的な障害になりうることが解ってきました。焼結助剤の役割は、粒界エネルギーを低減させて焼結性を向上させるためと言われています。また、高温構造材料セラミックスは高温で焼結する間に粒子成長が起こって強度が低下する問題があり、低温焼結が重要になっています。

構造用鋼管

構造用鋼管とは構造用鋼管

構造用鋼管とは、鋼鉄で出来た管を言い、建築、土木などの構造用に使われるものです。鋼管の断面形状は円形のほか、角形もあり角形鋼管と呼ばれます。

構造用鋼管は多くの種類がありますが、ほとんどがJIS規格となっています。一般構造用炭素鋼鋼管(STK)は一般の建築、土木、支柱、及び鉄塔、機械部品などに多く使われています。一般構造用角形鋼管(STKR)は角形で建築、土木用です。機械構造用炭素鋼鋼管(STKM)は自動車、建設機械、産業機械及び鋼製家具まどの機械部品に使用されます。機械構造用角形鋼管(STKMR)は一般にはスモール角と呼ばれ、厚さが薄く自動車、鋼製家具などに使用されます。

建築構造用炭素鋼鋼管(STKN)は溶接性を良くしてあるため、主に建築構造部材として使われます。この他、自動車構造用電気抵抗溶接炭素鋼鋼管(STAM)、鉄塔用高張力鋼鋼管(STKT)、機械構造用ステンレス鋼鋼管(SUS-TK)などがあります。

構造用鋼管の使用用途

構造用鋼管の用途を分野別に具体例を整理すると、建築部材では、ビル・倉庫・集合住宅・戸建て住宅・立体駐車場などの鉄骨支柱、野球場・競技場・鉄道駅などの屋根の支柱、耐震用のブレースなどです。景観を重視する部材では、道路標識・信号・ガードレール・照明などの支柱、鉄道架線・鉄道信号などの支柱、及び鳥居の支柱、手すりなどがあります。

また、公園、遊園地やテーマパークなどの遊戯器具部材では、滑り台、鉄棒、ジャングルジム、及び観覧車、ジェットコースターなどの用途があります。橋梁の部材では、歩道橋、配管橋、工事用歩廊などに、海洋構造物では、海洋基礎、洋上風力発電機の基礎、及び浮桟橋、津波バリアなどに鋼管が使われます。土木部材では、鋼管杭、遮音壁基礎杭、足場仮設材などに、搬送機器では、コンベアローラー材、物流ラック、パレット、自動車塗装用ハンガー材などに使われます。

構造用鋼管の特徴

構造用鋼管の特徴は、円形断面では方向性がなく、同一断面積での断面2次モーメントが最大になり、圧縮やねじれに対する強度が大きいことです。また、形鋼などの構造用部材と比較して風圧の耐力が大きいため、構造物の軽量化や経済的設計が可能です。軽量化により運搬コストの低減やより大きいユニット化のメリットもあります。さらに外観が丸みと柔らかさを持ち、スマートな特徴があります。

構造用鋼管の製造法はいくつかあります。電気抵抗溶接法は、熱延コイルを素材とし管状への成形、高周波抵抗溶接などの一貫工場で量産する方法です。継目無鋼管は、丸鋼片の素材を加熱後穿孔機で中空素管を作ります。マンドレルミルやプラグミルで中空素管を圧延して長尺素管とし、外径の調整などの仕上げをして熱間圧延が完了します。LSAW鋼管は、厚板を開先加工をした後、プレス成形して管状にし、内外面からサブマージアーク溶接法によりシーム溶接した管です。また、スパイラル鋼管は、熱延コイルを素材として管に対してある角度で巻き戻しをし、スパイラル状に成形して内外面からサブマージアーク溶接法によりシーム溶接した管です。

カットワイヤ

カットワイヤとはカットワイヤ

カットワイヤとは、金属の線材を線径と同じ長さにカットしたものを言い、ダイキャスト部品、鋳物部品などの研磨用として、また塗装の剥離用として使われるものです。ショットブラストやショットピーニングの研磨剤として使われます。線材は直径が0.3~3mm程度の細い線が使われ、材質は鉄鋼、ステンレス鋼、及びアルミニウム合金、亜鉛などです。

カットワイヤの硬度は各種あり、用途に応じて選択します。ビッカース硬度で40~600Hvぐらいのものが使われます。カットした面を丸め処理したエッジレスのものもあります。

カットワイヤの使用用途

スチールのカットワイヤは、堅牢で耐久性が優れており、鋳物製品のバリ取りなどに使われます。ステンレス鋼のカットワイヤは、硬度が300~600Hv程度で、耐食性・耐酸性が優れており、アルミニウムダイキャストやステンレス製品の研磨・砂落としやピーニング加工などに多く使われます。アルミニウムのカットワイヤは、硬度が40~60Hv程度と柔らかく、バリ取りや光沢を出したり、滑らかな肌に仕上げるのに使用します。合金アルミニウムのカットワイヤは、硬度が100Hv前後で、汚点を消したり、梨地研磨に適しています。銅や亜鉛のカットワイヤは、バリ取りや塗装剥離に使います。

カットワイヤは、サブマージアーク溶接法への用途があります。カットワイヤを開先の中に充填してアーク溶接を行うことで、溶着量が増大し、厚板の溶接に適しています。特に高炭素鋼の溶接で高温割れが防止できます。

カットワイヤの特徴

カットワイヤはショットブラスト、ショットピーニングなどの加工法によりバリ取りや塗装の剥離、表面の仕上げなどに使われる研磨剤です。カットワイヤの特徴は、第1に優れた研磨力により作業能率が上がり、抜群の耐久性により消耗量や加工時間が減少してコスト低減ができることです。

もう一つの特徴は、均一な粒度や硬度が得られるので品質が向上することです。さらに破砕することが非常に少ないので粉塵が少なく作業環境が改善され、産業廃棄物が減少できます。これによりISO14001などの取得が加速できます。

カットワイヤは色々な種類が揃っており、対象物の材質や硬度、目的に合ったものを選択できます。ステンレス鋼のカットワイヤは、素材がSUS304やSUS430であるので錆が発生せず、耐久性・耐食性に優れており、経済的と言えます。鋳物の砂落としの他、熱処理品のスケール除去や金属部品の梨地加工にも使われます。また、銅のカットワイヤは塗装用治具の剥離に最適ですが、特に電着塗装のように剥離が困難な場合にも使用できます。

塩ビフランジ

塩ビフランジとは

フランジとは、配管継手の一種であり、配管同士の接続箇所や配管の末端閉鎖などに使われ、そのつば状の形状が特徴ですが、特にその中でも塩ビフランジとは、塩化ビニール(PVC:ポリ塩化ビニル、塩ビ)素材で形成されたフランジのことを言います。

ポリ塩化ビニル(PVC)は、ポリプロピレン(PP)ポリスチレン(PS)ポリエチレン(PE)と並ぶ安価で需要の多い五大汎用樹脂の一つであり、材料特性面ではその優れた耐食性と硬質性が特徴であり、配管用に適したフランジとして非常に多く用いられています。

塩ビフランジの使用用途

塩ビフランジならではの使用用途として、その耐食性に優れた素材ゆえに、酸性またはアルカリ性の薬品や海水で腐食することがないため、化学薬品工場や半導体関連のプラントの配管用フランジ、海水の配管フランジなどに用いられています。

またポリ塩化ビニル(PVC)は硬質性と軟質性のものが存在し、特に硬質性の塩ビはフランジ用途や配管材料などの建築資材向けに多く用いられています。

さらに塩化ビニル樹脂溶剤系接着剤等による接着性は良好であり、つば状の形状同士を接着材で接合するTSフランジ用途にも適しています。

塩ビフランジの原理

ポリ塩化ビニル(PVC)は塩化ビニルモノマー(CH2=CHCl)の付加重合により合成され、その添加する可塑剤の量により硬質にも軟質にもなり得ます。ちなみに塩ビフランジの場合の ポリ塩化ビニル(PVC)の平均重合度は600~1000程度のものが用いられています。

材料の硬質性以外にもフランジ強度向上の手段として、樹脂加工の一つである一体射出成形が良く用いられています。一体射出成形は、溶融した樹脂原料を金型に流し込んで固める成形方法であり、この形成方法で作成された塩ビフランジは、一体型ゆえに溶接形成起因でのクラック等が入りにくく、強度面で非常に堅牢なフランジとなります。

また前述の接着型のTSフランジ以外にも、内部にOリングが入る溝加工を施しシール効果を向上させたものや、食品機械向けに、優れた密閉度や樹脂製フランジならではの軽量性や比較的容易な特殊加工性を生かした特注の塩ビフランジも制作されています。

一方でポリ塩化ビニル(PVC)の短所としては、耐熱温度が60~80℃、融点が85~210℃程度と、比較的耐熱性に乏しく、また特に低温環境下ではその耐衝撃性が大きく低下するため、フランジとして使用される環境温度には、十分留意する必要があります。