焼結助剤とは
焼結助剤とは、金属やセラミックの粉末を焼結成形する際に使用する添加剤で、焼結を促進し安定化させるために使用するものです。焼結する材料より融点が低い添加剤を用いるのが一般的です。
焼結が困難な材料を焼結したい場合や、焼結後の密度を上げ、強度を上げたい場合などに、材料特性に悪影響がない範囲で焼結助剤を粉末に加えます。焼結助剤には、ホウ素や炭素などが使われます。セラミックスの焼結にはアルカリ土類金属や希土類の酸化物などを添加する方法があり、緻密化、高熱伝導化に効果があります。
焼結助剤の使用用途
焼結助剤が多く使われているのは、セラミックスの製造です。融点の高い金属の成形やセラミックスは、切断、接着や溶融などの工法では造るのが不可能であり、焼結で製造されます。炭化ケイ素や窒化ケイ素などのSi系の材料は、焼結が難しい特性があり、この場合焼結助剤を粉末材料に添加します。焼結助剤は、加熱時に材料粉末より低温で液体になり、緻密化を促進します。
ファインセラミックスは、さらに焼結性が悪いので、炭化ケイ素などをさらに微粒子化し、ボロンとカーボンなどを焼結助剤として添加します。窒化ケイ素のセラミックスの製造では、焼結助剤に窒化ケイ素ベリリウムを使う場合もあります。
また、家庭用の陶芸セットが商品化されています。陶芸粘土と焼結助剤を混ぜて好みの形状に成形し、電子レンジで焼結する商品です。
焼結助剤の原理
焼結の工程は、まず原料を粉砕して粉末を混合します。特に焼結が難しい材料の場合は、この段階で焼結助剤を混ぜ合わせます。そして、金型などに入れて加圧することで、所定の形状に成形します。粉末の成形を容易にするためにワックスなどを加えたりします。また、粉末の粒子が小さいと、型の中で密度むらが生じる場合があり、粉末と成形助剤を混ぜて噴霧して顆粒状にした原料を成形することもあります。
次に、成形時に有機物を添加した場合は、400℃ぐらいまでゆっくり加熱して有機物を取り除きます。その後高温に加熱して焼結を行います。このとき、アルミナやジルコニアなどの酸化物セラミックスの場合、多くは大気中で加熱されます。鉄鋼材料などの金属や窒化ケイ素などの非酸化物セラミックスの場合は、酸化を防止するため不活性ガス中や真空中で焼結が行われます。
焼結は、粉末成形体を加熱すると原料の粒子同士が接合して粒子間の隙間が小さくなって固まる現象です。固体の金属やセラミックスでは拡散と呼ばれる現象によって物質が移動し、焼結が進行します。SiCやSi3N4などの焼結が困難な材料では、焼結助剤を加えないと温度を高くしても緻密化が中々進行しない現象があります。この理由は従来の理論では説明がつかなく、新しい自由エネルギー理論では、粒界エネルギーが高いと焼結の熱力学的な障害になりうることが解ってきました。焼結助剤の役割は、粒界エネルギーを低減させて焼結性を向上させるためと言われています。また、高温構造材料セラミックスは高温で焼結する間に粒子成長が起こって強度が低下する問題があり、低温焼結が重要になっています。