超流動ヘリウムとは
ヘリウムを極低温(2.17 K)以下にした場合、粘性が無い液体状のヘリウムになります。
この状態のヘリウムを超流動ヘリウムと呼びます。
ヘリウムは温度を下げると気体から液体の相転移を行います。さらに温度を下げると二次の相転移を起こし超流動となります。この時の転移温度をλ点と呼びます。
超流動ヘリウムには非常に特異な性質があります。
超流動状態では原子間の力が非常に小さくなります。このためヘリウム原子一個でも通過可能な空間があればヘリウム原子は侵入することが出来ます。その他に粘性が無くなることにより通常では起こらないような現象が起こります。
現在までに、ヘリウム3、ヘリウム4はλ点が異なりますが超流動ヘリウムになることが確認されています。
超流動ヘリウムの使用用途
超流動ヘリウムの使用用途は冷却に使用します。
超流動ヘリウムは非常に高い熱の伝導性があります。理論的には熱伝導度が無限大となるため発熱体の冷却には最適な媒体となります。
しかし、実用化する場合、超流動ヘリウム状態を保つための温度管理費用が大きくなるため、現在では液体ヘリウムの状態で使用されることもあります。
超流動ヘリウムが有望視されている物には、MRIなどの超伝導ヘリカルコイルなどの冷却に使用することを想定しています。
このような装置は高磁界を発生させるためマグネットなどが高温になります。この時、超流動ヘリウムにより効率的に冷却すると液体ヘリウムでは実現できない強磁界が発生するので測定精度が向上します。
また微小な信号測定装置に使用されている機器内では、僅かな熱の発生により測定精度に影響が出るため、超流動ヘリウムで効率よく冷却する必要があります。
超流動ヘリウムの特徴
超流動ヘリウムは液状ですが、超流動の状態では原子間の摩擦が無くなります。このため液状ヘリウムには粘性が無くなります。
この理由は原子間の相互作用が無くなるため原子単独で移動できるようになります。その結果、原子サイズの空間であれば侵入することができます。また、原子が自由に動けるため超流動ヘリウムの容器壁を這い上がり容器からこぼれ落ちる現象が起こります(超流動現象)
超流動ヘリウムの特徴として液体の粘性が無いため流れ始めると永遠に流れ続けることが出来ます。これは、超伝導の特性として超伝導体に一瞬電流を流すと永遠に流れ続ける現象と同様に超流動ヘリウムも永久流の特性があります。
超伝導体に電流を流すのと同じように、超流動ヘリウムを高速回転させると永久に回転を続ける特性があります。
さらに、超流動ヘリウムには粘性が無いため非常に細い管などに流すと圧力に関係なく一定流量で流れる特徴があります。(超流動)
また、超流動ヘリウムは熱的均衡が生じないため熱交換による高効率な冷却システムの構築が可能になります。(超熱伝導)
超流動ヘリウムの特性を得るには極低温を保持する必要があります。超流動ヘリウムが超流動を保つ温度(λ点)を超えた瞬間に超流動ヘリウムの性質が失われてしまいます。このような点が超流動ヘリウムを扱う上で課題となります。
このように超流動ヘリウムには通常空間では見られない特異な特徴が発現します。
現在のところ超流動ヘリウムは冷却に使用されることが主な用途ですが、その他の性質を生かせる技術の開発が進んでいます。