洋白とは
洋白とは、銅と亜鉛を主成分として、ニッケルを添加することで作られる合金です。
洋白の名称は、白色がかった光沢を持つことに由来します。銅や亜鉛の特性を持ちつつ、ニッケルの添加によって耐食性や加工性に優れています。特に耐食性に優れており、海水や強い酸に対しても錆びにくいため、海洋関連の部品や装置、化学工業の設備部品などに使用されることがあります。
また、加工性にも優れており、鍛造、圧延、引き抜きなどの加工が容易な材用です。そのため金属加工製品や装飾品などにも使用されています。
洋白の使用用途
1. 食器
洋白は軽くて丈夫なため食器類に広く使用されています。例えば、フォーク、ナイフ、スプーン、ボウル、プレートなどが挙げられます。
2. 楽器
トランペット、トロンボーン、サックスなどが挙げられます。
3. 装飾品
洋白は美しい光沢を持ち、装飾品の素材として使用されます。例えば、置物、アクセサリー、時計、キャンドルスタンドなどが挙げられます。
4. 金属加工
洋白は柔軟性があり、加工が容易であるため、金属加工にも使用されます。例えば、スプリング、歯車、ピンなどが挙げられます。
5. 電気部品
洋白は電気をよく通すことから、電気部品としても使用されます。例えば、接点、リレー、コンタクトなどが挙げられます。コンタクトとは、主に電気信号を伝達するために使用される部品で、電気回路上での接点やスイッチング部品などに用いられます。
6. 医療機器
洋白は非常に清潔で、細菌が繁殖しにくいことから、医療機器にも使用されます。例えば、外科用の器具、歯科用の器具、人工関節などが挙げられます。
7. 自動車部品
洋白は耐摩耗性が高く、熱に強いことから、自動車部品の素材として使用されます。例えば、エンジン部品 (ウォーターポンプインペラ) 、ブレーキ部品 (ブレーキパッド、ブレーキシュー) 、ギアなどが挙げられます。
ウォーターポンプインペラとは、エンジンの冷却水を循環させる部品です。洋白の耐食性に優れた特性を活かして使用されます。
ブレーキパッドとは、ブレーキディスクやドラムに押し付けられ、車両を減速させる部品です。洋白は耐熱性が高く、制動力が安定するため、ブレーキパッドの素材として使用されることがあります。
ブレーキシューとは、ドラムブレーキの内側に取り付けられ、車両を減速させる部品です。洋白は摩擦特性が優れており、ブレーキシューの素材として使用されることがあります。
8. 印刷機器
洋白は表面の仕上げが容易で、インクの乗りがよく、印刷機器の素材として使用されます。例えば、印刷機のローラー、文字盤などが挙げられます。
9. 硬貨
洋白は、多くの国の硬貨の製造に使用されています。洋白には、高い耐久性と耐食性があるためです。
洋白の種類
JIS (日本産業規格) H 3270では,C7451、C7521、C7541、C7701の4種類が規定されています。下表では、Cu (銅) 含有率とNi (ニッケル) 含有率をまとめています。
合金番号 |
Cu含有率 |
Ni含有率 |
C7451 |
63.0%~67.0% |
8.5%~11.0% |
C7521 |
62.0%~66.0% |
16.5%~9.5% |
C7541 |
60.0%~64.0% |
12.5%~15.5% |
C7701 |
54.0%~58.0% |
16.5%~19.5% |
洋白の性質
1. 比較的柔らかく加工しやすい
洋白が比較的柔らかく加工しやすい理由は、洋白の成分によるものです。洋白は、主に銅、亜鉛、およびニッケルの三種類の金属で構成されています。
銅と亜鉛は、柔らかい金属であり、洋白の主成分であるため、洋白は柔らかく加工しやすい材料となります。銅と亜鉛は、結晶粒の形成が細かく、柔軟性が高く、鍛造や圧延などの加工が容易な材料です。また、銅と亜鉛の比率を調整することで、洋白の硬度を調整できます。
一方、ニッケルは銅や亜鉛よりも硬く、強度が高い金属です。ニッケルを洋白に添加することで、洋白の硬度が向上し、強度も増します。しかし、添加しすぎると、洋白が硬くなりすぎて加工性が低下することがあります。
洋白の主成分である銅と亜鉛は、柔軟性が高く、鍛造や圧延などの加工が容易であり、ニッケルの添加によって強度が向上するため、一定の強度を保ちながら加工しやすいです。
2. 酸化しにくく、腐食に強い
洋白が酸化しにくく、腐食に強い理由は、主に表面の酸化被膜によるものです。
洋白は、銅と亜鉛を主成分とし、ニッケルを添加することで作られる合金です。洋白の表面には、酸化被膜が形成されます。この酸化被膜は、銅や亜鉛などの金属の酸化物や、ニッケルの化合物などからできており、表面を覆っています。
この酸化被膜は、酸や塩基などの腐食性のある物質から、金属表面を保護します。酸化被膜は非常に薄いため、透明であることが多く、肉眼では見えにくいことがあります。しかし、この膜は金属表面を覆い、酸や塩基などから金属を守ります。
また、洋白には銅や亜鉛が酸や塩基に対して強い耐性を持っているため、腐食にも強いです。さらに、ニッケルの添加によって、耐腐食性が向上します。
3. 高温に強く、熱伝導率が高い
洋白は、高い耐熱性と優れた熱伝導性を持ちます。その理由は、洋白の結晶構造や物理的性質に起因しています。
まず、洋白の結晶構造は、面心立方格子構造を持っています。面心立方格子構造では、銅とニッケルの原子が交互に配置され、空隙が少ない密な構造を形成するのが特徴です。よって、洋白は密度が高く、強靭で、高温に強いという特性を持ちます。
また、洋白は熱伝導率が非常に高いため、熱を効率的に伝えられます。この熱伝導率の高さは、洋白の結晶構造によるものです。面心立方格子構造は原子が密集しているため、熱エネルギーが原子から原子へと効率的に伝えられます。
4. アレルギー反応
洋白は、銅と亜鉛を主成分とし、ニッケルを添加することで作られる合金です。しかし、一部の人が、洋白の成分に対してアレルギー反応を引き起こすことがあります。主に、ニッケルに対してアレルギー反応が起こることが知られています。
洋白には微量ながらニッケルが含まれており、長時間接触することでニッケルアレルギーを引き起こすことがあるため注意が必要です。特に、洋白の使用が多い食器類などは、直接肌に触れることが多いため、ニッケルアレルギーのリスクが高くなります。
洋白のその他情報
洋白の錆び対策
洋白は、銅が主成分であるため、湿気や水分に触れると表面が酸化し、錆びやすい傾向があります。
錆びを防ぐためには、洋白製品を乾燥させることが重要です。洗浄後にはしっかりと水気を拭き取り、乾燥させる必要があります。また、湿気の多い場所に保管しないようにし、適切な保管方法を選ぶことも大切です。酸性の洗剤や研磨剤を使用せず、中性の洗剤で洗浄することで、表面の銀めっきが傷つくことを防げます。