無酸素銅とは
無酸素銅とは、一般的に酸化物を含まず純度が99.96%以上の高純度な銅のことです。
一般的に電気分野、通信分野、建築材料分野、加工用材料分野などで広く用いられています。銅は高い電気伝導性や熱伝導性を持ち、耐食性や加工性にも優れていますが、酸素を含むとこれらの特性が低下するため、高純度の銅を求める場合は酸素を取り除いた無酸素銅が使用されます。
JIS (日本産業規格) H3100では,無酸素銅は、銅含有率99.96 %以上で、合金番号「C1020」として規定されています。
無酸素銅の使用用途
1. 電子・電気機器
電線や配線、端子、基板、コネクタなどが挙げられます。
2. ブスバー
パワーコンディショナー、変圧器、インバーター、UPSなどが挙げられます。
ブスバーとは、電気機器の間で電力を伝送するために使用される導体の一種です。パワーコンディショナーとは、交流電力を取り込んで、必要な形式に変換し、安定した電力を供給する電力変換装置です。インバーターとは、直流電力を交流電力に変換する装置です。UPSとは、無停電電源装置のことで、停電や電圧変動、ノイズ、サージなどの問題から電力を保護し、安定した電力を供給する装置です。
3. 熱交換器
冷却器、熱交換器、ヒートシンク、冷却フィンなどが挙げられます。ヒートシンクとは、電子部品や半導体などが発する熱を放熱するために使用される冷却装置の一種です。一般的には、金属製のフィン状の部品で、電子部品に取り付けられます。
4. 音楽機器
オーディオケーブル、アンプ、スピーカーなどが挙げられます。
5. 自動車
電気自動車、ハイブリッド車、燃料電池車、ブレーキなどが挙げられます。
無酸素銅の性質
1. 電気伝導性
無酸素銅は、電気伝導性が非常に高い材料です。銅は電気をよく通す物質であり、電気伝導性は純度が高いほど良くなります。一方、酸素は電気を阻害する物質であるため、銅に酸素が含まれると電気伝導性が低下します。
無酸素銅は、高純度で酸素が含まれていないため、銅の結晶構造が均一で、電気伝導性が非常に高い材料です。また、無酸素銅は熱処理によって結晶粒が細かくなり、さらに電気伝導性が向上します。
2. 熱伝導性
無酸素銅は、熱伝導性が非常に高い材料です。無酸素銅が、優れた熱伝導性を持つ理由は、銅の結晶構造が均一であることが大きく関係しています。無酸素銅は高純度で酸素が含まれていないため、銅の結晶構造が均一であり、原子間の結合力が強いです。
物質中を伝わる熱は、原子や分子の運動によって生じる振動エネルギーの形で存在しているため、熱が無酸素銅中を移動するとき、原子間の結合力が強いので、熱が効率的に伝わります。
また、無酸素銅は非常に良い熱処理性能を持ち、加熱や冷却によって結晶構造を制御できるのが特徴です。熱処理によって、無酸素銅中の結晶粒が細かくなり、原子の拡散が促進されるため、熱伝導性が向上します。
3. 加工性
無酸素銅は非常に高い純度で製造され、結晶構造が均一であるため金属組織が非常に柔軟であり、脆性が低い材料です。また、熱処理によって結晶粒が細かくなり、金属組織が均一化されるため、加工性が良好になります。融点が高く酸化や腐食に強いため、熱処理や加工の際に銅表面が損傷することが少なく、表面の状態が保たれるため加工性が良好です。
4. 耐食性
無酸素銅は腐食に強く、耐食性に優れている材料です。主な理由は酸化被膜が生成され、金属表面を保護するためです。酸化被膜は銅と酸素が反応して生成され、非常に薄く密着性が高いため銅表面を覆って酸化や腐食から守ります。無酸素銅は高純度で製造され、酸素が含まれていないため生成される酸化被膜がより均一で密着性が高いです。
また、酸化被膜が再生する速度が速く、自己修復能力を持っているため、銅表面が損傷した場合でも再生されます。そのため長期間にわたって金属表面を維持し、腐食に対して非常に耐性が高くなります。
5. 溶接性
無酸素銅は銅の純度が非常に高く、不純物が少なく均一な結晶粒子を持っているため、溶接性とはんだ付け性が良好です。また、熱伝導率が高く、接合部全体が均一な温度に保たれるため、接合部が歪まない加工が容易になります。
6. 磁性
無酸素銅が磁性が低く磁気的に不活性である理由は、その結晶構造にあります。純粋な銅であり、酸素を含んでいないため純度が非常に高い材料です。無酸素銅の結晶構造は、面心立方格子構造を持っています。面心立方格子構造では、原子が密集しており、自由電子の運動が制限されるため、無酸素銅は、磁気的に不活性な性質を持っています。
7. 可塑性
無酸素銅は良好な可塑性を持ち、曲げや折り曲げなどに対しても強度を維持できる材料です。理由は微細な結晶構造と結晶粒界の特性にあります。
無酸素銅は均一な結晶粒子を持ち、結晶粒界が非常に細かく形成されていて、変形時に結晶粒子同士が滑らかに移動するため、変形箇所での応力が軽減され、曲げや折り曲げに対しても強度を維持できます。また、無酸素銅は非常に純度が高く欠陥が生じることがないため、高い強度を維持できます。
8. 硬度や強度
無酸素銅は熱処理によって結晶粒子のサイズや配列が変化し、欠陥が除去され、不純物の拡散が促進されることで、材料の機械的特性が向上します。また、熱間鍛造や熱間圧延などによって、結晶粒子の方向性を制御でき、材料の硬度や強度を変えられます。
無酸素銅のその他情報
銅の純度
無酸素銅は銅の純度が高く、不純物や酸素濃度が非常に低いため、磁気抵抗が非常に小さいです。磁気抵抗とは、電磁波が通過する際に生じる抵抗のことです。磁気抵抗が大きい材料ほど、電磁波の通過に障害が生じやすくなります。
高周波の回路では、通信や電波の伝送に影響を与える電磁波干渉が問題となります。電磁波は、周波数が高いほど磁気抵抗が大きい材料に対して強く干渉するため、高周波回路においては、磁気抵抗が小さい材料を使用する必要があります。