焼なまし

焼なましとは

焼なましのイメージ

図1. 焼なましのイメージ

焼なましとは、熱処理加工の1種であり、金属を硬化させた時に生じる内部のひずみを取り除くために行うものです。

焼きなましを行うことで、材料の軟化及び展延性の向上を実現可能で、後工程の加工が容易になります。なお、別名として、焼き鈍しもしくはアニーリング  (Anealing) もあります。

一般的に焼きなましは、完全焼きなましを指す場合が多いですが、それ以外の焼なましも存在します。それぞれの素材に応じて、適当な温度に加熱し、そこからゆっくりと冷却することによって焼きなましが完了します。材料を硬くする焼入れと正反対の熱処理になります。

焼なましの使用用途

半導体における焼なまし

図2. 半導体における焼なまし

焼きなましは、切削や鍛造、プレス加工を行う製品に使用されることが多いです。特に自動車関連の部品が代表的と言えます。焼きなましは、後工程で行う切削や鍛造、プレス加工をしやすくするのが目的です。

焼きなましを行っていない状態では、金属などの組織が均一になっていないため、その後の加工工程で変形を起こしたり、最悪の場合破壊したりする可能性があります。金属における焼なましは、焼入れや機械加工によって乱れた結晶構造を加熱および徐冷によって修復する工程です。

半導体においても同様に、壊れた結晶構造を回復するためにシリコン基板へのヒ素やリンなどの異種元素を注入し、熱処理を行うことでドープ元素とシリコン原子との結合を生成したり、シリコン原子同士の結合を生成したりすることがあります。

焼なましの原理

焼きなましは、金属への処理と半導体への処理で目的が異なります。金属に対して処理を行う場合は、素材を軟化させて組織を均一にすることが目的です。

一方、半導体に対して処理を行う場合は、壊れた結晶構造の回復が目的となります。

1. 金属における焼なまし

金属における最も一般的な焼きなましは、「完全焼なまし」と呼ばれます。均一結晶層であるオーステナイト相の領域まで加熱した後、加熱装置を切ることにより、徐々に冷却する手法です。

完全焼なましを行うことで、加工性の向上と内部応力の除去を行うことができます。

2. 半導体における焼なまし

半導体結晶において壊れた結合を、熱をかけることで再度結合させることができます。理由は、乱れた位置にある原子を熱をかけることで、正しい位置である格子点に移動させられるためです。

焼なましの種類

先述した完全焼なまし以外にも、以下のような焼なましがあるため、用途に応じて使い分ける必要があります。

1. 等温焼なまし (Isothermal annealing)

工具鋼や合金鋼、高合金鋼などの素材を軟化することに適した手法です。冷却の際に、ある一定の温度に固定して冷却する過程を含みます。完全焼きなましと比較して、作業が短時間になることが特徴です。

2. 拡散焼なまし (Homogenizing) 

拡散焼なまし

図3. 拡散焼なまし

拡散焼なましは元素の偏析を取り除くことが目的です。鉄鋼材料では、要求特性を実現するために炭素などの微量元素が添加されますが、溶接後など、凝固直後の鉄鋼材料はこういった元素が著しく偏析しています。

そこで材料を加熱することで元素を拡散させ、成分を均一にするのが拡散焼なましです。

3. 球状化焼なまし (Spheoroidizing)

鋼中の炭素濃度が高い場合に使用される手法です。このような鋼では、セメンタイトが層状あるいは網目状になっており、加工性がよくありません。この状態の鋼を焼なますことで、セメンタイトを球状にし材料中に均一に分散することができ、加工性が改善します。

4. 歪取り焼なまし (Stress relieving)

熱処理、機械加工、溶接を行った金属材料の内部には必ず残留応力が存在します。残留応力を放置すると、何らかのきっかけで残留応力が解放された時に材料の変形が起こります。

内部応力の原因である歪を取り除くため、材料をゆっくり加熱してある温度に保ち、歪が生じないようにゆっくり冷却します。

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