無機繊維

無機繊維とは

無機繊維

無機繊維とは、化学繊維の一種で、人工的な無機物の繊維のことです。

無機繊維の具体例として、ガラス繊維・金属繊維炭素繊維・岩石繊維・スラッグ繊維などが挙げられます。

ガラス繊維はグラスファイバとも呼ばれ、熱や電気の絶縁性に優れた不燃材です。多くの強化プラスチックには、ガラス繊維が多く利用されています。金属繊維には古くから、装飾用として金糸や銀糸などが使用されてきました。現在では、ステンレス・アルミニウム・鉄・ニッケルなどの金属糸が生産されています。炭素繊維はアクリル繊維等を焼成し、炭化させて作られています。炭素繊維は耐熱衝撃性に優れており、アルミよりも軽量で鉄よりも強度が高いです。 

無機繊維の使用用途

一般的に無機繊維は耐熱性に優れており、防熱や防音などの用途で幅広く使用されています。例えばガラス繊維は、ヘルメットや釣竿、スキー板などに用いられています。また、ガラス繊維を配合したシートは、床材・断熱材・建材などに利用可能です。

金属繊維は、複合材・強化材・ろ過材・除電など、特殊な部門で使用可能です。さらに、ロープウェイのロープ、工事クレーンに使われているワイヤー、送電用に使用されている銅線などにも利用されています。

炭素繊維の使用用途として、飛行機の機体や車の車体などが挙げられます。電気抵抗や熱伝導性が金属に近く、熱膨張率が低いです。この特徴を活用して、電磁シールドや電極、耐熱構造体などに応用されています。 

無機繊維の原理

無機繊維は強度が高く、例えばガラス繊維の強度は3.5〜4.6GPaです。高強度繊維として知られるパラ系アラミド繊維の強度は2.4〜3.4GPaであり、無機繊維が強度で上回ります。非常に強度が高い繊維をスーパー繊維と呼び、ほとんどの無機繊維はスーパー繊維に含まれています。

無機繊維は耐熱性が高く、とくにセラミック繊維の融点は2,000°C以上です。高機能有機合成繊維の融点は高くても600°Cほどであり、セラミック繊維はより高い温度でも耐えられます。無機繊維は耐久性も高いため劣化しにくく、産業資材分野で強度や耐熱性が必要な部分に用いられる場合が多いです。

無機繊維の種類

無機繊維は、ガラス繊維やロックウールなどに代表される「非晶質繊維」と、炭素繊維やアルミナ繊維などが含まれる「多結晶繊維」、ウォラストナイトやチタン酸カリウム繊維などの「単結晶繊維」に分類されます。「非晶質繊維」は粒界を持たず、弾性率の低い繊維でも高強度です。「多結晶繊維」は小さい結晶の集合体であり、耐熱性に優れています。「単結晶繊維」はウィスカ状をした微細な繊維であり、極めて高強度です。

人工的に作られる無機物質以外に、天然繊維の中にも無機物質があります。石綿 (アスベスト) は炭化水素を含まない、繊維状の無機物質です。しかし呼吸によって人体へ吸収された際に肺がんを誘発し、大きな社会問題になっています。ただし天然繊維である石綿は、無機繊維に分類されないこともあり、鉱物繊維に分類される場合が多いです。

無機繊維の選び方

ガラス繊維は短繊維グラスウール)と長繊維(グラスファイバー)に大きく分類され、それぞれの性質に応じて幅広く使用されています。短繊維は加熱して融解したガラスを遠心力で吹きとばして、綿状にしたガラス繊維です。長繊維は融解したガラスを高速巻取り機で巻き取って、長い糸状にした繊維です。

炭素繊維には、PAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維の2種類があります。PAN系炭素繊維は、1,000℃以上で焼かれて製造された炭素繊維です。2,000℃以上の高温で焼くと、より高い弾性率を有した製品になり、黒鉛繊維とも呼ばれます。ピッチ系炭素繊維は、等方性炭素繊維と高機能炭素繊維に分類されます。等方性炭素繊維は機械的物性が低いですが、高機能炭素繊維は機械的物性が高くて、弾性率が高いです。

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