溶接管とは
溶接管とは、帯状の鋼板を円形に成形し、接続部を電気抵抗溶接などによって接合した鋼管です。
電縫管や電気抵抗溶接鋼管とも呼ばれます。溶接管は鋼帯を丸めて成形するため、厚みが少ないことが特徴です。鋼帯を使用して継ぎ目を溶接するという、比較的簡単な工法となっています。連続的に製造できるため、低コスト・大量生産に向いています。6A程度の小径から700A程度の大径まで、幅広く対応可能です。
また、炭素鋼鋼管・ステンレス鋼管・低合金鋼管など、様々な材質の鋼管が製造されています。一方で、溶接の痕が残るため、外観を重視する場合は、削り取って滑らかにする必要があります。溶接管は、各種配管をはじめ、自動車部品・機械部品・建築物などに多く使用されます。
溶接管の使用用途
溶接管は、材質・管の径・厚さ・長さなど各種の製品があり、汎用性が高いと言えます。代表的な種類の使用用途は、以下の通りです。
1. 炭素鋼鋼管
- 鋼管杭・矢板
- 電線管
- 上下水道配管
- 空調用・消火用・排水用の水配管
- 鉄塔
- 足場
- 支柱
- 基礎くい
- 機械器具・自動車・自転車・家具・機械などの部品
- 蒸気・水・油・ガス・空気などの配管
- 高温・低温の配管
- ボイラの水管・煙管・加熱器
- 化学工業・石油工業用の熱交換器
- 土木・建築用の構造物
- 油圧シリンダ・空気シリンダのシリンダチューブなど
2. 合金鋼鋼管
合金鋼鋼管は上記以外に、ステンレス鋼のサニタリー管を使用して、酪農・食品工業・医療医薬品などにも使用されます。
溶接管の原理
溶接管を製造する素材は、コイル材の鋼帯です。アンコイラーやレベラーなどの機械を用いて鋼帯を連続的に引き出し、鋼帯の両側端面をエッジ加工します。
そして、鋼帯の軸方向を円形に丸めて、パイプ状に成形し、両端に大電流を流すことにより、瞬間的に接合部を高温にします。そのまま押し付けて突合せ、電気抵抗溶接などを使って溶接接合してパイプに成形します。その後、所定の長さに切断し、冷却後矯正機にかけて完成です。
接合部の溶接方法として、高周波抵抗溶接・高周波誘導圧接・電気抵抗溶接などが挙げられます。
- 高周波抵抗溶接
抵抗溶接の一つで、接合部を加圧しながら、高周波電流を流して接合する方法。 - 高周波誘導圧接
接合部を加圧しながら高周波誘導加熱により、溶接する方法。 - 電気抵抗溶接
接合部に大電流を流し、発生する抵抗熱によって加熱溶融して圧力をかけて溶接する方法。抵抗溶接法には、電流・加圧力・通電時間の3大条件があり、適切な管理が必要。
溶接管の種類
溶接管には、使用される材質によって以下の2種類に大別されます。
1. 炭素鋼を使用した溶接管
最も一般的な溶接管であり、低炭素鋼のS10Cから高炭素鋼のS50Cまで、さまざまな炭素含有量の炭素鋼を使用して製造されています。また、用途や温度環境に合わせて材質を選定して使用されます。
2. 合金鋼を使用した溶接管
特にステンレス鋼やクロム・モリブデン鋼、高マンガン鋼などが多く使われます。合金鋼を使用した溶接管の中でも、機械構造用やサニタリー管、ボイラ・熱交換器用など、用途に応じて規格が異なっています。
その中でも、ステンレス鋼は、耐食性や耐酸化性、耐熱性に優れているため、高温・低温環境下での配管に多く使用されます。また、クロム・モリブデン鋼は、高い耐熱性と耐圧性をもつことが特徴です。この特徴を活かし、現在は火力発電プラントや石油精製プラントなどの圧力容器等に使用されています。
溶接管のその他情報
1. 溶接管の規格
溶接管には、JIS規格に多くの種類が規定されています。具体例として、JIS G 3444 一般構造用炭素鋼鋼管、JIS G 3445 機械構造用炭素鋼鋼管、JIS G 3441 機械構造用合金鋼鋼管、JIS G 3452 配管用炭素鋼管などが挙げられます。
この他、土木用の鋼管ぐい・鋼管矢板、電気工事用の鋼製電線管、配管用の各種鋼管、熱交換器用の各種鋼管、自動車用の鋼管、建築用の鋼管などのJIS規格があります。溶接管の製造方法である電気抵抗溶接を表す記号「E」を、鋼管の種類を表す記号の後に付けます。
また、鋼管の仕上げ方法を示す記号をさらに付けます。「H」は熱間仕上げ、「C」は冷間仕上げ、「G」は仕上げなしをそれぞれ意味します。
2. 溶接管とシームレス管との違い
溶接管は、鋼板をパイプ状に成形して継目を溶接して製造します。一方、シームレス管は、丸棒の中心を押し広げて中空にした継ぎ目のない管です。
シームレス管は継ぎ目がない分、溶接管より強度が高いです。内圧やねじれに強く、厚肉のパイプに向いています。寸法精度は溶接管より低く、コストが高い傾向があります。管の表面性状は、シームレス管の方が少し粗いです。