酸化ホウ素

酸化ホウ素とは

酸化ホウ素 (英: Boron trioxide ) とは、ホウ素と酸素を含む化合物です。

化学式がB2O2、B4O3、B4O5など数種類のものが報告されていますが、酸化ホウ素といった場合は一般には化学式B2O3のものを指します。別名、三酸化ホウ素、三酸化二ほう素、無水ホウ酸とも呼ばれます。

無色で結晶化しにくく、吸湿性があります。労働安全衛生法では、名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物 (名称表示危険/有害物) に該当します。化学物質管理促進法 (PRTR法) では、第1種指定化学物質に該当します。

酸化ホウ素の使用用途

酸化ホウ素は、試験管や光学ガラスなどの特殊なガラス製造時に融剤や洗浄器具として使われています。これは、酸化ホウ素を使用することで、融点の低下、耐熱性と機械的強度の向上、耐水性と耐薬品性の強化等の利点があるためです。

酸化ホウ素を少量の窒化ホウ素と組み合わせることで、セラミックス用の結合剤にもなります。酸化ホウ素は他にも、有機化合物の反応や合成時に触媒として使用されていたり、耐火レンガの製造にも使われています。

酸化ホウ素の性質

酸化ホウ素の分子量は69.62、CAS番号は1303-86-2です。融点は約450 ℃、沸点は約1860 ℃です。比重は、結晶は2.46、非結晶は1.8です。ホウ酸 (B(OH)3) を脱水することで得られます。ホウ酸 (オルトホウ酸) はホウ砂を硫酸で処理して得られます。ホウ砂は四ホウ酸ナトリウム (Na2B4O7) の10水和物です。

酸化ホウ素のその他情報

1. ガラス原料の酸化ホウ素

ボロシリケートガラス
酸化ホウ素と二酸化ケイ素を用いたガラスはボロシリケートガラスと呼ばれています。ケイ素と同様、ホウ素も酸素と結合しネットワークを形成します。ボロシリケートガラスで、アルカリ成分を含まず、アルミナ (Al2O3) を含むガラスは液晶パネルの基板ガラスに使用されます。

多孔質ガラス
多孔質ガラスの製造にも酸化ホウ素が用いられます。多孔質ガラスの作製では、SiO2-B2O3-Na2Oで構成される適切な組成のガラスに対して熱処理を行い、SiO2の相とB2O3-Na2Oの相に分離します。酸処理を行うことで、B2O3-Na2Oの相が溶出し、SiO2の骨格をもつ多孔質ガラスが得られます。多孔質ガラスを得るためには、適切な組成、適切な熱処理を行い、スピノーダル分解による分相が生じなければいけません。

2. ホウ素系非酸化物セラミックスの合成

ホウ素を含む非酸化物セラミックス粉末の合成法として、酸化ホウ素の熱炭素還元法があります。この方法を用いて、例えば、炭化ホウ素 (B4C) や窒化ホウ素 (BN) 、六ホウ化ランタン (LaB6) などが得られます。固相反応でかつ吸熱反応であることから、高温での反応が必要です。

3. 酸化ホウ素を含む鉱石

ホウ砂以外に、酸化ホウ素成分を含む鉱石は以下があります。それぞれ酸化ホウ素を含む割合が異なります。

  • カーン石 (Na2O・2B2O3・4H2O)
  • 曹灰ホウ石 (Na2O・2B2O3・10H2O)
  • 灰ホウ石 (コールマン石) (Na2O・2CaO・5B2O3・16H2O)
  • ホウ酸石 (B2O3・3H2O)
  • 方ホウ石 (5MgO・MgCl2・7B2O3)
  • バンデルマ石 (5CaO・6B2O3・6H2O)
  • ハイドロボロサイト (CaO・MgO・3B2O3・6H2O)
  • 小藤石 (3MgO・B2O3)
  • ダンブリ石 (CaO・B2O3)
  • サイベリー石 (5MgO・2B2O3・1.5H2O)
  • ルード・ビッヒ石 (3MgO・B2O3・FeO・Fe2O3)

これらの鉱石に対し塩酸を反応させて得たホウ酸を413 K以上に加熱することで、酸化ホウ素を得ることができます。酸化ホウ素に対してマグネシウムを加えて、約1273 Kで加熱することで、無定形ホウ素を得ることができます。より高純度の無定形ホウ素を得る場合は、炭素を活性剤として塩素と酸化ホウ素を反応させて塩化ホウ素 (BCl3) を得たのち、水素を流しながら1273 K以上に加熱します。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1303-86-2.html

酸化でん粉

酸化でん粉とは

酸化でん粉とは、でん粉と次亜塩素酸ナトリウムを反応させて製造される加工でん粉の一種です。食品添加物として指定されています。

製造時の反応により、でん粉の水酸基の一部をカルボキシル基に酸化させ、それと共にでん粉の鎖の一部が切断されて低分子化します。

低粘度で老化しにくく安定性があります。(でん粉の老化とは、α化したでん粉から水が分離し生でん粉に近い構造になることです。)

また、糊化開始温度が低く、糊化後の透明性があるのも特徴です。

酸化でん粉の使用用途

酸化でん粉は、他の加工でん粉と同じく、食品添加物として増粘安定剤や乳化剤、糊料として使用されます。

主な目的としては触感改良や物性改良が挙げられます。
触感改良としては、でん粉の一部が低分子化されていることから、揚げ物の衣のサクサク感を向上させるのに重要な役割を果たしています。また、スナック菓子の食味改善にも使用されています。

物性改良としては、低粘性であることから、タレや調味液に配合し艶出しなどのために使用されています。

参考文献
https://www.alic.go.jp/joho-d/joho07_000055.html

臭化水素

臭化水素とは

臭化水素とは、臭素と水素の化合物で、刺激臭をもつ無色の気体です。

法律上の名称はブロム水素で、空気中の湿気により、白煙を生じることも特徴です。臭化水素には毒性があり、眼や気管支の粘膜を侵し、呼吸困難を起こす恐れもあります。

また、臭化水素は消防法にて「消防活動阻害物質」に、毒物及び劇物取締法にて「劇物」にそれぞれ指定されています。労働安全衛生法には「名称等を通知すべき危険物及び有害物」「名称等を表示すべき危険物及び有害物」に指定されており、取り扱いには注意が必要です。 

臭化水素の使用用途

臭化水素は、医薬品や臭化水素酸、および各種臭化物の合成原料などとして用いられている他、汎用試薬としても利用されています。化学工業の分野においては、アルキル化触媒や還元剤として使用されています。

さらに、臭化水素には高品質の半導体材料ガスとしての用途もあり、エッチングガスやクリーニングガスとして利用可能です。臭化水素の水溶液である臭化水素酸は、ポリエステル繊維の原料であるテレフタル酸の製造における触媒や各種ブロム塩類・臭化アルキルの原料として使用されており、重要な化学品です。 

臭化水素の性質

臭化水素には腐食性や不燃性があります。密度は3.307g/L、融点は–86.80℃、沸点は–66.38℃です。

ハロゲン化水素の1つで、水素と臭素からなる化合物です。直線形の分子であり、化学式はHBrで、モル質量は80.912です。低温環境下で臭化水素は、水和物の結晶を形成します。

臭化水素はエタノールアセトンなど酸素を有する有機溶媒に易溶です。水にもよく溶け、水溶液は強酸を示します。臭化水素の水溶液は臭化水素酸と呼ばれていて、47.63%の臭化水素酸は沸点124.3℃の共沸混合物です。

共沸混合物に近い48%程度が市販品として一般的で、医薬用外劇物の指定を受けています。水に対する溶解熱はΔH° = –85.15kJ/molであり、ハロゲン化水素の中で最大です。塩酸に性質がよく似た1価の強酸で、酸化されやすいです。

例えば、空気によって酸化したり、光によって分解して臭素を遊離したりすることで、黄色味を帯びることもあります。さらに、臭化水素の還元作用は、塩化水素 (HCl) よりも強力です。

臭化水素のその他情報

1. 臭化水素の合成法

臭化水素は触媒を用いて、水素と臭素の反応によって生成します。臭化物とリン酸を反応させるか、赤りんと水の混合物に臭素を作用させることによって、臭化水素を得られます。

それ以外にも実験室規模では、さまざまな合成法があります。例えば、テトラリン (英: tetralin) の臭素化です。キシレン中においてトリフェニルホスホニウムブロミド (Ph3PH+Br) を還流して熱分解することで、無水の臭化水素を得ることもできます。

ただし、塩化水素や塩酸とは異なり、臭化水素や臭化水素酸の製造規模は小さいです。初期の製造法は200〜400℃ほどの高温で、水素と臭素を反応させていました。通常工業的な反応では、白金やアスベストを触媒として用います。

2. 臭化水素の反応

アルコールを用いたブロモアルカンの生成のために、臭化水素は利用されます。ブロモアルカンは、臭化水素のアルケンへの付加でも得ることが可能です。

アルキンに臭化水素を付加させるとブロモアルケンが生成し、通常立体化学はアンチ型 (英: anti form) です。ハロアルケンへの臭化水素の付加においては、マルコフニコフ則 (英: Markovnikov’s rule) に従い、gem-ジハロアルカンが得られます。

その他、臭化水素はラクトンやエポキシドの開環反応だけでなく、ブロモアセタールの合成反応にも使用されます。多種多様な有機反応において、臭化水素は触媒として利用可能です。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0108-0104JGHEJP.pdf

臭化エチル

臭化エチルとは

臭化エチルの基本情報

図1. 臭化エチルの基本情報

臭化エチルとは、ハロゲン化炭化水素の一種です。

別名、エチルブロミド (英: Ethyl bromide) やブロモエタン (英: Bromoethane) とも呼ばれます。化学式はC2H5Brです。

労働安全衛生法では、 名称等を表示すべき危険物及び有害物、名称等を通知すべき危険物及び有害物、危険物・引火性の物に該当します。労働基準法では疾病化学物質に、毒物及び劇物取締法では劇物に、消防法では危険物第4類引火性液体、第一石油類 非水溶性液体に該当します。保護具を装着して、使用の際には注意が必要です。

臭化エチルの使用用途

臭化エチルは、有機合成のためのエチル化剤として使用されています。例えば、カルボン酸塩からのエチルエステル合成やアミン類のエチル化によるエチルアミン合成などに使われています。

また、有機マグネシウムハロゲン化物であるグリニャール試薬 (英: Grignard reagent) の原料としても使用可能です。有機合成でグリニャール試薬は、欠かせない試薬として長年使われています。

医薬分野では医薬品の原料として使われ、麻酔薬に使われる場合もあります。

臭化エチルの性質

臭化エチルの融点は−119°Cで、沸点は38.4°Cです。常温では無色の液体で、揮発性があり、エーテルのような臭いがあります。蒸気は空気より重く、引火点は-2°C以下で、引火しやすいです。爆発範囲は6.8~8.0%です。

水に溶けにくく、20°Cで水100gに0.914g溶解します。エタノールやベンゼンのような有機溶媒には溶けます。

一般的なハロゲン系炭化水素と同様に、健康に悪影響があり、経口・吸入ともに許容濃度は200ppmです。吸入した場合には、鼻やのどを強く刺激して、頭痛、動悸、瞳孔拡大、視力障害、顔面紅潮などを起こし、チアノーゼや呼吸困難などが起きる可能性もあります。皮膚からも吸収されて同様の中毒症状を起こし、眼に入ると眼の粘膜が刺激され炎症が起きます。

臭化エチルの構造

臭化エチルはエタンが有する1個の水素原子を、臭素原子で置換した化合物です。示性式はCH3CH2Brと表されます。EtBrと略される場合もあります。分子量は109.0g/molで、密度は1.4g/cm3です。

臭化エチルのその他情報

1. 臭化エチルの合成法

臭化エチルの合成

図2. 臭化エチルの合成

炭化水素の臭素化によって、臭化エチルを合成可能です。一般的に臭化エチルの合成では、エチレンに臭化水素を付加する場合が多いです。ただし臭化エチルは安価な化合物であり、通常研究室では合成しません。

また、エタノールと臭化水素酸に少量の硫酸を加えて蒸留すると、臭化エチルが生成します。この反応では副生成物として、ジエチルエーテルが生じます。さらに、エタノールを臭化チオニル (SOBr2) や三臭化リン (PBr3) と反応させても、臭化エチルを生成可能です。

2. 臭化エチルの反応

臭化エチルの反応

図3. 臭化エチルの反応

臭化エチルとアルカリを加熱すると、エチレンが生成します。グリニャール試薬を調製するための安価な試薬として、臭化エチルを利用可能です。

有機合成化学で臭化エチルは、C2H5+シントン (英: synthon) として使用されます。アルキル化剤 (英: alkylating agents) として臭化物である臭化エチルは、塩化物である塩化エチルよりも優れています。

しかし、実際にはC2H5+になっているわけではなく、カルボン酸塩と臭化エチルの反応によってエチルエステルを合成します。擬似カルバニオン (英: carbanions) もエチル化でき、チオ尿素のエチルイソチオウロニウム塩 (英: ethylisothiouronium salts) も合成可能です。アミン類のエチル化では、エチルアミンが生成されます。

参考文献
http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/02188150.pdf
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0593.html

硝酸ナトリウム

硝酸ナトリウムとは

硝酸ナトリウム (英: sodium nitrate) とは、硝酸のナトリウム塩です。

天然にはチリ硝石として産出します。チリなどの南アメリカ太平洋沿岸で大量に発掘されたため、チリ硝石と呼ばれています。国内では宇部興産と日産化学が生産しており、チリ、韓国、中国からの輸入品の流通も多いです。

硝酸ナトリウムは労働安全衛生法では酸化性の物に該当し、消防法では危険物第1類酸化性固体 硝酸塩類 (第3種酸化性固体) に該当します。

硝酸ナトリウムの使用用途

硝酸ナトリウムは、食品添加物としてチーズや清酒の発酵調整剤や食肉の発色剤に使われています。しかし、発がん性の可能性があると指摘されており、使用量の最大限度が定められています。

硝酸ナトリウムは水溶性であり、即効性のある窒素肥料として野菜類に使用可能です。

そのほか、ガラスの消泡剤、火薬、染料、マッチやタバコの助燃剤、酸化剤、硝酸カリ等の塩類の製造、太陽熱発電等の蓄熱媒体として用いられてます。

硝酸ナトリウムの性質

硝酸ナトリウムは無色の結晶です。融点は308°Cで、潮解性を有します。熱水によく溶けますが、温度が下がると水への溶解度は減少します。水溶液は中性です。メタノールにわずかに溶解しますが、エタノールにはほとんど溶けません。

肉に含まれているヘム鉄は発がん性を有するニトロソアミン (英: nitrosamines) の生成を促しますが、加工肉では硝酸ナトリウムや亜硝酸ナトリウムによって生成します。

硝酸ナトリウムの構造

硝酸ナトリウムの化学式は、NaNO3で表されます。

結晶構造は三方晶系であり、式量は84.99g/molで、密度は2.3g/cm3です。

硝酸ナトリウムのその他情報

1. 硝酸ナトリウムの産出

天然の硝酸ナトリウムは、チリやペルーに存在します。海霧の降水と水しぶきにより、鉱床内にカリーチ鉱石と呼ばれる硝酸塩が蓄積しているためです。硝酸ナトリウムのほか、KNO3、NaCl、Na2SO4などが沈降します。

20世紀の変わり目までの1世紀以上にわたって、ほとんどの硝酸ナトリウムはチリ北部のアタカマ砂漠で採掘されていました。しかしハーバー・ボッシュ法 (英: Haber–Bosch process) が開発され、1940年代までには天然資源から調達される硝酸ナトリウムの需要が劇的に減少しました。

現在でもチリは、ペドロ・デ・バルディビア、マリア・エレナ、パンパ・ブランカなどに鉱山があり、カリーチ鉱石の最大の埋蔵量を有しています。カリーチ鉱石を加工すると、硝酸ナトリウムのほか、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、ヨウ素などが得られます。

2. 硝酸ナトリウムの合成法

工業的には炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウムなどと、硝酸を反応させると硝酸ナトリウムは得られます。

水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどを、硝酸アンモニウムと混合しても生成します。

3. 硝酸ナトリウムの反応

硝酸ナトリウムが硫酸と反応すると、硝酸を製造可能です。生成物は分留で精製されて、硫酸水素ナトリウムが残渣として得られます。

硝酸銀と塩化ナトリウムを混合すると、塩化銀が沈殿して硝酸ナトリウムを生成可能です。

4. 硝酸ナトリウムの危険性

真性糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、胃がんなどによる死亡率と、硝酸塩の関連性が研究で示されています。硝酸ナトリウムと亜硝酸塩によって形成されるニトロソアミンは、胃がんや食道がんに関連しています。防腐剤として肉に添加された少量の硝酸塩がまず亜硝酸塩に分解され、亜硝酸塩はタンパク質が豊富な食品と反応して、発がん性のあるニトロソ化合物を生成するためです。肉の硬化や消化の際に、ニトロソ化合物は体内で生じます。したがって硝酸ナトリウムと亜硝酸塩によって、結腸直腸がんのリスクが高くなると考えられています。

参考文献
http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/19498250.pdf
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/syosanen/eikyo/

硝酸アルミニウム

硝酸アルミニウムとは

硝酸アルミニウム (英: Aluminium Nitrate) とは、硝酸アルミニウムの塩である固体です。

化学式はAl(NO3)3、モル質量は213.0g/mol、融点は73℃、沸点は135℃です。硝酸アルミニウムには多種の水和物が存在しますが、「硝酸アルミニウム九水和物」が最も一般的に広く利用されています。

硝酸アルミニウムの性質

硝酸アルミニウムは、アルミニウムを硝酸に溶かして濃縮することで生成されます。無水和物は無色の粉末、九水和物は白色の固体で、斜方晶系の結晶です。九水和物の方が融点は低くなりますが、分解する温度は無水和物より高いです。

硝酸イオンは酸化剤としての性質を持つため、この化合物も酸化剤として働くことができます。水、エタール、エーテルに溶けやすく、水溶液は加水分解して弱い酸性を示します。また、通常の条件下では安定していますが、吸湿性及び潮解性があり、無水物を空気中で放置すると徐々に水和物に変化していきます。

皮膚に対する刺激性を持ち、特に目に対して強い刺激性を持つため、取り扱うときには保護メガネを着用するなど細心の注意を払うことが必要です。

硝酸アルミニウムの使用用途

1. 工業

硝酸アルミニウムは1,200℃から1,300℃で分解することによって酸化アルミニウムに変化するため、酸化アルミニウムの製造に利用されています。

皮革分野においても利用されており、皮なめし助剤やレザー仕上剤として使用されています。また、硝酸アルミニウムには、媒染剤としての用途もあり、染料が繊維に直接染着しない場合に使用されます。硝酸アルミニウムに含まれるアルミニウムイオンと染料分子が繊維上で結合することで、水に溶けない色素に変わり、丈夫な染色が得られます。

また、モリブデンなどの金属を保持する単体として働くことができ、コバルトなど水素化の触媒となるような金属を保持させることによって水素化が容易になりました。この性質を利用して、石油精製用の触媒などとして利用されています。

硝酸はアルミニウムや鉄、ニッケルクロム、コバルトに対して、表面に「不動態」と呼ばれる酸化被膜を形成することができます。不動態は外部からの酸化に非常に強いため、硝酸アルミニウムは腐食防止や金属表面処理剤に用いられることもあります。

硝酸アルミニウムの結晶はウランの結晶と似た性質を持っているため、ウランの精製に関する実験を実験室で行う際にウランの代わりとして用いられるなどの用途もあります。

2. 有機化学

実験室においては、水酸化アルミニウムの合成に用いられてきました。弱塩基の遊離の性質を利用し、硝酸アルミニウムと水酸化ナトリウムを混ぜ合わせることで水酸化アルミニウムを合成することができます。

また、硝酸が有機化合物をニトロ化する性質を持っていることから、ベンゼン環などに対するニトロ化剤として用いられます。硝酸イオンは有機化学反応において様々な触媒作用を発揮するので、有機合成触媒としても利用されます。

3. その他

その他の用途では発汗抑制剤としても使用されます。皮膚に塗布された硝酸アルミニウムは汗腺の深部で汗腺内の水分と反応し、皮膚上層のケラチンと一緒に汗腺を塞ぎます。これによって汗の分泌は物理的に阻害されて、汗腺を休眠状態とすることによって制汗作用を発揮します。また、研磨剤やさまざまな物質の分析試薬などとしても広く利用されています。 

硝酸アルミニウムのその他情報

法規情報

硝酸アンモニウム九水和物は、労働安全衛生法において「名称等を表示すべき危険物及び有害物」、「名称等を通知すべき危険物及び有害物」、「危険物・酸化性の物」にそれぞれ指定されており、取り扱いには注意が必要です。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0101-1181JGHEJP.pdf

炭化ホウ素

炭化ホウ素とは

炭化ホウ素とは、ボロンカーバイドとも呼ばれるホウ素と炭素との化合物です。

炭化ホウ素の化学式は、B4Cで表され、物性は光沢のある灰黒色の粉末で、常温下での化学的安定性に優れ、酸やアルカリに侵されません。炭化ホウ素は、セラミックスの中でも極めて硬い物質で、修正モース硬度における硬度は、ダイヤモンドの次に高く (ダイヤモンド: 15、炭化ホウ素: 14) 耐摩耗性に優れています。

炭化ホウ素の使用用途

炭化ホウ素は、硬度が高く、耐摩耗性に優れているので、耐久性を要する製品を中心にさまざまな形で利用されています。主な使用用途として、切削工具ブラスト装置のノズル、研磨材 (粉末、砥粒) 、サーメット、乳鉢、防弾装甲材などがあります。また、電気絶縁性が高く熱伝導率が高いため、高温環境での利用が可能であり、ハードディスクのヘッドや電子部品などの産業分野で広く使用されています。

天然のホウ素 (B) には、ホウ素10 (10B) が約20%含まれています。ホウ素10は中性子を吸収する性質があるため、ホウ素含有量の多い炭化ホウ素は中性子の吸収能力が高いです。そのため炭化ホウ素は原子炉における核分裂反応制御材料や中性子遮蔽材に利用されています。

炭化ホウ素の性質

分子量は55.25、比重は2.51、融点は2350 ℃です。高融点、高硬度、低比重、耐熱性、耐薬品性、中性子吸収能などの特性を備えています。

塩素に対しては高温で反応し、三塩化ホウ素が生成します。酸素に対しては抵抗力が弱く、粉末状のものは570 ℃から酸化され始めます。一般的に酸やアルカリには侵されませんが、アルカリ融解やフッ化水素酸を含む酸により分解・可溶化されます。酸によって分解する場合、フッ化水素酸と硝酸の混酸による加圧分解法が用いられます。

炭化ホウ素の構造

炭化ホウ素の結晶構造は菱面体晶型です。対角線上に3個の炭素原子をもつ菱面体単位格子の各頂点にホウ素の正二十面体を形成する構造です。

対角線上の炭素連鎖の中央部は特にホウ素によって置換されやすく、また二十面体のホウ素が逆に炭素によって一部置換することもあります。元素の置換のみで結晶の骨格は変わらないため、粉末 X 線回折図形のピーク数や強度比はほとんど変わりません。

炭化ホウ素の種類

炭化ホウ素はバルク形状、粉末状など様々な形態で扱われています。バルク形状の炭化ホウ素は、素板やノズル、密封シール、ペレットなどのセラミックス製品に加工され、防弾関係、サンドブラスト、ウォータージェット技術、機械密封などに応用されます。粒子状の炭化ホウ素は高硬度材料で作られた製品の研磨材、耐火物酸化防止材、SiC焼結助剤などに用いられます。粒子状の場合、用途によって粒径が揃った炭化ホウ素が用いられます。

炭化ホウ素のその他情報

炭化ホウ素の製造方法

工業的には、酸化ホウ素などのホウ素源と炭素との混合物を電気炉で高温加熱して合成します(熱炭素還元法)。ホウ素源はホウ酸 (H3BO3) や酸化ホウ素 (B2O3) 、炭素源は活性炭や石油コークスなどが用いられます。合成温度は高いですが、原料が安価で無害であり、大量合成に適しています。
その他の炭化ホウ素の製法は以下があります。

1. ホウ素と炭素の直接反応
ホウ素と炭素の直接反応により純粋な炭化ホウ素を得やすいと言われていますが、高純度の金属ホウ素は極めて高価であるため、工業的にこの方法は用いられていません。

2. 複合炭化物から合成
TiO2-SiO2-B2O3系のガラス成分を出発原料として炭化ホウ素を合成します。一方で、炭化チタンや炭化ケイ素も同時に生成します。

3. 無水ホウ酸またはホウ砂、マグネシウム、炭素から合成
酸化ホウ素と炭素から炭化ホウ素を合成する方法では高温が必要ですが、マグネシウムなどの還元剤を加える方法では比較的低音で炭化ホウ素を合成できます。

参考文献
http://www.ceramic.or.jp/museum/contents/pdf/2007_8_04.pdf

炭化タングステン

炭化タングステンとは

炭化タングステンとは、タングステンと炭素の化合物です。

タングステンカーバイド (英: tungsten carbide) とも呼ばれています。炭化タングステンは縦弾性係数 (ヤング率) が大きく、剛性が非常に高いです。さらに、硬度、強度ともに高く、耐腐食性に優れています。

天然の炭化タングステンは、中国のチベット自治区の山南市チュスム県で発見され、2007年にチュスム県にちなんでクソング鉱 (英: Qusongite) と名付けられました。タングステンカーバイドの粉塵を吸入すると、珪肺症のような肺線維症を引き起こします。WC-Co系合金は発癌性物質だと言われています。

炭化タングステンの使用用途

炭化タングステンは、主に超硬合金の原料に用いられています。とくに炭化タングステン (WC) とコバルト (Co) を混合して焼結結合させると機械的性質に優れており、超硬合金と言えばWC-Co系合金を指すことが多いです。ほかにも炭化タングステン (WC) とニッケル (Ni) で組成されたWC-Ni系合金などがあります。

別の物質を添加して、耐酸化性や耐食性などを向上でき、WC-Co系合金に炭化チタン (TiC) や炭化タンタル (TaC) などを加えた超硬合金もあります。いずれの超硬合金も剛性や硬度、強度が高くて、熱膨張率が低く、旋削チップ、ドリル、エンドミルなどの切削工具に使用可能です。また、耐摩耗性にも優れているため、伸線用ダイスや圧延ロール、金型などに広く利用されています。

炭化タングステンの性質

炭化タングステンの融点は2,870°Cで、沸点は6,000°Cです。灰色または黒色の固体で、光沢があります。

炭化タングステンのヤング率はおよそ550GPaで、鋼の2倍ほどの剛性を持っています。コランダム、ルビー、サファイアなどのα-酸化アルミニウムに匹敵する硬さです。

炭化タングステンの構造

炭化タングステンは等モル量の炭素原子とタングステン原子から構成されている無機化合物です。化学式はWCで表され、モル質量は195.851g/molです。

六方晶のα-炭化タングステンと立方体のβ-炭化タングステンの2種類が存在します。六方晶系型のタングステン原子間の距離は291pmで、隣接層のタングステン原子間の最短距離は284pmであり、タングステン-炭素結合長は220pmです。α-炭化タングステンの密度は15.63g/cm3です。

炭化タングステンのその他情報

1. 炭化タングステンの合成法

1,400〜2,000°Cで炭素とタングステンが反応すると、炭化タングステンが得られます。タングステンまたは酸化タングステン(VI)を用いた一酸化炭素と二酸化炭素の混合ガスと水素ガスによる流動層法では、900〜1,200°Cでも合成可能です。

グラファイトと酸化タングステン(VI)を、900°Cで加熱しても炭化タングステンが生成します。670°Cの水素に晒した後に、1,000°Cのアルゴン雰囲気下で浸炭しても合成可能です。

還元剤として水素を用いて、炭素源としてメタンと670°Cで六塩化タングステンを反応させると、炭化タングステンは得られます。還元剤の水素と炭素源のメタノールを、350°Cで六フッ化タングステンと反応させても生成可能です。

2. 炭化タングステンの反応

炭化タングステンは酸に耐性があり、水、塩酸硫酸に溶けません。フッ硝酸 (硝酸とフッ化水素酸の混合溶液) や王水には溶解します。炭化タングステンは500~600°Cで酸化し始めます。室温でフッ素ガスと反応し、400°C以上で塩素と反応しますが、乾燥した水素とは反応しません。

微粉末状の炭化タングステンは、過酸化水素水溶液中で容易に酸化します。高温高圧下で炭酸ナトリウム水溶液と反応して、タングステン酸ナトリウムが生じます。

参考文献
https://www.kojundo.co.jp/dcms_media/other/WWI01PAG.pdf

没食子酸

没食子酸とは

没食子酸の基本情報

図1. 没食子酸の基本情報

没食子酸 (もっしょくしさん・ぼっしょくしさん:Gallic acid) とは、芳香族ヒドロキシカルボン酸の1種に属する分子式C7H6O5の有機化合物です。

別名には「ガリル酸」「ガロ酸」「ピロガロール-5-カルボン酸」「3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸」などの名称があります。CAS登録番号は、 149-91-7です。

分子量は170.12、融点250℃であり、常温では無色の柱状結晶です。また、密度は1.7g/mL、酸解離定数pKaはCOOH:4.5及びOH:10であり、水への溶解度は1.1g/ 100mL (20℃) です。

吸湿性があり、没食子酸一水和物を生じます。この水和物は120℃付近まで熱されると、結晶水を失います。

没食子酸の使用用途

没食子酸は、還元力が非常に高い物質です。そのため、食品や化粧品、飼料等の酸化防止剤として用いられており、アルカリ性水溶液は、還元剤、写真の現像剤に使われています。

その他の用途は、タンニンの原料や青インキの製造や、染料の原料などです。また、培養工学用試薬や植物生長制御試薬、生長阻害剤などに利用されることもあります。

没食子酸は、多くの誘導体が合成されており、さまざまな分野で活用されている物質です。例えば、没食子酸プロピル、没食子酸イソアミルなどのエステルは、油脂・バターの酸化防止剤にも使用されます。

カテキンの一種、エピガロカテキンガラートも没食子酸のエステルです。これらの誘導体の一部は、工業薬品や電子材料製造薬品などにも応用されており、医薬品分野においては、収斂剤や喀血の止血剤として用いられています。

没食子酸の性質

没食子酸の脱炭酸反応

図2. 没食子酸の脱炭酸反応

没食子酸は、水に溶けると、アルカリ性水溶液となる物質です。没食子酸のアルカリ性水溶液は、還元力が強く、空気中の酸素によって容易に酸化されます。また、没食子酸の接触水素化還元では、芳香環が還元されてシクロヘキサン環誘導体を与えます。 

没食子酸を加熱すると、脱炭酸によってカルボキシル基が除去されます。この反応の生成物がピロガロールです。ピロガロールは、焦性没食子酸という別名を持ち、有機合成試薬、写真の現像液、毛織物の媒染剤、染料の成分などとして活用されている物質です。

没食子酸は吸湿性があることから、一水和物が安定に存在します。没食子酸一水和物は、1分子の結晶水を含んでいますが、融点に達すると分解し、ピロガロールと二酸化炭素が生成されます。

没食子酸の種類

没食子酸は主に研究開発用試薬製品や、産業用化成品として販売されています。研究開発用試薬は、有機合成原料や生物化学実験などの分野で用いられる物質です。

容量の種類には10 g , 250g , 1kgなどがあります。常温保存可能な試薬として扱われます。また、没食子酸は一水和物が安定に存在することから、一水和物も試薬製品として販売されている物質です。

産業用化成品としては、一般工業用途、電子材料や食品添加物などの用途で販売されています。15kgや25kgなど工場での汎用性が高い大容量での提供が一般的です。

没食子酸のその他情報

1. 没食子酸の生合成

没食子酸は、五倍子 (ヌルデの虫こぶ) 、没食子 (中近東のブナ・カシワの虫こぶ) 、マンサク科の植物ハマメリス、茶の葉、オークの樹皮など、多くの植物に含まれている物質です。加水分解性タンニンの基本骨格を成しています。

自然界における生合成では、まずシキミ酸デヒドロゲナーゼの働きによって、3-デヒドロシキミ酸から3,5-ジデヒドロシキミ酸が合成されます。没食子酸は、この中間体物質の芳香環化によって合成されている物質です。

2. 没食子酸のエステル誘導体

没食子酸のエステル誘導体の例

図3. 没食子酸のエステル誘導体の例

没食子酸は、天然物・合成化合物を問わず、多くのエステル誘導体が知られています。例えば、没食子酸エピガロカテキンはエピガロカテキンと没食子酸のエステルであり、茶に多く含まれるカテキンの一種です。

また、没食子酸-1-β-グリコシルトランスフェラーゼは、没食子酸のグリコシル化を促進する酵素として知られています。

参考文献
https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/sds/sigma/g7384

水酸化ニッケル

水酸化ニッケルとは

水酸化ニッケルとは、ニッケルの水酸化物です。

水酸化ニッケルには、ニッケルの酸化数が1、2、3の水酸化ニッケル (I) 、水酸化ニッケル (II) 、水酸化ニッケル (III) が存在します。これらの化合物のうち、最も一般的なのは水酸化ニッケル (II) です。

水酸化ニッケルは、労働安全衛生法にて「名称表示物質」「名称通知対象物質」「特定化学物質等」に、化学物資管理促進法にて「特定第一種指定化学物資」に、それぞれ指定されており、取り扱いには注意が必要です。

水酸化ニッケルの使用用途

水酸化ニッケル (II) は、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池、リチウムイオン電池などといった充電式電池の活物質や添加剤として、携帯電話や電動工具、デジタルカメラ、ハイブリッド自動車などに使用されています。電池の正極材料として用いられる水酸化ニッケルの表面に、高導電性のコバルト化合物を被覆することで、電池を高性能化することも可能です。

また、水酸化ニッケルは、表面処理薬品の原料やメッキ薬品、各種触媒などとして用いられる場合もあります。 

水酸化ニッケルの性質

1. 水酸化ニッケル (I)

水酸化ニッケル (I) は、暗い青色の沈殿物で、ほとんど水に溶けません。HN (SO3H)(SO3) Niを塩基性にすると、水酸化ニッケル (I) の沈殿が生じます。水酸化ニッケル (I) の沈殿は、容易に湿気によって分解します。

水酸化ニッケル (I) とアルカリ金属の硫化物を反応させると、硫化ニッケル (I) が沈殿として得ることが可能です。シアン化アルカリとの反応では、トリシアニドニッケル (I) 酸イオンを生じます。

2. 水酸化ニッケル (II)

水酸化ニッケル (II) は、アルカリ水溶液にはほぼ溶解しませんが、シアン化カリウム水溶液やアンモニア水には錯体を形成して溶解します。希酸に溶けますが、水には不溶です。

3. 水酸化ニッケル (III) 

水酸化ニッケル (III) の密度は4.84g/cm3、融点は600℃です。

水酸化ニッケルの構造

1. 水酸化ニッケル (I)

水酸化ニッケル (I) は、1価のニッケルの水酸化物です。化学式はNiOHで、モル質量は75.70です。

2. 水酸化ニッケル (II)

水酸化ニッケル (II) は、2価のニッケルの水酸化物です。化学式はNi(OH)2で、モル質量は92.7081の淡緑色の結晶です。結晶構造は六方晶系の水酸化カドミウム型構造を取っています。格子定数はa = 3.117Å、c = 4.595Å、密度は4.15g/cm3です。

3. 水酸化ニッケル(III)

水酸化ニッケル (III) は、3価のニッケルの水酸化物です。はっきりと確認されていない化合物ですが、ブラックニッケルオキシドはよくNi2O3と書かれます。モル質量は165.39です。

有量は77%付近ですが、Ni2O3のニッケル含有量が70.98%なので、実際には不定比の酸化ニッケル (II) だと考えられています。ニッケルの表面にわずかに存在するNi2O3、もしくはニッケルの酸化における中間体とも言われています。

水酸化ニッケルのその他情報

1. 水酸化ニッケル (II) の合成

ニッケル (II) 塩の水溶液に水酸化アルカリを加えることによって、水酸化ニッケル (II) が生成されます。ただし、塩基性塩の沈殿が混入しやすいため好ましくありません。

硝酸ニッケルとアンモニア水の反応で錯体にしたヘキサアンミンニッケル (II) 塩 ([Ni(NH3)6]2+) 水溶液に、水酸化カリウム水溶液を加えることで良好な沈殿を得ることが可能です。水溶液から沈殿させると、Ni(OH)2・1.5H2Oが生成し、真空中で放置すると無水物になります。

2. 水酸化ニッケル (II) の反応

水酸化ニッケル (II) を230℃に熱すると、水を失って酸化ニッケル (II) に分解されます。ただし、完全に脱水するためには、赤熱することが必要です。

水酸化ニッケル (II) は空気や過酸化水素では酸化されませんが、オゾンによって容易に酸化され、水酸化ニッケル (III) に変化します。

参考文献
https://www.kojundo.co.jp/