炭化ホウ素

炭化ホウ素とは

炭化ホウ素とは、ボロンカーバイドとも呼ばれるホウ素と炭素との化合物です。

炭化ホウ素の化学式は、B4Cで表され、物性は光沢のある灰黒色の粉末で、常温下での化学的安定性に優れ、酸やアルカリに侵されません。炭化ホウ素は、セラミックスの中でも極めて硬い物質で、修正モース硬度における硬度は、ダイヤモンドの次に高く (ダイヤモンド: 15、炭化ホウ素: 14) 耐摩耗性に優れています。

炭化ホウ素の使用用途

炭化ホウ素は、硬度が高く、耐摩耗性に優れているので、耐久性を要する製品を中心にさまざまな形で利用されています。主な使用用途として、切削工具ブラスト装置のノズル、研磨材 (粉末、砥粒) 、サーメット、乳鉢、防弾装甲材などがあります。また、電気絶縁性が高く熱伝導率が高いため、高温環境での利用が可能であり、ハードディスクのヘッドや電子部品などの産業分野で広く使用されています。

天然のホウ素 (B) には、ホウ素10 (10B) が約20%含まれています。ホウ素10は中性子を吸収する性質があるため、ホウ素含有量の多い炭化ホウ素は中性子の吸収能力が高いです。そのため炭化ホウ素は原子炉における核分裂反応制御材料や中性子遮蔽材に利用されています。

炭化ホウ素の性質

分子量は55.25、比重は2.51、融点は2350 ℃です。高融点、高硬度、低比重、耐熱性、耐薬品性、中性子吸収能などの特性を備えています。

塩素に対しては高温で反応し、三塩化ホウ素が生成します。酸素に対しては抵抗力が弱く、粉末状のものは570 ℃から酸化され始めます。一般的に酸やアルカリには侵されませんが、アルカリ融解やフッ化水素酸を含む酸により分解・可溶化されます。酸によって分解する場合、フッ化水素酸と硝酸の混酸による加圧分解法が用いられます。

炭化ホウ素の構造

炭化ホウ素の結晶構造は菱面体晶型です。対角線上に3個の炭素原子をもつ菱面体単位格子の各頂点にホウ素の正二十面体を形成する構造です。

対角線上の炭素連鎖の中央部は特にホウ素によって置換されやすく、また二十面体のホウ素が逆に炭素によって一部置換することもあります。元素の置換のみで結晶の骨格は変わらないため、粉末 X 線回折図形のピーク数や強度比はほとんど変わりません。

炭化ホウ素の種類

炭化ホウ素はバルク形状、粉末状など様々な形態で扱われています。バルク形状の炭化ホウ素は、素板やノズル、密封シール、ペレットなどのセラミックス製品に加工され、防弾関係、サンドブラスト、ウォータージェット技術、機械密封などに応用されます。粒子状の炭化ホウ素は高硬度材料で作られた製品の研磨材、耐火物酸化防止材、SiC焼結助剤などに用いられます。粒子状の場合、用途によって粒径が揃った炭化ホウ素が用いられます。

炭化ホウ素のその他情報

炭化ホウ素の製造方法

工業的には、酸化ホウ素などのホウ素源と炭素との混合物を電気炉で高温加熱して合成します(熱炭素還元法)。ホウ素源はホウ酸 (H3BO3) や酸化ホウ素 (B2O3) 、炭素源は活性炭や石油コークスなどが用いられます。合成温度は高いですが、原料が安価で無害であり、大量合成に適しています。
その他の炭化ホウ素の製法は以下があります。

1. ホウ素と炭素の直接反応
ホウ素と炭素の直接反応により純粋な炭化ホウ素を得やすいと言われていますが、高純度の金属ホウ素は極めて高価であるため、工業的にこの方法は用いられていません。

2. 複合炭化物から合成
TiO2-SiO2-B2O3系のガラス成分を出発原料として炭化ホウ素を合成します。一方で、炭化チタンや炭化ケイ素も同時に生成します。

3. 無水ホウ酸またはホウ砂、マグネシウム、炭素から合成
酸化ホウ素と炭素から炭化ホウ素を合成する方法では高温が必要ですが、マグネシウムなどの還元剤を加える方法では比較的低音で炭化ホウ素を合成できます。

参考文献
http://www.ceramic.or.jp/museum/contents/pdf/2007_8_04.pdf

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