硝酸ナトリウム

硝酸ナトリウムとは

硝酸ナトリウム (英: sodium nitrate) とは、硝酸のナトリウム塩です。

天然にはチリ硝石として産出します。チリなどの南アメリカ太平洋沿岸で大量に発掘されたため、チリ硝石と呼ばれています。国内では宇部興産と日産化学が生産しており、チリ、韓国、中国からの輸入品の流通も多いです。

硝酸ナトリウムは労働安全衛生法では酸化性の物に該当し、消防法では危険物第1類酸化性固体 硝酸塩類 (第3種酸化性固体) に該当します。

硝酸ナトリウムの使用用途

硝酸ナトリウムは、食品添加物としてチーズや清酒の発酵調整剤や食肉の発色剤に使われています。しかし、発がん性の可能性があると指摘されており、使用量の最大限度が定められています。

硝酸ナトリウムは水溶性であり、即効性のある窒素肥料として野菜類に使用可能です。

そのほか、ガラスの消泡剤、火薬、染料、マッチやタバコの助燃剤、酸化剤、硝酸カリ等の塩類の製造、太陽熱発電等の蓄熱媒体として用いられてます。

硝酸ナトリウムの性質

硝酸ナトリウムは無色の結晶です。融点は308°Cで、潮解性を有します。熱水によく溶けますが、温度が下がると水への溶解度は減少します。水溶液は中性です。メタノールにわずかに溶解しますが、エタノールにはほとんど溶けません。

肉に含まれているヘム鉄は発がん性を有するニトロソアミン (英: nitrosamines) の生成を促しますが、加工肉では硝酸ナトリウムや亜硝酸ナトリウムによって生成します。

硝酸ナトリウムの構造

硝酸ナトリウムの化学式は、NaNO3で表されます。

結晶構造は三方晶系であり、式量は84.99g/molで、密度は2.3g/cm3です。

硝酸ナトリウムのその他情報

1. 硝酸ナトリウムの産出

天然の硝酸ナトリウムは、チリやペルーに存在します。海霧の降水と水しぶきにより、鉱床内にカリーチ鉱石と呼ばれる硝酸塩が蓄積しているためです。硝酸ナトリウムのほか、KNO3、NaCl、Na2SO4などが沈降します。

20世紀の変わり目までの1世紀以上にわたって、ほとんどの硝酸ナトリウムはチリ北部のアタカマ砂漠で採掘されていました。しかしハーバー・ボッシュ法 (英: Haber–Bosch process) が開発され、1940年代までには天然資源から調達される硝酸ナトリウムの需要が劇的に減少しました。

現在でもチリは、ペドロ・デ・バルディビア、マリア・エレナ、パンパ・ブランカなどに鉱山があり、カリーチ鉱石の最大の埋蔵量を有しています。カリーチ鉱石を加工すると、硝酸ナトリウムのほか、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、ヨウ素などが得られます。

2. 硝酸ナトリウムの合成法

工業的には炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウムなどと、硝酸を反応させると硝酸ナトリウムは得られます。

水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどを、硝酸アンモニウムと混合しても生成します。

3. 硝酸ナトリウムの反応

硝酸ナトリウムが硫酸と反応すると、硝酸を製造可能です。生成物は分留で精製されて、硫酸水素ナトリウムが残渣として得られます。

硝酸銀と塩化ナトリウムを混合すると、塩化銀が沈殿して硝酸ナトリウムを生成可能です。

4. 硝酸ナトリウムの危険性

真性糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、胃がんなどによる死亡率と、硝酸塩の関連性が研究で示されています。硝酸ナトリウムと亜硝酸塩によって形成されるニトロソアミンは、胃がんや食道がんに関連しています。防腐剤として肉に添加された少量の硝酸塩がまず亜硝酸塩に分解され、亜硝酸塩はタンパク質が豊富な食品と反応して、発がん性のあるニトロソ化合物を生成するためです。肉の硬化や消化の際に、ニトロソ化合物は体内で生じます。したがって硝酸ナトリウムと亜硝酸塩によって、結腸直腸がんのリスクが高くなると考えられています。

参考文献
http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/19498250.pdf
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/syosanen/eikyo/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です