硝酸アルミニウム

硝酸アルミニウムとは

硝酸アルミニウム (英: Aluminium Nitrate) とは、硝酸アルミニウムの塩である固体です。

化学式はAl(NO3)3、モル質量は213.0g/mol、融点は73℃、沸点は135℃です。硝酸アルミニウムには多種の水和物が存在しますが、「硝酸アルミニウム九水和物」が最も一般的に広く利用されています。

硝酸アルミニウムの性質

硝酸アルミニウムは、アルミニウムを硝酸に溶かして濃縮することで生成されます。無水和物は無色の粉末、九水和物は白色の固体で、斜方晶系の結晶です。九水和物の方が融点は低くなりますが、分解する温度は無水和物より高いです。

硝酸イオンは酸化剤としての性質を持つため、この化合物も酸化剤として働くことができます。水、エタール、エーテルに溶けやすく、水溶液は加水分解して弱い酸性を示します。また、通常の条件下では安定していますが、吸湿性及び潮解性があり、無水物を空気中で放置すると徐々に水和物に変化していきます。

皮膚に対する刺激性を持ち、特に目に対して強い刺激性を持つため、取り扱うときには保護メガネを着用するなど細心の注意を払うことが必要です。

硝酸アルミニウムの使用用途

1. 工業

硝酸アルミニウムは1,200℃から1,300℃で分解することによって酸化アルミニウムに変化するため、酸化アルミニウムの製造に利用されています。

皮革分野においても利用されており、皮なめし助剤やレザー仕上剤として使用されています。また、硝酸アルミニウムには、媒染剤としての用途もあり、染料が繊維に直接染着しない場合に使用されます。硝酸アルミニウムに含まれるアルミニウムイオンと染料分子が繊維上で結合することで、水に溶けない色素に変わり、丈夫な染色が得られます。

また、モリブデンなどの金属を保持する単体として働くことができ、コバルトなど水素化の触媒となるような金属を保持させることによって水素化が容易になりました。この性質を利用して、石油精製用の触媒などとして利用されています。

硝酸はアルミニウムや鉄、ニッケルクロム、コバルトに対して、表面に「不動態」と呼ばれる酸化被膜を形成することができます。不動態は外部からの酸化に非常に強いため、硝酸アルミニウムは腐食防止や金属表面処理剤に用いられることもあります。

硝酸アルミニウムの結晶はウランの結晶と似た性質を持っているため、ウランの精製に関する実験を実験室で行う際にウランの代わりとして用いられるなどの用途もあります。

2. 有機化学

実験室においては、水酸化アルミニウムの合成に用いられてきました。弱塩基の遊離の性質を利用し、硝酸アルミニウムと水酸化ナトリウムを混ぜ合わせることで水酸化アルミニウムを合成することができます。

また、硝酸が有機化合物をニトロ化する性質を持っていることから、ベンゼン環などに対するニトロ化剤として用いられます。硝酸イオンは有機化学反応において様々な触媒作用を発揮するので、有機合成触媒としても利用されます。

3. その他

その他の用途では発汗抑制剤としても使用されます。皮膚に塗布された硝酸アルミニウムは汗腺の深部で汗腺内の水分と反応し、皮膚上層のケラチンと一緒に汗腺を塞ぎます。これによって汗の分泌は物理的に阻害されて、汗腺を休眠状態とすることによって制汗作用を発揮します。また、研磨剤やさまざまな物質の分析試薬などとしても広く利用されています。 

硝酸アルミニウムのその他情報

法規情報

硝酸アンモニウム九水和物は、労働安全衛生法において「名称等を表示すべき危険物及び有害物」、「名称等を通知すべき危険物及び有害物」、「危険物・酸化性の物」にそれぞれ指定されており、取り扱いには注意が必要です。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0101-1181JGHEJP.pdf

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