マスキング

マスキングとは

マスキングという用語は、溶剤からの保護や傷の防止に使用される製品と動作に対する意味が反映されています。そして、マスキングは「覆い隠す」「包み込む」といった意味もあります。

マスキングに使用される製品には、主にマスキングテープ、固形ワックス、マスキング塗料などが挙げられます。これらは、工業分野や建築分野で重要な製品として活用されています。しかし、近年は、芸術分野でもマスキングテープやマスキング塗料に注目が集まっており、作品を創作する上で、利便性の高い製品が発売されています。

この記事では、特にマスキング塗料に重点を置いて説明します。

マスキングの使用用途

マスキング塗料は、メッキが不要な箇所にメッキ防止剤として施すことで、効果を発揮します。使用方法は、刷毛塗り、もしくはディッピングという方法があります。ディッピングとは、塗料を施したい対象を樹脂や薬剤などに浸すことで、塗料の効果を生じさせるコーティング処理のひとつです。含浸加工とも呼ばれています。

マスキング塗料には、常温乾燥型の有機溶剤や水性塗料などがあります。水性塗料は、有機溶剤を使わない塗料であったり、有機溶剤の使用量を水で代替することで、大幅に減らした塗料のことを指します。そのため、有機溶剤中毒予防規則に該当しない場合は、健康診断などの義務が課せられません。

常温乾燥型の塗料は、さまざまな用途に活用できますが、基本的に溶剤を使用しているため、塗布後に溶剤が揮散するまでメッキ作業を行うことができません。また、引火性があることから作業場を火気厳禁にしなければなりません。

しかし、極めて数量の少ない場合を除けば、火気に特別の注意を払うことで、対象の大きさにとらわれず、複雑な形状にも使用することができます。

したがって、常温乾燥型のマスキング塗料は、万能型のマスキング材料であるといえます。

水性塗料は、主に芸術分野で使用されています。例えば窓や壁などへの飾り付けやイベントのデコレーション、ショーウィンドウへの描画、ガラス製品の傷防止などが挙げられます。

マスキングの原理

航空機のエンジンを例に挙げると、部品に施されている表面処理には、カドミウムメッキや工業用クロムメッキ、ニッケルめっき、銀メッキ、鉛・イリジウムメッキなどがあります。

このとき、塗料によるマスキング材を検討すると、メッキ後の剥離に関する問題を考慮しなければなりません。この問題を除けば、耐酸性、対アルカリ性、耐熱性に優れているエポキシ樹脂やウレタン樹脂などの合成樹脂塗料が検討できます。しかし、現状、航空機のエンジンに対して、大部分にマスキング材として、ラッカーが使用されています。

ラッカーは、トルエンなどの有機溶剤に、アクリル樹脂やニトロセルロース(硝化綿)を溶かした揮発性の高い塗料です。室温、加温タイプの酸性溶液、およびクロムメッキ液に対して、比較的長い時間で耐えるが、アルカリ性溶液には弱いです。そして、室温では短時間であれば、使用が可能ですが、加温すると、さらに弱くなります。

マスキング用ラッカーは、使用の際に被メッキ面を残して、筆や刷毛などで塗布します。塗布は、ピンホールができないように塗膜を厚く塗る必要があり、1回目を塗布してから少なくとも30分は、空気乾燥が必要です。指触できるようになったら、2回目の塗布を行い、これを繰り返します。

塗布後は、2時間以上の乾燥を行い、メッキ後の除去には加温したアルカリ液に浸セキし、塗膜が浮いたら圧縮空気を吹きつけて剥がします。

溶融亜鉛メッキ塗装

溶融亜鉛メッキ塗装とは溶融亜鉛メッキ塗装

溶融亜鉛メッキ塗装は、溶けた亜鉛に被加工材料を漬け込みメッキ処理を施します。ドブ漬けメッキとも呼ばれる加工方式です。厚みのある亜鉛皮膜を形成できる点が特徴です。

溶融亜鉛メッキ塗装を施すことで、サビから材料を保護する効果が得られます。溶融亜鉛メッキ塗装の場合は、非常に長期間、保護効果が継続するという特徴をもちます。

シンプルなメッキ処理方式であることから、加工コストが安い点も溶融亜鉛メッキ塗装の大きな特徴です。

溶融亜鉛メッキ塗装の使用用途

溶融亜鉛メッキ塗装は、安価で耐久性に優れる特徴があるため、非常に多くの分野で使用される加工方式です。潮風にさらされる環境でも約10年にわたり、サビから材料を保護する効果が継続します。そのため、屋外で風雨にさらされる製品および部材において使用されています。

使用例を挙げると、建設機械、駅舎、道路などの公共施設、ガードレールなどで使用されています。

その他、溶融亜鉛メッキ塗装は、人が訪問しづらく定期的な保守が困難な建造物に対しても使用されています。山の中の鉄塔がその例です。メンテナンスにかかる費用が抑制できます。

溶融亜鉛メッキ塗装の原理

溶融亜鉛メッキ塗装は、亜鉛と鉄材料の化学反応による結合(合金化反応)であるため密着強度が高いという特徴を持ちます。そのため、吹き付けや表面に塗るだけの一般的な塗装と違い、強い摩擦や衝撃を加えない限り剥がれません。

また、亜鉛は「保護被膜作用」と「犠牲防食作用」を持ちます。以下にそれぞれの作用を記載します。

保護被膜作用とは、材料を覆い保護する皮膜として働く作用です。亜鉛は、水や空気に対して化学反応しにくい特性を持ちます。

犠牲防食作用とは、亜鉛が部材よりも先に溶け出す作用のことです。そのため、仮に亜鉛皮膜にキズが付き部材が剥き出しになっても、この作用が生じるため、部材が保護された状態が継続します。

溶融亜鉛メッキ塗装は、厚みのある亜鉛皮膜を形成できるので、保護被膜作用ならびに犠牲防食作用による効果が大きい点が特徴です。

溶融亜鉛メッキ塗装は、剥離しにくいという特徴に加え、亜鉛が備える2つの作用により、非常に長い期間部材を保護します。

粉体焼付塗装

粉体焼付塗装とは焼付塗装

粉体焼付塗装は、焼付塗装のひとつであり、材料の樹脂などをパウダー状にした塗料を加工対象物に静電気などを利用し、固着した後、熱を加えて硬化させる加工方法です。

粉体塗料による焼付塗装は、有機溶剤の塗料と比較して、塗装1回あたりの塗膜の厚さが、3〜5倍程度あり、重ね塗りなしで厚みと強度を得られます。また、塗装工程の自動化が容易であること、余った塗料を回収し、再利用できること、およびVOC(揮発性有機化合物)を使用していないので環境と人体への負荷が少ないことがメリットです。

粉体焼付塗装の使用用途

“体焼付塗装は、高温に加熱することから、鉄、アルミ、ステンレス、真鍮など、金属の塗装に限定されます。塗料に使用する材料の性質(強度・耐候性・耐食性・耐熱性など)により使用用途が異なります。材料別の特徴や使用用途は、以下の通りです。

  • 熱硬化性粉体塗料(加熱により硬化するタイプの塗料)
    メラミン樹脂:強度や耐候性はアクリル樹脂に劣るものの、安価なことから屋内で使用する製品に幅広く使用されています。
    アクリル樹脂:強度や耐候性があり、自動車の部品や空調機器、電気機器に用いられています。
    フッ素樹脂:超耐候性を有しており、道路や建物の壁などに使用されています。
    エポキシ樹脂:紫外線に弱いことから、主に屋内で使用する製品や塗装の下塗りに用いられています。
  • 熱可塑性粉体塗料(一旦加熱し、溶融した後、冷却し固化させるタイプの塗料)
    塩化ビニル:耐候性・耐食性に優れており、フェンスやガードレールに用いられています。
    ポリエチレン:密着性や耐候性に富んでおり、自転車のカゴやフェンスなど、屋内外を問わずに使用されています。
    ナイロン:耐摩耗性や絶縁性が高く、配管やショッピングカートに用いられています。

粉体焼付塗装の種類

粉体焼付塗装に用いる塗料には、熱硬化性粉体塗料と熱可塑性粉体塗料があります。いずれの塗料も脱脂洗浄から下地処理、塗装、焼付と工程は同じものの、塗装の原理、塗装方法、加熱温度が異なります。それぞれの加工方法の特徴は、以下の通りです。

  • 熱硬化性粉体塗料
    熱硬化性粉体塗料は、180℃〜200℃に加熱したときに、起こる架橋反応により塗膜を形成する塗料です。熱硬化性であり、再び熱を加えても硬化した状態を保ちます。塗装には、加工対象物にアースを取ってプラスの電気を帯びさせた後、マイナスの電気を帯びさせた粉体塗料を吹きつけ、静電気を利用して塗料を付着させる静電粉体塗装法が用いられています。
  • 熱可塑性粉体塗料
    熱可塑性粉体塗料は、220℃以上に加熱して溶融させた後、冷却して塗膜を形成する塗料です。熱可塑性であり、再び熱を加えると柔らかくなります。塗装には、圧縮空気により粉体塗料を流動させた空間に、加熱した加工対象物を入れて塗料を付着させる流動浸漬塗装法が用いられています。

 

メラミン焼付塗装

メラミン焼付塗装とは

メラミン焼付塗装とは、焼付による塗装のひとつで、合成した二つの樹脂塗料を使用するため、別名「合成樹脂焼付塗装」とも呼称されています。合成する塗料は、熱硬化するアミノ系メラニン樹脂、およびポリエステル系樹脂アルキド樹脂となります。

メラミン焼付塗装の特徴は、焼付(高温)を行うため、表面硬度が増すことにあります。また、低コストで金属全般的に塗装可能となります。ただし、メラミン樹脂は、紫外線に耐性がなく、経年劣化による色あせも発生します。

メラミン焼付塗装の使用用途

メラミン焼付塗装の使用用途は、低コストかつ耐食性に優れることに加えて、色落ちしないため、身近なもの(机、整理棚、OA機器)に塗装することで、発錆を防止し金属品質・外観を維持することに使用されます。なお、メラミン焼付塗装は、紫外線に弱く対候性に劣るため、主として建屋内で使用されています。

ちなみにツヤにも種類があり「ツヤなし、3分ツヤ、5分ツヤ、全ツヤ」に分類されており、一般的には「5分ツヤ」となります。

メラミン焼付塗装の原理

メラミン焼付塗装の原理は、高温(100℃以上)で焼付を実施することで化学反応する重合という現象を利用している。この現象により、前述した特徴を有する製品を製作します。

このメラミン焼付塗装の施工工程としては、まず、下地処理としてアルコール等で脱脂処理を実施し、スプレーで塗布します。次に、100~200℃の高温で20~30分程焼付を実施し、塗料を硬化させたら完成です。

メリット

  • 「耐候性」「耐薬品性」「耐磨耗性」の観点から、他塗装(アクリル塗装、フッ素焼付塗装、粉体塗装等)と比較しても平均的な性能を有しています。
  • 焼付時間、温度によりツヤを自由に調節することが可能です。
  • 低コストで保色性が優れています。

デメリット

  • 耐候性に難があります(紫外線に弱い)。

以上より、焼付塗装を検討する場合は、各焼付塗装のメリットおよびデメリットを鑑みて、最終仕様に適合する焼付塗装方法を選定する必要があります。

ポリウレタン樹脂塗装

ポリウレタン樹脂塗装とは

ポリウレタン樹脂塗装

ポリウレタン樹脂塗装とは、「(ポリ)ウレタン塗料」と呼ばれる塗料で塗装をすることです。塗料業界では「ポリウレタン」のことを通称「ウレタン」と呼ぶため、ウレタンといえばポリウレタンのことを指し、ポリウレタン樹脂塗装のことも「ウレタン塗装」とも呼ばれます。

ポリウレタン樹脂塗装の特徴として、比較的光沢が強く艶があるため、高級感のある塗装ができます。また、ポリウレタン樹脂は金属表面との密着性が比較的高く、また柔らかい樹脂であるため、剝がれにくく、加工性が高いことが特徴です。

ポリウレタン樹脂塗装の使用用途

ポリウレタン樹脂塗装は、他の塗装(塗料)と比較した際、安価であるため、かつては外壁塗装の主流でした。

しかし耐久性が低いため、外壁塗装の現在主流となっているのはシリコン塗装です。現在、ポリウレタン樹脂塗装は、屋根や外壁よりも、ベランダや雨どいなどの防水工事でよく施されます。

住宅以外では、車やバイク、食器・家具などにもウレタン塗装がよく用いられます。オイル塗装やラッカー塗装に比べ、水分に強い膜が形成されるため、とくに家具への塗装に人気です。

ポリウレタン樹脂塗装の種類

ポリウレタン樹脂塗装で使用されるポリウレタン樹脂塗料は、水性と油性に分けられます。 水性塗料と油性塗料それぞれの特徴は次の通りです。

  • 水性塗料 水性塗料は水で希釈して使用する塗料で、油性塗料よりも比較的安価であり、臭いが少なく人体や環境にやさしいというメリットがあります。ただ、油性塗料に比べると耐久性は低く、ツヤが落ちやすい面があります。
  • 油性塗料 油性塗料は、シンナーやベンジンなどの有機溶剤で希釈する塗料を指します。一般的に油性塗料は水性塗料よりも耐久性が高いですが、費用も水性塗料より高くなります。また、油性塗料の臭いは水性塗料よりも強いです。

また、水性塗料と油性塗料は、さらに1液型と2液型に分けられ、使用前に硬化剤と混ぜる必要があるかどうかで分類されています。1液型は硬化剤が不要であるのに対し、2液型は硬化剤と主剤を適切な量で混ぜ合わせて使用する必要があります。2液型は手間がかかりますが、1液型よりも耐久性に優れます。

エポキシ塗装

エポキシ塗装とは

エポキシ塗装

エポキシ塗装とは、エポキシ樹脂塗料を使用して行われる塗装方法のことです。エポキシ樹脂塗装と呼ばれることもあります。 エポキシ樹脂塗料とは、プラスチックの1種であるエポキシ樹脂から作られた塗料のことです。

エポキシ樹脂は、塗装で使用されるメラミン樹脂やアクリル樹脂など他の樹脂と比較して密着性が高いという特徴があります。 さらに、耐食性や接着性にも優れているため、サビが発生しやすい場所にエポキシ塗装が用いられております。

エポキシ塗装の使用用途

エポキシ塗装は、水分を通さず、また酸素も通さない性質があるため、耐食性に優れております。このため、海水にさらされサビが発生しやすい、船や釣り竿などに使用されます。

また、住居であれば、外壁や屋根などのサビが起こりやすい場所にも使用されます。

耐食性に加え、エポキシ塗装の特徴として、耐溶剤性があることも挙げられます。この特徴から、エポキシ塗装は、濃塩酸や濃硫酸などの溶剤(薬品)を入れるタンクの内側の塗装として用いられます。

エポキシ塗装の種類

エポキシ塗装には、使用するエポキシ樹脂塗料の硬化の種類や変性樹脂の違いによって、大きく常温硬化型、加熱(焼付)硬化型の2種類に分けることができます。

常温硬化型は、主に2液型塗料として、ビスフェノール A型エポキシ樹脂を含む主剤と活性水素を持つ硬化剤(エピクロルヒドリン)を使用直前に混合して使用する塗料です。加熱しなくても常温で硬化します。

このタイプがエポキシ塗装で最も一般的なものであり、防食性、耐薬品性が求められる用途(船舶等)で、広く下塗りに使用されています。

一方、加熱(焼付)硬化型は、1液型で加熱することで硬化させ、塗膜にするものです。主に粉体塗料として用いられ、塗装する際は、焼付塗装がなされます。粉体塗装とは、固体の樹脂塗料を顔料とともに金属表面へ付着させる加工技術です。また、焼付塗装とは、塗膜に高熱を加えて乾燥させる方法です。焼付塗装をすることにより、塗膜の硬度や密着性が向上します。 主に、パイプ内外面、電気、電子部品等に使用されます。

アルミ焼付塗装

アルミ焼付塗装とは

アルミ焼付塗装とは、アルミニウム製品の表面に焼付塗装を施す加工のことです。デザインや美観のためだけではなく、防錆性、耐候性を高める目的で実施します。使用する塗料には、メラミン樹脂塗料やアクリル樹脂塗料など、有機溶剤とエポキシ樹脂やポリエステル樹脂などの粉体塗料があります。

焼付塗装は、他の塗装方法と比較して耐候性、耐食性、耐汚染性、耐薬品性に優れており、長期間にわたり塗膜を維持します。ただし、使用する塗料により特性が異なることから、使用条件に合わせて用いる材料を選択します。

アルミ焼付塗装の使用用途

塗料の種類(有機溶剤、粉体塗料)ならびに使用する樹脂により、使用用途が異なります。

粉体塗料は、有機溶剤と比較し、塗装1回あたりの塗膜が厚いことや塗装ラインの自動化が容易なことから、屋外など使用条件が厳しく、かつ大量生産する製品に用いられています。製品例としては、ガードレール、フェンスなどの外構製品、自動車の部品などが挙げられます。

塗料として使用する樹脂は、硬度をはじめ、耐候性や耐薬品性など特性が異なります。このため、製品の使用環境に合わせて使用する樹脂を選択しています。屋内で使用する製品には、メラミン樹脂があります。また、屋外で使用する、あるいは強度を求められる製品には、アクリル樹脂、フッ素樹脂が挙げられます。

アルミ焼付塗装の種類

アルミ焼付塗装は、有機溶剤および粉体塗料いずれの場合も、脱脂洗浄から下地処理、塗装、焼付の工程で加工を行います。有機溶剤、粉体塗料別の特徴を以下に示します。

  • 有機溶剤
    有機溶剤による焼付塗装は、使用する樹脂により加熱する温度が異なり110℃〜200℃の幅があります。使用する樹脂は、メラミン樹脂、アクリル樹脂、フッソ樹脂、エポキシ樹脂です。
  • 粉体塗料
    粉体塗料による焼付塗装は、塗膜の厚さや強靱さ、あるいは塗装の自動化の容易さに加え、吹き付け時に余った塗料を再利用できることやVOC(揮発性有機化合物)を使用しないなどのメリットがあります。また、粉体塗料には、エポキシ樹脂をはじめとする熱硬化性粉体塗料と、ポリエチレンなどの熱可塑性粉体塗料があります。

熱硬化性粉体塗料は、180℃〜200℃の温度で加工します。使用する樹脂は、メラミン樹脂、アクリル樹脂、フッソ樹脂、エポキシ樹脂です。

熱可塑性粉体塗料は、220℃以上の温度で加工します。使用する樹脂は、塩化ビニル、ポリエチレン、ナイロンです。

アクリル焼付塗装

アクリル焼付塗装とは

アクリル焼付塗装は、熱硬化性アクリル樹脂塗料を塗布した後に、熱を加えて硬化させる塗装方法です。耐候性などを有していることから、硬化後は、屋外での使用に耐えるとともに、アクリルならではの光沢を長期間にわたり維持します。

アクリル樹脂は、透明性や耐衝撃性を有しており、日用品やガラスに代わる窓の材料として利用されています。そのアクリル樹脂を使用した塗料は、1927年ドイツにおいて初めて製品化されました。なおアクリル樹脂塗料には、室温乾燥形と焼付乾焼形があり、焼付塗装には焼付乾焼形が用いられています。

アクリル焼付塗装の使用用途

アクリル焼付塗装は、メラミン焼付塗装などと比較して光沢があり美しく仕上がることに加え、硬度が高く、耐候性や耐薬品性も有しています。このことから、アクリル焼付塗装は、美観と耐久性が求められる製品に用いられています。製品例として、ロッカーやテーブルなどの鋼製調度品、自動車部品、アルミサッシ、電気製品などが挙げられます。

しかしながら、硬度が高いため曲げると割れる、他の焼付塗料と比較して加工対象物に付きにくい、あるいは高温での作業が必要であり扱いが難しいなどのデメリットもあります。

アクリル焼付塗装の種類

アクリル焼付塗装は、アクリル樹脂塗料を塗布し、140~180度の温度で20分ほど加熱乾燥させて焼き付ける加工法です。熱を加えて加工することから加工対象物に制限があります。 加工に適しているものには、鉄、アルミ、ステンレス、真鍮が挙げられます。また、加工に不適なものには、ABS樹脂、カーボン、塩化ビニルがあります。

また、アクリル焼付塗装は、厚みのある鉄板への加工や焼付工程で使用する焼付炉に入りきらない製品の塗装はできません。

メラミン焼付塗装およびアクリル焼付塗装は、いずれも1回の塗装で10〜15μmの塗膜を形成します。しかし、アクリル焼付塗装はメラミン焼付塗装と異なり、重ね塗りが不可能です。

アクリル焼付塗装の加工手順を以下に示します。

  1. 脱脂洗浄:アルカリ系の洗浄剤を用いて、加工対象物に付着している油分や汚れを落とします。
  2. 下地処理:錆止めおよび塗装の密着性を高めるため、プライマで処理します。また、必要により研磨加工を実施します。
  3. 塗装焼付:アクリル樹脂塗料を塗布し、加熱乾燥させます。

MIG溶接

MIG溶接とは

MIG溶接

MIG溶接とはアーク放電による高熱を利用して金属部材を溶接する方法です。ガスシールドアーク溶接の一種です。ガスを吹き付けながら部材の溶接をおこない、溶接部材をガスによって空気から遮断することで、空気による悪影響を防止できる点が特徴です。

MIGとはMetal Inert Gas(金属不活性ガス)であり、空気からのシールド用ガスとしてアルゴンヘリウムなどの不活性ガスを用いることから、MIG溶接と呼ばれます。

MIG溶接の使用用途

MIG溶接は、自動車の車体パーツ溶接をはじめ、さまざまな業界で使用されています。特に、アルミ、、ステンレスなど、空気と反応しやすい金属材料の溶接が可能という特徴があるため、非鉄金属の溶接が必要な分野で使用されています。

他の溶接方法と比較してMIG溶接は、「仕上がりが綺麗」「溶接速度が速い」という特徴も備えます。溶接部位が多い製品や短い期間で溶接をしたい場合に適しており、効率良く大量に溶接することが可能です。

MIG溶接の原理

MIG溶接は、電極と非接触の金属部材との間に、高い電圧をかけてアーク放電を起こします。空気に高い電圧がかかることで、絶縁破壊による放電が起こり、電極と部材間に電流と高熱が発生します。この熱を利用し、接合します。溶接温度は、5千度から2万度にも達し、あらゆる部材を融解させることが可能です。

大気中に存在する酸素および窒素と金属部材を接触させてしまうと化学的に反応してしまうため、空気を遮断する目的で、大量の不活性化ガスを吹き付けながら溶接を実行します。不活性化ガスを用いるため「ガスと部材との間での化学反応も起こらない」という特徴があります。溶接の仕上がりも綺麗です。しかし、活性化ガスを使用する溶接方式(MAG溶接)と比較して、接合強度が弱いというデメリットもあります。不活性化ガスは、アーク放電のスポットを広げる作用があり、接合部材の溶け込みが浅くなってしまうためです。

電極自身も融解し、消耗するため、MIG溶接が可能な装置では、溶けた分の電極を自動的に供給する仕組みが設けられており、電極の手動交換の手間が省かれているものが一般的です。溶接の用途に応じ、電極部にメッキが施されたタイプのものやフラックスを含んだタイプのものが使用されます。

表面研磨

表面研磨とは

表面研磨

表面研磨は、金属や木材を加工する工程(切削・研削・研磨)における最終工程の加工です。加工対象物の美観の向上を目的とした仕上げのほか、サビや汚れなどの付着防止に向けた微細な凹凸の除去や微細な精度調整を行います。また、塗装剥がしや錆落とし、塗装前の下地仕上げにも用いられています。

表面研磨加工には、砥粒が埋め込まれた砥石を用いる砥石研磨をはじめ、研磨剤を用いる方法や電解溶液の中で加工する電解研磨などがあります。

表面研磨の使用用途

表面研磨加工は、DIYや自動車やバイクのボディーの傷消し、工業製品の製造、および建築・建設現場と幅広く用いられています。代表的な使用例は、次の通りです。

  • DIY 木工の表面仕上げ、プラスチック加工などに用いられています。
  • 自動車 錆や傷の除去、塗装後のボディーの鏡面仕上げなどに利用されています。
  • 工業製品 家具、軸受、ベアリング、航空機のプロペラ、船舶のスクリュー、金属パイプ、御影石などの仕上げを行っています。
  • 建設および建築 橋梁の塗装剥がしや塗装前の下地処理のほか、コンクリート、アスファルト、石材の表面処理などに用いられています。

表面研磨の種類

表面研磨加工は、砥石研磨、ラッピング研磨、バフ研磨、バレル研磨、電解研磨、化学研磨などがあります。それぞれの特徴について説明します。

  • 砥石研磨 砥石研磨は、砥粒が埋め込まれた砥石を回転させて研磨する加工法です。
  • ラッピング研磨 ラッピング研磨は、加工対象物をラップと呼ばれる平面台の上に置き、上から力を加えて砥粒と加工対象物を擦り合わせる加工法です。液体研磨剤を用いる湿式法と、砥粒が埋め込まれたラップを用いる乾式法があります。
  • バフ研磨 バフ研磨は、布製のバフに研磨剤を付けて、回転させながら加工対象物の表面を磨く加工法です。
  • バレル研磨 バレル研磨は、大型の機械に加工対象物、研磨石、研磨剤および水を同時に投入し、回転あるいは振動させて混ぜ合わせる加工法です。
  • 電解研磨 電解研磨は、電解溶液に浸した加工対象物を陽極とし、適当な陰極との間に電流を流して表面に研磨を施す加工法です。
  • 化学研磨 化学研磨は、化学研磨液(酸性液体)に加工対象物を浸し、表面の細かな凹凸を溶かして研磨する加工法です。