粉体焼付塗装とは
粉体焼付塗装は、焼付塗装のひとつであり、材料の樹脂などをパウダー状にした塗料を加工対象物に静電気などを利用し、固着した後、熱を加えて硬化させる加工方法です。
粉体塗料による焼付塗装は、有機溶剤の塗料と比較して、塗装1回あたりの塗膜の厚さが、3〜5倍程度あり、重ね塗りなしで厚みと強度を得られます。また、塗装工程の自動化が容易であること、余った塗料を回収し、再利用できること、およびVOC(揮発性有機化合物)を使用していないので環境と人体への負荷が少ないことがメリットです。
粉体焼付塗装の使用用途
“体焼付塗装は、高温に加熱することから、鉄、アルミ、ステンレス、真鍮など、金属の塗装に限定されます。塗料に使用する材料の性質(強度・耐候性・耐食性・耐熱性など)により使用用途が異なります。材料別の特徴や使用用途は、以下の通りです。
- 熱硬化性粉体塗料(加熱により硬化するタイプの塗料)
メラミン樹脂:強度や耐候性はアクリル樹脂に劣るものの、安価なことから屋内で使用する製品に幅広く使用されています。
アクリル樹脂:強度や耐候性があり、自動車の部品や空調機器、電気機器に用いられています。
フッ素樹脂:超耐候性を有しており、道路や建物の壁などに使用されています。
エポキシ樹脂:紫外線に弱いことから、主に屋内で使用する製品や塗装の下塗りに用いられています。 - 熱可塑性粉体塗料(一旦加熱し、溶融した後、冷却し固化させるタイプの塗料)
塩化ビニル:耐候性・耐食性に優れており、フェンスやガードレールに用いられています。
ポリエチレン:密着性や耐候性に富んでおり、自転車のカゴやフェンスなど、屋内外を問わずに使用されています。
ナイロン:耐摩耗性や絶縁性が高く、配管やショッピングカートに用いられています。
粉体焼付塗装の種類
粉体焼付塗装に用いる塗料には、熱硬化性粉体塗料と熱可塑性粉体塗料があります。いずれの塗料も脱脂洗浄から下地処理、塗装、焼付と工程は同じものの、塗装の原理、塗装方法、加熱温度が異なります。それぞれの加工方法の特徴は、以下の通りです。
- 熱硬化性粉体塗料
熱硬化性粉体塗料は、180℃〜200℃に加熱したときに、起こる架橋反応により塗膜を形成する塗料です。熱硬化性であり、再び熱を加えても硬化した状態を保ちます。塗装には、加工対象物にアースを取ってプラスの電気を帯びさせた後、マイナスの電気を帯びさせた粉体塗料を吹きつけ、静電気を利用して塗料を付着させる静電粉体塗装法が用いられています。 - 熱可塑性粉体塗料
熱可塑性粉体塗料は、220℃以上に加熱して溶融させた後、冷却して塗膜を形成する塗料です。熱可塑性であり、再び熱を加えると柔らかくなります。塗装には、圧縮空気により粉体塗料を流動させた空間に、加熱した加工対象物を入れて塗料を付着させる流動浸漬塗装法が用いられています。