水酸化リチウムとは
水酸化リチウムとは、化学式がLiOHであるリチウムの水酸化物です。
吸湿性のある白色固体で、水に可溶で水溶液は、pH約12の強アルカリ性を示します。水酸化リチウムは、1水和物または無水物として市販されています。
労働安全衛生法の名称等を表示・通知すべき危険有害物、労働基準法の疾病化学物質、船舶安全法、航空法、港則法の腐食性物質に該当しており、取扱いには注意が必要です。
水酸化リチウムの使用用途
水酸化リチウムは、空気中の二酸化炭素を吸収する性質を持ちます。その性質を利用して、二酸化炭素の吸収剤として用いられています。具体的には、空気の循環が十分でないスペースシャトル内で二酸化炭素中毒を防ぐ目的で水酸化リチウム缶が使用されています。
また、水酸化リチウムはリチウムイオン電池の原料であるほぼすべての正極活物質、電解液、一部の負極活物質の原料です。正極活物質の原料としては、炭酸リチウムが主に用いられていましたが、高容量化が可能なニッケル比率の高い活物質の生産には、水酸化リチウムが必須となります。
再生可能エネルギーの蓄電、電気自動車用途での需要の伸びに従い、近年特に需要が伸びています。その他、写真現像液、潤滑用グリースであるステアリン酸リチウムの原料なども用途の1つです。ステアリン酸リチウムのグリースは、低温から高温まで使用可能温度範囲が広く、万能なグリースとして幅広い用途があります。
水酸化リチウムの性質
水酸化リチウムは、分子量23.95の潮解性のある無臭の白色固体で、密度は1.46g/cm3 (無水物) 、1.51g/cm3 (一水和物) 、融点は462℃です。水にはよく溶けますが、アルコールにはわずかに溶解する程度で、一般的な有機溶媒にはほとんど溶けません。
加熱すると沸点を示す前に924℃で分解して、有毒なヒュームを生じます。強塩基であるため酸とは激しく反応し、アルミニウムや亜鉛を腐食します。
水酸化リチウムのその他情報
水酸化リチウムの製造方法
水酸化リチウムは、炭酸リチウムに消石灰を添加して炭酸カルシウムと分離する方法 (2-1) か、硫酸リチウムまたは塩化リチウムの電解により製造する方法 (2-2) が、工業的に用いられています。いずれの方法でもリチウム原料としては、リチウム鉱石または、塩化リチウムを含むかん水を使用しています。
ここでは、リチウム鉱石から水酸化リチウムができるまでの工程を、以下に示します。
1. 鉱石からの硫酸リチウム、炭酸リチウムの抽出アンブリゴナイト (2LiF・Al2O3・P2O5)、スポジュメン (Li2O・Al2O3・4SiO2) 、ペタライト (Li2O・Al2O3・8SiO2)、レピドライト (K(Li,Al)3(Al,Si,Rb)4O10(F,OH)2) などのリチウム鉱石を焙焼、粉砕した後、硫酸を加えて加熱により硫酸リチウム溶液にします。
硫酸リチウム溶液に炭酸ナトリウム、水酸化カルシウムを加えて、不純物として含まれる鉄、アルミニウムなどを硫酸リチウム溶液から除去します。硫酸リチウム溶液を炭酸ナトリウムと反応させ、リチウムを炭酸リチウムとして沈殿させ、これを洗浄、乾燥して炭酸リチウムを得ます。
2. 炭酸リチウムと消石灰の反応による水酸化ナトリウムの製造
得られた炭酸リチウムと、消石灰 (水酸化カルシウム) を加熱反応させることで水酸化リチウムが得られます。この加熱反応の結果、水酸化リチウム溶液と炭酸カルシウムの沈殿が生じます。炭酸カルシウムの沈殿をろ過で除いた後、水酸化リチウム溶液を濃縮・冷却させることで、水酸化リチウム1水和物を析出させます。
3. 硫酸リチウム水溶液の電解
炭酸リチウム製造工程の途中で得られた硫酸リチウム溶液を原料として使用します。これをさらに精製して、硫酸リチウム溶液の純度を高めた溶液を電解装置で電解します。
この装置は、陽イオンのみを通過させるカチオン交換膜で陰極と陽極が隔てられており、電解を開始すると陰極へリチウムイオンが移動します。陰極表面では水の電気分解が起こり、生成した水酸化物イオンがリチウムイオンと反応し水酸化リチウムが生成します。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1310-65-2.html