水酸化リチウム

水酸化リチウムとは

水酸化リチウムとは、化学式がLiOHであるリチウムの水酸化物です。

吸湿性のある白色固体で、水に可溶で水溶液は、pH約12の強アルカリ性を示します。水酸化リチウムは、1水和物または無水物として市販されています。

労働安全衛生法の名称等を表示・通知すべき危険有害物、労働基準法の疾病化学物質、船舶安全法、航空法、港則法の腐食性物質に該当しており、取扱いには注意が必要です。

水酸化リチウムの使用用途

水酸化リチウムは、空気中の二酸化炭素を吸収する性質を持ちます。その性質を利用して、二酸化炭素の吸収剤として用いられています。具体的には、空気の循環が十分でないスペースシャトル内で二酸化炭素中毒を防ぐ目的で水酸化リチウム缶が使用されています。

また、水酸化リチウムはリチウムイオン電池の原料であるほぼすべての正極活物質、電解液、一部の負極活物質の原料です。正極活物質の原料としては、炭酸リチウムが主に用いられていましたが、高容量化が可能なニッケル比率の高い活物質の生産には、水酸化リチウムが必須となります。

再生可能エネルギーの蓄電、電気自動車用途での需要の伸びに従い、近年特に需要が伸びています。その他、写真現像液、潤滑用グリースであるステアリン酸リチウムの原料なども用途の1つです。ステアリン酸リチウムのグリースは、低温から高温まで使用可能温度範囲が広く、万能なグリースとして幅広い用途があります。

水酸化リチウムの性質

水酸化リチウムは、分子量23.95の潮解性のある無臭の白色固体で、密度は1.46g/cm3 (無水物) 、1.51g/cm3 (一水和物) 、融点は462℃です。水にはよく溶けますが、アルコールにはわずかに溶解する程度で、一般的な有機溶媒にはほとんど溶けません。

加熱すると沸点を示す前に924℃で分解して、有毒なヒュームを生じます。強塩基であるため酸とは激しく反応し、アルミニウムや亜鉛を腐食します。

水酸化リチウムのその他情報

水酸化リチウムの製造方法

水酸化リチウムは、炭酸リチウムに消石灰を添加して炭酸カルシウムと分離する方法 (2-1) か、硫酸リチウムまたは塩化リチウムの電解により製造する方法 (2-2) が、工業的に用いられています。いずれの方法でもリチウム原料としては、リチウム鉱石または、塩化リチウムを含むかん水を使用しています。

ここでは、リチウム鉱石から水酸化リチウムができるまでの工程を、以下に示します。

1. 鉱石からの硫酸リチウム、炭酸リチウムの抽出アンブリゴナイト (2LiF・Al2O3・P2O5)、スポジュメン (Li2O・Al2O3・4SiO2) 、ペタライト (Li2O・Al2O3・8SiO2)、レピドライト (K(Li,Al)3(Al,Si,Rb)4O10(F,OH)2) などのリチウム鉱石を焙焼、粉砕した後、硫酸を加えて加熱により硫酸リチウム溶液にします。

硫酸リチウム溶液に炭酸ナトリウム、水酸化カルシウムを加えて、不純物として含まれる鉄、アルミニウムなどを硫酸リチウム溶液から除去します。硫酸リチウム溶液を炭酸ナトリウムと反応させ、リチウムを炭酸リチウムとして沈殿させ、これを洗浄、乾燥して炭酸リチウムを得ます。

2. 炭酸リチウムと消石灰の反応による水酸化ナトリウムの製造
得られた炭酸リチウムと、消石灰 (水酸化カルシウム) を加熱反応させることで水酸化リチウムが得られます。この加熱反応の結果、水酸化リチウム溶液と炭酸カルシウムの沈殿が生じます。炭酸カルシウムの沈殿をろ過で除いた後、水酸化リチウム溶液を濃縮・冷却させることで、水酸化リチウム1水和物を析出させます。

3. 硫酸リチウム水溶液の電解
炭酸リチウム製造工程の途中で得られた硫酸リチウム溶液を原料として使用します。これをさらに精製して、硫酸リチウム溶液の純度を高めた溶液を電解装置で電解します。

この装置は、陽イオンのみを通過させるカチオン交換膜で陰極と陽極が隔てられており、電解を開始すると陰極へリチウムイオンが移動します。陰極表面では水の電気分解が起こり、生成した水酸化物イオンがリチウムイオンと反応し水酸化リチウムが生成します。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1310-65-2.html

水酸化カリウム

水酸化カリウムとは

水酸化カリウムとは、化学式KOHで表される化合物です。

カリウムの水酸化物で、苛性カリとも呼ばれます。苛性とは皮膚を侵すという意味です。名前の通り皮膚に付着したら大変危険であるため、扱う際には保護眼鏡やゴム手袋を着用するなど、十分注意する必要があります。

常温では無色の斜方晶系の結晶です。潮解性があり、空気中の湿気を吸収して溶け、二酸化炭素と反応して炭酸カリウムとなります。水に溶かすときに発熱します。水溶液は強アルカリ性で、強い腐食性を持ちます。 

水酸化カリウムの使用用途

水酸化カリウムは、工業用化学物質として様々な分野で活用されています。

1. 洗浄剤

水酸化カリウムの用途の一つが、洗浄剤です。液体石鹸、ローション、シャンプーなどの製造に利用されます。固形石鹸は、脂肪酸と水酸化ナトリウム (NaOH) を反応させた脂肪酸のナトリウム塩であるのに対し、液体や乳液状の石けんは水酸化カリウムと反応させた脂肪酸のカリウム塩です。ナトリウム塩よりさらに水に溶けやすい性質があります。ワイナリーにおいては、細菌や酵母のバイオフィルムを洗浄するのに、水酸化カリウムが広く使用されています。

2. 食品分野

食品業界においては、製品を長期間保存するために、安定剤、増粘剤、pH調整剤として利用されます。さらに、水酸化カリウムをベースとした肥料は、農業分野における生産性の向上に貢献しています。石炭火力発電所で発生する微粉炭燃焼灰 (フライアッシュ) に水酸化カリウム、マグネシウム源を加えて混合造粒・篩分けしたあと、約900℃で焼成し、けい酸加里肥料として製造されます。

水酸化カリウムの性質

分子量は56.11、比重は2.044、融点は380℃、沸点は1324℃、溶解度は25℃のとき100mLの水に対して121gです。エタノール、メタノールにも溶けます。酸と反応し、塩を生成します。例えば、水酸化カリウムと塩酸 (HCl) が反応すると、塩化カリウム (KCl) が生じます。

水酸化カリウムの水溶液はアルミニウム、スズ、鉛、亜鉛などの金属に対して腐食性を示し、引火性/爆発性の気体 (水素) を生成します。アンモニウム塩とも反応し、アンモニアを生成します。

水酸化カリウムのその他情報

1. 水酸化カリウムの合成方法

水酸化カリウムの合成方法には、以下のような方法があります。

塩化カリウム水溶液の電気分解法
塩化カリウム水溶液を電気分解する方法で、カソードに水素が発生し、アノードには塩素が発生します。この塩素と水が反応して塩酸が生成されます。一方、カソード側で生成した水素イオンが、アノードに向かって移動し、水酸化カリウムが生成されます。工業的にはこの方法が一般的に用いられています。

炭酸カリウム水溶液と消石灰による反応法
炭酸カリウム水溶液と消石灰を混ぜた後、水分を加えて混合物を練り上げます。すると、水酸化カリウムが生成されます。この方法では、炭酸カリウム水溶液に含まれるカリウムイオンが、消石灰のカルシウムイオンと置換反応を起こすことで、水酸化カリウムが生成されます。

カリウム金属と水の反応法
カリウム金属を水に浸して反応させることで、水酸化カリウムが生成されます。ただし、この反応は激しく発熱し、火災や爆発の危険があるため、危険な反応であることに注意が必要です。

2. 水酸化カリウムの健康への影響

水酸化カリウムは、塩基性であり、食品添加物として使用される場合があります。過剰な摂取や誤った使用は、健康への影響を与えることがあります。例えば口内炎や消化器系の刺激、吐き気、嘔吐、下痢などの症状が現れることがあります。また、皮膚や眼に接触した場合には炎症やかぶれ、角膜炎などの症状が現れることがあります。そのため水酸化カリウムを使用する際には適切な安全対策を講じることが重要です。

参考文献
https://jsda.org/w/06_clage/4clean_199-4.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1310-58-3.html
https://www.zennoh.or.jp/operation/hiryou/pdf/07_keisankari.pdf

尿素

尿素とは

尿素の基本情報

図1. 尿素の基本情報

尿素とは、ほ乳類の尿の中に含まれている窒素化合物の1つです。

尿素は別名、ユリア、ウレア、カルバミド等とも呼ばれます。加熱すると分解して、アンモニアシアヌル酸、ビウレットに変わります。

尿素は、カルシウムシアナミドの加水分解やカルバミン酸アンモニウムの脱水などによって合成可能です。また、ヘキサンなど多くの直鎖炭化水素やその誘導体と包接化合物を生成します。過酸化水素との包接化合物は、固体で取り扱える酸化剤として市販されています。

尿素の使用用途

尿素は、肥料やユリア樹脂 (尿素樹脂) の原料として主に利用されています。また、利尿剤や催眠剤、保湿剤、石油中のn-アルカンの抽出、ヒドラジンメラミンの合成原料としても用いられています。

高品位の尿素水溶液は、ディーゼル車等で生成する窒素酸化物の浄化に使用可能です。これを尿素SCRシステムと言います。

尿素には、他にも医薬品類としての用途があり、角化症・乾燥性皮膚疾患治療剤 (軟膏剤) 、神経・筋機能賦活剤 (静注用) 等が挙げられます。さらに、尿素水溶液には、タンパク質の変性作用があり、タンパク質の可溶化や構造安定性の評価に用いることも可能です。

尿素の性質

尿素は加熱すると約133℃で融解し、さらに加熱すると分解してアンモニア等を生じます。エタノールには可溶ですが、エーテルには不溶です。水に溶けるとアルカリ性になり、硫酸銅を加えると紫色を呈します。

また、潮解性を持っているほか、非線形光学現象 (英: nonlinear optical phenomena) を示します。非線形光学現象とは、強い光に対し媒体の応答が比例しなくなることです。

尿素の構造

ヴェーラー合成による尿素の合成

図2. ヴェーラー合成による尿素の生成

尿素は無色無臭の柱状結晶であり、モル質量は60.06g/mol、 示性式はCO(NH2)2です。初めて無機化合物から合成された有機化合物であり、有機化学史において重要な物質です。

フリードリヒ・ヴェーラー (英: Friedrich Wöhler) は、シアン酸アンモニウムの水溶液を加熱することで、尿素が合成できることを確認しました。この合成法はヴェーラー合成 (英: Wöhler synthesis) と呼ばれています。

当時の化学では生気論と呼ばれる (英: vitalism) 生物にしか有機化合物が作り出せないという考えが正当とされていました。尿素の合成は生気論を覆す内容でしたが、尿素を有機化合物と呼べるかは議論の余地があります。すなわち、尿素は炭酸のアミドに相当し、通常炭酸は有機化合物に含まれないためです。

尿素のその他情報

1. 尿素の合成法

工業的な尿素の合成

図3. 工業的な尿素の合成法

ヴェーラー合成以外にも、工業的な尿素の製法が知られています。具体的には、二酸化炭素とアンモニアを原料として、120℃、150気圧以上で尿素を合成可能です。

2. 尿素による窒素の排泄

哺乳類、軟骨魚類、両生類は尿素によって、窒素を排泄しています。ヒトの場合にも、タンパク質などによって取り入れた窒素の過剰分やアンモニアが尿素回路を通り、尿素として尿中に排泄されます。ちなみに、硬骨魚類はアンモニアによって、鳥類や爬虫類の多くは尿酸 (英: uric acid) として窒素を排泄することが可能です。

尿酸は分子式がC5H4N4O3、分子量が168の有機化合物であり、ヒトや多くの霊長類にとってはプリン代謝の酸化最終生成物でもあります。最も単純な窒素化合物はアンモニアですが、生体には有害です。そのため、安全な尿素として貯めた後に、水溶液として排泄されています。

ただし、水溶性の尿素は水とともに捨てる必要があり、濃縮にもエネルギーが必要になります。水の確保が重要な場合には、非水溶性の尿酸の方が有利です。

3. 尿素の排泄と健康

成人は30g程度の尿素を、1日で排泄しています。しかし、過剰なストレスが原因で尿酸の生産が進み、尿酸の排泄が追いつかず、結晶化して有害性を示すことがあります。これが痛風 (英: gout) です。

安息香酸

安息香酸とは

安息香酸とは、化学式がC6H5COOHである代表的な芳香族カルボン酸です。

外観は昇華性のある無色の針状、または鱗片状の結晶です。名前の由来は、天然樹脂の1種である安息香中に存在するためで、ベンゼンカルボン酸、カルボキシベンゼンなどの別名があります。

天然にも広く存在しており、クランベリー、すもも(プラム/プルーン)、梅の果実、笹の葉などに含まれています。

安息香酸の使用用途

安息香酸は、菌やカビ、微生物の繁殖を抑える効果があるため、醤油・清涼飲料水などの食品や化粧品、香水、シャンプー、石鹸、歯磨き粉などにも、防腐剤やpH調整剤として広く使用されています。また、医薬として、局所の殺菌・防カビ剤や角質軟化剤、肝機能診断薬、袪痰剤、膀胱炎や気管支炎治療等に使用されています。

さらに、媒染剤や防錆剤、合成繊維等の有機合成原料にも利用可能です。かつてはフェノールを合成するための原料としての用途が主でしたが、フェノールをより効率的に合成できる別の方法が開発されたため、現在はフェノーる原料としての用途ではほとんど使われていません。

発育促進や飼料効率が良くなる効果があることで、家畜の飼料の添加剤としても使われます。安息香酸は動植物など天然にも多く存在し、食品添加物としても長年の使用実績があります。食品用添加剤としては、安息香酸の塩である安息香酸ナトリウムがよく使用されています。

安息香酸の性質

安息香酸はベンゼン環の1個の水素がカルボン酸に置換された分子構造です。このため、弱酸性を示します。

安息香酸の分子量は122.13で、比重は1.2659、引火点は121.1℃、融点は121.25℃、沸点は249.2℃で、100℃から昇華し始めます。安息香酸は、冷水には溶けにくいですが、熱水にはよく溶けます。また、エタノール等のアルコールやアセトン、エーテル、クロロホルム、ベンゼン、四塩化炭素、二硫化炭素、テレペン油などの有機溶媒にも溶解です。

370℃以上に加熱すると分解して、ベンゼン、炭酸ガス、少量のフェノールおよび一酸化炭素を生成します。また体内に取り込まれると肝臓で馬尿酸に代謝されて対外に放出されます。安息香酸は、酸として、種々の金属塩やエステル、アミド等を生成します。

安息香酸のその他情報

安息香酸の製造方法

安息香酸は、19世紀中期までは主に天然物からの分離によって作られていました。工業的なには、塩化ベンゾイルのさらし粉 (次亜塩素酸カルシウム) 熱溶液処理、トルエンの直接酸化、無水フタル酸からの脱炭酸反応によって製造されます。

第二次世界大戦前は、無水フタル酸の脱炭酸反応による製造がほとんどでしたが、現在はトルエンの空気酸化により製造が主流になっています。

1. 塩化ベンゾイルのさらし粉熱溶液処理
塩化ベンゾイルの加水分解により安息香酸を生成させる反応です。さらし粉は反応を促進させる触媒として使用します。副生物として塩化水素が発生します。

           C6H5COCl + H2O → C6H5COOH + HCl

2.トルエンの直接酸化
トルエンやエチルベンゼン、クメンなどの一置換の芳香族の酸化で安息香酸が得られますが、工業的にはトルエンを原料にして作られています。トルエンを過硫酸マンガンや二酸化マンガンなどの酸化剤を用いて直接酸化します。反応物から蒸留により安息香酸を分離します。

          2C6H5CH3 + 3O2 → 2C6H5COOH + 2H2O

3.無水フタル酸の脱炭酸
ナフタリンを酸化亜鉛触媒を用いて、340℃で酸化すると無水フタル酸が得られます。生成した無水フタル酸は気相で脱炭酸されて安息香酸を生成します。また液体の無水フタル酸を酸化ニッケルか酸化銅触媒を用いて220℃の加熱により脱炭酸され安息香酸が生成します。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/65-85-0.html

塩化ナトリウム

塩化ナトリウムとは

塩化ナトリウムとは、天然には岩塩として産出する海水の主成分です。

単に塩あるいは食塩と呼ばれる場合が多いですが、本来食塩とは食用や医療用として調製した塩化ナトリウム製品を指す用語です。現在では、工場で大量生産される場合が多く、海水からイオン交換膜等を用いて精製していくことで、純度の高い精製塩が生成されています。実験室レベルでは、塩酸水酸化ナトリウムの中和により作ることが可能です。

塩化ナトリウムは、動物体内で血液や組織の浸透圧を維持する等、生理的に重要な作用をします。

塩化ナトリウムの使用用途

塩化ナトリウムは、各種ナトリウム化合物の原料として利用されます。食塩の主成分でもあり、調味料として幅広く使用可能です。また、防腐作用や滅菌作用があるため、塩漬け等、保存食の調理に用いられています。

塩化ナトリウムは、増粘調整や乳化・懸濁安定化の目的で、化粧品や洗顔料、洗顔石鹸等に使用される他、生理的に重要な働きがあることから、電解質補給剤としても使用されています。さらに、可溶化剤や緩衝剤、ボイラー軟水化剤としての用途の他に、水の凝固点を下げる働きがあることから、凍結防止剤としての用途等、使用用途は非常に幅広いです。

塩化ナトリウムの性質

塩化ナトリウムは水によく溶け、エタノールに溶けにくいです。ナトリウムイオンと塩化物イオンから構成されるイオン結晶で、結晶状態では絶縁体ですが、水溶液は電導性を有します。

塩化ナトリウムは無臭ですが、独特の塩味を持っています。純粋な塩化ナトリウムは、20°Cにおいて湿度75%まで潮解性を示しません。

塩化ナトリウムの密度は2.16g/cm3、融点は800.4°C、沸点は1,413°Cです。溶融時には塩化物イオンとナトリウムイオンに分離し、電気を通します。溶融の際には揮発性を有します。

なお、塩化ナトリウムはナトリウムの塩化物であり、化学式はNaCl、式量は58.44です。塩化ナトリウムは無色の結晶性固体で、結晶構造は面心立方格子、配位構造は八面体を取っています。

塩化ナトリウムのその他情報

1. 塩化ナトリウムの結晶化

温度による塩化ナトリウムの溶解度の変化は、非常に小さいです。つまり、冷却での再結晶化において、少量の結晶しか得られません。

したがって、溶媒である水を蒸発させて溶液の濃度を高めるか、塩化水素ガスを吹き込むことで溶液中の塩化物イオン濃度を高くして結晶化させる方法が使われています。

2. 資源としての塩化ナトリウム

海水中に存在する塩化ナトリウムの量は膨大です。同じく岩塩にも、膨大な量が存在しています。世界の塩の生産量は、2億8千万トンであると言われています。その中のおよそ1/3が海水からの天日塩です。

日本は年間約700万トンの塩を輸入しており、世界有数の塩の輸入国です。自給率は11%程度と非常に低くなっています。島国なので生産量も多いと思われがちですが、実際のところ工業用の塩はほとんど輸入に頼っています。

参考:塩百科

3. 塩化ナトリウムの応用

塩化ナトリウムは他にも、多種多様な用途があります。例えば、低融点の架橋剤を加えて、流動性や防湿性を与えると、金属ナトリウム、マグネシウム、カリウムによる火災の消火剤として用いることが可能です。他の消火剤と見分けるため、薄黒褐色に着色しています。

赤外線領域において、プリズム、レンズ、ウィンドウとして使用されています。ゴムの製造では、塩化ナトリウムを使って、ネオプレン、ブナ、白ゴムタイプを製造することが可能です。塩化ブタジエンを原料とした乳化ラテックスを凝固させる際にも、塩水と硫酸を用います。

塩化ナトリウムは吸湿性なので、安全で安い乾燥剤として利用されることもあります。塩化ナトリウムを使って、業務用や家庭用の軟水化装置に使用されているイオン交換樹脂を再生することも可能です。

よく小学校では、溶解度の変化を確認するために塩化ナトリウムが使われます。ホウ酸やミョウバンともに、有名な化学物質です。

塩化アルミニウム

塩化アルミニウムとは

塩化アルミニウムとは、化学式AlCl3で表されるアルミニウムの塩化物です。

白色または淡黄色の固体で強い潮解性を有しており、水への溶解度は45.8g/100ml (20℃) です。塩化アルミニウムは無水物と6水和物があります。製法としては、アルミニウムと塩素ガスまたは塩化水素ガスを反応させることで、塩化アルミニウム (無水物) を得ることが出来ます。またポリ塩化アルミニウムは、水酸化アルミニウム塩酸と反応させることで得ることが出来ます。

塩化アルミニウムの使用用途

塩化アルミニウムの主な使用用途として、医薬品と水処理用凝集剤が挙げられます。医療の現場で多汗症の治療に用いられており、汗腺に炎症を起こして閉塞させることで、発汗を減少させます。

また、ポリ塩化アルミニウムとして水処理にも使用されています。ポリ塩化アルミニウムは凝集沈殿性があるため、上下水道や工業用水中の微粒子、浮遊物を沈降させる作用があります。

塩化アルミニウムの性質

1. 基本性質

分子量は133.34で、融点は190℃、比重は2.44です。水溶液は強い酸性を示し、水に溶けると、水酸化アルミニウム (Al(OH)3) と塩化水素 (HCl) を生成します。塩化アルミニウムの水溶液を加熱濃縮すると、塩化アルミニウムの6水和物から水分子が3分子脱水して[Al(H2O)3]Cl3となります。そして、先にHCI が脱離・気化してAl(OH)3となり、最終的に酸化物であるアルミナ (Al2O3) を生じます。

2. ルイス酸触媒としての性質

塩化アルミニウムはルイス酸触媒として、有機化学の分野で広く使われています。芳香族化合物のフリーデル・クラフツ反応のアルキル化およびアシル化反応などが例です。反応過程ではAlCl4が生成します。分子内の非共有電子対に対して配位し、陽イオン中間体を生成することで、求核置換反応を促進します。

アルキル化では塩化アルミニウムの添加量は触媒量で進みますが、アシル化の場合は、生成した芳香族アシルのカルボニル酸素に塩化アルミニウムが配位した錯体を形成することで触媒活性が低下するため、当量以上の塩化アルミニウムの添加が必要となります。

塩化アルミニウムの種類

無水塩化アルミニウム、塩化アルミニウム6水和物の他に、ポリ塩化アルミニウムが知られています。ポリ塩化アルミニウムは[Al(OH)nCl6-n]m  (1≦n≦5、m≦10) で表され、水溶液中では、 例えば[Al6(OH)15]3+、[Al8(OH)20]4+、[Al13(OH)34]5+などのイオンの形で存在しています。

水処理過程ではポリ塩化アルミニウムの高い陽電荷により、負電荷表面の水中の濁質と電気的に中和となり、濁質が凝集しフロックを形成します。フロックにさらに濁質が凝集することで沈殿となります。

塩化アルミニウムの構造

1. 無水塩化アルミニウムの構造

塩化アルミニウムの固体の結晶構造は、1つのアルミニウム原子が6つの塩素原子に囲まれており、1つの塩素原子は2つのアルミニウム原子に囲まれています。歪んだ八面体構造をとり、二次元のシート層となります。液体や気体の状態ではAl2Cl6の二量体の分子となります。2つのAl原子を二つのCl原子で連結した環状構造を含んでいます。

2. 塩化アルミニウム6水和物の構造

塩化アルミニウム6水和物はAlCl3・6H2Oのほか、[Al(H2O)6]Cl3とも表記されます。後者の方が塩化アルミニウム6水和物の構造をよく示していて、Al 原子に6つの水分子が配位した 3価の錯イオンを含んでいます。

塩化アルミニウムのその他情報

塩化アルミニウムの製造方法

無水塩化アルミニウムの一般的な工業的製法では、溶融アルミニウムを溶融状態に塩素ガスを導入して反応させ、生成して昇華した塩化アルミニウムガスを冷却器で凝固させることで製造します。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/61/11/61_KJ00008953868/_pdf

二酸化ケイ素

二酸化ケイ素とは

二酸化ケイ素とは、ケイ素と酸素の化合物です。

シリカと呼ばれることが多く、天然に存在する代表的なものとして石英、鱗珪石、クリストバル石があります。特に石英は、地殻の約12%を占めており、地球上に広く分布しています。鉱物以外にも、珪藻や一部の海綿などは二酸化ケイ素を骨格や殻などとして利用しています。その他には一部のシダ植物、イネ科の植物などにも含まれています。

二酸化ケイ素の使用用途

二酸化ケイ素の使用用途は下記の通りです。

1. シリカガラス

ガラス状の二酸化ケイ素は、シリカガラスと呼ばれます。シリカガラスは、分析用のセル材料、半導体素子の製造、光ファイバー材料など、広く用いられています。シリカガラスは、金属不純物が少ない、熱に強い、幅広い波長領域の光をよく通す、酸やアルカリに侵されにくいなどの特徴を持っています。

2. シリカゲル

シリカから作られるシリカゲルには、空気中の水分を吸着する力があります。そのため、特に食品乾燥用の吸着剤・乾燥剤として、広く利用されています。

3. シリカ微粒子

球状や鱗片状などの形状や、粒子径、空隙率などの違いにより、異なる特性を示します。化粧品やHPLCカラム、コーティング剤など様々な用途に用いられます。コロイダルシリカはシリカ微粒子が水などの溶媒に分散された状態のもので、研磨剤として使用されます。

4. フュームドシリカ

乾式シリカ、高分散シリカと呼ばれる、非常に嵩密度の小さい白色粉体です。作製方法としては、乾式法と呼ばれる四塩化ケイ素の火炎加水分解法と、湿式法と呼ばれる水ガラスの無機酸による分解法が知られています。レオロジー調整剤として使用されます。

5. シリカエアロゲル

二酸化ケイ素の微粒子が3次元ネットワーク骨格を形成した構造で、空隙間隔がおよそ50 nm前後の多孔材料です。非常に小さい孔であるため透明です。また、体積の90%以上が空気からなるため、高い断熱性能を示します。通常は、テトラエトキシシラン (TEOS) などのアルコキシシランをエタノールなどの溶媒に溶かし、酸や塩基を加えて加水分解し、ゲル化、熟成を行い、超臨界乾燥することで、作製できます。

二酸化ケイ素の性質

二酸化ケイ素は化学式SiO2で表され、モル質量は60.08です。高い耐熱性や対腐食性を示し、ガラスやセラミックスの材料として用いられています。フッ化水素酸と反応し、ヘキサフルオロケイ酸 (H2SiF6) が生成します。

二酸化ケイ素の種類

二酸化ケイ素には、いくつかの結晶形態があります。結晶は、SiO4四面体の隣り合うSi原子間でO原子が共有されていて、巨大な三次元分子構造を持っています。SiO4の配列の違いによって結晶の形態が異なり、温度や圧力などの条件によっても安定な形態は異なります。以下に一部の結晶の種類を示します。

1. クリストバイト

立方晶、八面体の結晶です。Si原子のみに着目すると、ダイヤモンドと同じ結晶構造です。

2. トリディマイト

六方晶系、六角板状の結晶です。高温型と低温型の2種類の結晶構造があり、低温型は高温型と比べてやや結晶格子が押しつぶされた格好となります。

3. 石英

高温型と低温型の結晶構造があり、高温型は六方晶系、六角錐形、低温型は三方晶系、六角柱状の結晶です。低温型石英のうち、結晶がよく成長したものは水晶と呼ばれます。

4. コーサイト

単斜晶系の結晶です。濃フッ化水素酸にも浸食されません。

5. スティショバイト

正方晶系の結晶で、ルチル型の結晶構造です。

二酸化ケイ素のその他情報

ガラス原料としての二酸化ケイ素

建物や乗り物など、生活でよく目にするソーダライムガラスの主成分は二酸化ケイ素です。ガラス製造における二酸化ケイ素は珪砂 (シリカサンド) から供給されます。珪砂だけを溶解する場合、1,700℃以上の高温が必要ですが、ソーダ灰や石灰を加えることで、溶解温度を下げ、安定したガラスを作ることができます。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jar/5/1/5_1_32/_pdf/-char/ja
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9302/9302_biomedia_1.pdf

ロイシン

ロイシンとは

ロイシンの構造

図1. ロイシンの構造

ロイシンは、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸の一つです。本化合物は側鎖にイソブチル基を有するため、高い疎水性を示します。その構造上の特徴から、バリン、イソロイシンと共に分岐鎖アミノ酸(BCAA)に分類されます。光学活性な化合物でありL体とD体が存在しますが、タンパク質構成アミノ酸としてのロイシンはL体です。

ヒトはロイシンを体内で合成することができないことから必須アミノ酸に分類されます。そのため、食事などで外部から摂取する必要があります。

L-ロイシンの物理化学的諸性質

1. 名称

和名:L-ロイシン
英名:L-Leucine
IUPAC名:(2S)-2-amino-4-methylpentanoic acid
3文字略号:Leu
1文字略号:L

2. 分子式

C6H13NO2

3. 分子量

131.17

4.構造式

図1の通り。

5.融点

293~295℃(分解)

6. 溶媒溶解性

水にやや溶けやすく、エタノールに難溶である。

7. 味

わずかな苦味

ロイシンの効果・効能と使用用途

ロイシンは、その構造上の特徴から分岐鎖アミノ酸(BCAA; Branched Chain Amino Acid)に分類されます。BCAAには3種類のアミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)があり、これらのアミノ酸は筋繊維を構成するタンパク質の主成分であるため、筋肉を強化する効果が期待されます。また、ロイシンには、タンパク質合成に必要な酵素複合体を活性化する働きがあり、筋タンパク質合成を誘導することがわかっています。このような特徴から、ロイシンをはじめとするBCAAは、筋力トレーニング用のサプリメントとして広く用いられています。

また、ロイシンには肝機能の向上、ストレス緩和、耐糖能の改善、インスリン感受性の向上、育毛といった効果が報告されており、アミノ酸補給を目的とした医薬品や、食品添加物としても利用されています。

ロイシンの摂取量と疾患の関係

ロイシンは幅広い食物に含まれます。そのため、通常の食生活で不足することは、ほとんどの場合ありません。ただし、不足した場合には肝機能の低下とそれに続くインスリン分泌量の減少などのリスクが示唆されています。
また、過剰に摂取した場合は、他のアミノ酸とのバランスが崩れ、免疫力の低下などの弊害を招く可能性があります。

ロイシンが多く含まれる食品

レバー、マグロ、アジ、鶏むね肉、乳製品、大豆製品、たまご、ヨーグルトなどに多く含まれます。

リンゴ酸

リンゴ酸とは

リンゴ酸の構造

図1. リンゴ酸の構造

リンゴ酸は、化学式C4H6O5で表される有機酸です。

ヒドロキシコハク酸とも呼ばれます。不斉炭素原子を一つ持っているため、光学異性体が存在します。天然に存在するリンゴ酸はL体であり、ぶどうやりんごなどの果実に多く含まれています。リンゴ酸は、L-酒石酸ヨウ化水素で還元する、あるいはフマル酸にフマラーゼを作用させることで製造されます。

リンゴ酸の使用用途

1. 食品添加物としての用途

リンゴ酸は爽やかな酸味を持っているため、酸味料として飲料水や食品に添加されます。本化合物は単体でも殺菌効果を持ちますが、各種有機酸と混合して用いる事で殺菌活性が増強する事が知られています。そのため、殺菌効果を期待した食品添加物としての研究開発が進んでいます。また、pH調整剤や乳化剤としての役割もあるため、食品工業においてとても重要な物質です。なお、このような食品分野の場合、その多くはラセミ体のリンゴ酸が用いられています。

2. コスメ分野での利用

リンゴ酸には歯垢や歯石の付着予防効果があるため、ホワイトニング効果を期待した歯磨き粉に配合されています。また、リンゴ酸は緩衝能を持つ事から、pH調整剤としてシャンプーに配合される事もあります。このようなリンゴ酸配合の低pHシャンプーには、抗炎症剤を配合する事で頭皮の荒れが回復する効果が報告されており、頭皮ケアという観点から近年注目されています。

3. 工業分野での利用

リンゴ酸にはキレート作用があり、金属原子と錯体を形成する能力を有しています。そのため、金属表面の洗浄剤として利用されています。

4. クエン酸回路中間体としての役割

クエン酸回路におけるリンゴ酸の反応

図2. クエン酸回路におけるリンゴ酸の反応

本化合物はクエン酸回路の中間体の一つであり、リンゴ酸デヒドロゲナーゼによってオキサロ酢酸に変換されます。そのため、本化合物は酸素呼吸を行う生物のエネルギー代謝において非常に重要な役割を果たしています。

L-リンゴ酸の性質

1. 名称
和名:L-リンゴ酸
英名:L-malic acid
IUPAC名: (2S)-2-hydroxybutanedioic acid

2. 分子式
C4H6O5

3. 分子量
134.09

4. 融点
100 ℃(L体)

5. 溶媒溶解性
水、アルコールに易溶

リンゴ酸素のその他情報

リンゴ酸が多く含まれる食品

リンゴ、ブドウ

リモネン

リモネンとは

リモネンの構造

図1. リモネンの構造

リモネンは、単環状モノテルペン類の一種であり、柑橘類の皮に豊富に含まれる常温で液体の精油成分です。光学活性な化合物であり、天然にはd-体とl-体の両方が存在します。レモンの香りとしても有名ですが、この香りはd-体に由来するものです。なお、ラセミ体(dl-体の等モル混合物)は、特にジペンテンと呼ばれています。これらの光学異性体の分布に関しては、d-リモネンは橙皮油、レモン油、ベルガモット油に、l-リモネンは、松葉油、ハッカ油に、そしてジペンテンは、樟脳油、テレビン油に多く含まれています。

リモネンの物理化学的諸性質

リモネンは柑橘類の精油に含まれる環状テルペンで、特に果皮に多く含まれます。特徴的な柑橘系の香りが特徴です。

リモネンは油脂を溶かす性質があるため、洗浄剤や脱脂剤の溶剤として使用されています。

1. 名称
和名:リモネン
英名:limonene
IUPAC名: 1-methyl-4-(1-methylethenyl)-cyclohexene

2. 分子式
C10H16

3. 分子量
136.23

4. 融点
-74.35℃

5. 溶媒溶解性
水に不溶、アルコールに可溶

リモネンの使用用途

リモネンは独特の爽やかな香りを生かし、食品や香料に多く用いられます。また、そのユニークな特性から、さまざまな産業用途に使用されています。

1. 香料としての利用

リモネンは、飲料や食品、入浴剤等の香料など、身の回りで幅広く用いられています。

食品香料としては、柑橘系や各種フルーツ系のフレーバーに使用されています。

また一般香料としては、せっけん、洗剤、化粧品、芳香剤等に用いられます。

リモネンは安全性が高く、油性物質の洗浄能力に優れる事もあり、ハンドソープや台所用洗剤へ多く利用されています。

2. 化学合成原料としての利用

リモネンは化学原料としても広く用いられる化合物です。

油性物質をよく溶解することから、特に工業用溶剤としての用途は多く、塗料・印刷インキ溶剤等、幅広い分野で利用されています。 

3. スチレンとの構造類似性と発泡スチロール回収剤としての利用

リモネンとスチレンの構造類似性

図2. リモネンとスチレンの構造類似性

リモネンは、発泡スチロール(=ポリスチレン)の構成単位であるスチレンと似た構造を有します(図2)。

そのため、『like dissolves like(=類似した化合物同士はよく溶ける)』という化学の経験則からも予想されるように、リモネンには発泡スチロールを溶解します。この特徴を利用して、d-体のリモネンが発泡スチロールのリサイクル回収剤として利用されています。

リモネンの構造

リモネンは、分子式C10H16で表される環状モノテルペンの一種です。

この分子はキラルであり、互いに鏡像である2つのエナンチオマーが存在します。いずれのエナンチオマーも天然に存在しますが、独特の強い柑橘臭を有するのはd-リモネンのみです。また、ラセミ体はジペンテンと呼ばれています。

d-リモネンは主に柑橘類の果皮に多く含まれ、l-リモネンはハッカなどに多く含まれています。ラセミ体である字ペン店はテレビン油に多く含まれます。

リモネンは共役していないC=C二重結合を2つ有しているため、やや不安定で酸化され易いという特徴があります。

リモネンのその他情報

リモネンの製造方法

リモネンは、柑橘類の果皮から抽出される天然の物質であり、オレンジ、レモン、ライムなどに含まれています。工業的には、抽出、水蒸気蒸留、あるいは化学合成によって生産されます。

①抽出
柑橘類の果皮を機械的に絞り、得られた液体から脂肪族化合物を除去し、蒸留によって精油を得る方法です。得られた精油中には、リモネンの他にも、カルボン酸、アルデヒド、ケトンなどが含まれます。

②水蒸気蒸留
①の方法にに似ていますが、柑橘類の果皮を水蒸気で蒸留し、得られた蒸気を冷却して油を分離する方法です。

③化学合成
エタン酸からの脱水反応、イソプレンからのヒドロハロゲン化反応、β-ピネンからの加水分解反応などが用いられます。