塩化ナトリウム

塩化ナトリウムとは

塩化ナトリウムとは、天然には岩塩として産出する海水の主成分です。

単に塩あるいは食塩と呼ばれる場合が多いですが、本来食塩とは食用や医療用として調製した塩化ナトリウム製品を指す用語です。現在では、工場で大量生産される場合が多く、海水からイオン交換膜等を用いて精製していくことで、純度の高い精製塩が生成されています。実験室レベルでは、塩酸水酸化ナトリウムの中和により作ることが可能です。

塩化ナトリウムは、動物体内で血液や組織の浸透圧を維持する等、生理的に重要な作用をします。

塩化ナトリウムの使用用途

塩化ナトリウムは、各種ナトリウム化合物の原料として利用されます。食塩の主成分でもあり、調味料として幅広く使用可能です。また、防腐作用や滅菌作用があるため、塩漬け等、保存食の調理に用いられています。

塩化ナトリウムは、増粘調整や乳化・懸濁安定化の目的で、化粧品や洗顔料、洗顔石鹸等に使用される他、生理的に重要な働きがあることから、電解質補給剤としても使用されています。さらに、可溶化剤や緩衝剤、ボイラー軟水化剤としての用途の他に、水の凝固点を下げる働きがあることから、凍結防止剤としての用途等、使用用途は非常に幅広いです。

塩化ナトリウムの性質

塩化ナトリウムは水によく溶け、エタノールに溶けにくいです。ナトリウムイオンと塩化物イオンから構成されるイオン結晶で、結晶状態では絶縁体ですが、水溶液は電導性を有します。

塩化ナトリウムは無臭ですが、独特の塩味を持っています。純粋な塩化ナトリウムは、20°Cにおいて湿度75%まで潮解性を示しません。

塩化ナトリウムの密度は2.16g/cm3、融点は800.4°C、沸点は1,413°Cです。溶融時には塩化物イオンとナトリウムイオンに分離し、電気を通します。溶融の際には揮発性を有します。

なお、塩化ナトリウムはナトリウムの塩化物であり、化学式はNaCl、式量は58.44です。塩化ナトリウムは無色の結晶性固体で、結晶構造は面心立方格子、配位構造は八面体を取っています。

塩化ナトリウムのその他情報

1. 塩化ナトリウムの結晶化

温度による塩化ナトリウムの溶解度の変化は、非常に小さいです。つまり、冷却での再結晶化において、少量の結晶しか得られません。

したがって、溶媒である水を蒸発させて溶液の濃度を高めるか、塩化水素ガスを吹き込むことで溶液中の塩化物イオン濃度を高くして結晶化させる方法が使われています。

2. 資源としての塩化ナトリウム

海水中に存在する塩化ナトリウムの量は膨大です。同じく岩塩にも、膨大な量が存在しています。世界の塩の生産量は、2億8千万トンであると言われています。その中のおよそ1/3が海水からの天日塩です。

日本は年間約700万トンの塩を輸入しており、世界有数の塩の輸入国です。自給率は11%程度と非常に低くなっています。島国なので生産量も多いと思われがちですが、実際のところ工業用の塩はほとんど輸入に頼っています。

参考:塩百科

3. 塩化ナトリウムの応用

塩化ナトリウムは他にも、多種多様な用途があります。例えば、低融点の架橋剤を加えて、流動性や防湿性を与えると、金属ナトリウム、マグネシウム、カリウムによる火災の消火剤として用いることが可能です。他の消火剤と見分けるため、薄黒褐色に着色しています。

赤外線領域において、プリズム、レンズ、ウィンドウとして使用されています。ゴムの製造では、塩化ナトリウムを使って、ネオプレン、ブナ、白ゴムタイプを製造することが可能です。塩化ブタジエンを原料とした乳化ラテックスを凝固させる際にも、塩水と硫酸を用います。

塩化ナトリウムは吸湿性なので、安全で安い乾燥剤として利用されることもあります。塩化ナトリウムを使って、業務用や家庭用の軟水化装置に使用されているイオン交換樹脂を再生することも可能です。

よく小学校では、溶解度の変化を確認するために塩化ナトリウムが使われます。ホウ酸やミョウバンともに、有名な化学物質です。

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