水酸化カリウム

水酸化カリウムとは

水酸化カリウムとは、化学式KOHで表される化合物です。

カリウムの水酸化物で、苛性カリとも呼ばれます。苛性とは皮膚を侵すという意味です。名前の通り皮膚に付着したら大変危険であるため、扱う際には保護眼鏡やゴム手袋を着用するなど、十分注意する必要があります。

常温では無色の斜方晶系の結晶です。潮解性があり、空気中の湿気を吸収して溶け、二酸化炭素と反応して炭酸カリウムとなります。水に溶かすときに発熱します。水溶液は強アルカリ性で、強い腐食性を持ちます。 

水酸化カリウムの使用用途

水酸化カリウムは、工業用化学物質として様々な分野で活用されています。

1. 洗浄剤

水酸化カリウムの用途の一つが、洗浄剤です。液体石鹸、ローション、シャンプーなどの製造に利用されます。固形石鹸は、脂肪酸と水酸化ナトリウム (NaOH) を反応させた脂肪酸のナトリウム塩であるのに対し、液体や乳液状の石けんは水酸化カリウムと反応させた脂肪酸のカリウム塩です。ナトリウム塩よりさらに水に溶けやすい性質があります。ワイナリーにおいては、細菌や酵母のバイオフィルムを洗浄するのに、水酸化カリウムが広く使用されています。

2. 食品分野

食品業界においては、製品を長期間保存するために、安定剤、増粘剤、pH調整剤として利用されます。さらに、水酸化カリウムをベースとした肥料は、農業分野における生産性の向上に貢献しています。石炭火力発電所で発生する微粉炭燃焼灰 (フライアッシュ) に水酸化カリウム、マグネシウム源を加えて混合造粒・篩分けしたあと、約900℃で焼成し、けい酸加里肥料として製造されます。

水酸化カリウムの性質

分子量は56.11、比重は2.044、融点は380℃、沸点は1324℃、溶解度は25℃のとき100mLの水に対して121gです。エタノール、メタノールにも溶けます。酸と反応し、塩を生成します。例えば、水酸化カリウムと塩酸 (HCl) が反応すると、塩化カリウム (KCl) が生じます。

水酸化カリウムの水溶液はアルミニウム、スズ、鉛、亜鉛などの金属に対して腐食性を示し、引火性/爆発性の気体 (水素) を生成します。アンモニウム塩とも反応し、アンモニアを生成します。

水酸化カリウムのその他情報

1. 水酸化カリウムの合成方法

水酸化カリウムの合成方法には、以下のような方法があります。

塩化カリウム水溶液の電気分解法
塩化カリウム水溶液を電気分解する方法で、カソードに水素が発生し、アノードには塩素が発生します。この塩素と水が反応して塩酸が生成されます。一方、カソード側で生成した水素イオンが、アノードに向かって移動し、水酸化カリウムが生成されます。工業的にはこの方法が一般的に用いられています。

炭酸カリウム水溶液と消石灰による反応法
炭酸カリウム水溶液と消石灰を混ぜた後、水分を加えて混合物を練り上げます。すると、水酸化カリウムが生成されます。この方法では、炭酸カリウム水溶液に含まれるカリウムイオンが、消石灰のカルシウムイオンと置換反応を起こすことで、水酸化カリウムが生成されます。

カリウム金属と水の反応法
カリウム金属を水に浸して反応させることで、水酸化カリウムが生成されます。ただし、この反応は激しく発熱し、火災や爆発の危険があるため、危険な反応であることに注意が必要です。

2. 水酸化カリウムの健康への影響

水酸化カリウムは、塩基性であり、食品添加物として使用される場合があります。過剰な摂取や誤った使用は、健康への影響を与えることがあります。例えば口内炎や消化器系の刺激、吐き気、嘔吐、下痢などの症状が現れることがあります。また、皮膚や眼に接触した場合には炎症やかぶれ、角膜炎などの症状が現れることがあります。そのため水酸化カリウムを使用する際には適切な安全対策を講じることが重要です。

参考文献
https://jsda.org/w/06_clage/4clean_199-4.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1310-58-3.html
https://www.zennoh.or.jp/operation/hiryou/pdf/07_keisankari.pdf

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