二酸化ケイ素とは
二酸化ケイ素とは、ケイ素と酸素の化合物です。
シリカと呼ばれることが多く、天然に存在する代表的なものとして石英、鱗珪石、クリストバル石があります。特に石英は、地殻の約12%を占めており、地球上に広く分布しています。鉱物以外にも、珪藻や一部の海綿などは二酸化ケイ素を骨格や殻などとして利用しています。その他には一部のシダ植物、イネ科の植物などにも含まれています。
二酸化ケイ素の使用用途
二酸化ケイ素の使用用途は下記の通りです。
1. シリカガラス
ガラス状の二酸化ケイ素は、シリカガラスと呼ばれます。シリカガラスは、分析用のセル材料、半導体素子の製造、光ファイバー材料など、広く用いられています。シリカガラスは、金属不純物が少ない、熱に強い、幅広い波長領域の光をよく通す、酸やアルカリに侵されにくいなどの特徴を持っています。
2. シリカゲル
シリカから作られるシリカゲルには、空気中の水分を吸着する力があります。そのため、特に食品乾燥用の吸着剤・乾燥剤として、広く利用されています。
3. シリカ微粒子
球状や鱗片状などの形状や、粒子径、空隙率などの違いにより、異なる特性を示します。化粧品やHPLCカラム、コーティング剤など様々な用途に用いられます。コロイダルシリカはシリカ微粒子が水などの溶媒に分散された状態のもので、研磨剤として使用されます。
4. フュームドシリカ
乾式シリカ、高分散シリカと呼ばれる、非常に嵩密度の小さい白色粉体です。作製方法としては、乾式法と呼ばれる四塩化ケイ素の火炎加水分解法と、湿式法と呼ばれる水ガラスの無機酸による分解法が知られています。レオロジー調整剤として使用されます。
5. シリカエアロゲル
二酸化ケイ素の微粒子が3次元ネットワーク骨格を形成した構造で、空隙間隔がおよそ50 nm前後の多孔材料です。非常に小さい孔であるため透明です。また、体積の90%以上が空気からなるため、高い断熱性能を示します。通常は、テトラエトキシシラン (TEOS) などのアルコキシシランをエタノールなどの溶媒に溶かし、酸や塩基を加えて加水分解し、ゲル化、熟成を行い、超臨界乾燥することで、作製できます。
二酸化ケイ素の性質
二酸化ケイ素は化学式SiO2で表され、モル質量は60.08です。高い耐熱性や対腐食性を示し、ガラスやセラミックスの材料として用いられています。フッ化水素酸と反応し、ヘキサフルオロケイ酸 (H2SiF6) が生成します。
二酸化ケイ素の種類
二酸化ケイ素には、いくつかの結晶形態があります。結晶は、SiO4四面体の隣り合うSi原子間でO原子が共有されていて、巨大な三次元分子構造を持っています。SiO4の配列の違いによって結晶の形態が異なり、温度や圧力などの条件によっても安定な形態は異なります。以下に一部の結晶の種類を示します。
1. クリストバイト
立方晶、八面体の結晶です。Si原子のみに着目すると、ダイヤモンドと同じ結晶構造です。
2. トリディマイト
六方晶系、六角板状の結晶です。高温型と低温型の2種類の結晶構造があり、低温型は高温型と比べてやや結晶格子が押しつぶされた格好となります。
3. 石英
高温型と低温型の結晶構造があり、高温型は六方晶系、六角錐形、低温型は三方晶系、六角柱状の結晶です。低温型石英のうち、結晶がよく成長したものは水晶と呼ばれます。
4. コーサイト
単斜晶系の結晶です。濃フッ化水素酸にも浸食されません。
5. スティショバイト
正方晶系の結晶で、ルチル型の結晶構造です。
二酸化ケイ素のその他情報
ガラス原料としての二酸化ケイ素
建物や乗り物など、生活でよく目にするソーダライムガラスの主成分は二酸化ケイ素です。ガラス製造における二酸化ケイ素は珪砂 (シリカサンド) から供給されます。珪砂だけを溶解する場合、1,700℃以上の高温が必要ですが、ソーダ灰や石灰を加えることで、溶解温度を下げ、安定したガラスを作ることができます。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jar/5/1/5_1_32/_pdf/-char/ja
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9302/9302_biomedia_1.pdf