塩化アルミニウムとは
塩化アルミニウムとは、化学式AlCl3で表されるアルミニウムの塩化物です。
白色または淡黄色の固体で強い潮解性を有しており、水への溶解度は45.8g/100ml (20℃) です。塩化アルミニウムは無水物と6水和物があります。製法としては、アルミニウムと塩素ガスまたは塩化水素ガスを反応させることで、塩化アルミニウム (無水物) を得ることが出来ます。またポリ塩化アルミニウムは、水酸化アルミニウムを塩酸と反応させることで得ることが出来ます。
塩化アルミニウムの使用用途
塩化アルミニウムの主な使用用途として、医薬品と水処理用凝集剤が挙げられます。医療の現場で多汗症の治療に用いられており、汗腺に炎症を起こして閉塞させることで、発汗を減少させます。
また、ポリ塩化アルミニウムとして水処理にも使用されています。ポリ塩化アルミニウムは凝集沈殿性があるため、上下水道や工業用水中の微粒子、浮遊物を沈降させる作用があります。
塩化アルミニウムの性質
1. 基本性質
分子量は133.34で、融点は190℃、比重は2.44です。水溶液は強い酸性を示し、水に溶けると、水酸化アルミニウム (Al(OH)3) と塩化水素 (HCl) を生成します。塩化アルミニウムの水溶液を加熱濃縮すると、塩化アルミニウムの6水和物から水分子が3分子脱水して[Al(H2O)3]Cl3となります。そして、先にHCI が脱離・気化してAl(OH)3となり、最終的に酸化物であるアルミナ (Al2O3) を生じます。
2. ルイス酸触媒としての性質
塩化アルミニウムはルイス酸触媒として、有機化学の分野で広く使われています。芳香族化合物のフリーデル・クラフツ反応のアルキル化およびアシル化反応などが例です。反応過程ではAlCl4–が生成します。分子内の非共有電子対に対して配位し、陽イオン中間体を生成することで、求核置換反応を促進します。
アルキル化では塩化アルミニウムの添加量は触媒量で進みますが、アシル化の場合は、生成した芳香族アシルのカルボニル酸素に塩化アルミニウムが配位した錯体を形成することで触媒活性が低下するため、当量以上の塩化アルミニウムの添加が必要となります。
塩化アルミニウムの種類
無水塩化アルミニウム、塩化アルミニウム6水和物の他に、ポリ塩化アルミニウムが知られています。ポリ塩化アルミニウムは[Al(OH)nCl6-n]m (1≦n≦5、m≦10) で表され、水溶液中では、 例えば[Al6(OH)15]3+、[Al8(OH)20]4+、[Al13(OH)34]5+などのイオンの形で存在しています。
水処理過程ではポリ塩化アルミニウムの高い陽電荷により、負電荷表面の水中の濁質と電気的に中和となり、濁質が凝集しフロックを形成します。フロックにさらに濁質が凝集することで沈殿となります。
塩化アルミニウムの構造
1. 無水塩化アルミニウムの構造
塩化アルミニウムの固体の結晶構造は、1つのアルミニウム原子が6つの塩素原子に囲まれており、1つの塩素原子は2つのアルミニウム原子に囲まれています。歪んだ八面体構造をとり、二次元のシート層となります。液体や気体の状態ではAl2Cl6の二量体の分子となります。2つのAl原子を二つのCl原子で連結した環状構造を含んでいます。
2. 塩化アルミニウム6水和物の構造
塩化アルミニウム6水和物はAlCl3・6H2Oのほか、[Al(H2O)6]Cl3とも表記されます。後者の方が塩化アルミニウム6水和物の構造をよく示していて、Al 原子に6つの水分子が配位した 3価の錯イオンを含んでいます。
塩化アルミニウムのその他情報
塩化アルミニウムの製造方法
無水塩化アルミニウムの一般的な工業的製法では、溶融アルミニウムを溶融状態に塩素ガスを導入して反応させ、生成して昇華した塩化アルミニウムガスを冷却器で凝固させることで製造します。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/61/11/61_KJ00008953868/_pdf