リモネン

リモネンとは

リモネンの構造

図1. リモネンの構造

リモネンは、単環状モノテルペン類の一種であり、柑橘類の皮に豊富に含まれる常温で液体の精油成分です。光学活性な化合物であり、天然にはd-体とl-体の両方が存在します。レモンの香りとしても有名ですが、この香りはd-体に由来するものです。なお、ラセミ体(dl-体の等モル混合物)は、特にジペンテンと呼ばれています。これらの光学異性体の分布に関しては、d-リモネンは橙皮油、レモン油、ベルガモット油に、l-リモネンは、松葉油、ハッカ油に、そしてジペンテンは、樟脳油、テレビン油に多く含まれています。

リモネンの物理化学的諸性質

リモネンは柑橘類の精油に含まれる環状テルペンで、特に果皮に多く含まれます。特徴的な柑橘系の香りが特徴です。

リモネンは油脂を溶かす性質があるため、洗浄剤や脱脂剤の溶剤として使用されています。

1. 名称
和名:リモネン
英名:limonene
IUPAC名: 1-methyl-4-(1-methylethenyl)-cyclohexene

2. 分子式
C10H16

3. 分子量
136.23

4. 融点
-74.35℃

5. 溶媒溶解性
水に不溶、アルコールに可溶

リモネンの使用用途

リモネンは独特の爽やかな香りを生かし、食品や香料に多く用いられます。また、そのユニークな特性から、さまざまな産業用途に使用されています。

1. 香料としての利用

リモネンは、飲料や食品、入浴剤等の香料など、身の回りで幅広く用いられています。

食品香料としては、柑橘系や各種フルーツ系のフレーバーに使用されています。

また一般香料としては、せっけん、洗剤、化粧品、芳香剤等に用いられます。

リモネンは安全性が高く、油性物質の洗浄能力に優れる事もあり、ハンドソープや台所用洗剤へ多く利用されています。

2. 化学合成原料としての利用

リモネンは化学原料としても広く用いられる化合物です。

油性物質をよく溶解することから、特に工業用溶剤としての用途は多く、塗料・印刷インキ溶剤等、幅広い分野で利用されています。 

3. スチレンとの構造類似性と発泡スチロール回収剤としての利用

リモネンとスチレンの構造類似性

図2. リモネンとスチレンの構造類似性

リモネンは、発泡スチロール(=ポリスチレン)の構成単位であるスチレンと似た構造を有します(図2)。

そのため、『like dissolves like(=類似した化合物同士はよく溶ける)』という化学の経験則からも予想されるように、リモネンには発泡スチロールを溶解します。この特徴を利用して、d-体のリモネンが発泡スチロールのリサイクル回収剤として利用されています。

リモネンの構造

リモネンは、分子式C10H16で表される環状モノテルペンの一種です。

この分子はキラルであり、互いに鏡像である2つのエナンチオマーが存在します。いずれのエナンチオマーも天然に存在しますが、独特の強い柑橘臭を有するのはd-リモネンのみです。また、ラセミ体はジペンテンと呼ばれています。

d-リモネンは主に柑橘類の果皮に多く含まれ、l-リモネンはハッカなどに多く含まれています。ラセミ体である字ペン店はテレビン油に多く含まれます。

リモネンは共役していないC=C二重結合を2つ有しているため、やや不安定で酸化され易いという特徴があります。

リモネンのその他情報

リモネンの製造方法

リモネンは、柑橘類の果皮から抽出される天然の物質であり、オレンジ、レモン、ライムなどに含まれています。工業的には、抽出、水蒸気蒸留、あるいは化学合成によって生産されます。

①抽出
柑橘類の果皮を機械的に絞り、得られた液体から脂肪族化合物を除去し、蒸留によって精油を得る方法です。得られた精油中には、リモネンの他にも、カルボン酸、アルデヒド、ケトンなどが含まれます。

②水蒸気蒸留
①の方法にに似ていますが、柑橘類の果皮を水蒸気で蒸留し、得られた蒸気を冷却して油を分離する方法です。

③化学合成
エタン酸からの脱水反応、イソプレンからのヒドロハロゲン化反応、β-ピネンからの加水分解反応などが用いられます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です