万能試験機

万能試験機とは

万能試験機

万能試験機とは、プラスチック・セラミックス・金属、木材、コンクリートなど様々な材料に対して引張・圧縮・曲げ・ねじりなどの応力を加え、その強さや硬さなどの物理的性質を定量的に把握できる装置です。

万能試験機では、静的試験を行います。静的試験とは、試験片にゆっくりと力を加えていき、一定の荷重または一定の変形ごとに加重を止めて、試験片のひずみや変形量などを測定し強度を調べる試験方法です。

静的試験には、引張試験、曲げ試験圧縮試験、ねじり試験、剥離試験など様々な試験があります。それぞれに対応した専用試験機が存在し、万能試験機は治具を取り替えることで、これらの静的試験を1台で行うことが可能です。

万能試験機の使用用途

万能試験機は、つかみ具・治具を交換することで、幅広い種類の材料を用い多種多様な試験を行うことができます。また、万能試験機によって得られるデータはメーカーなどにおける材料・製品開発に役立つだけでなく、量産した製品の品質管理や安全性確保に欠かせません。

業界や製品によって試験規格が定められており、メーカーなどは各規格に基づいた試験方法、データ処理方法を遵守する必要があります。万能試験機の主な使用用途は、以下のとおりです。

1. 重工業分野

近年、航空機や自動車などの重工業分野では、軽量化や高機能化の需要に応えるため、炭素繊維強化プラスチックやガラス繊維強化プラスチックが金属材料の代わりに使われようになってきました。金属から複合プラスチックに変わったとしても、規格に基づいた強度や耐久性は必ず担保されていなければなりません。これらの評価に万能試験機が活用されています。

また、特に自動車分野においては、各部品単位ではなく、複合したモジュールとしての強度測定が重要です。これを可能にするために、高度な測定のできる万能試験機が開発されています。

2. 建設分野

建設分野では、コンクリートモルタルや木材が良く用いられます。近年は、コンクリートの劣化した部分を補修するはく落防止工法の評価にも万能試験機が用いられています。この分野の試験体は大型になることが多く、対象に応じた多様なサイズの万能試験が開発されています。

3. その他

万能試験機には、柔らかくて脆い材質の評価が可能なコンパクトなものもあります。特殊な治具を活用することで産業用フィルムなどの薄い製品の摩擦係数の測定や、包装用資材の突刺強度試験などが万能試験機で行われています。

万能試験機の原理

万能試験機は試験体に荷重をかけ、その時に試験体に加えられた力の大きさ、つまり応力と変形量の関係から物質の特性を調べる機器です。機器の構成としては大きく2つに分かれています。

具体的には、大きく分けて可動部であるクロスヘッドとテーブルとの間に試験片をつかむ治具です。治具は交換することが可能で、治具の種類とクロスヘッドの動きとの組合せで、引張・曲げ・圧縮など各種応力を加えることができます。

その際、クロスヘッド側に設置されたロードセルというセンサーで応力をひずみゲージでひずみを検出します。

万能試験機のその他情報

1. 引張試験

試験片の両端を外側に引っ張ると、材料は応力に比例して伸長します。力を加え続けると、応力とひずみの比例関係が崩れ、応力の上がり方が緩やかになり、これが降伏点です。

さらに加重を続けると応力が上がり、材料の限界に達すると破断します。これを破断点と呼びます。万能試験機は降伏点、破断点における応力、ひずみを計測することが可能です。

2. 曲げ試験

試験片に曲げようとする力を加えて、その際の応力とひずみを測定する試験です。試験片の両端を支えて試験片の中央に荷重を加える「三点曲げ試験」と、両端の視点から等距離の位置に同じ荷重を加える「四点曲げ試験」の2種類があります。

三点曲げの試験では、支持台上に設置した試験片の中心を押し込むことで試験を行います。

3. 圧縮試験

圧縮試験は耐圧試験とも呼ばれ、試験片を試験機に固定して上から加重を加えた時のひずみを測定する試験です。試験片が破断するまで荷重を加えて試験することが多く、破断時に試験片の破片が飛び散る場合があります。

ひずみゲージのような接触型センサーは破損の恐れがあるため、CCDカメラなど非接触型のひずみセンサーが推奨されています。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/testing-machine/material/
https://www.iic-hq.co.jp/library/pdf/058_11.pdf

無停電電源装置

無停電電源装置とは

無停電電源装置

無停電電源装置とは、停電等により電源障害が生じた際、一定時間、接続している機器等に電力を供給し続けるための装置です。日本は世界でもトップクラスの電力網が整備されており、停電や電圧異常の発生する頻度はとても小さくなっています。しかしながら、台風や落雷、積雪といった自然災害、発電や送電、配電設備等の故障などにより、予期しない停電や電圧変動は起こり得ます。電力の供給がストップしてしまった場合、特にコンピューターやネットワークに接続している機器は故障するリスクがあり、さらに重要なデータの損失や大規模なシステム障害にも繋がりかねません。無停電電源装置を機器に接続することで、このようなトラブルを回避することができます。

無停電電源装置の使用用途

一般的に無停電電源装置はコンピューターなどの機器と商業電源の間に接続して使用します。直接商用電源に接続するのではなく無停電電源装置を介することで、予期しない停電や電圧変動が発生しても、無停電電源装置の内蔵バッテリから安定した電力供給を受けることが可能となります。ここで重要となるのが無停電電源装置の内蔵バッテリの容量の大きさです。バッテリの大きさによって電源供給可能な時間が決まってくるため、導入した機器に合わせて障害発生時の対策を考える必要があります。最近では、無停電電源装置と電源管理用のソフトウェアを組み合わせることで、停電時に無停電電源装置に接続している機器等を自動で安全にシャットダウンしたり、起動したりすることも可能になっています。

無停電電源装置の原理

無停電電源装置は一般的に以下のような回路とバッテリから構成されています。

  • コンバータ: 交流電力を直流電力へ変換するための回路です。
  • インバータ: 直流電力を交流電力へ変換するための回路です。
  • バイパス: 交流電力を直接出力するための回路です。
  • スイッチ: インバータ出力とバイパス出力を切換えるための回路です。

また無停電電源装置には様々な給電方式があり、代表的なものとして以下の3つが挙げられます。

  • 常時インバータ給電方式: 商用電力の状態によらずインバータを経由させる方式です。通常時、停電時のいずれの状況においてもインバータによって給電します。ノイズ等を取り除きながら常に安定した電力を供給することが可能です。
  • ラインインタラクティブ方式: 通常時は商用電力から電力を供給すると同時に、インバータを介してバッテリへの充電も行います。停電時はインバータ給電に切替えられますが、通常時でもインバータへの給電がされているため、切替え時間は常時商用給電方式よりも短いのが特徴です。
  • 常時商用給電方式: 通常時は商用電源からそのまま給電し、停電時はバッテリからのインバータ給電に切り換える方式です。通常時はインバータが停止していることから省電力なシステムであり、使用する回路も少ないことから小型で低価格というメリットがあります。一方、給電の切替え時に数ms程度の瞬断が発生するため、安定性の求められる機器への接続には不向きとされています。

参考文献
https://www.fujielectric.co.jp/products/power_supply/ups/aboutups/index.html
https://www.sanyodenki.com/archive/document/corporatedata/technicalreport/2015/TR40_p08_Pdiv.pdf

滅菌器

滅菌器とは

滅菌器

滅菌器とは、様々な製品に付着した微生物を死滅させるための装置全般のことです。

特に衛生状態の確保が必要とされる現場において広く用いられています。代表的なものとして、高温高圧の水蒸気を用いるオートクレーブ、高温で乾燥させることによって殺菌する電気式オーブン、エチレンオキサイドガスを用いたガス滅菌器等が挙げられます。滅菌対象物の材質や滅菌コスト、環境負荷などを考慮して最適な方法が選択されています。

滅菌器の使用用途

滅菌器は、衛生的な状態の確保が必要な医療機関や食品製造などの現場、精度の確保が必要な研究所などを中心に、幅広く用いられています。必要とされる滅菌レベルや滅菌するものの材質によって、最適な滅菌方法がメーカーにより推奨されています。

オートクレーブによる滅菌は、他の滅菌方法と比較してランニングコストと所要時間の面で優れているため、医療機関や研究機関などを中心に用いられることが多いです。次いで、高温に強いガラス等を中心に電気式オーブン等が用いられています。

また、耐熱性の低いプラスティック製品やゴム製品等については、エチレンオキサイドガス滅菌器や紫外線消毒器などが用いられています。

滅菌器の原理

代表的な滅菌器に、「オートクレーブ」と「ガス滅菌器」があります。滅菌機の原理から、滅菌対象物の材質により使い分けが可能です。

1. オートクレーブ

代表的な滅菌器であるオートクレーブは、圧力釜のような構造をした滅菌器の内部に対象器材を置き、大気圧以上の環境を一定時間保つことで、2気圧、130℃程度の高温の水蒸気を作り出し滅菌します。オートクレーブは別名で高圧蒸気殺菌器とも呼ばれます。

欧州の滅菌基準 (EN13060) では、滅菌器の性能についてクラスB、クラスS、クラスNの3段階に分類されます。対象器具により、どのクラスで滅菌すべきかが異なります。

  • クラスB
    最高レベルの滅菌が得られます。固形、多孔体、中空、非包装、などあらゆる器具に対応可能です。
  • クラスS
    クラスN滅菌対応可能なメーカー特定商品で滅菌できます。
  • クラスN
    非包装の固形器具に使用可能な滅菌です。滅菌後は保管せず、早期に使用しなければなりません。大多数の医療機関で使用されている最も一般的なタイプです。

大気圧下で100℃の水蒸気による煮沸消毒を行った場合、クロストリジウム菌など一部の微生物は生存しますが、120℃の高温水蒸気は高い熱エネルギーを持ち、加水分解反応を促進するためこれらの微生物も死滅させることができます。加えて電気オーブンなどよりも低温での滅菌が可能なため、高温に弱い素材にも利用できます。また、精製水が利用されていて、排出されるのは熱と水蒸気だけとあって、人体への影響が少ないことも特長です。

2. ガス滅菌器

ガス滅菌器は、高温に特に弱い素材に用いられます。高温の代わりにエチレンオキサイドの持つ高い求核作用を利用しており、微生物がエチレンオキサイドに暴露することで、タンパク質や核酸にアルキル化反応を起こして変性させ死滅させます。

エチレンオキサイドは微生物のみならず、人体にも影響を及ぼすため、作業環境の管理、および適用する機材の選別が必要です。対象となる器材について、滅菌のレベル (クラスB、S、N) 、滅菌する器材の大きさ、滅菌方法、導入設置費用、設置場所、ランニングコストなどから検討すると良いです。

滅菌器のその他情報

殺菌・除菌・消毒との違い

滅菌とは、生存している病原微生物 (芽胞菌も含む) 、非病原微生物を問わず、全ての微生物に対して生存する確率が 100万分の1以下になることをもって定義されます (「医療現場における滅菌保証のガイドライン2021」より) 。

滅菌と似たような用語に殺菌、除菌、消毒があります。混同されがちですが、それぞれ定義が異なります。

  • 殺菌
    単に微生物を殺すという意味で一般に広く用いられる言葉です。殺す対象や程度が含まれないため、微生物を減少させれば「殺菌」と言えます。また「滅菌」は器材など物品を対象とする場合に使われ、微生物そのものを対象とするときには殺菌が使われます。
  • 除菌
    物理的・化学的・生物学的作用により、対象物から増殖可能な細菌数を減少させることを指します。
  • 消毒
    人に有害な病原細菌を殺したり、病原体を不活化 (死滅させること) させることだけを指します。

それぞれ、菌をどの程度減らすかによって、異なる対応が必要です。

参考文献
https://www.as-1.co.jp/academy/21/21-3.html
https://m-hub.jp/biology/2798/183
http://kkiki.jp/eog.html
https://amethyst.co.jp/1735/

木工機械

木工機械とは

木工機械

木工機械とは文字通り、木材を加工するための機械です。材料の木材を家具や建材などの部品を、必要な形状・寸法に加工するために使用されます。

機械は加工方法によって分類され、主な種類として切断機、切削機、研磨機、穴あけ機、プレスなどがあります。またこれらの加工を補助する集塵機などもあります。

工場などで使用される据え置き型の機械と、手で持って使用する電動工具がありますが、ここでは前者に限定した解説をします。

木工機械の使用用途

木工機械を使用して加工される代表的なものは、木造建築の部品、木製家具、食器、玩具などです。加工物のサイズや加工部位などにより様々な機械が使用されます。

長尺の材料を必要な長さに切り出す場合には、丸鋸盤やパネルソー、バンドソーなどを用いて切断加工が行われます。

切断加工後には、溝入れ盤やプレーナー(平削り盤)などで表面の形状を整えます。

その後、穴あけ機での穴加工やかんな盤での表面仕上げ、ルータやレーザー加工機での彫刻・刻印などが行われます。

木工機械の特徴

木工機械は木を加工するために最適化された機械です。

金属加工と比べて、加工負荷は小さいため送り速度は高く設定されています。加工負荷が小さいため同時に2面以上の加工を行うことも可能で、直角や平行に仕上げる加工が容易に行える機械があります。

木工機械全般に共通して、取り代が多いため切くず(木屑)が多く出るので、大容量の木屑を収集できる集塵機が併用されることが多いです。

被削材が木材であるため木材の性質を考慮した機械の選定が必要になります。例えば、ルータの様な回転刃で削った場合と、かんなの様な1枚刃で削った場合では表面の仕上がりに大きな差があります。回転刃で削った場合は表面に細かい毛羽立ちが出ますが、かんな盤の場合は光沢がある平滑な面となります。

一般的には加工面がそのまま製品になる場合はかんな盤での仕上げ加工を行います。一方、オイル仕上げなどを行う場合は油の付着性を高めるため、表面が粗くなる加工法を選択します。

参考文献
https://yslaser.com/vls230/
https://suzukikikai.co.jp/used/

油圧ジャッキ

油圧ジャッキとは

油圧ジャッキ

油圧ジャッキとは、油圧の力で重量物を持ち上げるための工具です。

油圧を利用することで、人の力でも容易に数トン以上のものを持ち上げることができるようになります。少ない動力で大きな力が得られる油圧システムは、多くの機械に採用されており、機械産業などにおいて必要不可欠な存在です。

近年は、IOTを活用した施工事例もあり、設置した油圧ジャッキのデータを現場で目視確認しなくても、スマホやPCで確認できる油圧ジャッキのシステムなども開発されています。

油圧ジャッキの使用用途

油圧ジャッキの最も身近な使用例は、自動車整備での車両の持ち上げです。小型自動車では機械式のジャッキでも対応できますが、より重量の大きい中型や大型の車両では油圧ジャッキを使用することが多いです。

また、油圧ジャッキは重量物を持ち上げるだけではなく、対象物を押す、拡げる、位置を合わせるなどの様々な動作にも対応可能です。そのため、災害時の人命救助や建築工事、大型精密機械の組立等にも幅広く使用されています。

油圧ジャッキの原理

油圧ジャッキは、パスカルの原理を応用した製品です。パスカルの原理は、密閉容器に流体を閉じ込めた際、その一部に圧力が加わると、その圧力の増加分が増減することなく、流体のすべての方向に伝わるという原理を指します。

油圧ジャッキに置き換えると、小さいピストンと大きいピストンの2本を連結管で繋ぎ、中が油で満たされた状態でし。小さいピストンと大きいピストンは断面積が異なり、それぞれA1とA2とします。この状態で小さいピストンに力F1が加わると圧力Pが発生します。この圧力Pは連結管の中を伝わり、大きいピストンの下面に同じ強さで伝わります。この時、大きいピストンには上向きの力F2が加わることになります。

圧力は「力/面積」で表され、この時の圧力Pを式で表すと、パスカルの原理から「P=F1/A1=F2/A2」が成り立ちます。大きいピストンにかかった力F2は「F2= (A2/A1) ×F1」となり、ピストンの断面積比に比例して、力が増幅することがわかります。これにより、油圧ジャッキは小さな力で大きなものを持ち上げることが可能です。

油圧ジャッキの種類

使用されている油圧ジャッキは、以下の2種類が主流です。

1. シザースジャッキ

パンタグラフジャッキに油圧機能を付けたのが、シザースジャッキです。純正の手動式ジャッキと違い、油圧の力で簡単にジャッキアップすることが可能です。コンパクトな形状をしているため、持ち運びに便利で車載用におすすめです。

2. フロアジャッキ

フロアジャッキは、縦長のボディーにジャッキアップのためのレバーを備えたタイプです。地面との設置面積が広く、安定性に優れているのが特徴で、大型車両のジャッキアップに適しています。ただし、シザースジャッキと比べ作業スペースを多くとる必要があり、重量があるため持ち運びに適さないのがデメリットです。

油圧ジャッキの選び方

油圧ジャッキは各メーカーより、様々なタイプの製品が販売されています。それぞれの特徴を把握し、使用目的に合ったものを購入することが大事です。

1. 耐荷重

油圧ジャッキの耐荷重を選ぶときは、持ち上げるものの重さを確認する必要があります。2tの車ならば、最大荷重が2.5t以上のものであれば安全にジャッキアップすることができます。持ち上げるものの重量より、最大荷重が大きい油圧ジャッキを選ぶのがおすすめです。

2. 最高位と最低位

油圧ジャッキで車を持ち上げる場合、持ち上げ可能な最大の高さを「最高位」、一番低い位置を「最低位」といいます。エアロパーツを組んだ車高が低い車であれば、最低位が低いタイプ、ミニバンやSUV車のような車高が高い車の場合は最高位が高いタイプを選ぶ必要があります。

購入する時は、事前に車高を確認することで、ジャッキの高さが合わないというトラブルを防ぐことができます。

3. 製品の素材

油圧ジャッキの素材は、ガレージで作業するときは「スチール製」、車に搭載されるのであれば「アルミ製」がおすすめです。アルミ素材はスチールの約半分の重量であるため、軽くて携帯性に優れています。

スチール素材は頑丈で車体をしっかり支えてくれるため、二輪上げなどの作業に適しています。油圧ジャッキを選ぶときは、耐荷重に加え素材も検討するとよいです。

油圧チャック

油圧チャックとは

油圧チャック

油圧チャック (英: hydraulic chuck) とは、油圧の力を利用して加工物や工具を固定する装置です。

パワーチャックとも呼ばれており、油圧で開閉させます。一般的に中空の油圧チャックが多く、中心部は貫通穴となっています。その内部に棒状の加工物の固定が可能です。

工具を固定する油圧チャックは、ハイドロチャックと呼ばれ高精度の加工に使われます。油圧を利用することで、強力に固定できます。

油圧チャックの使用用途

油圧チャックは、旋盤フライス盤などの工作機械に主に搭載され、加工物を固定するために使用されます。具体的には、エンドミル・超硬ドリル・バニシング・リーマ加工などです。

その結果、高速で油圧チャックを回転させても、運動を安定して継続することが可能です。中心に固定されたドリルで穴を開けたり、固定された加工物の表面を削ったりすることができます。

主要な工作機械の一部に必須の部品として使用されます。また、工具の固定用の油圧チャックは、各種工作機械で高精度の加工用です。

油圧チャックの原理

油圧チャックは油圧の力を利用し、「パスカルの原理」に基づいて固定力を発生させます。パスカルの原理とは、密閉した容器内に封入された液体に圧力を加えると、その圧力が液体中に等しく伝搬する原理です。多くの油圧機器は、この原理を利用しています。

一定の圧力が伝搬するため、液体が触れる断面積が大きいほど、加わる力は大きくなります。断面積が異なる2つのピストンを管でつなぎ、断面積の小さなピストンを押し込むと液中を圧力が伝搬し、もう一方のピストンが持ち上げられる仕組みです。

その結果、断面積の大きなピストンにはより大きな力が発生します。

油圧チャックの種類

1. 加工物用油圧チャック

加工物を固定する油圧チャックには、固定する爪の数により、2爪、3爪、4爪があります。また、爪を使わないコレットタイプがあります。さらに、インデックスチャックも使われます。

2爪油圧チャック
2爪油圧チャックは、構造が比較的簡単で、バルブ・管接手等の異形物の把握に最適です。

3爪油圧チャック
3つの爪が同時に動いて締め付けます。加工物を主軸の中心と一致させる求心作用があり、NC旋盤などに多く使用します。

4爪油圧チャック
各爪を独立に半径方向に調整できるもので、角材や異形物など非軸対象の加工物を固定するときに使います。

コレットタイプ
コレットにより加工物を固定します。加工物を包み込むように掴み、接触面積が大きいので、加工物への影響が少ないのが特徴です。棒材などの固定に使用します。

インデックスチャック
加工物を45度や90度自動旋回が可能なチャックです。加工工程ごとに加工物の脱着が不要なので、効率的な加工ができます。バルブや接手の加工に使用されます。

2. 工具用油圧チャック

工具を固定するチャックは、工具ホルダとして使用されます。スタンダードタイプから荒加工にも対応する高剛性タイプがあります。また、干渉を考慮した細身形状のスリムタイプもあり、マシニングセンタから旋盤まで広く使われます。

油圧チャックのその他情報

1. 加工物の固定

加工物の固定用の油圧チャックは、回転シリンダ等を使用して、油圧を加工物を固定する爪に伝えて、固定力を発生させます。シリンダの油圧力は軸方向の力であり、くさび機構やスクロールなどにより、爪を半径方向の力に変えて加工物を固定します。

中空パワーチャックの場合は、中心部が貫通穴となっており、その内部に棒状の加工物を通すことが可能です。その際、油圧により爪を出すことで加工物を強力に固定できます。また、近接スイッチを使用することで、爪の開閉や常時内部圧検知の確認が可能です。

2. 工具の固定

工具の固定用の油圧チャックは、小径のスピンドルをねじで締め込むことで、ドリルなどの工具を油圧で締め付け、固定する工具ホルダーです。チャッキング精度は、刃径の4倍の位置で、工具先端の振れ精度が3µm程度です。

安定した高精度を容易に実現できます。また、操作が簡単で熟練度を要しなく、誰でも同じ精度が得られます。工具寿命が良化するのもメリットです。油は封入されており、油の補給は不要となっています。

油圧ディスクブレーキ

油圧ディスクブレーキとは

油圧ディスクブレーキ

油圧ディスクブレーキとは、摩擦ブレーキの一種です。

具体的には、主に回転体に取り付けられたディスクと呼ばれる円盤をブレーキパッドという大きな摩擦力が得られるパッドを油圧によって発生させた力で挟み込み、回転運動を制動、静止させるコンポーネント部品を指します。ディスクブレーキを構成する主要部品は、ブレーキディスク  (ローター) とブレーキパッド (制輪子) 、ブレーキパッドを保持するキャリパーです。

ブレーキディスクをブレーキパッドで両側から挟み込んで摩擦力が発生し、車輪などの回転軸の回転速度を下げることができます。ブレーキパッドはキャリパーに内蔵されたピストンで押されます。特にピストンを押す力に作動油 (ブレーキフルード) の圧力を利用するものが、油圧ディスクブレーキです。なお、油圧以外には空圧を利用するものや機械式のものも存在します。

油圧ディスクブレーキの使用用途

油圧ディスクブレーキは主に、自動車、オートバイ、自転車、航空機に用いられています。自動車やオートバイ、競技用自転車で多く採用されているのは、高速度から低速度まで安定した制動力、高いコントロール性、高い放熱性があるからです。航空機では小型で高い制動力が要求されるため、複数のブレーキディスクと摩擦板を重ねた多板式ディスクブレーキが用いられることもあります。

自転車用ではロードバイクやマウンテンバイクなど、競技用の自転車で油圧ディスクブレーキが採用されるようになりました。鉄道や大型トラック・バスのディスクブレーキには、空圧式が多く用いられています。

産業用機械では、大きな慣性体の静止や制動停止を目的に使用されます。具体的には、フライホイール、ミキサ、工業用洗濯機、食品機械遠心分離機などです。

油圧ディスクブレーキの原理

油圧ディスクブレーキの原理は、制動力の源となる油圧の原理と、実際に制動力を得るディスクブレーキの原理に分けられます。

1. 油圧の原理

油圧によって大きな制動力が得るために、パスカルの原理を利用しています。パスカルの原理とは、密閉容器内で静止している (流れがない) 流体には、どこでも等しい圧力が加わるという原理です。等しくなるのは圧力であり、単位面積あたりに作用する力が同じという原理です。

力を受ける面積を増やせば、大きな力が得られます。自動車ならブレーキペダルで踏んだ力を小さな面積で受け、同じ容器内にある大きな面積のピストンで受けてブレーキパッドに伝えれば、人が踏んだ力よりも大きな力でブレーキパッドを押さえつけることが可能です。ただし、より大きな力が得られるよう倍力装置が加えられているのが一般的です。

2. ディクスブレーキの原理

ディスクブレーキは摩擦ブレーキであり、ブレーキディスクとブレーキパッドとの摩擦力によって、回転している運動エネルギーを熱エネルギーに変換して大気中に放出します。ブレーキディスクやブレーキパッドが大気中に解放していて放熱性が高いため、大きな制動力を発揮できるのが特徴です。

油圧ディスクブレーキの種類

油圧ディスクブレーキには大きく分けて、ブレーキディスクの両側にピストンがあるオッポーズドタイプとピストンが片側のみにあるフローティングタイプの2種類があります。オポーズドタイプの方が制動力やコントロール性は高くなりますが、部品点数は多くなります。フローティングタイプは部品点数が少なく、軽量で安価にすることが可能です。

油圧ディスクブレーキの特徴

油圧ディスクブレーキの特徴をドラム式ブレーキと比較しながら説明します。ディスクブレーキでは、ブレーキパッドとブレーキディスクの接触面は平面であり、ピストンに押された力に比例して制動力が発生します。運転者の意図した制動力が得られ、高いコントロール性があるのが特徴です。ただし、自動車において人間の踏力だけでは必要な制動力が得にくいため、エンジンの吸気負圧を利用し油圧を高める倍力装置等で踏力を補助されます。

一方、ドラム式ブレーキは自己倍力作用があり、小さな作動力で大きな制動力が発生します。ただし、小さな踏力でも強い制動力が発生するため、コントロール性は劣るのがデメリットです。放熱性の面でも、ディスクブレーキが優れています。ディスクブレーキでは構造上、ブレーキディスクやブレーキキャリパーが大気に露出しているからです。

中実の板で構成されるソリッドディスクブレーキと、ディスク内部に空洞を設けたベンチレーテッドディスクブレーキがあり、後者の方がより放熱性能が高くなります。ドラム式ブレーキはドラム内部に摩擦部やブレーキシューがあるため、熱がこもりやすく放熱性は良くありません。

また、ディスクブレーキは雨に対しても耐性が高いです。主要部品が外部に露出しているため、水に浸かってもすぐに排水されます。雨によって一時的に制動力が低下するウォーターフェード現象が起きにくいのも特徴の1つです。

参考文献
https://www.akebono-brake.com/product_technology/product/automotive/disc/
https://gazoo.com/column/daily/19/11/17/

油圧ホース

油圧ホースとは

油圧ホース

油圧ホースは、油圧動力の機器において、作動油の流路となるホースです。

油圧動力とは、油圧ポンプがエンジンやモーター等により得られた動力を変換し生み出される動力のことです。小型のポンプであっても大きな動力を生み出せることから主に建設機器等で使用されます。

一般家庭で使用される水道の圧力よりも高い圧力の流路となる為、水道用ホースとは異なり、高い圧力に耐えられるように設計されています。近年では、従来の鉄パイプや剛管などの油圧配管に代替して使用されるケースも増えています。

油圧ホースの使用用途

油圧機器には必要不可欠な製品であり、高圧環境下で使用できるフレキシブルな配管として、油圧ショベルやホイールローダーなどの建設機械、射出成型機やダイカストマシンなどの工場設備において用いられています。

油圧ホースと油圧配管とを比較した場合、油圧ホースの方が柔軟性、軽量にも優れているため自由度が高く、とりわけ小型重機などの狭い空間で配管が求められる場合に用いられることが多く、重要な役割を果たしています。

油圧ホースの原理

油圧ホースは、油圧動力の作動油流路となるホースのため、一般家庭で使用される水道用ホースと比較すると、肉厚なゴム製ホースが採用されています。油圧動力の流路として使用される油圧パイプは、油圧ポンプの回転による振動に起因して、ひび割れなどの疲労破壊が発生します。また、その際のメンテナンスが困難です。

それに対して、油圧ホースは油圧パイプと比べるとメンテナンスが容易です。近年では使用用途や種類により、高負荷に耐えられるホースも生産されるようになったため、油圧ホースが油圧パイプに代替して使用されるケースが増えています。

油圧ホースの選び方

油圧ホースを選択する上で、最低限確認する必要のある項目は以下の6点です。

  1. 使用流体の種類を確認する
  2. 使用流体の流量と流速から、油圧ホースの内径を選択する
  3. 最高使用圧力を確認する
  4. 使用流体の温度と雰囲気温度を確認する
  5. 油圧ホースの取付位置を確認した上で、最小曲げ半径を確認する
  6. 継手金具の種類を確認する

油圧ホースの選択を間違えると、油圧ホースの破損や機械の能力が発揮できない等のトラブルが発生します。過不足のない油圧ホース選定の為には、流体の知識や継手金具の知識、油圧機器の知識などの幅広い知見が必要です。

油圧ホースのその他情報

1. 継手金具について

油圧ホースには高圧負荷がかかるため、専用の継手金具を油圧機器との継手に使用することが一般的です。継手金具の役割は、油圧の高い圧力によってホースが抜けないようにすることです。

例えば、水圧を例に挙げると水道の蛇口にホースを繋いで水を出す場合、蛇口を全開にして高い水圧で水を出すと、ホースと蛇口における水の抜け力に対して、ホースの保持力が負けて、ホースが抜けてしまいます。これを防ぐには、蛇口とホースをバンドで締めたり、ワイヤーを巻いたりすることが必要です。

油圧の場合は水道の圧力よりも高圧になるため、継手金具のニップルとソケットを組み合わせて、構造的に強固にしています。継手金具のメリットは、着脱が容易な点、単体での結合が可能になることでシール等を必要としない点、締め付け具合で角度が自由に調整できるため配管を自在に行える点などが挙げられます。

2. 取り付けとメンテナンス

油圧ホースは柔軟性に優れるため、可動部に取り付ける場合も多いです。機械の周辺機器との接触による破損を十分考慮して設計する必要があります。内部を流れる作動油は高圧状態である為、破損した場合は作動油が高圧で噴出します。作業員に高圧の油が当たると大変危険なため、必要に応じて油圧ホースの保護を行います。

また、油圧ホースの材質は主にゴムとなっており、劣化による破損を防ぐため、一般的には2年に1回の交換が推奨されます。

参考文献
https://electrictoolboy.com/media/37454/
https://yuatsusyuuri.com/about-hose/

油圧ユニット

油圧ユニットとは

油圧ユニット

油圧ユニットはより大きな力を必要とする機械を駆動させるために、一定の圧力を持った油を供給する装置です。

オイルタンクとモーター、ポンプなどが一体となり油を押し出します。まず外部の電動機により油圧ポンプを動かし、そこで伝播した油圧によってアクチュエータ油圧モーター油圧シリンダ)を動かすことで仕事を生み出します。

油の吐出量はアクチュエータの駆動速度や力、大きさ、数によって決まります。また出力される圧力もアクチュエータによって制御することができます。 

油圧ユニットの使用用途

油圧ユニットは多くの建設機械や産業車両、農業機械などの駆動源として利用されています。代表的なものとして、ショベル、フォークリフト、トラクタ、ダンプトラックなどが挙げられます。

また産業機械にも数多く導入されており、製鉄機械や工作機械、射出成型機などの駆動源として使用されています。

こうした大型機械では少ない電力で効率的に力を発揮する必要があるため、油圧ユニットを用いた出力技術は現在の産業分野において必須のものとなっています。

油圧ユニットの原理

油圧ユニットは油圧の力を利用することにより、人力で生み出すことが難しい物理的な圧力を生み出すことができます。

このメカニズムはパスカルの原理によって説明されます。

パスカルの原理は、密閉した容器内に封入された液体に圧力を加えると、その圧力が液体中に等しく伝搬するというものです。

一定の圧力が伝搬するため、液体が触れる断面積が大きいほど、加わる力は大きくなります。

たとえば、断面積が異なる二つのピストンを管でつなぎ、その中に液体を封入します。

ここで断面積の小さなピストンを押し込むと、液中を圧力が伝搬し、断面積の大きなピストンが持ち上げられます。その結果、大きなピストンにはより大きな力が加わることになります。

したがって、たとえ少ない力を加えたとしても大きな出力を得ることができます。油圧機器もまた同様の原理を利用しています。

媒質として油を用いているので、油圧シリンダの形状に応じて、力の方向を自在に変えることができます。配管の分流なども容易です。さらに力の大きさや速度の調整もしやすいといったメリットがあります。 

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0111.html
https://www.housho.co.jp/pages/24/

油圧機器

油圧機器とは

油圧機器は、油圧を使用して動作する装置全般を指します。

多くの場合、油圧ポンプ油圧シリンダアクチュエータ)から構成され、フォークリフトやダンプトラック、トラクタといった大型機械の駆動源として数多く導入されています。

後述するパスカルの原理を利用して、油圧を介してより大きな力を伝達することができます。

ポンプとシリンダを制御することで、加える力の大きさや速度、方向などを調整しやすいという利点があります。 

油圧機器の使用用途

油圧機器は多くの建設機械や産業車両、農業機械などの駆動源として利用されています。代表的なものとして、ショベル、フォークリフト、トラクタ、ダンプトラックなどが挙げられます。

また産業機械にも数多く導入されており、製鉄機械や工作機械、射出成型機などの駆動源として使用されています。

こうした大型機械では少ない電力で効率的に力を発揮する必要があるため、油圧機器を用いた出力技術は現在の産業分野において必須のものとなっています。 

油圧機器の原理

油圧機器は油圧の力を利用することにより、人力で生み出すことが難しい物理的な圧力を生み出すことができます。

このメカニズムはパスカルの原理によって説明されます。

パスカルの原理は、密閉した容器内に封入された液体に圧力を加えると、その圧力が液体中に等しく伝搬するというものです。

一定の圧力が伝搬するため、液体が触れる断面積が大きいほど、加わる力は大きくなります。

たとえば、断面積が異なる二つのピストンを管でつなぎ、その中に液体を封入します。

ここで断面積の小さなピストンを押し込むと、液中を圧力が伝搬し、断面積の大きなピストンが持ち上げられます。その結果、大きなピストンにはより大きな力が加わることになります。
したがって、たとえ少ない力を加えたとしても大きな出力を得ることができます。油圧機器もまた同様の原理を利用しています。

媒質として油を用いているので、油圧シリンダの形状に応じて、力の方向を自在に変えることができます。配管の分流なども容易です。さらに力の大きさや速度の調整もしやすいといったメリットがあります。 

参考文献
https://www.daikinpmc.com/seminar/seminar_01.html
https://www.housho.co.jp/pages/24/