滅菌器

滅菌器とは

滅菌器

滅菌器とは、様々な製品に付着した微生物を死滅させるための装置全般のことです。

特に衛生状態の確保が必要とされる現場において広く用いられています。代表的なものとして、高温高圧の水蒸気を用いるオートクレーブ、高温で乾燥させることによって殺菌する電気式オーブン、エチレンオキサイドガスを用いたガス滅菌器等が挙げられます。滅菌対象物の材質や滅菌コスト、環境負荷などを考慮して最適な方法が選択されています。

滅菌器の使用用途

滅菌器は、衛生的な状態の確保が必要な医療機関や食品製造などの現場、精度の確保が必要な研究所などを中心に、幅広く用いられています。必要とされる滅菌レベルや滅菌するものの材質によって、最適な滅菌方法がメーカーにより推奨されています。

オートクレーブによる滅菌は、他の滅菌方法と比較してランニングコストと所要時間の面で優れているため、医療機関や研究機関などを中心に用いられることが多いです。次いで、高温に強いガラス等を中心に電気式オーブン等が用いられています。

また、耐熱性の低いプラスティック製品やゴム製品等については、エチレンオキサイドガス滅菌器や紫外線消毒器などが用いられています。

滅菌器の原理

代表的な滅菌器に、「オートクレーブ」と「ガス滅菌器」があります。滅菌機の原理から、滅菌対象物の材質により使い分けが可能です。

1. オートクレーブ

代表的な滅菌器であるオートクレーブは、圧力釜のような構造をした滅菌器の内部に対象器材を置き、大気圧以上の環境を一定時間保つことで、2気圧、130℃程度の高温の水蒸気を作り出し滅菌します。オートクレーブは別名で高圧蒸気殺菌器とも呼ばれます。

欧州の滅菌基準 (EN13060) では、滅菌器の性能についてクラスB、クラスS、クラスNの3段階に分類されます。対象器具により、どのクラスで滅菌すべきかが異なります。

  • クラスB
    最高レベルの滅菌が得られます。固形、多孔体、中空、非包装、などあらゆる器具に対応可能です。
  • クラスS
    クラスN滅菌対応可能なメーカー特定商品で滅菌できます。
  • クラスN
    非包装の固形器具に使用可能な滅菌です。滅菌後は保管せず、早期に使用しなければなりません。大多数の医療機関で使用されている最も一般的なタイプです。

大気圧下で100℃の水蒸気による煮沸消毒を行った場合、クロストリジウム菌など一部の微生物は生存しますが、120℃の高温水蒸気は高い熱エネルギーを持ち、加水分解反応を促進するためこれらの微生物も死滅させることができます。加えて電気オーブンなどよりも低温での滅菌が可能なため、高温に弱い素材にも利用できます。また、精製水が利用されていて、排出されるのは熱と水蒸気だけとあって、人体への影響が少ないことも特長です。

2. ガス滅菌器

ガス滅菌器は、高温に特に弱い素材に用いられます。高温の代わりにエチレンオキサイドの持つ高い求核作用を利用しており、微生物がエチレンオキサイドに暴露することで、タンパク質や核酸にアルキル化反応を起こして変性させ死滅させます。

エチレンオキサイドは微生物のみならず、人体にも影響を及ぼすため、作業環境の管理、および適用する機材の選別が必要です。対象となる器材について、滅菌のレベル (クラスB、S、N) 、滅菌する器材の大きさ、滅菌方法、導入設置費用、設置場所、ランニングコストなどから検討すると良いです。

滅菌器のその他情報

殺菌・除菌・消毒との違い

滅菌とは、生存している病原微生物 (芽胞菌も含む) 、非病原微生物を問わず、全ての微生物に対して生存する確率が 100万分の1以下になることをもって定義されます (「医療現場における滅菌保証のガイドライン2021」より) 。

滅菌と似たような用語に殺菌、除菌、消毒があります。混同されがちですが、それぞれ定義が異なります。

  • 殺菌
    単に微生物を殺すという意味で一般に広く用いられる言葉です。殺す対象や程度が含まれないため、微生物を減少させれば「殺菌」と言えます。また「滅菌」は器材など物品を対象とする場合に使われ、微生物そのものを対象とするときには殺菌が使われます。
  • 除菌
    物理的・化学的・生物学的作用により、対象物から増殖可能な細菌数を減少させることを指します。
  • 消毒
    人に有害な病原細菌を殺したり、病原体を不活化 (死滅させること) させることだけを指します。

それぞれ、菌をどの程度減らすかによって、異なる対応が必要です。

参考文献
https://www.as-1.co.jp/academy/21/21-3.html
https://m-hub.jp/biology/2798/183
http://kkiki.jp/eog.html
https://amethyst.co.jp/1735/

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