油圧チャックとは
油圧チャック (英: hydraulic chuck) とは、油圧の力を利用して加工物や工具を固定する装置です。
パワーチャックとも呼ばれており、油圧で開閉させます。一般的に中空の油圧チャックが多く、中心部は貫通穴となっています。その内部に棒状の加工物の固定が可能です。
工具を固定する油圧チャックは、ハイドロチャックと呼ばれ高精度の加工に使われます。油圧を利用することで、強力に固定できます。
油圧チャックの使用用途
油圧チャックは、旋盤やフライス盤などの工作機械に主に搭載され、加工物を固定するために使用されます。具体的には、エンドミル・超硬ドリル・バニシング・リーマ加工などです。
その結果、高速で油圧チャックを回転させても、運動を安定して継続することが可能です。中心に固定されたドリルで穴を開けたり、固定された加工物の表面を削ったりすることができます。
主要な工作機械の一部に必須の部品として使用されます。また、工具の固定用の油圧チャックは、各種工作機械で高精度の加工用です。
油圧チャックの原理
油圧チャックは油圧の力を利用し、「パスカルの原理」に基づいて固定力を発生させます。パスカルの原理とは、密閉した容器内に封入された液体に圧力を加えると、その圧力が液体中に等しく伝搬する原理です。多くの油圧機器は、この原理を利用しています。
一定の圧力が伝搬するため、液体が触れる断面積が大きいほど、加わる力は大きくなります。断面積が異なる2つのピストンを管でつなぎ、断面積の小さなピストンを押し込むと液中を圧力が伝搬し、もう一方のピストンが持ち上げられる仕組みです。
その結果、断面積の大きなピストンにはより大きな力が発生します。
油圧チャックの種類
1. 加工物用油圧チャック
加工物を固定する油圧チャックには、固定する爪の数により、2爪、3爪、4爪があります。また、爪を使わないコレットタイプがあります。さらに、インデックスチャックも使われます。
2爪油圧チャック
2爪油圧チャックは、構造が比較的簡単で、バルブ・管接手等の異形物の把握に最適です。
3爪油圧チャック
3つの爪が同時に動いて締め付けます。加工物を主軸の中心と一致させる求心作用があり、NC旋盤などに多く使用します。
4爪油圧チャック
各爪を独立に半径方向に調整できるもので、角材や異形物など非軸対象の加工物を固定するときに使います。
コレットタイプ
コレットにより加工物を固定します。加工物を包み込むように掴み、接触面積が大きいので、加工物への影響が少ないのが特徴です。棒材などの固定に使用します。
インデックスチャック
加工物を45度や90度自動旋回が可能なチャックです。加工工程ごとに加工物の脱着が不要なので、効率的な加工ができます。バルブや接手の加工に使用されます。
2. 工具用油圧チャック
工具を固定するチャックは、工具ホルダとして使用されます。スタンダードタイプから荒加工にも対応する高剛性タイプがあります。また、干渉を考慮した細身形状のスリムタイプもあり、マシニングセンタから旋盤まで広く使われます。
油圧チャックのその他情報
1. 加工物の固定
加工物の固定用の油圧チャックは、回転シリンダ等を使用して、油圧を加工物を固定する爪に伝えて、固定力を発生させます。シリンダの油圧力は軸方向の力であり、くさび機構やスクロールなどにより、爪を半径方向の力に変えて加工物を固定します。
中空パワーチャックの場合は、中心部が貫通穴となっており、その内部に棒状の加工物を通すことが可能です。その際、油圧により爪を出すことで加工物を強力に固定できます。また、近接スイッチを使用することで、爪の開閉や常時内部圧検知の確認が可能です。
2. 工具の固定
工具の固定用の油圧チャックは、小径のスピンドルをねじで締め込むことで、ドリルなどの工具を油圧で締め付け、固定する工具ホルダーです。チャッキング精度は、刃径の4倍の位置で、工具先端の振れ精度が3µm程度です。
安定した高精度を容易に実現できます。また、操作が簡単で熟練度を要しなく、誰でも同じ精度が得られます。工具寿命が良化するのもメリットです。油は封入されており、油の補給は不要となっています。