電磁流速計とは
電磁流速計 (英: electromagnetic flow meter) とは、電磁誘導の物理法則を使って流速を測定する測定器です。
従来の計測機に取り付けられたプロペラの回転を利用する方式と比べて、電磁流速計は故障するリスクが軽減されて取り扱いが容易になっただけでなく、微流速から高流速まで幅広い流速に対応できます。ただし、測定原理上、電磁流速計の測定対象は導電性の液体に限られます。
油などの絶縁性の液体や気体の測定はできません。電磁流速計は、センサ部分、尾翼部分、重錘部分などから構成されています。各部分を整流効果の高い形状にすることで流れが乱れないため、正しい流速の測定が可能です。
電磁流速計の使用用途
電磁流速計は、主に河川や湖沼、水路やダムなど水の流れが生じている場所で、水流の流速を正確に計測するために使用されます。
流速の計測により、水害の防止や河川調査、海流・潮流調査、橋梁建設、雨水、下水、汚水、養殖・海洋生物の研究など様々な分野で活用されます。電磁流速計は電磁海流計とも言われ、表層海流の流速を測定する海洋測器として用いられます。
電磁流速計の原理
電磁流速計は、ファラデーの電磁誘導の原理を利用して水流などの流速を計測します。ファラデーの電磁誘導の法則とは、「磁界を導電体が横切って運動する場合、その導電体に電圧が生じて電流が流れる」という法則です。
地球の磁場を流れる水流には、電磁誘導によって電流が生じています。同じように、電磁式流速計を河川や海洋などの水中に入れて磁界を発生させ、その磁界を導電体である水が流れることにより、流体に対して電磁誘導が生じることで起電力が発生します。その起電力と水流の流速は、比例の関係になるため、電位差から流速を測定することが可能です。
電磁流速計は、高圧線や河川の底の石・金属類などにより、ノイズが入ることが一般的です。しかし、電磁流速計が作り出す磁界の範囲を狭め、集中的で強力なものにすることで、ノイズの防止ができます。
電磁流速計のその他情報
1. 電磁流速計の長所
広い測定条件
水深3cm程度から測定が可能です。また、0.1m/s以下の微流速から、6m/s以上の高流速まで、流速の広い範囲の測定ができます。さらに、液体の温度・圧力・密度・粘度の影響がありません。
高精度・高信頼性
流速の測定精度は微流速から高流速まで、±0.3~2%程度です。電磁流速計は、プロペラ式流速計と比較して、センサー部に可動部がないので、故障が少ないです。
また、付着物がなく、メンテナンス性に優れています。測定器による圧力損失は無視可能で、固体・気泡などの混入物があっても測定できます。
データ処理が容易
測定データは本体メモリーに記録でき、後でパソコンに転送して、データ処理が可能です。
2. 電磁流速計の短所
導電性の液体に限定される
電磁流速計は、導電性液体の流速測定に限定されます。導電率が5μS/m以下の低導電率の液体は測定できませんが、センサー部が静電容量形の電磁流速計は液体中の起電力を測定するので、流速測定が可能です。
誤動作が起こりやすい
電極付着やライニング付着による誤動作が起こりやすいことが短所です。また、河川などで使用する場合、川底の石や金属異物などによる誤動作が発生することがあります。高圧線の近くでは、ノイズが入ってしまう可能性も高いです。
3. 電磁流速計による低流速の測定法
河川での低流速の測定法として、1点法、2点法、精密法などが行われています。
1点法
1点法は、流速計測線上の鉛直方向に、水面から水深の60%の位置で流速を測定する方法です。水深が75cm以下のところで多く使用されます。
2点法
2点法は、流速計測線上の鉛直方向に、水面から水深の20%と80%の位置で流速を測定する方法です。水深が75cmより深いところでの測定に使われます。
精密法
精密法は、流速計測線上の鉛直方向に、水面より20cm間隔で流速を測定し、その平均値を流速とする方法です。
参考文献
https://www.jfe-advantech.co.jp/products/ocean-ryusoku.html
http://www.dentan.co.jp/technology/denji_ryusoku.html
http://www.hicon.co.jp/product/fh950.html
https://www.kenek-co.com/ryusokutop.html
https://sooki.co.jp/rental/product/detail/37602/