パワーIC

パワーICとは

パワーICとは、大電力回路に使用されるパワー半導体を内蔵する集積回路 (IC) の総称です。

パワー系半導体にはパワートランジスタパワーMOSFETIGBTなどがあります。半導体材料の中で、1Aを超える大電流を制御する電子部品をパワー半導体と呼びます。パワー半導体には、トランジスタやサイリスタなどの電子部品も含まれます。

パワーICの使用用途

パワーICは産業用として広く使用されています。

以下がパワーICの使用用途です。

  • 太陽電池の駆動モジュール
  • LED照明の点灯回路
  • 電動自動車の制御用ユニット
  • インバータエアコンのインバータユニット

特に車載ユニットの需要向上が凄まじく、今後パワーIC市場は拡大すると予想されています。

パワーICの原理

パワーICは電圧を制御し、モータの駆動や蓄電池への充電を実現します。電源や電力を制御する中心的な半導体で、AC/DC変換や直流電源の昇圧を目的としています

基本的に半導体素子の整流作用や、コンデンサの特性を利用する場合が多いです。半導体素子を使用して電源を高速スイッチングしたり、コンデンサで増幅・平滑化したりすることで電源を制御しています。

パワーICのその他情報

1. パワーICの制御対象半導体

パワーICが内蔵する半導体には以下のような素子が挙げられます。

ダイオード

  • 一般整流ダイオード
  • ファストリカバリダイオード
  • ショットキーバリアダイオード
  • ツェナーダイオード

トランジスタ

最近では耐圧が高く高速スイッチングに優れたシリコンカーバイド (SiC) を使用したものもあります。その他、トランジスタや高耐圧ドライバーなどの各種ICを1パッケージに内蔵したインテリジェントパワーモジュール (IPM) も存在します。

2. パワーIC市場の将来性

2020年7月20日、矢野経済研究所はパワー半導体の世界市場予測を公開しました。同社は2020年1月~6月にかけて、半導体メーカーなどへのヒアリングや文献調査から、2025年には243億5100万ドルにまで市場が成長すると予測しています。

パワー半導体の需要分野は「情報通信」、「民生」、「産業」、「自動車」の4つに区分されます。特に情報分野については5G基地局などのインフラ機器への投資が進むと見られています。

また、従来半導体と比較してパワー半導体はコスト的に不利です。コスト競争の厳しい自動車分野では、限られた領域にのみ使われてきました。近年では、一部のEVでモーター駆動用インバータにパワーICが採用されています。結果として、2019年の自動車分野では2018年と比較して約2倍にまで成長しています。

民生や産業分野でも、コロナ禍の低迷から2022年には従来と同程度の市場規模へ回復しました。さらに2023年には成長に転じると予測されます。

3. パワーIC材料としてのSiC

SiC (シリコンカーバイド) はシリコンと炭素から構成される化合物半導体です。

絶縁破壊電界強度がSiの約10倍、バンドギャップがSiの約3倍あり、次世代のパワー半導体材料として期待されています。これは同じ耐電圧であればSiよりも10倍ほど半導体層を薄くできることを意味します。薄型化によって抵抗が低減され、低消費電力で動作させることが可能です。

つまり、パワーIC材料としてSiCを使うことで、従来と比較して低消費電力かつ高耐圧なICを作成できる訳です。その他パワー半導体材料としてGaN (ガリウムナイトライド) やGa2O3なども期待されています。

参考文献
https://www.shindengen.co.jp/products/semi/column/basic/semi/power_semi.html
https://www.fujielectric.co.jp/products/semiconductor/about/
https://eetimes.jp/ee/articles/2007/28/news027.html
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/semicon/1219080.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です