リニアスケール

リニアスケールとは

リニアスケールとは、直線上の位置や移動距離を高精度で測定して電気信号として出力する装置です。

リニアエンコーダと呼ばれる場合もあります。リニアスケールは移動量の基準によって2種類に分けられます。絶対位置からの移動量を計算するアブソリュート式と、絶対位置を持たず移動距離のみで計算を行うインクレメンタル式です。

リニアスケールで用いられる位置の検出方式には、電磁誘導を利用した電磁式検出器と、光源からの光をコードホイールを透過させて読み取る光学式検出器の2種類が存在します。両者を比較すると、電磁式の方がやや広く利用されています。

リニアスケールの使用用途

リニアスケールの使用用途は、工作機械や半導体製造の分野などです。工作機械等に組み込んで、機械動作の際の移動量等を読み取り制御を行ったり、半導体部品の検査装置に組み込んで測定したりします。特に測定の精密さが求められる分野で活躍しています。

電磁式のリニアスケールは構造が簡単なことから、より一般的な用途で用いられる場合が多いです。代表的なものとして、デジタルノギスが挙げられます。デジタルノギスは2点の長さを測定する計測器ですが、汎用性が高いため多くの製造現場で使用されています。

リニアスケールの原理

電磁式のリニアスケールの原理は、物理学における電磁誘導によるものです。具体的には、メインスケールと検出器にはそれぞれコイルが内蔵されており、2つの距離の変動量に応じた起電力が発生します。移動によって生じた起電力を測定し移動距離に変換することにより、間接的に距離を測定します。

電磁誘導式のリニアスケールは簡単な構造で汚れ等の付着にも強く、多くの場合に用いることができますが、磁場の発生している環境には不向きです。光学式のリニアスケールの原理は発光素子からの光を照射と、反対側に設置した受光素子による光の感知によるものです。

発光素子と受光素子の間には固定されたメインスケール、及びレチクル格子部分が挟まれています。メインスケールとレチクル格子部分にはスリットが刻まれており、スリットにより干渉縞を発生させ、それを電気的に変換することによって位置を求めます。

光学式リニアスケールは電磁式と比較すると高精度の測定が可能であり、磁場の影響も受けにくいのが特徴です。逆に精度を高くするに従って場合やや構造が大型になり、また表面への外部光が照射された場合、影響をやや受けやすい傾向があります。

リニアスケールのその他情報

1. リニアスケールの使い方

リニアスケールは半導体製造装置や工作機械などで精密な位置制御をするにあたり、物体を移動させるためのアクチュエータとそのアクチュエータの精密な位置を検出する検出手段として用いられます。現在、精密な位置検出をする方法としてレーザー干渉計エンコーダもあります。

アクチュエータを設計する際には、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向の直線運動を基本に、3軸を合成した空間移動によってアクチュエータが構成されるのが一般的です。そのため、直線的な精密位置検出を行えるリニアスケールが採用されます。可動部と固定部にそれぞれスケールと検出器を設置し、距離を精密に検出することが可能です。

近年は半導体の急速な進歩があり、ムーアの法則に応じて高集積化が進み、半導体産業は発展を続けています。今の半導体産業の進歩は様々な電子機器へ波及しており、各種製品の電子制御化や高精度化が進んでいる状況です。高集積化、高密度化が進むにつれ、半導体をつくる製造装置や機械部品を精度よくつくる工作機械などの位置検出精度も高精度化が重要です。

2. リニアスケールの取り付け

リニアスケールは高精度に位置の測定をできるため、工作機械や半導体製造の精密機器に多く用いられています。中には、ミクロンオーダーやミクロン以下の分解能を持つものもあります。

リニアスケールにおいて高い検出精度を保つためには、設計する際に取り付け方法や取り付け精度が重要です。リニアスケールの性能を出すため取り付け精度は、各製品やメーカーの取り扱い説明書に記載されています。取り付け方法に関しては、リニアスケールを取り付ける装置の構造などにもよるため、設計者による考慮が必要です。

リニアスケール自体の精度がミクロンオーダーのため、一例として取り付け精度がセンサとスケールの距離、ヨー、ロール、ピッチそれぞれに対し1mm以下の精度を求められます。場合によっては、取り付け用の精密治具の設計・製作や、取り付ける際に人の手による調整などが都度必要です。

参考文献
https://ekuippmagazine.com/measuring/riniascale/
https://www.mitutoyo.co.jp/new/report/no261/trend/index.html
https://ednjapan.com/edn/articles/1204/19/news006.html
http://www.encoder-world.com/products/linear-encoder/precizika-method.html
http://kikaikumitate.com/post-11935/
https://core.ac.uk/download/pdf/145776997.pdf

レベルゲージ

レベルゲージとは

レベルゲージ

レベルゲージとは、液体や粉体などの容器内のレベルを計測・表示するために使用される装置です。

産業プロセスにおいて、正確なレベルの監視は重要な要素です。レベルゲージは液体や粉体の漏れや過剰な充填を検知するために使用されます。これにより、事故や環境への悪影響を予防することが可能です。

また、材料の正確な監視と制御も可能で、材料の無駄や過剰な使用が避けられるため、コスト削減につながります。ただし、レベルゲージの測定は一定の原理や技術に基づいています。各タイプのレベルゲージには特定の制約が存在するため、適切なレベルゲージを選択して制約を理解しておくことが重要です。

レベルゲージの使用用途

レベルゲージは、さまざまな産業用途で使用されます。特に、直接目視ができないタンク内の液体残量の確認などに使用されることが多いです。

レベルゲージは、ボイラーに使用されることがあります。ボイラーは、水や蒸気を生成するための装置であり、正確なレベル制御が重要です。ボイラーの適切な水位管理は、安全性と効率性の確保に不可欠です。

また、液体燃料タンクに使用されることもあります。正確な燃料レベルの監視を行うことで、燃料供給制御や管理が容易になります。荷受量・荷卸量確認のために使用されることも多いです。

また、自動車向けのオイルレベルゲージは、必要な際にタンクに差し込んで使用する場合があります。エンジンオイルのレベルを目視するために使用されることが多いです。レベルゲージによって、ドライバーや整備者にオイル補充・交換を促します。

レベルゲージの原理

レベルゲージは、液体や粉体のレベルを測定するために物理的な変化を検出することが多いです。さまざまな原理や技術が使用されますが、いずれも物理的な変化を目盛などで検出することでレベルを推定します。

特に、ガラスゲージ式などのレベルゲージは物理学におけるパスカルの原理を応用しています。パスカルの原理とは、圧力が液体や気体に均等に伝わるという原理です。パスカルの原理によれば、液体中の圧力は液位に比例するため、液体の高さが増えると液体の圧力も増加します。

流体がある一定の量まで入ったタンクは、境界面において圧力が平衡の状態にあります。このタンクにレベルゲージを接続し、一部の流体がゲージ内に流れ込みます。すると、タンク内の液面とゲージ内の液面が等しい高さとなります。

タンク内を直接確認することが不可能であっても、この原理を利用することによってタンク内の液面高さを確認することが可能です。

レベルゲージの種類

レベルゲージには多くの種類があります。特にガラスゲージ式やフロート式が代表的です。

1. ガラスゲージ式

ガラスに入った液を目視で確認するレベルゲージです。透明なガラス管が使用され、液体がガラス管内に上昇することでレベルを表示します。

ガラス管はタンクに取り付けられ、液体がタンク内で上昇および下降するとガラス管内の液体レベルも変化します。使用者はガラス管の目盛りやマークを確認することで、液体のレベルを把握することが可能です。

シンプルで信頼性が高く、視覚的な監視が容易です。ただし、高温や高圧、腐食性のある液体には適していない場合があります。これらの液体で使用すると、ガラスが破損・腐食することがあります。

2. フロート式

浮遊体 (フロート) が液体のレベル変化に応じて上下に移動し、それを検出することでレベルを測定するレベルゲージです。フロートには磁性体やワイヤが取り付けられており、タンク内のレベルに合わせて上下に移動します。

フロートの位置を検出するための磁性センサーが配置されている場合は、マグネットフロート式と呼びます。非接触型であるため、高温・高圧または腐食性のある液体などの厳しい環境でも使用することが可能です。

ただし、フロートに流体が付着する可能性があり、粘着性流体や汚泥を含む場合にはやや不向きです。

参考文献
https://www.klingage.co.jp/expound.html
http://www.nihonkeiki.com/ekimenkei/
https://car-moby.jp/article/car-life/automobile-inspection-maintenance/about-the-oil-level-gauge/

ロータリー研削盤

ロータリー研削盤とは

ロータリー研削盤とは、回転する丸いテーブルに加工対象物であるワークを置き、砥石で研削を行う機械のことです。

ロータリー研削盤の特徴として、比較的面積の大きいワークの研削に適していること、多数のワークを一度にテーブルに置いて研磨可能な研削機であることが挙げられます。一般に平面研削では、研削盤が左右に動作することで研削しますが、研削盤が回転するタイプは、ロータリー研削と呼んで区別しています。

ロータリー研削盤の使用用途

ロータリー研削盤は、比較的大きな断面積を有するワークの研削を一度に複数個、効率よく実施したい場合に用いられています。具体的なワークは、大量の基板やウエハ、プレートなどです。

ただし、ワーク研削に関する処理能力は、ロータリー研削盤のテーブルの大きさや回転する砥石の大きさにも大きく依存するため、各メーカーの仕様をよく確認することが大切です。

ロータリー研削盤の原理

ロータリー研削盤の原理は、大きな回転する丸テーブルの上に、複数のワークを並べて設置し、上面からダイヤモンドカップなど回転する砥石をあてることにより、ワークの上面の広い面を一度に研削していく工法にあります。

この工法の場合は、比較的ワークの研削面積を大きく確保できるため、左右に動作することで研削を進める通常の平面研削などと比較して、効率よく短時間で処理することが可能な研削手法です。

ただし、欠点として精度を出すのが比較的難しい研削手法であること、ワークのセットなどの研削の前準備に時間を要する場合があることが挙げられます。しかし、一度に大量に処理可能な研削盤であるため、ロータリー研削盤を使う場合には、その目的や用途に応じた研削盤の使い分けが必要です。

ロータリー研削盤のその他情報

1. 研削と研磨の違い

一般に「研削」とは、物理的にワークの表面を削って物質を落としていく工程を指し、「研磨」はワークの表面を磨きこんで、その鏡面を出していく工程を意味します。ただし、業界によっては両者を区別せずに用いている場合もあり、その場合は研磨という用語が研削を包括する形で用いられているのが一般的です。

研磨に固有である鏡面を磨きだす工程は、ラッピングやバフ工程などともいわれ、砥石のみならず、独自の研磨剤を活用することが多いです。

2. ロータリー研削盤とラップ盤の違い

複数のワークを回転するテーブルにセットして削っていく機械という点では、ラップ盤もロータリー研削盤とその構成は同じです。しかし、ワークの研磨の精度を高めて鏡面レベルに仕上げる必要がある場合には、ラップ盤が多く使用されています。

ラップ盤はワークを上下のRefとなる定盤で挟んで、「3面すりあわせの原理」でその平面の精度を上げていく工法を有します。また、液体研磨剤を流し込んで磨き上げる点が大きな特徴であり、ロータリー研削盤でのワーク加工の工法との違いです。

しかし、この工法には研磨仕上げの加工に手間と時間を要するため、ロータリー研削盤のような短時間での大量処理には向いていないのが実態です。

3. 次世代ロータリー研削盤での研削精度改善の事例

ロータリー研削盤のメーカーの中には、その技術革新に伴い、ロータリー研削盤でありながら、ラップ盤の精度を実現することを目指した次世代の上位機種を取り扱っているメーカーもあります。その機構は非常に複雑ですが、ロータリー研削盤での特徴を有しながら研削精度を上げ、鏡面レベルに仕上げるために、次のような改善事例を適用しています。

  • 熱影響を受けないチャックである永久電磁石をワークセット後に作動
  • 砥石の削り量をモニタしFBする機能を搭載
  • ワークを搭載するテーブルを非常に高精度で傾き制御する技術を適用

ロータリー研削盤ならではの研磨というよりは、研削に近い加工スピードと作業性を有した次世代のロータリー研削盤の事例です。

参考文献
https://daimei-k.com/dictionary/

円筒研削盤

円筒研削盤とは

円筒研削盤

円筒研削盤とは、円筒状の工作物の外径を回転する砥石で研削する工作機械です。

基本的な構造は、ベッド上にボールネジサーボモーターによるスライド機構で、前後方向に摺動する砥石台を設けます。そして、左右方向には、任意の位置に往復運動できるテーブルがあります。

テーブル上の左端にある主軸台と右端にある芯押し台により、工作物はセンタ支持され、回転します。砥石台が前進することで、工作物に回転する砥石が当たり、研削されます。

円筒研削盤の主な用途は、円筒形状軸類の外面の精密加工です。

円筒研削盤の使用用途

円筒研削盤は、主に機械部品・自動車部品・電子部品などの円筒軸、段付き軸、テーパ軸などを研削砥石で加工する際に使用されます。円筒形状の加工物を両端センタ支持により、外面を研削するのが特徴です。

円筒研削盤は、高精度に仕上げられる点がメリットとして挙げられます。また、両センタ支持であるため、外径部に溝などの加工部がある場合や真円度や円筒度が良好ではない場合でも、その影響を受けることはありません。

円筒研削盤のデメリットは、製品の脱着などに時間を要することです。そのため、大量生産には、センターレス研削盤が優位になります。円筒研削盤は、少量多種生産に向く研削機械であり、複雑な形状や高い精度を要求される工作物に多く使用されます。

砥石台と加工物を固定するテーブルを旋回テーブルに乗せ、円筒研削の他、内面研削やテーパ研削、端面研削などが行える万能研削盤もあります。

円筒研削盤の原理

円筒研削盤の研削方法は、大別すると3種類あります。

1. トラバース研削

トラバース研削は、テーブルを左右に動かして砥石を切り込んで研削する方法です。加工物を移動することにより、砥石幅に対して長物の円筒物を研削できます。

また、往復しながら研削することで、面粗さが向上します。通常は、テーブルの折り返しや往復ごとに、砥石軸の切込みを一定量行います。

2. プランジ研削

プランジ研削は、研削位置にテーブルを移動させてから、工作物に対して砥石を切り込む研削方法です。研削時は、テーブルの移動を行いません。

研削可能な範囲は砥石幅に依存しますが、研削力が伝わりやすく効率良く研削を行うことができます。

3. アンギュラ研削

アンギュラ研削は、砥石軸をテーブルに対して角度を付けた位置にセットし、工作物に対して、斜め位置から切り込む研削方法です。段付きなどの円筒形状の外径と両センタに対して、直角方向の端面部を同時に研削することが可能です。

全ての研削方法に共通しますが、切込み完了後、切込みを行わずに、砥石と工作物をゼロ距離で研削するスパークアウトを一定時間行います。これにより、面粗さや真円度など、精度を向上させることができます。

円筒研削盤のその他情報

1. 円筒研削盤と旋盤の違い

円筒研削盤と同じく円筒形の外径を加工する際に、旋盤も使用されます。旋盤は加工物が回転しながら固定された刃物を接触させて加工します。それに対して、円筒研削盤は、加工物が回転しながら砥石も高速で回転し、砥石で加工物を押し当てて加工する点が大きな違いです。

また、一度で削れる量も異なり、旋盤は荒加工で削る量がより多く、その分早く荒加工が終わります。一方で円筒研削盤は、旋盤に比べて削れる量が少ないため、荒加工に使うには効率が悪く、砥石の摩耗も進みます。

さらに、焼き入れ鋼や高硬度鋼などの硬い材料を加工する場合、旋盤では刃物のチップが金属の硬度に耐えられず、すぐに摩耗したり欠けたりします。また、良好な面粗度や寸法精度が得られないことも問題です。研削盤の場合は、高硬度の加工物であっても加工が可能なため、焼き入れ後の最終仕上げ加工に適しています。

2. 円筒研削盤の精度

砥石は砥粒・結合剤・気孔の3つの要素から成り立っており、これらが小さな切れ刃になって徐々に削っていくため、非常に高い精度の加工が可能です。研削盤は1μm単位の精度で加工ができます。

円筒研削盤は、面粗さにおいても、より滑らかで非常に良好な面粗度が得られ、真円度も極めて精度がよく、精密な加工が可能です。また、同じ研削盤でも、芯だしの手間を省いたセンターレス研削盤より、素材をしっかり固定するため、センターレスよりも高精度です。

しかし、加工物が細ければ細いほど、長ければ長いほど、素材がチャッキング時の押し付ける力でたわみ易くなります。そして、たわむと真円度や寸法精度に大きな影響を及ぼしてしまうため、長尺材を高い精度で加工するには、振れ止め装置を用いてたわみを抑制し、素材ごとに工夫しながら加工する必要があります。

参考文献
https://www.shigiya.co.jp
https://www.okamoto.co.jp/cylinder
https://toyoda.jtekt.co.jp/products/machine.html
https://www.kousakukikai.tech/grinder/
https://caddi.jp/

硬さ試験機

硬さ試験機とは

硬さ試験機

硬さ試験機とは、さまざまな材料や製品の硬さを評価するための試験装置です。

硬さ試験方法は、その基本原理によって押し込み試験法と動的試験法に大別できます。押し込み試験法は、硬質の圧子を試験片の表面に押し込み、生じる圧痕の表面積の大きさを測る方法と、圧痕の深さを測る方法の2通りです。圧痕の面積が小さい、圧痕の深さが浅いほど、硬い材料として評価されます。

動的試験法は、ハンマーを一定の高さから落下させて、その跳ね返る高さを測ります。試験片の反発力を試験するで、硬いものほど、高く跳ね上がるという性質を利用した試験方法で、ショア硬さ試験と呼びます。

以上の試験方法を行うために、それぞれ専用の圧子や、圧子に加える荷重、圧痕の測り方などによって種々な硬さ試験機が用いられています。硬さを評価する際には、試験片の大きさ、形状、目的などに応じて、受渡当事者間での取り決めを行い、適切な試験方法と試験機を選ぶことが重要です。

硬さ試験機の使用用途

1. 圧痕の表面積を測る試験法

圧痕の表面積を測る試験法として、ビッカース硬さ試験とブリネル硬さ試験が挙げられます。

ビッカース硬さ試験機
ビッカース硬さ試験機は、金属材料をはじめとした様々な材料を試験します。試験荷重が小さいので、非常に狭い範囲の硬さを評価するのが特徴です。浸炭焼入れや高周波焼入れ、窒化層など様々な表面処理の硬化層深さ、溶接部の硬さの分布などの評価にも用います。

ブリネル硬さ試験機
ブリネル硬さ試験機は、鋳造品や鋳物、鍛造品など表面が粗く不均質な粒子構造をもつ金属材料を試験します。試験荷重が大きく圧痕も大きいので、比較的広い範囲の硬さを平均的に評価するのが特徴です。

2. 圧痕の深さを測る試験法

圧痕の深さを測る試験法では、ロックウェル硬さ試験があります。ロックウェル硬さ試験機は、主に焼入れした金属材料に使用します。焼き入れした金属材料で硬化層の硬さを評価する際には、硬化層の硬さと深さに応じて、適切な試験条件 (スケールとして設定されています) の選択が必要です。

動的試験方法であるショア硬さ試験は、大きな部品や圧延ロールの硬さ試験に使用され、機械工場内の現場でもよく使用される試験方法です。圧痕が目立ちにくいので、製品検査に使用できること、またショア硬さ試験機は小型で、持ち運びができることがメリットとして挙げられます。

硬さ試験機の原理

硬さ試験機の原理は、種類によって異なります。

1. ビッカース硬さ試験機

ビッカース硬さ試験機は、対面角136°の正四角すいのダイヤモンド圧子を、試験片に試験荷重をかけて押し込みます。この荷重によって試験片にできる四角形の圧痕の対角線の長さを、試験機に取り付けられた金属顕微鏡で計測します。

試験荷重はJISでは、10gfから100kgfについて定めています。また1kgf以下で行う試験を、マイクロビッカース硬さ試験といいます。試験機はビッカース硬さ試験、マイクロビッカース硬さ試験でも同じです。試験荷重を変えることによって、どちらの試験も実施できます。基本的には、試験荷重を変えても材質にムラが無ければ、硬さの数値は変わりません。

また、ビッカース硬さ試験は、試験片が手のひらサイズほど以下である必要があります。試験する表面は鏡面研磨も必要なので、硬さを知りたい部分を切り出すことがほとんどです。

2. ブリネル硬さ試験機

ブリネル硬さ試験機は、球圧子という直径10mmの鋼球または超硬合金球を使用します。試験荷重は3,000kgfが多く用いられます。試験面に球分のくぼみをつけたときの荷重を、永久くぼみの表面積で割った値です。

3. ロックウェル硬さ試験機

ロックウェル硬さ試験機は、3段階で荷重を付加します。まず基準荷重を加え、さらに大きな試験荷重を加えた後、再び基準荷重に戻します。硬さの評価は前後2回の基準荷重負荷時における、くぼみの深さの差から求めます。

また、ロックウェル硬さ試験では、複数の試験荷重と圧子の種類の組み合わせによって、スケールが決められています。例えば先端半径0.2mmかつ先端角120°のダイヤモンド円錐を使用し、基本荷重10kgfの場合、試験荷重が60kgfならAスケール、100kgfならDスケール、150kgfであればCスケールです。

また、1/16インチ (1.5875mm) 鋼球を使用し、基本荷重10kgfで、試験荷重が100kgfで行う試験はBスケールに該当します。なお、基本荷重3kgfで、試験荷重15 , 30 , 45kgfで行う試験は、ロックウェルスーパーフィッシャル硬さ試験と呼びます。特 に薄い鋼板などの硬さ試験に使用されます。

現在のロックウェル硬さ試験機は、圧子が交換可能で、それぞれの基本荷重、試験荷重を設定できます。一連の荷重負荷と深さの測定が自動的に行われる点がメリットです。

4. ショア硬さ試験機

ショア硬さ試験は、一定の形状と質量のダイアモンドハンマーを、試験片の上に一定の高さから落下させ、跳ね返りの高さを計測する試験です。ショア硬さ試験機は他の試験機と異なり、非常に小さく電力も使わずに試験ができることが特徴です。

硬さ試験機のその他情報

硬さ試験機の校正

硬さ試験を正しく行うために、硬さ試験機には定期的な校正が必要です。通常は、試験機メーカーのサービスを受けることになります。

また。日々の運用においては、試験片を使った精度確認を行うことが大切です。硬さが保証された標準試験片を用意し、実際に試験を行う前に、標準試験片で正しい結果が得られるのかを確認します。この事前確認で、試験荷重や圧子の選択の間違いに気づくこともできます。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/testing-machine/material/hardness.jsp
https://www.struers.com/ja-JP/Knowledge/

冷間鍛造プレス

冷間鍛造プレスとは

冷間鍛造プレスとは、金属材料の塑性加工方法の1つです。

冷間鍛造とも呼ばれます。なお、金属加工には大きく分けて、以下の3種類あります。

  • 切削加工
    刃物などの工具を使い、削ったり切断したりすることによって大きな塊の材料から、形状に不要な部分を除去する方法です。
  • 鋳造法
    材料を加熱して溶かし、製品の形状を反転させた形に流し込んだのちに冷却して固める方法です。
  • 鍛造
    金属を固体のまま型に叩き込んで、材料に圧力を加えて形状を作る方法です。

冷間鍛造プレスは、鍛造の中でも特に材料を加熱せず、常温のままで金型に叩き込んで成形します。

冷間鍛造プレスの使用用途

冷間鍛造プレスは、特に高い機械的性質が必要な部品の製造に用いられます。自動車部品では動力伝達するための軸部品をはじめ、強度が必要なボルトを含むさまざまな部品の製造に有用です。

自動車部品以外にも電化製品やOA機器の部品、住宅用ドア部品のハンドルシャフトの製造なども用途として挙げられます。

冷間鍛造プレスの原理

冷間鍛造プレスは、大きく縦型プレスと横型プレスに分けられます。冷間鍛造プレスでは縦型プレスマシンが使われるのが一般的です。

クランクプレス・ナックルジョイントプレス・スクリュープレス・油圧プレスといった種類があります。冷間鍛造に適したプレスは、ナックルジョイントプレスです。

1. クランクプレス

クランクプレスは、フライホイールの回転エネルギーをクランク機構を介して、ラムの上下往復運動に変換するプレス機です。板金プレスに適しています。

構造上、ラムが上死点付近における荷重能力は低く、荷重を保持できません。冷間鍛造に使用するためには、下死点付近で一定の負荷を維持できることが望ましいです。

2. ナックルジョイントプレス

ナックルジョイントプレスは、ラムの下死点付近の運動特性を変えるためクランクの回転軸を垂直上に置かず、横にずらしたトグル機構になっています。それにより、下死点付近で下降し、上昇は早くなる動作をします。

 

各メーカにより独自のクランク・リンク機構を開発し、冷間鍛造プレスとして提供されています。大量生産には横型が使用されるのが一般的です。

具体例として、フォーマが挙げられます。フォーマは、ピストン・クランク機構を用いた多段プレス機で、複数のパンチとダイの組を横に並べた生産性の高いプレスです。

ねじの多くはフォーマで成形されたのち、転造という加工方法でねじ形状が作られ、熱処理やめっきなどの表面処理が行われます。

冷間鍛造プレスの特徴

冷間鍛造プレスで作られた製品には、以下のような特徴があります。

1. 機械的性質が高い

冷間鍛造プレスは、塑性加工の1つで金属に圧力を加えて変形させ、鍛流線やファイバーフローラインとよばれる繊維状組織を形成します。繊維が連続していることにより、高い強度や耐摩耗性を得られます。

2. 無駄な材料を使わずに済む

切削加工では機械加工によって除去した材料は、そのままだと無駄になってしまいます。鍛造は除去される材料がないので、材料を無駄にすることがありません。

3. 大量生産に向いている

冷間鍛造では、次々に材料を供給することによって、短時間で大量生産が可能です。1分間に100個程度の製品を生産することもできます。

4. 生産コストが安い

材料を無駄なく使い生産効率も高いことから、生産コストを安くできます。ただし、金型は高価なため、生産コストが安くできるのはあくまでも大量生産した場合です。

冷間鍛造プレスのその他情報

鍛造と圧造の違い

鍛造と類似した用語に圧造があります。鍛造は一般的に上下方向に圧力を加え、圧造では横方向に圧力を加えるものを指すのが一般的です。

なお、鍛造には冷間鍛造以外にも温間鍛造・熱間鍛造があります。材料の温度を高くすれば金属の素性変形抵抗が少なくなり、より複雑な形状にすることが可能です。温間鍛造は、600℃から850℃に加熱し、熱間鍛造は1,200℃程度に加熱して鍛造を行います。

参考文献
https://www.kamine-precision.co.jp/cold-forging
https://www.aida.co.jp/products/list08.html
https://www.byora.co.jp/index/features/index.html

露出計

露出計とは

露出計

露出計とは、写真等の撮影において被写体もしくは環境中の光の強さを測定し、最適な露出値を算出するのに使われる機器のことです。

この機械を用いて測定することを測光と言います。露出計は今日のほとんどのカメラに搭載されており、写真を撮る際に最適な露出を判断することが可能です。

単体の製品も引き続き生産・販売されており、導入のメリットとして被写体の反射率 (明るさ、色など) に左右されず、高い精度での測光が可能なことが挙げられます。

露出計の使用用途

露出計はカメラに内蔵される形、もしくは単体で写真撮影の際の露出値を算出し、適正露出で撮影するために使用します。

露出計は、プロの写真家だけでなく、アマチュアの写真愛好家にも便利なツールです。例えば、風景写真やポートレート写真を撮影する際に、露出計を使用して、被写体の明るさや背景の明るさを調整します。

また、露出計は、被写体が強いコントラストを持つ場合にも役立ちます。例えば、太陽光が直接照射されている場合や暗い部分と明るい部分が同時に写っている場合などです。露出計を使用すると、白飛びや黒つぶれを起こさないように調整することができます。

さらに、露出計は、フラッシュの使用時にも役立ちます。フラッシュを使用する場合には、露出計でフラッシュの明るさを調整することが重要です。フラッシュの明るさが強すぎる場合には、被写体が白飛びしてしまうため、適切な明るさを設定する必要があります。

露出計の原理

露出計の原理は光の測光方式によって2種類に分類されます。

1. 反射光式

被写体から反射される光を検出し、最適な露出を決定する反射光式で、多くのカメラに内蔵されているタイプです。反射光式の露出計では、被写体は全て反射率18%グレーとみなして、被写体からの反射光の強さを計算して露出値を決定します。

撮影位置から測光可能なメリットがありますが、反射率18%グレーを基準としているため、基準から大きく離れた白や黒など極端に反射が高い、もしくは低い被写体の場合、露出を適切に決められないデメリットがあります。

また、カメラに内蔵されている露出計は、測光を行う範囲を設定可能です。

  • スポット測光
    被写体の特定の部分からの光の量を測定し、その部分を基準に露出を決定します。
  • 中央測光
    被写体全体からの光を測定し、その平均値を基準に露出を決定します。
  • マルチパターン測光
    被写体全体からの光を測定し、その情報を元に複数の領域で露出を決定します。

2. 入射光式

単体型のものによく用いられているものが、露出計に入射する光そのものから露出を決定する入射光式です。反射光ではなく絶対的な光の強さから露出を判断するため、被写体の色味に左右されず、目で見たそのままの写真が撮れるといったメリットがあります。

しかし、被写体の場所での測光が必要となるため、原理的にカメラへの内蔵が不可能です。

露出計の選び方

露出計を選ぶ際には、以下のポイントを考慮することが重要です。

1. 撮影対象

撮影対象が風景などのように、被写体の近くで測光することが難しい場合は反射光式の露出計を選びます。ポートレート撮影や商品撮影などのように被写体の近くで測光できる場合は、入射光式の露出計が最適です。

両方のケースが考えられる場合は、反射光式と入射光式のどちらでも測光できる露出計がおすすめです。

2. 表示タイプ

表示がデジタルで行われる露出計は、機能が豊富に搭載されている場合が多いです。しかし、機能が豊富なため、使いこなすには時間と撮影に関する知識が必要となります。

針が指し示した位置で測定結果を表示するアナログタイプの露出計はシンプルな機能なので、初心者でもすぐに使いこなすことができます。

3. 電池のタイプ

露出計は長時間使うものではないので、電池を頻繁に交換したり充電したりすることはありません。しかし、電池残量のチェックを疎かにすると、撮影現場で電池切れになる可能性があります。そのような場合でも、コンビニなどで簡単に手に入る電池のタイプであれば、すぐに対応することができます。

参考文献
https://www.ccs-inc.co.jp/guide/column/light_color/vol26.html
http://shuffle.genkosha.com/technique/lighting/7337.html
https://www.sekonic.co.jp/product/meter/operate/operate.html

リングポンプ

リングポンプとは

チューブポンプ

リングポンプとは、主に食品やインク、オイル、薬液などの液体を移送するためのチューブポンプの一種です。

チューブポンプは、ローラーポンプ、ペリスタルティックポンプなどとも呼ばれています。弾性があるチューブを複数のローラーでしごくことによって、液体を移送するポンプのことです。押しつぶされたチューブが復元する力によって、次の液体が吸入されます。チューブは交換できるので、液体に適した材質のチューブに変えることによって、さまざまな薬液に使えるのがメリットです。一方で連続的にチューブがしごかれるためチューブは消耗品となり、定期的に交換しなければなりません。

リングポンプは複数のローラーの代わりに大きなリングを用いることによってチューブへの負荷を減らし、チューブを高寿命化したポンプです。なお「Ring Pump」は株式会社アクアテックの登録商標になっています。

リングポンプの使用用途

リングポンプが搭載されている機器を、分野ごとに紹介します。

  1. 食品・飲料品関係
    還元水生成器、つゆ・だし供給装置、カップコーヒー販売機
  2. 洗浄・清掃関係
    床洗浄機、温水洗浄トイレ、ランドリー、洗車機
  3. 養殖・栽培関係
    水耕栽培、海産物の養殖関係
  4. 医療・介護関連
    人工透析器、介護浴槽、手指消毒機器
  5. 製造業
    切削油・プレス油供給、高温槽
  6. 印刷業界
    業務用大型印刷機
  7. 研究
    細胞養殖関連、バイオテクノロジー関連、再生医療関連、Micro-TAS関連、宇宙ステーションでの実験装置

リングポンプの原理

リングポンプは、大きな円弧に沿うように配置した弾性のあるチューブを、円弧の内側に回転中心を持つ大きな一つの偏心ローラーでしごくことによって液体を移送します。偏心ローラーによってチューブは、円弧中で1箇所だけがしごかれるのがリングポンプの特徴です。

従来のチューブポンプは複数の小さなローラーでチューブをしごいているため、チューブがしごかれる回数が多いのと、ローラー径が小さいことから、チューブは局所的にしごかれていました。

リングポンプはチューブを1つの大きな偏心ローターでしごくのが最大の特徴です。チューブがしごかれる回数はポンプ1回転で1回のみ、また偏心ローターの直径が大きいため、チューブは緩やかにしごかれることになります。大きな偏心ローターを用いることによって、チューブの寿命を伸ばすことが可能となりました。

リングポンプの構造

リングポンプにはまず、リングポンプ全体を構成するベース (ハウジング) があります。ベースはその他構成部品が収まる大きな円形の窪みと、吸入、吐出となるチューブが通るための切り欠き形状が彫られたものです。

ベースに彫られた窪み形状に、チューブが沿うように配置されます。さらにチューブの内側に収められているのが、偏心ロータと実際にチューブをしごくリングです。

偏心ローターが回転すると、偏心によって中心軸から一番遠い部分に接しているリングが、チューブをベースの壁面との間を押し狭めることによってチューブをしごきます。チューブをしごくポイントがベースの壁面を回るように移動するとともに液体も移動することによって、チューブの吸入口から吐出口へと移動していきます。

リングポンプのその他情報

リングポンプの特徴

リングポンプは、チューブの寿命が長い以外にもいくつかの特徴があります。まず構造がシンプルであり、小型に仕上がるという点が挙げられます。少量の流体を移送するのにも適したポンプと言えます。

また、チューブは常に閉鎖されることから、逆止効果があります。常時閉鎖する構造は自吸効果もあり、呼び水が要りません。なお逆止効果について株式会社アクアテックは、完璧とは言えないため逆止弁の使用を推奨しています。

リングポンプは2連、3連など複数のポンプを繋いで用いることもできます。連結することによって、送り出される液量がポンプの回転とともに連続的に変動する脈動現象を低減させることが可能です。

参考文献
http://www.three-peace.com/product/detail/?lId=5&mId=10
https://www.surpassindustry.jp/

ドリル研磨機

ドリル研磨機とはドリル研磨機

ドリル研磨機とは、ドリル切削能力を維持するために、ドリル刃先面へ研磨加工を行う機械装置のことです。

そもそも、ドリルとは被加工物に対し各種大きさの丸穴を開ける工具を指します。ドリル研磨機では、ドリルを装着した加工機械の主軸を回転させることで、ドリルと被加工物の接触面を削り取り、切り子を排出しながら切削加工を行うことが可能です。

ただし、ドリルの使用時間と共にドリル切削面の摩耗が進行します。そのため、ドリル刃先面へ研磨加工を行い、再利用できる状態にする必要があります。

ドリル研磨機の使用用途

ドリル研磨機は切削加工で使用したドリルを再度利用するために、ドリル刃先面を再研磨する目的で使用されています。ドリルには、ソリッドドリル、付刃ドリル、刃先交換式ドリル、ヘッド交換式ドリルの4種類があります。

ヘッド交換式はさらに、ソリッド、ロウ付け、スローアウェイタイプの3種類に分類できます。ドリル研磨機で使用するのは、ソリッドドリルです。研磨機によって研磨加工可能なドリル径が異なります。

基本的には小径ドリルで活用される場面が多いですが、Φ25~40のドリルでも対応可能な研磨機が存在します。ドリル刃先は、被加工物の材質によって刃先角度を変更する必要があります。特に金属系素材を加工する場合は、一般的に先端刃先角度を118°へ研磨します。

ドリル研磨機の原理

ドリル研磨機へドリル径に適したコレットチャックを選択してドリルを固定します。チャックで固定されたドリルを研磨できる位置へ移動させ研磨機へ固定した後、手動または自動にて刃先研磨を実施します。一般的にドリル研磨に使う砥石は「CBN」砥粒です。

ドリル刃先研磨後、シンニング加工をします。シンニング加工とは、ドリル芯厚部先端へ形状付けを行うことです。シンニング加工を施すことで、ドリルを被加工物へ接触させた時に刃先と被加工物の喰いつき性が向上し、芯ブレを抑制することができるため、垂直な穴加工が可能となります。

ドリル研磨機の加工方法

ドリル研磨機は、切削能力の低下したドリル刃先を再研磨して、再利用するための機械です。シンニング付け方によって、代表的な4つの刃付け加工 (X形、XR形、S形、N形) が可能です。

1. X形

一般的なシンニング形状であり、一般的な素材 (軟鋼、プラスチックなど) に最適です。

2. XR形

X形に比べ喰いつき性が劣りますが、刃先強度が保てるためステンレス鋼など素材硬度と粘性を持つ素材に最適です。

3. S形

シンニングが簡易のため、木材等の加工に最適です。

4. N形

シンニング面が浅く刃先強度が他の形より強くなるため、深穴加工に最適です。

ドリル研磨機のその他情報

ドリル研磨機で加工するドリル

一般的には、ねじれがついたツイストドリルがドリルと呼ばれます。ドリルは切削を担う先端部、切り子を排出するねじれがついたリード部、チャックに取り付けるシャンク部で構成されています。ドリルは切削加工で使うたびに刃先切れ味が悪化するため、再研磨が必要になる場合がほとんどです。

ドリルは高速度鋼と超硬合金が材質に使用されることが多く、また刃先先端に耐摩耗特性があるコーティングを施される場合が多いです。

参考文献
https://www.semi-drycut.com/products/?id=1434675270-631146
https://www.ni-co.jp/ec/products/list.php?category_id=20
https://sakusakuec.com/shop/pg/1drill04/

ジュラコンブッシュ

ジュラコンブッシュとは

ジュラコンブッシュとは、ジュラコン®という樹脂素材で成形されたブッシュ (軸受) のことです。

ジュラコン®とは、POM (ポリアセタール樹脂) と呼ばれるエンジニアリングプラスチックの一つであり、ポリプラスチックス株式会社の登録商標です。結晶性の樹脂であることから摩擦係数が非常に小さく、軸受に適した特性を多くを有しているため、回転あるいは直動する軸の支持や固定に使用されます。

またブッシュはベアリング玉軸受)と比較して、コスト面や設置の容易さ、軽量化・省スペース化できる点が利点です。

ジュラコンブッシュの使用用途

ジュラコンブッシュは、潤滑油が使えず軸受としては比較的軽い荷重を支える軸受に用いられます。例えばミニ四駆や玩具の軸の固定や家電製品、自動車の各部可動軸の固定などが主な使用例です。

ジュラコンブッシュはベアリングと比較して摺動抵抗が大きく耐荷重も小さい反面、低コストで入手でき、追加のスペースをほとんど必要としません。はめあいや潤滑剤の付与などの据付や保全についても簡略化できる点から、構造の簡易化・低コスト化を図る多くの業界から注目されています。

ジュラコンブッシュの原理

プラスチックは一般的に結晶性が高いほど、摩擦係数が小さくなります。ジュラコン®(POM)は結晶性の高い樹脂であるため摩擦係数が非常に小さいこと、さらに摺動性、耐クリープ性、耐摩耗性、耐疲労性、寸法安定性などが特徴的な樹脂です。

ここで樹脂の結晶性について解説します。まず樹脂 (プラスチック) は結晶性樹脂と非結晶性樹脂に大別されます。樹脂は分子レベルで見ると、ポリマーという長いヒモのように連なった分子が絡み合った構造をなしたものです。樹脂は溶けた状態においては、結晶性樹脂、非結晶性樹脂ともに分子は自由に動けますが、冷えて固まると動けなくなります。冷え固まった時に分子が規則正しく整列した部分が存在するもの結晶性樹脂と呼びます。

結晶性樹脂は一般的に摩擦係数が低いこと、耐摩耗性が高いこと、さらに耐薬品性も高いのが特徴です。見た目では透明性は低くなります。これら結晶性樹脂の特徴に加えて、ジュラコンは耐クリープ性、耐疲労特性、寸法安定性なども良好なことから、ブッシュとして用いられています。

一方で非結晶性樹脂l特徴は透明度が高いこと、また樹脂としては寸法精度が良好であることなどが特徴です。

ジュラコンブッシュのその他情報

1. ジュラコンブッシュの長所

ジュラコンブッシュの長所は無給油で使えること、軸受部品として軽量で安価に仕上げられることなどが挙げられます。

軸受として摩擦係数を低減させるためには、金属製のボールベアリングやローラーベアリングが優れており、少ないスペースで高荷重を支えるなら金属製のブッシュが優れています。しかし金属製の軸受は価格が高かったり給油が必要、スペースも比較的大きくとらなければなりません。ジュラコンブッシュのような樹脂ブッシュであれば、安価に大量生産でき、設置スペースもコンパクトに収めることができます。給油をしなくても使えるのは、実際に製品を使うユーザーにとっては大きなメリットです。

2. ジュラコンブッシュの短所

他方で短所としては、分子構造に酸素を含むため燃えやすい点、耐候性が低い点、接着性が悪く接着剤を用いた接着ができない点 (溶接は可能) 、強酸には耐えられない点などがあります。したがって、防爆指定エリアや屋外での使用、強力な溶剤や洗浄剤を使用する環境における材料選定の際には注意する必要があります。

また耐熱性については、ジュラコン®はグレードにもよりますがおおむね100℃程度までは変形することなく使用できます。よって熱湯程度であれば問題有りませんが、自動車などで使用する場合には、熱源であるエンジンからは離れた箇所で使用する必要があります。

参考文献
https://hirosugi.co.jp/products/POM/D0000-0000.html