蒸気流量計

蒸気流量計とは

蒸気流量計

蒸気流量計とは、蒸気の流量を測定するための計測装置です。

通常は水蒸気を指します。蒸気は熱エネルギーを持った気体であり、その流量を正確に計測することは工業プロセスやエネルギー管理において重要です。蒸気は、多くの産業プロセスで使用される重要なエネルギー源です。

蒸気流量計を使用することで、蒸気供給を正確に制御し、プロセスの安定性や効率を向上させることができます。また、適切な蒸気流量の維持により、生産性の向上やエネルギーの節約が可能となります。

また、蒸気システムのメンテナンスや故障検出にも役立ちます。正確な蒸気流量のモニタリングにより、蒸気漏れなどを早期検知可能です。これにより、システムの信頼性向上や機器の寿命延長に貢献します。

蒸気流量計の使用用途

蒸気流量計は産業において幅広く使用される計装機器です。以下は蒸気流量計の使用分野一例です。

1. 発電所

蒸気タービン発電所では、ボイラーから生成された蒸気の流量を測定するために蒸気流量計が使用されます。これにより、発電量の計量や効率の最適化が可能です。

また、コジェネレーションシステムのガスタービンにおいても蒸気流量計は使用される場合があります。コジェネシステムは、同時に電力と熱エネルギーを生み出すシステムです。ガスタービンによって発電された排熱を利用して蒸気を生成する場合が一般的です。

2. 製鉄・金属製錬工場

製鉄所において、高炉は鉄鉱石を鉄に変換する主要なプロセスです。高炉内で鉄鉱石を溶解するために、酸素を噴射する際に蒸気が使用されることがあります。この場合、酸素供給や反応ガスの制御のために蒸気流量計が使用されます。

金属精錬工場の主要プロセスは、金属の溶解工程です。金属溶解炉を有し、高温の排ガスを排出しながら鉱石を溶解させます。排ガスの排熱を蒸気として取り出すことが多いため、蒸気流量計が使用される場合が多いです。

3. 食品加工工場

食品加工工場では、製品の加熱が必要となることが多いです。加熱装置や加熱ジャケット付きタンクに蒸気が使用されています。蒸気流量計によって加熱プロセスに必要な蒸気の供給量を測定し、製品の品質や加熱効率を管理します。

蒸気流量計の原理

蒸気流量計に共通する基本的な原理は、流量に比例する物理的なパラメータの変化を測定することによって蒸気の流量を推定します。

具体的なパラメータは蒸気の温度、圧力、振動、または熱散逸など、測定方法やセンサの種類によって異なります。

蒸気流量計の種類

蒸気流量計はさまざまな種類が存在します。以下は蒸気流量計の代表的な種類です。

1. 差圧式

差圧式蒸気流量計は蒸気の流れるパイプに特定のデバイスを設置し、流れによって生じる圧力差を測定する流量計です。圧力差は蒸気の流量と関連しているため、計算によって流量を推定します。大口径でも安価である点が特徴です。

特定のデバイスにはオリフィスプレートやピトー管などであり、オリフィスプレートが最も多く使用されます。オリフィスプレートは流体流量を制約するためにパイプ内に設置される円形の板状デバイスです。小型で軽量かつ取り付けが容易な点が特徴です。

差圧式蒸気流量計は蒸気の流れを制約するため、パイプ内の圧力が低下します。このため、一定の圧力損失が発生します。設計や選定時には、圧力損失に注意が必要です。

2. 超音波式

超音波式蒸気流量計は、超音波の反射速度によって蒸気の流量を推定する流量計です。超音波を発信する発信機と受信機で構成されます。

超音波を発信すると、配管内の蒸気の速度によって位相が変化します。変化した位相の超音波を受信機側で受信します。非接触で流量を測定可能で、圧力損失が存在しない点が特徴です。

3. 渦式

渦式蒸気流量計は、配管内で発生するカルマン渦の数と周期によって流量を推定する流量計です。渦発生体と渦検知のセンサによって構成されます。

渦発生体から発生したカルマン渦の周期を渦検知のセンサで測定します。流体の平均流速を測定することが可能です。渦発生体の形状や渦検知センサの種類はさまざまで、使用する蒸気の流量や管内径などから選定する必要があります。

可動部がなく堅牢であり、測定精度が極めて高い点が特徴です。 

参考文献
https://www.oval.co.jp/techinfo/keisoku/vortex.html
https://www.oval.co.jp/techinfo/keisoku/ultrasonic.html
https://www.fujielectric.co.jp/products/instruments/products/flow_ultra/FSJ.html

屈折計

屈折計とは

屈折計

屈折計 (英: Refractometer) とは、試料の屈折率を測定する装置です。

光源波長・温度・圧力が一定のとき屈折率は物質固有の値をとるため、物質の同定や純度試験に使われます。また、果汁や飲料の糖度測定に使われる「Brix糖度計」も屈折計の一種です。Brix糖度計は、試料溶液中の糖類の濃度が屈折率に影響することを利用しています。

屈折計を使用する際は、温度や試料濃度が影響するため、安定した温度条件のもとで精密に試料調整を行う必要があります。

屈折計の使用用途

屈折計は物質の屈折率を定量的に測定可能で、屈折率は物質により変わるため、純度の目安となります。より詳細に純度を調べるにはHPLCやGCによる分析が必要ですが、簡便に素早く測定するには屈折計が最適です。

1. 食品産業

食品の糖度、塩分、蜜度などの成分を測定し、品質管理や製造工程の管理に利用されています。食品の糖度を測定するBrix糖度計は、測定部に果汁や飲料を乗せて屈折率を測定しています。

屈折率は糖類 (グルコース、フルクトース、スクロースなど) の濃度と相関するため、屈折率をBrix糖度 (単位:°Bx) に変換して表示可能です。

2. 薬品産業

化学物質の濃度、純度、密度を評価し、新薬の開発や品質保証に活用されています。

3. 生物学研究

生体試料 (血液、尿など) の成分を測定し、医学研究や診断に利用されています。

4. 化学研究

化学反応のモニタリングや液体の組成分析に使用されています。

5. 環境科学

水質や海洋学の研究において、水中の物質の性質を調査するために利用されます。

屈折計の原理

屈折計で一般的に用いられる「臨界角法」を例に、原理を解説します。

  1. 光源からナトリウムスペクトルのD線がプリズムに向けて照射されます。
  2. プリズムから試料へ入射する際、光の屈折が起きます。
  3. 屈折光を検出器がとらえ、入射角と屈折角をもとに試料溶液の屈折率を表示します。

光源波長・温度・圧力が一定のとき、屈折率は物質固有の値です。食品や医薬品の品質管理では、各品目の屈折率に管理範囲を設けるなど、純度管理に活用される場合があります。

臨界角法の他に、最小偏角法やVブロック法でも屈折率を測定可能です。それぞれ特徴があるため、用途に応じて測定方法を選択する必要があります。

屈折計の構造

屈折計はプリズム、光源、検出器から成ります。光源と検出器は装置内部にありますが、プリズムは装置表面に露出しています。プリズムの上に試料溶液を乗せ、物質を屈折させることで屈折率を測定可能です。

屈折計の種類

1. 液体屈折計

液体の屈折率を測定するのに使用されます。主に化学や生物学、食品の分野で使用され、試料を液体状態で測定可能です。Brix糖度計も液体屈折計に分類されます。

液体試料をセルに入れ、セルを屈折計に取り付けて測定します。液体屈折計では、最小偏角法、臨海角法、Vブロック法の3つの測定方法で測定可能です。

2. 固体屈折計

固体試料の屈折率を測定するために使用されます。結晶、フィルム、膜、繊維などの屈折率を測定することが可能です。主に物性研究や結晶学で使用されています。

液体屈折計と同様に、最小偏角法、臨海角法、Vブロック法の3つの測定方法で測定可能ですが、フィルム試料の場合は、臨海角法でのみ利用できます。

3. ハンドヘルド屈折計

ハンディタイプや卓上タイプの屈折計が販売されており、農作業場や工場に持ち込んで使用する場合は、ハンドヘルド屈折計がよく用いられています。

屈折計のその他情報

1. 規格

屈折計の測定規格は、対象物ごとに定められています。主に日本産業規格 (JIS規格) 、米国試験材料協会 (ASTM) 規格、ISO規格、日本光学硝子工業会規格 (JOGIS) に沿った測定が行われています。

2. 屈折率

光は一様な媒質中を直進しますが、性質の異なる媒質に出会うと境界面で反射や屈折を生じます。また、不均一な媒質の中では光線は連続的に曲がります。

このような、光線の軌跡を決めるのが屈折率であり、光学において最も重要な物質定数です。屈折率は「真空中の光の位相速度/物質中の光の位相速度」で表されます。

参考文献
https://www.shimadzu.co.jp/products/opt/guide2/02.html

シールワッシャ

シールワッシャとは

シールワッシャ (英: Seal Washer) とは、ワッシャの内側部分に合成ゴムのシール部を付加し、ボルトなどで締結時にシール部を圧縮し、ねじ外径や頭部と部材穴部のスキマを埋めて漏れ防止機能とするガスケットの1つです。

従来のワッシャと同様、頭付ボルトや通しボルト、ナットなどと一緒に使用します。ワッシャとしての締結面積に圧力を均等に分散する機能を持っていながら、パッキンなどに代わりねじ締結部やフランジ部分の締結部の液体漏れを防ぎ、同時に外部からの液体やほこりの侵入も防ぎます。

様々なボルトサイズに対応し、取り扱いも簡単である為、様々な用途に使用できる部品です。

シールワッシャの使用用途

シールワッシャは、主に自動車などの車両、航空機、建設機械、農業機械、工作機械など油圧・空圧を用いた機器の配管や、冷凍機器のパイプラインの締結部のシールとして用いられます。液体の漏れを防止したい部位の頭付ボルト・通しボルト・ナット部 、ドレンプラグ、給油プラグやパイプフランジ部継手、その他のボルト・ナット部などに有用です。

また、液体やほこりの侵入を防ぎたい部分のボルト・ナット部にも使用可能で、幅広い範囲で活用されています。

シールワッシャの原理

シールワッシャの主な原理は、「面圧の均等化」です。部品が締結される際、ボルトやナットの力が均等に部品全体に分散されることによって、部品同士の接触面に均等な力がかかります。その結果、部品同士がしっかりと密着し、部品の緩みや振動が最小限に抑えられます。

ゴムシール部でさらに表面を潰しスキマを埋め、平坦化することによって面圧を広範囲に均等にかけ、効果的な密封および固定が可能です。また、シール部にリップ構造を持つため、締結時にボルトの座面がリップ部分を圧縮し高いシール性を発揮します。

これにより、従来の銅ワッシャや液体パッキンに代わり締結部分の漏れを防止することが可能です。

シールワッシャの種類

シールワッシャは、ねじ山に対しシールリップの締め代有無の2種とそれぞれにワッシャ片面にゴムを付加したタイプがあります。

1.  シールリップの締め代有りのタイプ

図1. 締め代有りのシールワッシャの組付け状態例

締め代有りのタイプは、締結時にねじ山までシール部が潰され高い密封性とゆるみ止め効果を持つシールワッシャです。締め付け時にシール部のリップとねじ山が接触するため、ねじの締め付けトルクが増したり、締め付け時にリップを傷付けたり、ねじ山でリップを切ってしまったりする恐れがあります。

そのため、組付け時にねじ山に合わせてシールワッシャも回転させながら組み付けるなど注意が必要です。

2.  シールリップの締め代無しのタイプ

図2.締め代無しのシールワッシャの組付け状態例

締め代無しのタイプは、締め付け時にねじ山にかからないため、通常のワッシャと同様に容易に組付けができるシールワッシャです。シール部は、ボルト頭面、座面部のみなので、締め代有りより密封性は劣ります。

3. ワッシャ片面にゴムを付加したタイプ

図3.ワッシャ片面にゴム付加のシールワッシャの組付け状態例

ワッシャ片面にゴムを付加したタイプは、取り付け面の表面が多少荒い場合でも、締結時にゴム面が潰されることで面を均一化し漏れ防止と面圧均一化できるシールワッシャです。

シールワッシャのその他情報

1. シールワッシャの利点

一般に液体漏れを防ぐ場合は、パッキンやOリング、シール剤などを使用しますが、部材同士の接合はボルト等のねじ締結が多く使用されます。この場合、ねじ締結部周辺もシールする必要があり、シール面の拡大やパッキンが複雑な形状になります。

ここでシールワッシャを使用することで、ボルト部周辺のシールが簡易になり、全体の省スペース化やパッキン形状の単純化が可能です。深座ぐり穴に対応したシールワッシャもあり、六角穴付きボルトと併用することでボルト頭を埋めた状態でも使用できます。

また、締結時にシール部を圧縮することで、ボルト頭面や座面のスキマを埋め摩擦を増やすため、ボルト・ナットのゆるみ止め効果があります。

2. シールワッシャの材質

一般的なシールワッシャの材料は、本体がSPCCSUS304など、パッキン部分がNBR (ニトリルゴム) でできており、耐熱温度は120℃前後です。パッキン部分のゴムに耐薬品や耐熱、耐候などの機能を持たせた特殊ゴムを用いたものもあります。

それぞれ性質が異なるので、耐熱温度や締め付けトルクについては使用するシールワッシャのメーカカタログの確認や問い合わせすることをおすすめします。

参考文献
http://www.musashi-os.co.jp/sealwasher.html
https://www.nbk1560.com/products/specialscrew/nedzicom/screwparts/SWS/

スライドラッチ

スライドラッチとは

スライドラッチ

スライドラッチとはドアや窓、門などを閉じる際に使用される錠の一種です。

ラッチとは、引き戸や開き戸、門、窓などに使用される掛け金やかんぬき錠と呼ばれる錠の総称であり、ドアを閉じた状態を保持したり、開閉を補助する構造部品です。

スライドラッチは、このラッチの中でもスライド構造方式を採用しているものを指します。スライドラッチにはさまざまな構成や種類が存在し、取り付ける対象となるドアや扉に最適なものを選択する必要があります。

スライドラッチの使用用途

スライドラッチは、一般にドアを内側から施錠するために使用される錠の一種です。使用されるドアの種類に応じて多様な形状や機能を持つスライドラッチが存在し、トイレ用のスライドラッチや和室の引き戸に適用されるスライドラッチなど、最も一般的に利用されている例があります。

材質に関しては、鉄、ステンレス、アルミニウムをはじめ、樹脂や木製のものまで、使用環境に合わせた幅広い選択肢が多くのメーカーから提供されています。

スライドラッチの原理

スライドラッチ錠の基本構造は、可動部をスライドさせて受け側金具に挿入し、扉を閉じて固定する留め金具になります。このシステムには、取手部分やボルトの形状が異なる様々な派生タイプが存在し、用途や好みに応じて最適なものを選択できます。

特に普及しているスライドラッチは、挿入状態と引き抜き状態でボルトがずれることなく固定可能なタイプで、トイレの内扉に使われることが多い「角ラッチ」とも称されるタイプです。このタイプはステンレス製で、強度が高められている上、大きな取手が特徴で掴みやすく設計されています。

また、P型リング状の取手が特徴のPラッチや、U字型取手に南京錠を取り付けられるタイプもあり、これらは特に防犯対策を強化したい場合に後から追加して利用するのに便利です。さらに、ボルトを押し込むだけでロックがかけられるタイプや、押しボタン一つで操作できるスライドラッチも存在し、利用者の便宜を考慮した設計が施されています。

スライドラッチの選び方

スライドラッチを選ぶ際には、その設置場所、使用目的、操作性、セキュリティ性能など、複数の要素を考慮する必要があります。

  1. 設置場所と使用目的
    屋内外の環境や、目的に応じた耐久性やセキュリティレベルが求められます。例えば、湿度が高い場所や屋外で使用する場合は、耐久性と耐蝕性に優れたステンレス製やアルミニウム製を選ぶことが望ましいです。
  2. 操作性
    使用する人々のことを考え、特に高齢者や子供がいる場合は、簡単に操作できるタイプを選ぶことが重要です。P型リングや大きな取手など、掴みやすく使いやすいデザインのものが適しています。
  3. セキュリティ性能
    使用場所や必要とされるセキュリティレベルに応じて適切なスライドラッチを選ぶ必要があります。単純なプライバシー保護のためだけであれば基本的なスライドラッチで十分ですが、高い防犯性を求める場合は鍵付きのものや、南京錠を取り付けられるタイプなどが推奨されます。

参考文献
https://www.nbk1560.com/resources/machine_element/article/latch-about/?SelectedLanguage=ja-JP
https://diyclip.roymall.jp/tool/1322921

スポット溶接

スポット溶接とは

スポット溶接

スポット溶接 (英語:spot welding) は、アーク溶接やガス溶接と並ぶ溶接方法の一種です。

2枚の被溶接材を電極で圧力をかけて挟み込み、大電流を流します。そして、電気抵抗熱によりスポット的に溶解凝固させることで、金属同士を接合します。

溶接の手法は基本的に、圧接・ろう接・融接の3種類です。スポット溶接はこれらのうち、圧接に分類されます。アーク溶接のようにビード (溶接面) を広く形成する溶接法とは異なり、小さな一点のみを接合するため、仕上がりが綺麗になります。電気抵抗によって母材を加熱するという性質を持つため、抵抗スポット溶接とも呼ばれます。

スポット溶接の使用用途

スポット溶接は外観が綺麗に保てるため、自動車や鉄道車両・家電製品の部品を接合する際に用いられます。

スポット溶接のメリットとして、他の溶接法とは異なり母材を直接挟み込んで溶接するため、シールドガスやフラックスなどの溶加材が必要ない点が挙げられます。

また、アーク溶接やガス溶接は作業者の技術によって仕上がりが大きく左右されますが、スポット溶接は初心者でも容易に溶接できることもメリットの一つです。スポット溶接はロボットアームなどと組み合わせることで、作業の自動化も実現できます。

スポット溶接の原理

スポット溶接には、抵抗スポット溶接・レーザースポット溶接・シーム溶接の3種類があります。

1. 抵抗スポット溶接

抵抗スポット溶接は、溶接する2片の金属の上下から電極棒を当て、圧力を加えながら、大電流を流して発生した熱で母材の金属が溶解凝固を起して接合する方法です。単にスポット溶接と言う場合は、抵抗スポット溶接を意味します。

電極棒は冷却のため、水冷にする場合が多いです。比較的薄い材料の接合に使われ、自動車のボディ生産に多用されます。溶接品質は、溶接電流をはじめ、通電時間・押下圧力・材質などの条件で決まります。スポット溶接の接合部分であるナゲットの品質を良くするには、これらの条件をコントロールする必要があります。

抵抗スポット溶接は、溶接部付近の温度がアーク溶接に比べ低いため、熱の影響が狭い範囲に限られます。そのため、溶接後の変形や残留応力が少ないのが特徴です。一方で、大電流の電気抵抗の熱で加熱するため、溶接機の容量がアーク溶接に比べ大きくなり、設備費用が高くなるデメリットがあります。

2. レーザースポット溶接

レーザースポット溶接は、母材にレーザーを照射して加熱する方法です。加熱は片側のみで、主に小さく薄いものや精度を要するものの溶接に使用します。抵抗スポット溶接と比較して、高出力の割に加熱時間が非常に短いのが特徴です。このため、溶接ひずみが少ないメリットがあります。

3. シーム溶接

抵抗スポット溶接を連続的に重ねる方法です。スポット溶接の一種と言えます。電極をローラ形状とし、2枚の母材を挟み込んで、電極を加圧しながら回転させ、断続的に電流を流して加熱します。水密や気密を必要とする場合に使用します。

スポット溶接のその他情報

1. 自動車生産におけるスポット溶接

1台の自動車に対して行う溶接の数は、およそ6,000箇所に及びます。溶接が行われる場所は、ボディ・フレーム・サスペンションメンバ・ロアアームなどです。

自動車に行われる溶接の種類は、抵抗溶接・アーク溶接・レーザー溶接など多くの方式があります。そして、昨今では生産性や製造コストの面からレーザー溶接が主流になりつつあります。

これらの中でスポット溶接は、ボディやプレスされたドアなどの板材を溶接する際に使用されます。ここで用いられるスポット溶接は、抵抗スポット溶接・レーザースポット溶接などです。

2. スポット溶接の不良原因

スポット溶接は、金属が持つ電気抵抗の特性を利用して溶接を行います。そして、スポット溶接のような抵抗溶接では不良の原因がいくつかあります。

  • ナゲット径が小さいことから生じる板材などの接合不足
    電極から流している電流の板材などへの通電不足や電極の先端が適切な径でないことが原因。
  • 板材などの接合部の溶け込み不足や過度な凹みが発生する
    電極が板材に接触した際に左右対称でないことや過通電・過加圧などが原因。

参考文献
https://www.yashima-corp.jp/column/column5/
https://www.hi-mecha.co.jp/technology/metal_welding/basic/
https://newswitch.jp/p/19520
https://www.tiw.co.jp/production/product?category=chassis
https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISSearch.html
https://engineer-education.com/production-engineering-28_resistance-welding/
https://04510.jp/times/articles/-/2853?page=1
https://www.honda.co.jp/kengaku/auto/weld/
http://www-it.jwes.or.jp/we-com/bn/vol_15/sec_2/2-1.jsp
https://www.weld.nipponsteel.com/techinfo/weldqa/detail.php?id=27UUGQP
https://www.rougi.or.jp/course/tokyo/gasyousetu
http://www.jwsc.or.jp/education_welding_05/

自動盤

自動盤とは

自動盤

自動盤とは、自動旋盤や多軸自動旋盤とも呼ばれており、工作機械の一種です。

自動化の多くはコンピュータ制御されているために、CNC自動旋盤 (Computerized Numerical Control:コンピュータ数値制御) と表記される場合もあります。旋盤とは、材料を回転させながら刃物を当てることによって削り、形状を仕上げる工作機械のことです。

鉛筆削りで鉛筆を削るのと同様の原理で加工を行います。自動盤の場合、コンピュータなどによる自動制御が可能です。

自動盤の使用用途

自動盤は、さまざまな金属加工の製造現場で使われています。旋盤は材料を回転させながら切削加工を行うため、棒状の材料を切削加工する際に必要になる工作機械です。

生産部品としては、小さな部品ではねじなどの製造から、動力を伝達するための回転軸部品の加工などにも用いられます。自動盤では加工作業を自動化することによって、同じ形状の部品を繰り返して加工することが可能ですが、旋盤のような切削加工では、切りくずや切粉が発生します。

切りくずや切粉は、特にリサイクルしない限り無駄になってしまうため、大量生産には向いていません。材料を無駄なく大量生産する際は、鍛造や圧造などが向いています。しかし、鍛造や圧造では、高価な金型の用意が必要です。

自動盤は、ある程度の生産量はあるものの、鍛造や圧造の金型を制作するほどのコストメリットが見込まれないような場合に、適した工作機械と言えます。

自動盤の原理

自動盤は大きく切削加工を行う部分と加工を制御する部分に分けることができます。自動盤のような旋盤加工は前述のとおり、鉛筆削りで鉛筆を削るように、回転させた材料に刃物を当てて加工する機械です。

そのために、自動盤には材料をつかむためのチャック、材料を回転させるための主軸台、主軸などがあります。材料を削る刃物を取り付ける部分は、刃物台と呼ばれています。

さまざまな加工を行うためには複数の刃物が必要なため、刃物台は複数の刃物が取り付けられ、使う刃物は自動で変えられなければなりません。自動で使う刃物を変えられるように、くし刃やタレットと呼ばれる刃物台があります。

以上のような切削加工を行う部分に加えて、回転軸の回転数や刃物の選択、刃物の送りと呼ばれる移動を制御するための機構が操作盤です。作業者は作業盤を通じて、加工プログラムを入力し、材料を目的の形状に仕上げます。

自動盤の種類

自動盤は、制御方法や機械の構成などによって分類されます。

1. 制御方法による分類

自動盤には、コンピュータ制御されるCNC自動盤とカムによって動作を制御するカム式自動盤があります。CNC自動盤は、コンピュータプログラムとプログラムどおりの動きをするサーボモータが必要で、機械の価格も高価になります。

カム式自動盤では、制御盤やサーボモータは不要ですが、加工に必要な動きをするためのカムをその都度制作しなければなりません。

2. 機械の構成による分類

加工する材料の固定によって、棒材加工機 (バーワークマシン) と素形材加工機 (チャックワークマシン) に分類できます。

棒材加工機
目的の形状よりも長い材料を使います。材料を長さ方向に送って切断し、その都度つかみ変えながら同じ形状を仕上げていきます。

素形材加工機
あらかじめ1つの製品に必要な長さに切断された材料をつかみかえながら加工していきます。

3. 移動する部位による分類

移動する部位によって、主軸台が移動するタイプ (主軸台移動形) と刃物台が移動するタイプ (主軸台固定形) の2種類に分けられます。主軸台移動形は、ガイドブッシュと呼ばれる材料の固定を補助する装置が付いタイプです。

ガイドブッシュは主軸台と加工部位との間が離れており、加工時に生じる材料のたわみを低減させる役目を果たします。

参考文献
https://cmj.citizen.co.jp/special/
https://www.turning-lathe-products.com/productclass2/
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure-sys/machining/cutting/nc-lathe.jsp

超音波溶着機

超音波溶着機とは

超音波溶着機とは、物体同士の摩擦による発熱を利用して溶着する機械装置です。

主に樹脂材同士や異種金属間の接合で利用されており、特徴として下記のような点が挙げられます。

  • 摩擦熱で溶着するため、他の加熱式接合方法と比較して消費電力が少ない。
  • 自動化が容易で再現性が高い
  • 接着剤等を使用しないため、接合後の外観が良い。

1960年代に開発され、50年以上利用されています。超音波溶着機は発振器と溶接台、もしくは振動子とホーンで構成されており、超音波振動と圧力を同時に加えることによって樹脂や金属を溶融させて瞬時に接着します。この装置は応用範囲が広いため様々な分野で利用されています。接着剤等を使用しないため溶着後の外観がきれいであること、一瞬の摩擦熱で溶着させるため消費電力が少なく環境に優しいこと、自動化がしやすいので再現性が高いといった点が特徴です。

超音波溶着機の使用用途

超音波溶着機の主な使用用途は以下の通りです。

  • 端子と配線の接合
  • プラスチック製品同士の接合
  • 異種金属間の接合 (例えば、アルミ材と銅材の接合など) 

超音波溶着はプラスチックだけでなく金属同士での結合も可能であり、金属の端子と配線、ICチップ内の金属線の接着にも用いられます。

超音波溶着機の原理

超音波溶着機はホーンと呼ばれる振動子が被締結物間に一定の圧力を加え、ホーンが振動することでエネルギーを接合面に伝えて溶着する装置です。

被締結物の表面間に摩擦熱が発生することで溶着が可能です。特に被締結物が金属である場合は、超音波振動によって金属表面同士がこすれることで表面に存在する酸化被膜が破壊され、接合強度が得られます。

超音波溶着機は発振器と振動子で構成されています。発振器は超音波振動を発生させる機器で、被締結物の種類によって振幅が変わらないよう振幅一定になる構造を採用しています。振幅を一定にすることで、溶着後の製品品質が確保できます。 振動子は、ランジュバン型振動子 (通称BL振動子) と振動を伝えるホーン部材で構成されています。超音波溶着機はホーンから溶着品に超音波を伝播させることで溶着を行っています。

超音波溶着機のその他情報

1. 超音波溶着機の特徴

超音波溶着機は、溶着時間が長いと被加熱物は溶けやすくなるのに対して、長すぎると樹脂が炭化しやすい傾向にあります。また被締結物をホーンで保持する時に発生する圧力も、圧力が高いと溶着時間が短縮されますが、圧力が高すぎても溶けなくなることもあります。重要なポイントは、この3要素 (時間、圧力、熱) を適切な条件幅で管理することです。

超音波溶着のメリットとしては下記のような点が挙げられます。

  • ほぼ全ての熱可塑性のプラスチックに適用可能
  • 連続シーム接合や同時多点接合が可能
  • 蓄熱が少ない
  • フラックスレスのため洗浄工程が不要となり、火花や炎、煙などが出ない
  • プラスチック溶着時に有害物質を出さない
  • 消耗する部品や素材がなく、省エネでランニングコストが安価
  • 異種金属接合が可能

また、デメリットとしては下記のような点が挙げられます。

  • 雑な形状や立体的な形状など、ホーンで挟めない形状は接合できない
  • 振幅が高いと溶着性は良好であるば、条件によっては樹脂に傷やクラックが発生する可能性がある
  • 加圧力が高いと溶着しない可能性がある

2. 超音波ホーン

超音波ホーンは、溶着される被締結物へ振動エネルギーを効率良く伝達させる部材です。超音波はトランスデューサーで機械的な振動振幅エネルギーに変換され、ブースターと呼ばれる変換器によって振幅が増幅されたのちホーンへ伝わります。その振幅は徐々に増幅されてからホーン先端で最適化されます。超音波振動をホーン先端に集中することで、被締結物に毎秒4万回 (40kHzの場合) の衝撃が加わります。

超音波ホーンには以下の種類があります。

  1. ステップ型 (振幅、応力とも高いタイプ)
  2. キャテノイダル型 (振幅、応力とも中間のタイプ)
  3. エクスポーネンシャル型 (振幅、応力とも低いタイプ) 

また、超音波ホーン材質は溶着目的に応じて使い分けされており、主に下記の材質が使われています。

  1. アルミ合金
  2. チタン合金
  3. ダイス鋼

3. 超音波溶着機を用いたマスク製造

超音波溶着機はマスク製造にも用いられています。超音波振動を用いて材料を溶融し材料同士を溶着させることで、マスクの綾目や刻印を製作します。糸や接着剤などが不要になり、製作工程が簡易化されます。

また、マスク本体へマスクと材質が異なる耳ひも (ゴム部は天然ラテックスゴム、糸部はPEの場合) を溶着することができるため、一つの設備で製品が製造することが可能です。超音波溶着機を用いたマスク製造が今後増えてくると予想されています。

参考文献
https://www.dukane.jp/technology/feature/
https://www.sedeco.co.jp/item/uw/mishin/
https://www.dukane.jp/technology/horns/
https://www.avio.co.jp/products/assem/lineup/ultrasonic/horns.html
https://www.honda-el.co.jp/hb/3_1.html

CPUユニット

CPUユニットとは

CPUユニット

CPUとはCnetral Processing Unit(中央演算装置)の略で、各種デバイスからの入力に基づくパソコン内部での処理をすべて行うパーツ。CPU性能が高いほど動画編集や高解像度の画像処理など負荷のかかる作業の処理能力に優れる。

CPUの性能は主として「コア数」「ハイパースレッディング」「クロック周波数」を元に判断する。特にコアはその名の通りコンピュータでの演算処理の核になる部分であれ、コア数が多いほど複数の処理を同時に行うことができる。

CPUユニットの使用用途

パソコンの演算処理の中核を担うパーツとしてシステムに組み込んで使用する。接続されたデバイス(キーボードやマウス、プリンタなど)やソフトウェアからの入力信号に基づき演算、制御を行い必要な動作を実行する。

Intelではコア数や周波数などで大雑把にCPUをシリーズ分けしており、動画編集など画像処理がメインの場合はCore i5以上を選択するとよい。逆にメールのチェックや簡単なテキスト処理などの軽作業主体であれば安価なCeleronでも十分なため、使用目的に合わせてスペックを選択する。

CPUユニットの原理

パソコン(この場合最終的にはCPU)と接続する各種デバイスからの入力信号を演算し、ストレージに格納したり処理を実行、制御したりとパソコン機能の根幹をつかさどるパーツ。

性能評価の基準として特に注目すべきは「コア数」「ハイパースレッディング」「クロック周波数」でコア数が多いと並行して演算が行えるため複数の処理を同時に行うことができる。そのためパソコンでの処理が軽快になる。ハイパースレッディングは1つのコアで2つの処理を行うことで、対応している場合コア数の倍のスレッド数(処理数)を得ることができる。またクロック周波数は1秒間に処理できる計算の回数を意味し、数値が大きいほど処理が速いことになる。

但し最近は周波数による影響はそこまで大きくなく、むしろコア数を増やすことで周波数を抑える形が一般的となっている。

高速処理が必要なゲームや大きなデータを扱う動画処理などではより高性能のCPUを選択する方がスムーズな処理が可能となる。

CPUユニットの記憶領域

PLCの制御の中心となるCPUユニットですが、その記憶領域はメモリエリアと呼ばれ、PLCが取り扱う様々なデータをすべて保管するエリアとなっています。バッテリーによりバックアップをする仕組みとなっているものが主流です。また、フラッシュメモリ等が内蔵されていて書き込みの都度、内容をそのメモリにバックアップするなど、バッテリ電圧が低下してもユーザプログラムやパラメータエリアのデータを消してしまわない構造になっているものが多いです。このエリアは主に以下の3種類に分けられます。

  • ユーザープログラムエリア・・・ユーザーが記述したプログラムを記憶するエリアです。
  • パラメータエリア・・・PLCのI/Oポートやレジスタなどの初期設定値を記憶するエリアです。
  • I/Oメモリエリア・・・命令オペランドによってアクセス可能となるエリアで、電源断から復帰後に以前の情報を保持する領域とクリアされる領域があります。

これからのCPUユニット

CPUユニットは年々性能が向上し続けており、大手メーカーではAI搭載のCPUユニットを販売しています。ただ、AIの機械学習・ディープラーニングなどの技術では、3Dグラフィック処理を行うために開発された半導体チップであるGPUの方が画像解析などの処理における計算能力が高いです。これを受けて、今後、GPU市場規模は2019年に197.5億ドルレベルだったものが、2027年までに2008.5億ドルレベルに達すると予測されています。

日本の企業が2020年に発表した「統合型エッジゲートウェイ」はAI画像分析による外観検査防犯カメラなどのシステム機能をゲートウェイ装置に統合しており、GPUの性能が大きなウェイトを占めています。今後、PLCの様な機器が様々な場面で使用されるようになってきた場合、AIの高度な処理を実現するためCPUユニットではなくGPUユニットが台頭してくる可能性があるかもしれません。

参考文献
https://ark.intel.com/content/www/jp/ja/ark.html
https://www.tsukumo.co.jp/bto/parts/parts_cpu_hikaku.html
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/26/129/#5
https://www.fa.omron.co.jp/product/tool/454/nj/
https://ascii.jp/elem/000/004/030/4030953/

高ナット

高ナットとは高ナット

高ナットとは六角ナットの一種で、通常の六角ナットよりも全長が長くなったナットのことを指します。長ナット、スペーサーナット、ジョイントナットと呼ばれることもあり、主に建築金具や電子機器の部品など、ボルトを使用する箇所で幅広く使われています。

全長が長いという特徴から、ボルトを延長したい場合や基板などをかさ上げしたい場合などに使用されます。通常の六角ナットと同様、鉄製の物や真鍮の物、製やステンレス製の物などがあります。

高ナットの使用用途

主に建築用の金具や電子機器の部品として使われます。高ナットは筒形になっており、内部にはめねじ加工がされている為、両側からおねじをねじ込むことが出来ます。なのでおねじのボルト同士を両側からねじ込み、ジョイントとして使うことも可能です。ボルトを延長したい際にはそういった手法で使用されます。
     
また、おねじの締め込み具合によって長さを微調整することも出来ます。自動販売機やゲームセンターの筐体などの足元に取り付けられ、高さを調整するためのアジャスターの役割をしているケースなどもあります。

電子機器の部品として使用される場合は、主にプリント基板などを部材から浮かせるために使われています。プリント基板が他の部品やケースに接触しないように、隙間を作るために活用されます。

高ナットの特徴

高ナットは筒形になっており、筒の内部には全てめねじ加工がされています。片側がめねじ、もう片側がおねじとなっている製品もありますが、それらは六角支柱と呼ばれ、高ナットとは種類が異なります。用途によって呼称を変えるケースなどもあり、プリント基板に使われる場合は高ナットというより長ナット、スペーサーナットと呼ばれることが多いです。
   
高ナットには鉄製、真鍮製、銅製、ステンレス製と様々な種類のものがあります。電子機器の部品として基板を浮かせる際に使用されるのは真鍮やステンレス製で、建築用の金物には鉄製の物がよく使用されます。

最も安価なものは鉄製ですが、錆びやすいという特徴があるため塩分や水分の多い環境で使用するのには向きません。塩分や水分の多い環境ではステンレス製の物を使用するのがベストでしょう。
   
通常のナットと同じくM3~M20の幅広いサイズがあり、それぞれ目的に合った用途に応じて使用されます。プリント基板に使われる際などは比較的小さなM3~M4の物が多く使用されています。

参考文献
https://www.urk.co.jp/contents/elements/element25.html
https://jp.misumi-ec.com/vona2/mech_screw/M3303000000/M3303110000/
https://www.tsurugacorp.co.jp/dictionary/screw/screw_high_nut.html

SCSIケーブル

SCSIケーブルとは

SCSIケーブル

SCSI(Small Computer System Interface、スカジー)とはパソコンに外付けドライブなど周辺機器を接続する際のインターフェース規格で、この規格で接続するためのケーブルをSCSIケーブルという。但しコネクタ形状は複数ある為使用する機器のコネクタ形状に合致するSCSIケーブルを選択する必要がある。

コネクタ形状としてはD-Sub25pinや50pin、68pin、ハーフピッチ50pinなど。

SCSIケーブルの使用用途

米国国家規格協会(ANSI)で標準化された接続インターフェース、SCSI規格にのっとったケーブル。コネクタ形状は複数種類存在する。パソコン本体に外付けでSCSIポートを有するハードディスクやDVDドライブ、プリンタなどを接続する際に使用する

SCSI接続は数珠つなぎで7台まででIDを設定する必要があるなど接続が煩雑なため、最近はすべてUSBでの接続に置き換えられつつあり、SCSIポートのないパソコンも多い。

SCSIケーブルの原理

SCSIはパソコン本体と周辺装置とのデータ交換用規格で、同規格は更にパラレルSCSI、SCSI-1、SCSI-2などに分かれるが一般にSCSIといった場合にはパラレルSCSIをさすことが多い。SCSI対応機器(SCSIコネクタを2個有する)であれば本ケーブルを用いて最大7台(50ピンの場合)まで数珠つなぎで接続することができる(ディジーチェーン)。転送速度や接続可能台数はケーブルの種類に依存する。接続終端の機器にはターミネータの設置とSCSI IDの設定が必要。ケーブルの長さは短いほど動作安定性が高くなる。

改良規格のSCSI-3ケーブルであればパラレル転送に加えシリアル転送も対応している。

外付け機器の接続に使用するいわゆる通常のケーブル以外に、パソコン内部でのSCSI接続用にケーブルが薄くリボン状のフラットケーブルと呼ばれるケーブルもある。

最近は接続の簡便さ、転送スピードなどの観点から一般用途のパソコンではSCSI接続はUSB接続にとって代わられておりノートを中心にSCSIコネクタをもたないパソコンも少なくない。

SCSIケーブルのコネクタ形状

SCSIケーブルには、規格に応じて様々なコネクタの形状が存在します。初期の規格であるSCSI-1では、50ピンのAコネクタと68ピンのBコネクタが利用できました。また、SCSI-2では、D-sub 50pinハーフピッチコネクタが標準として策定されました。また、アップルのMacintoshでは、アップルが独自に開発した形状であるD-sub 25pinのコネクタが利用されていました。

SCSIケーブルのコネクタ形状は、SCSI規格上では明確に規定されておらず、推奨の形状を規定しているのみでした。よって、各メーカーが独自に様々な形状のコネクタを開発し、販売することになり、これがSCSIケーブルの欠点の一つとなりました。

SCSI規格のプロトコル

SCSIケーブルは現在ではほぼ利用されていませんが、それでもSCSI規格のプロトコルは、通信方式として利用が続いています。最新のケーブル規格であるATA、SATA、USBやストレージの通信規格であるファイバーチャネルなどでは、SCSI規格のコマンドが利用されています。

SCSIコマンドでは、デバイスが転送に対応可能かを問い合わせたり、デバイスの基本情報を要求したりすることが可能です。また、実際にデバイスからデータを読み取ったり、書き込みを行うことができます。

SCSIケーブルの欠点

前述の通りSCSIケーブルは現在では利用が減っていますが、これはSCSIケーブルに様々な欠点があったためでした。

まず、SCSIはメーカーが独自に形式を開発してしまったので、相互に利用することが次第に難しくなっていきました。また、価格も高止まりしていました。転送速度も高機能化するPCの世界では次第に陳腐化していきました。また、コネクタのピンの数が多いことから、小型化も困難でした。

そんな中で、ATAやSATA等の高速度かつ小型化された新しいインターフェースが登場し、次第にSCSIケーブルは利用されなくなっていきました。

参考文献
https://www.sanwa.co.jp/product/cable/scsi/scsi_term.html
https://www2.elecom.co.jp/cable/scsi/index.asp
https://www.sanwa.co.jp/product/cable/scsi/index.html
https://www.ibm.com/developerworks/jp/linux/library/l-scsi-subsystem/index.html