超音波溶着機

超音波溶着機とは

超音波溶着機とは、物体同士の摩擦による発熱を利用して溶着する機械装置です。

主に樹脂材同士や異種金属間の接合で利用されており、特徴として下記のような点が挙げられます。

  • 摩擦熱で溶着するため、他の加熱式接合方法と比較して消費電力が少ない。
  • 自動化が容易で再現性が高い
  • 接着剤等を使用しないため、接合後の外観が良い。

1960年代に開発され、50年以上利用されています。超音波溶着機は発振器と溶接台、もしくは振動子とホーンで構成されており、超音波振動と圧力を同時に加えることによって樹脂や金属を溶融させて瞬時に接着します。この装置は応用範囲が広いため様々な分野で利用されています。接着剤等を使用しないため溶着後の外観がきれいであること、一瞬の摩擦熱で溶着させるため消費電力が少なく環境に優しいこと、自動化がしやすいので再現性が高いといった点が特徴です。

超音波溶着機の使用用途

超音波溶着機の主な使用用途は以下の通りです。

  • 端子と配線の接合
  • プラスチック製品同士の接合
  • 異種金属間の接合 (例えば、アルミ材と銅材の接合など) 

超音波溶着はプラスチックだけでなく金属同士での結合も可能であり、金属の端子と配線、ICチップ内の金属線の接着にも用いられます。

超音波溶着機の原理

超音波溶着機はホーンと呼ばれる振動子が被締結物間に一定の圧力を加え、ホーンが振動することでエネルギーを接合面に伝えて溶着する装置です。

被締結物の表面間に摩擦熱が発生することで溶着が可能です。特に被締結物が金属である場合は、超音波振動によって金属表面同士がこすれることで表面に存在する酸化被膜が破壊され、接合強度が得られます。

超音波溶着機は発振器と振動子で構成されています。発振器は超音波振動を発生させる機器で、被締結物の種類によって振幅が変わらないよう振幅一定になる構造を採用しています。振幅を一定にすることで、溶着後の製品品質が確保できます。 振動子は、ランジュバン型振動子 (通称BL振動子) と振動を伝えるホーン部材で構成されています。超音波溶着機はホーンから溶着品に超音波を伝播させることで溶着を行っています。

超音波溶着機のその他情報

1. 超音波溶着機の特徴

超音波溶着機は、溶着時間が長いと被加熱物は溶けやすくなるのに対して、長すぎると樹脂が炭化しやすい傾向にあります。また被締結物をホーンで保持する時に発生する圧力も、圧力が高いと溶着時間が短縮されますが、圧力が高すぎても溶けなくなることもあります。重要なポイントは、この3要素 (時間、圧力、熱) を適切な条件幅で管理することです。

超音波溶着のメリットとしては下記のような点が挙げられます。

  • ほぼ全ての熱可塑性のプラスチックに適用可能
  • 連続シーム接合や同時多点接合が可能
  • 蓄熱が少ない
  • フラックスレスのため洗浄工程が不要となり、火花や炎、煙などが出ない
  • プラスチック溶着時に有害物質を出さない
  • 消耗する部品や素材がなく、省エネでランニングコストが安価
  • 異種金属接合が可能

また、デメリットとしては下記のような点が挙げられます。

  • 雑な形状や立体的な形状など、ホーンで挟めない形状は接合できない
  • 振幅が高いと溶着性は良好であるば、条件によっては樹脂に傷やクラックが発生する可能性がある
  • 加圧力が高いと溶着しない可能性がある

2. 超音波ホーン

超音波ホーンは、溶着される被締結物へ振動エネルギーを効率良く伝達させる部材です。超音波はトランスデューサーで機械的な振動振幅エネルギーに変換され、ブースターと呼ばれる変換器によって振幅が増幅されたのちホーンへ伝わります。その振幅は徐々に増幅されてからホーン先端で最適化されます。超音波振動をホーン先端に集中することで、被締結物に毎秒4万回 (40kHzの場合) の衝撃が加わります。

超音波ホーンには以下の種類があります。

  1. ステップ型 (振幅、応力とも高いタイプ)
  2. キャテノイダル型 (振幅、応力とも中間のタイプ)
  3. エクスポーネンシャル型 (振幅、応力とも低いタイプ) 

また、超音波ホーン材質は溶着目的に応じて使い分けされており、主に下記の材質が使われています。

  1. アルミ合金
  2. チタン合金
  3. ダイス鋼

3. 超音波溶着機を用いたマスク製造

超音波溶着機はマスク製造にも用いられています。超音波振動を用いて材料を溶融し材料同士を溶着させることで、マスクの綾目や刻印を製作します。糸や接着剤などが不要になり、製作工程が簡易化されます。

また、マスク本体へマスクと材質が異なる耳ひも (ゴム部は天然ラテックスゴム、糸部はPEの場合) を溶着することができるため、一つの設備で製品が製造することが可能です。超音波溶着機を用いたマスク製造が今後増えてくると予想されています。

参考文献
https://www.dukane.jp/technology/feature/
https://www.sedeco.co.jp/item/uw/mishin/
https://www.dukane.jp/technology/horns/
https://www.avio.co.jp/products/assem/lineup/ultrasonic/horns.html
https://www.honda-el.co.jp/hb/3_1.html

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