シールワッシャとは
シールワッシャ (英: Seal Washer) とは、ワッシャの内側部分に合成ゴムのシール部を付加し、ボルトなどで締結時にシール部を圧縮し、ねじ外径や頭部と部材穴部のスキマを埋めて漏れ防止機能とするガスケットの1つです。
従来のワッシャと同様、頭付ボルトや通しボルト、ナットなどと一緒に使用します。ワッシャとしての締結面積に圧力を均等に分散する機能を持っていながら、パッキンなどに代わりねじ締結部やフランジ部分の締結部の液体漏れを防ぎ、同時に外部からの液体やほこりの侵入も防ぎます。
様々なボルトサイズに対応し、取り扱いも簡単である為、様々な用途に使用できる部品です。
シールワッシャの使用用途
シールワッシャは、主に自動車などの車両、航空機、建設機械、農業機械、工作機械など油圧・空圧を用いた機器の配管や、冷凍機器のパイプラインの締結部のシールとして用いられます。液体の漏れを防止したい部位の頭付ボルト・通しボルト・ナット部 、ドレンプラグ、給油プラグやパイプフランジ部継手、その他のボルト・ナット部などに有用です。
また、液体やほこりの侵入を防ぎたい部分のボルト・ナット部にも使用可能で、幅広い範囲で活用されています。
シールワッシャの原理
シールワッシャの主な原理は、「面圧の均等化」です。部品が締結される際、ボルトやナットの力が均等に部品全体に分散されることによって、部品同士の接触面に均等な力がかかります。その結果、部品同士がしっかりと密着し、部品の緩みや振動が最小限に抑えられます。
ゴムシール部でさらに表面を潰しスキマを埋め、平坦化することによって面圧を広範囲に均等にかけ、効果的な密封および固定が可能です。また、シール部にリップ構造を持つため、締結時にボルトの座面がリップ部分を圧縮し高いシール性を発揮します。
これにより、従来の銅ワッシャや液体パッキンに代わり締結部分の漏れを防止することが可能です。
シールワッシャの種類
シールワッシャは、ねじ山に対しシールリップの締め代有無の2種とそれぞれにワッシャ片面にゴムを付加したタイプがあります。
1. シールリップの締め代有りのタイプ
図1. 締め代有りのシールワッシャの組付け状態例
締め代有りのタイプは、締結時にねじ山までシール部が潰され高い密封性とゆるみ止め効果を持つシールワッシャです。締め付け時にシール部のリップとねじ山が接触するため、ねじの締め付けトルクが増したり、締め付け時にリップを傷付けたり、ねじ山でリップを切ってしまったりする恐れがあります。
そのため、組付け時にねじ山に合わせてシールワッシャも回転させながら組み付けるなど注意が必要です。
2. シールリップの締め代無しのタイプ
図2.締め代無しのシールワッシャの組付け状態例
締め代無しのタイプは、締め付け時にねじ山にかからないため、通常のワッシャと同様に容易に組付けができるシールワッシャです。シール部は、ボルト頭面、座面部のみなので、締め代有りより密封性は劣ります。
3. ワッシャ片面にゴムを付加したタイプ
図3.ワッシャ片面にゴム付加のシールワッシャの組付け状態例
ワッシャ片面にゴムを付加したタイプは、取り付け面の表面が多少荒い場合でも、締結時にゴム面が潰されることで面を均一化し漏れ防止と面圧均一化できるシールワッシャです。
シールワッシャのその他情報
1. シールワッシャの利点
一般に液体漏れを防ぐ場合は、パッキンやOリング、シール剤などを使用しますが、部材同士の接合はボルト等のねじ締結が多く使用されます。この場合、ねじ締結部周辺もシールする必要があり、シール面の拡大やパッキンが複雑な形状になります。
ここでシールワッシャを使用することで、ボルト部周辺のシールが簡易になり、全体の省スペース化やパッキン形状の単純化が可能です。深座ぐり穴に対応したシールワッシャもあり、六角穴付きボルトと併用することでボルト頭を埋めた状態でも使用できます。
また、締結時にシール部を圧縮することで、ボルト頭面や座面のスキマを埋め摩擦を増やすため、ボルト・ナットのゆるみ止め効果があります。
2. シールワッシャの材質
一般的なシールワッシャの材料は、本体がSPCCやSUS304など、パッキン部分がNBR (ニトリルゴム) でできており、耐熱温度は120℃前後です。パッキン部分のゴムに耐薬品や耐熱、耐候などの機能を持たせた特殊ゴムを用いたものもあります。
それぞれ性質が異なるので、耐熱温度や締め付けトルクについては使用するシールワッシャのメーカカタログの確認や問い合わせすることをおすすめします。
参考文献
http://www.musashi-os.co.jp/sealwasher.html
https://www.nbk1560.com/products/specialscrew/nedzicom/screwparts/SWS/