ダイヤブリック

ダイヤブリックとは

ダイヤブリック

ダイヤブリックとは砥石や研磨器の修正用の砥石のことです。目詰まりを取り除いて装置をメンテナンスするために用いられます。ブロック状のものがほとんどで硬度や粒度は様々です。修正を行う研磨器に応じて適切なダイヤブリックを使用する必要があります。また、装置の研磨性能を回復させるだけでなく、発熱を防いで刃先が高温になることを抑えることもできます。長年の使用によって目詰まりを起こし、発熱が激しい研磨機には必ず必要なものです。

ダイヤブリックの使用用途

ダイヤブリックは研磨器の修正やメンテナンスに用いられます。特に、グラインダーを使用する際には必ず一緒に使う必要があります。グラインダーは回転運動によって研磨や切削を行う機械ですが、使用すればするほど性能は下がっていきます。研磨された物体が削れて砥石の中に侵入するからです。侵入した金属などは研磨性能を下げるだけでなく、刃先と摩擦を引き起こして熱を発生させます。高温になると使用ができなくなる場合があるので、必ずダイヤブリックを用いてメンテナンスを行う必要があるのです。

ダイヤブリックの原理

ダイヤブリックは主にグラインダーなどの研磨機の性能を回復させるために使用されます。ここではその構造や特徴についてご紹介していきます。

ダイヤブリックはブロック状のものがほとんどで、様々な素材で作られています。例えばグリーンカーボナイトやホワイトアランダムです。これらは硬度が非常に高いため、硬い砥石のメンテナンスにも使用することができるのです。粒度も様々なので、修正する研磨器に応じて適した素材を選ばなければなりません。また、中には作業時に潤滑油を使用する必要があるものや使用回数に限りがある物があるので注意が必要です。

使用方法は簡単で研磨機に押し当てるだけです。グラインダーに使用する場合は回転させた刃に押し当てることで目詰まりを除去していきます。このときに取り除かれた金属の粒子などが飛び散る可能性があるので保護めがねを装着する必要があります。目詰まりを起こした金属は研磨機の刃と摩擦を起こし徐々に発熱します。特に高速回転するグラインダーでは高温になってしまうこともあるため、必ずダイヤブリックを使用してメンテナンスする必要があります。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/vona2/fs_processing/T0500000000/T0522000000/T0522080000/

CO2インキュベータ

CO2インキュベータとは

CO2インキュベータ

CO2インキュベータとは、細胞を生理的な条件で培養するための培養装置です。

細胞培養には温度や湿度、pHの制御が極めて重要で、これらが適切でないと細胞の機能に影響を及ぼすだけでなく、最悪の場合死滅してしまいます。

CO2インキュベータはこうしたパラメータを正確にコントロールすることで細胞機能を正常に保ち、細胞を用いた実験をサポートする装置です。特に炭酸塩でバッファされた培地のpHを一定に保つために炭酸ガス (CO2) を供給できることが特徴です。

CO2インキュベータの使用用途

CO2インキュベータは、細胞の機能や健康状態をできるだけ生体に近い状況で培養するために用いられます。新規薬剤のスクリーニングなどを行う際は、候補薬剤を培養細胞に添加することでその効果を検証します。薬剤の効果を正しく評価するには、培養細胞が生理的条件に近い状態にあることが前提です。

その他、基礎生物学的な研究で細胞の機能を評価する際や遺伝子導入実験を行う際も、適切な条件で細胞を培養・維持することが実験の成否につながります。

CO2インキュベータの原理

CO2インキュベータは、庫内のCO2濃度を5%と高濃度に調整することで、培地中の炭酸イオンと庫内CO2ガスとの平衡を維持するため、培地の炭酸イオンが一定濃度に保たれます。これによって、培地のpHを生理的条件に近い7.4近傍に維持することが可能です。

培養を細胞するための培地の多くは弱アルカリ性ですが、pHを7.4近傍に調整するために炭酸水素ナトリウム (NaHCO3) などの炭酸塩が添加されています。通常の大気中ではCO2濃度は0.05%以下のため、培地中に含まれる炭酸イオンの平衡状態が崩れ、培地から大気中へ炭酸ガス (CO2) として放出されてしまい、培地のpHは上がり (アルカリ性に偏り) ます。

CO2インキュベータは、パラメータを各種センサーでモニターしながら、設定した値に保たれるようにフィードバックをかけるのが役割です。培養温度は哺乳類細胞であれば37℃、湿度は95%以上に保たれます。湿度の低下は培地から水の蒸発を促進し、培地成分の濃度上昇や浸透圧の変化を引き起こしてしまいます。

CO2インキュベータのその他情報

1. CO2インキュベータの酸素濃度

CO2濃度は多くの場合5%程度に設定されます。このとき、庫内の酸素濃度は大気と同じ約20%です。CO2インキュベータは、CO2の濃度をコントロールする装置であり、酸素濃度の調節機能はついていないためです。

ただし、培養装置の中にはマルチガスインキュベータという酸素濃度を調節できるものがあります。また、CO2インキュベータに後付けできる酸素コントローラーと呼ばれる装置も存在します。これらを使用し酸素濃度を低濃度にコントロールすることで、生体内に近い条件で培養した細胞の応答を見ることができます。

2. CO2インキュベータの掃除方法

CO2インキュベータでは細胞の培養に適した環境であると同時に、汚染菌にとっても繁殖しやすい温度や湿度となっています。インキュベータ内の定期的な清掃は、汚染菌の繁殖やコンタミネーションを防ぐために重要です。清掃頻度は2週間から1か月に1回が目安です。

庫内の掃除
庫内表面や棚は、絞ったアルコール綿で拭き取ります。扉の解放時間が長くなるとCO2濃度や温度、湿度が低下してしまうため、手早く清掃を行います。棚を取り外せる場合は、洗剤と水で洗浄し乾燥させた後に再度取り付けます。

インキュベータ用の清掃薬剤を使用する方法も効果的です。培養物を庫内に入れたまま庫内表面をスプレー清掃できるタイプもあります。

加湿バットの掃除
湿度を保つためにバットへ補給している水には通常不純物の少ない蒸留水が用いられますが、水カビやバクテリアが繁殖する場合もあります。水の中に防腐剤を添加しておくと尚良いです。防腐剤には、濃度0.2~0.3%のオキシペンMや0.5%のS.D.S、0.02%のヒビテン液、0.1%のEDTAを使用します。

加湿バットは水の交換時に清掃を行います。洗剤と水で洗浄し、滅菌水をかけて水気を拭き取ります。汚れが見られない場合には、洗剤を使用せず水洗いだけでも問題ありません。

参考文献
https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/cell-culture-environment/
https://cellbank.nibiohn.go.jp/legacy/information/history/takaoka/documents/co2comment.htm
http://www.geochem.jp/qanda/answer/015.html
https://www.cosmobio.co.jp/product/detail/disinfecting-waterbaths-incubators-blg.asp?entry_id=15286
https://files.yamato-net.co.jp/support/y-wins/pdf_manual/ip400.pdf

CCDカメラ

CCDカメラとは

CCDカメラ

CCDカメラは、画像センサーにCCDを用いたカメラです。CCDとは、「Charge Coupled Device」の頭文字を取ったもので、電荷結合素子と言います。1982年にCCDを用いたカメラが実用化しました。

近年は、CMOSセンサーの技術革新によって、性能やコストの点で優れたCMOSセンサーに置き換えられています。しかしながら、一部の研究用途においてはCCDカメラが現役で活躍しています。CMOSに比べると写真のコントラストが強くなる傾向があり、趣味の世界では好んで使用する人もいます。

CCDカメラの使用用途

一部のコンパクトデジタルカメラでは、CCDセンサーが採用されていますが、一般向けのCCDセンサーはほとんど開発が終了しています。今後は、CMOSセンサーに置き換えられていく可能性が高いと言えます。

しかし、研究用途では重宝されるケースが多いです。例えば、生体分子の画像化において顕微鏡と組み合わせて利用されます。特に一分子の画像化は微弱な蛍光を検出するため、顕微鏡側の工夫とカメラ感度が重要です。CCDは感度が高いことが特徴と言えます。

さらにEM(electron multiplying、電子倍増)CCDによって検出信号を増幅すると、最大で1000倍程度まで検出感度を向上できます。

近年のCMOSセンサーは、量子収率の向上によって一分子蛍光の検出もカバーできます。ただし、一分子蛍光が微弱であるときは、信号増幅可能なEMCCDカメラの方が有利です。

CCDカメラの原理

CCDカメラは、レンズなどの光学系を通してフォトダイオードのアレイ(CCD素子)で構成されるCCDセンサーに結像させます。CCDセンサーは受光用と転送用で上下に分割されます。

受光用のCCD素子に光子が飛び込むと、光電効果で電子が発生し、CCD素子が電荷を蓄えます。各CCDに溜まった電荷は転送用のCCDに転送され、増幅器で電流の増幅が行われます。増幅された電流をCCDカメラの制御基板によって演算して、画像データへ変換します。

EMCCDでは増幅器に送る前の段階で、転送電荷に電圧を印加して電子倍増を行います。これは衝突電離という現象を利用したものです。電子を倍増するEMCCDでは一光子の検出も可能で、光子数の測定も行うことができます。

ただし、電荷の転送は一列全てのCCDで電荷が十分にたまらないと行われません。これが律速となって転送速度には限界があります。

CCDカメラの種類

1. CCD素子の種類

フルフレーム型
フルフレーム型CCDは標準的なCCDで、理化学計測向けには最も感度が高く、ダイナミックレンジが大きいです。また、読出し時には素子に光が当たらないように遮光用シャッターが必要です。

フレームトランスファー型
フレームトランスファー型は受光用CCDと画像保管用CCDを2種類有したタイプです。受光した画像を一時保管するCCDに転送し、次を露光している間に保管している電荷を読み出す仕組みです。シャッターが不要な反面、2倍の面積のCCDを必要とします。

インターライン型
インターライン型CCDは1つの素子の中に受光部と格納部が配置されたタイプです。ビデオカメラなどのCCD素子がこのタイプになります。シャッターは不要ですが、開口数がフルフレームに比べて小さいです。

2.【用途別】CCDカメラの種類

分光用カメラ
画像の分光スペクトルが得られるカメラです。撮影範囲内の分光特性を一度に計測できます。食品の鮮度の診断、異物の検出、工業分野では製品の色の管理などの応用があります。

生体観測用カメラ
顕微鏡に取り付けて生物の微細な動きの観察や極微弱光のイメージを観察する目的で冷却型CCDカメラが普及しています。重要になるのは高感度、高解像度、高速度です。

X線カメラ
軟X線~硬X線の範囲でX線CCDカメラが広く使われるようになってきています。CCDカメラは高感度、またダイナミックレンジが広いことが他の検出器と比較して優れています。

高速カメラ
秒速100コマ以上のカメラを高速度カメラと呼びます。自動車の衝突実験や工場の製造工程の管理など、産業用に多く使われるようになってきています。

CDDカメラのその他情報

C-MOSカメラとの違い

CCDセンサーは電極の電荷をバケツリレーのように外部に取り出す方式です。C-MOSセンサーは各画素がフォトダイオードを持ち、半導体スイッチで高速切替しながら画素から直接信号を読み出します。したがって、下記のような違いがあります。

CCD=消費電力×/画質◎/価格×
C-MOS=消費電力◎/画質〇/価格◎

このように、画質はCCDのほうが優れており、価格はC-MOSの方が安価となります。

参考文献
https://andor.oxinst.com/learning/view/article/comparing-scmos
https://hamamatsu.magnet.fsu.edu/articles/emccds.html
https://www.tem-inc.co.jp/contents/small-camera/167/
https://www.tel.co.jp/museum/exhibition/principle/cmos.html

スプリングプランジャー

スプリングプランジャーとは

スプリングプランジャーとはワークの位置決めや固定のために使用される部品の一つです。プランジャには他にもボールプランジャーやインデックスプランジャなどがありますが、スプリングプランジャーは先端がピンになっています。先端のピンはボールよりもストロークが長いため、位置決めや固定以外にも部品の押し出しに持ち入られることがあります。金属の加工機械や印刷機械、半導体製造現場で主に用いられている機械部品です。

スプリングプランジャーの使用用途

スプリングプランジャーはワークの位置決めや固定のために様々な機械で使用されます。内部にバネが内蔵されており、先端が相手側の穴や溝に入ることで位置が決まったり固定したりすることができます。また、スプリングプランジャーは金属や金型のプレス機械にも用いられます。先端がピンでできているため、ボールの場合と比べてストロークが大きくなります。位置の調節が容易にできるため位置決めだけでなく、プレスされる物体の突き出しのためにも用いられます。

スプリングプランジャーの原理

スプリングプランジャーは先端部分のピンによって固定や位置決めをしています。ここではその原理や構造についてご紹介します。

プランジャの構造は単純でボールやピンなどの先端部分とスプリングと呼ばれるバネでできています。物体に押しつけられるとばねは縮み、先端部分は内部に収まります。そして、穴や溝の部分になると張力によって先端が飛び出し、固定したり位置をきめたりするのです。単純な仕組みですが簡単に位置決めが可能で、様々な産業機械に用いられています。

プランジャは大きく分けてボールプランジャー、スプリングプランジャー、インデックスプランジャの三つがあります。構造はほとんど同じですが、用途に応じて適した物が用いられます。ボールプランジャーは先端がボールになっているため滑らせた動かすことに適しているため、摺動部の位置決めに用いられます。また、インデックスプランジャは手動でピンを引くことができるため、位置決めを解除したり再度行う場合に適しています。さらに、スプリングプランジャーは先端のピンの長さによってストッパーとして用いられたり、ワークの突き出しに使用されたりします。

参考文献
https://www.imao.co.jp/introduce/plunger.html
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0142.html

AFM (原子間力顕微鏡)

監修:日本カンタム・デザイン株式会社

AFM (原子間力顕微鏡) とは

AFM

AFM( 原子間力顕微鏡 、英: Atomic Force Microscope) は SPM( 走査型プローブ顕微鏡 ) の一種で、ナノメートルサイズの試料の形状を観察できる顕微鏡の総称です。試料にプローブ(探針)と呼ばれるナノメートルレベルの先鋭な針を近づけ、表面の相互作用にもとづいて表面形状をナノスケールの分解能で測定できます。

もっとも一般的な用途は、ナノメートルスケールの高さ像を得ることです。光学顕微鏡やレーザー顕微鏡では見えなかった形状や正確な高さ情報が得られます。また、電子顕微鏡のように測定環境や試料の導電性も選びません。また、イメージングだけでなく、プローブを試料との間の力学応答(力学 – 距離曲線)をピコニュートンからナノニュートンの分解能で得ることができます。

AFM (原子間力顕微鏡) の使用用途

AFMは、ナノスケール (1nm=10-9m) からオングストローム (0.1nm) レベルで、表面の凹凸構造をあきらかにできることから、産業分野では主に検査目的で使用されます。

例えば、半導体基板の表面処理の均一さや粗さを測定や、金やなどの金属をもちいた電極のメッキの腐食や劣化を検査するのに用いられています。 また、研究用途としては、タンパク質などの生体分子の反応や構造変化を低侵襲で観察するために用いられています。

1. コンタクトモード

カンチレバーとSampleの間に働く斥力が一定になるようにフィードバックをかけながらSample表面を操作するモード。AFMでは最も標準的な測定モードです。

AFM

図1. AFMの使用例

2. ノンコンタクトモード/ダイナミックモード

呼称は、各メーカー事に異なりますが、カンチレバーを共振周波数付近で振動させます。この状態でカンチレバー先端が試料に接近するすると振幅が変化します。この現象を利用して振幅が一定になるように動作させ、Sample高さ方向の変位を取得するモードです。

AFM (原子間力顕微鏡) の原理

AFMの原理

図2. AFMの原理

AFMはカンチレバーと、試料表面に作用する原子間力によって、カンチレバーの変位を検出することで測定を行います。 最も一般的な変位の検出法は、カンチレバーの変位をフォトダイオードによって検出する方法です。

カンチレバーの裏側の平面に光を照射して反射光をモニターし、原子間力によってカンチレバーが試料表面に引き寄せられると反射光の角度が変わるので、これを検知して再びカンチレバーの角度を修正するようにフィードバックがかかります。このときの制御パターンが表面の凹凸の形状として可視化されます。このような検出法を光テコ法とよびます。

もう一つは、ピエゾ素子を用いてカンチレバーを上下に振動させ、このときの振幅、位相、周波数をモニターする方法です。これらが一定になるようにフィードバックをかけカンチレバーを走査することで測定を行います。

また、カンチレバーのしなりを測定し、かかる力を直接測定する方法もあります。特に細胞などの生体試料の観察に用いられますが、この場合は表面形状の測定というより、膜タンパク質の局在や細胞の力学的な特定を測定するために用いられます。

AFM (原子間力顕微鏡) の特徴

・ SPM の一種で、正確な高さ像を高分解能で得られる
・ 試料の導電性・絶縁性を選ばない
・ 環境を選ばない(大気中・ガス中・真空中・液中)
・ 高さ像以外の相互作用も実空間マッピングできる
・ 微小な力 (pN – nN) を制御して非破壊測定が可能である
・ 力学応答によって硬さや分子間相互作用をマッピングできる

AFMの測定例

上記のような特徴からAFM は高い分解能と汎用性を持ち、材料科学、ライフサイエンス、半導体工学など幅広い分野で利用されています。産業分野でも、プロセス検討や品質管理、欠陥解析といった用途で用いられています。そのため、数多くのメーカーがさまざまな AFM を開発しており、それらをすべて網羅して比較検討することはなかなか難しいです。AFM の原理やさまざまな測定モードについては参考文献 [1],[2] などを参照ください。

AFM (原子間力顕微鏡) の選び方

1. 必要な分解能と測定範囲

測定の目的によって、必要な分解能や測定範囲は大きく異なります。研磨加工を例にとると、研磨後の面粗さ (Rq) が数 nm 程度であれば安価な AFM でも十分に評価できます。しかし、CMP 研磨による試料の 0.1nm 未満の粗さの差まで評価するには、より高分解能・低ノイズのハイエンド機が必要となるでしょう。また、生体試料の液中測定を例にとると、XY 方向に数 10µmを超える細胞を観察したいのか、タンパク質など生体分子一つ一つを 100nm 四方の範囲で観察したいのか、によって選定するAFM は異なるでしょう。

ほとんどの AFM はナノスケールレベルの位置制御をピエゾ素子(スキャナ)を用いています。このスキャナは pm オーダーの伸縮が可能である一方、伸縮の範囲は大きくありません。市販されている AFM の XY 方向のスキャナサイズは 10 ~ 100um、 Z 方向は 1-20um 程度のものが多いです。スキャナの XYZ の範囲を超える測定はできません。試料のどれくらいの範囲を測りたいか、また、その凹凸の幅がどれくらいかを確認しましょう。範囲の異なるスキャナを交換できる装置もあります。

装置の分解能は、これらスキャナをどれくらい細かい刻みでデジタル制御できるかという計算上の分解能と、その装置内の内因ノイズの総和で決まります。計算上の分解能は、メーカーの装置仕様の中の ADC/DAC のビット数で計算することができます。しかし、これはあくまで単純計算した刻みであって、装置のノイズレベルの方が大きければ大きい方が装置の分解能となります。実際のところ、近年の半導体技術の進歩によって ADC/DAC は高速・高帯域になってきており、この計算上の分解能はノイズレベルを下回ることが多くなりました。特にハイエンド AFM の装置の分解能を比較する場合には「ノイズレベル」を参考にしましょう。

なお、高い分解能を求める場合、外因性のノイズ(建物や床の振動、周囲の音)が大きくにデータに現れてきます。AFM 用の防振台や防音箱は必須となるでしょう。
また、ピエゾスキャナの範囲を超えるミリメートル単位の移動や位置合わせも行いたい場合があります。たとえば、広いウェハー内の決まった位置を自動でスキャンしたい場合などです。その場合は電動ステージの有無とその可動範囲を確認しましょう。 200mm あるいは 300mm のウェハーをカバーできるモーターステージを備えた AFM もあります。

2. 装置のスキャン範囲

AFM で表面を測定するには、試料を試料ステージに安定に設置できることと、プローブ先端がその表面にアクセスできることが必要です。

・ 板状のもの
厚さが数ミリ程度の板状のものであれば、どの AFM でも測定が可能でしょう。たとえば、基板、スライドガラス、ウェハー、切片、ディッシュなどです ( 図 )。試料台に物理的に入り切らないものは、切断した小片にして測定します。磁石で固定するタイプの AFM の場合には金属の円盤に試料を固定します。

・高さ・重量のあるもの
各社 AFM のカンチレバーのマウント方法やヘッドユニットの構造はさまざまです数センチを超える厚みがある試料や、外縁のある容器内に試料を設置した場合、AFM プローブ先端以外の部分が先に接触してしまい、測定ができないことがあります。 AFM が許容する大きさ(外形と高さ)を確認しましょう。

また、重量のあるものはそのまま装置の試料台に設置できない、あるいはスキャナで走査できない場合があるので、最大荷重も確認しましょう。切断や加工によって試料自体を小さくできない場合、大型ステージを持つ AFM やカスタマイズ AFM を検討します。

3.装置の試料サイズとステージ形状

「試料大きさ(大きさ・高さ)がステージに入るか?」や「試料の大きさや容器が物理的に干渉しないか?」を考慮して選定をします。

例:測定したい試料が柔らかいサンプルや、動いたりするサンプルの場合。

AFM はプローブが 1 ラインごとの水平走査を繰り返して垂直に並べることで最終的な画像(フレーム)を得ます。もし、前のラインを走査した時にあった物体が次のラインを走査するときに動いたり、高さが変化するようだと、正しい像を得ることができません。そのため、プローブによる力によって簡単に転がってしまうもの、非常に柔らかいもの、動きのあるようなものは、AFM にとって非常に難しい試料と言えます。特にライフサイエンスの分野での液中測定でこのような試料が多く見られます。

このような試料を測定したい場合、一つの解決方法はプローブが試料に与える力が小さい測定モードを備えている AFM が選定することです。プローブを試料と間欠的に近づけることで試料へ与える垂直方向・走査方向の力を抑えます。カンチレバーを共振周波数で振るダイナミックモードは各社とも標準で備えています。さらに、非共振周波数で振動させるモードを備えている AFM は、非常に柔らかい試料や凹凸の大きな試料にも対応できるという特長があります (Bruker 社 PeakForceTapping, Nanosurf 社 WaveMode など )。

さらに進んだ解決方法は、物体や分子の動き自体を観察できるくらい高速に走査を終わらせることです。このような AFM は高速 AFM(HS-AFM) とよばれ、1 秒間に数枚から数十枚の撮像が可能です。(RIBM 社 , Bruker 社)ビデオフレームレートで像が得られる AFM は分子の動きをリアルタイム観察できることから、画期的な発見が数多く発表されています。高速性能とスキャナ範囲はトレードオフの関係なので、HS-AFM を選定する際には高速性能 (fps) とスキャナ範囲が研究や測定の目的に適しているか確認しましょう。

4. プローブの選定

使用するプローブも目的に合わせて考慮します。目的によって形状、材質、表面材質などが異なるさまざまなプローブが用いられます。特に、プローブの形状は分解能や得られる形状に大きな影響を与えます。

図のように、通常のプローブよりも先鋭化したプローブであれば、より分解能の高い像が得られます。アスペクト比が高いプローブであれば、深いトレンチ形状を正しく得ることができます。硬さ測定や相互作用測定ではコロイドプローブが使われることがあります。CD プローブは垂直なサンプル壁面を追跡でき、錐形のプローブでは測定出来ない臨界寸法を得ることができます。

形状以外にも、電気測定や磁気測定に用いるプローブ表面に金属膜をコートしたプローブがあります。プローブの材質自体が導電性のダイアモンドや PtSi のものもあります。目的とする測定方法と適したプローブについて、AFM メーカーあるいはカンチレバーメーカーに問い合わせると良いでしょう。

AFM (原子間力顕微鏡) のその他情報

1. AFMを使用することで分かること

AFMを活用することで検知可能な力として引力、斥力、端子先端と資料の表面の付着力、結合力が挙げられます。 AFMは触媒分野でも活用されています。活用例を下記に挙げます。

  • 単結晶のゼオライトと層状の粘土鉱物の原子観察ができます。
  • 原子レベルで平滑な表面を得ることができる雲母劈開面を利用して、その上に蒸着したパラジウム触媒で数nmの微小なパラジウム粒子の観察ができます。

AFMは測定をするにあたって、資料に特別な前処理を必要としないことに加え、大気・液体中などの幅広い環境で測定ができるという特徴があります。この特徴を活かして、表面局所領域での吸着現象や化学反応課程を測定する手段として使用されています。測定例として、やわらかい有機化合物の吸着過程の測定があります。 探針を修飾することで原子間力以外の力を選択的に測定することが可能です。一例として、探針に有機単分子膜で化学修飾することで化学センサとして機能させることができます。

2. AFMのフォースカーブ

フォースカーブは相互作用力の測定に活用されています。探針を往復運動させて、測定資料と探針の接触と引き離しを繰り返して測定されます。この往復運動によって探針と資料表面の間の力と距離の関数からフォースカーブを測定します。

フォースカーブはカンチレバー不安定性により本来のフォースカーブを追跡できずに、実測のフォースカーブがゆがんでしまうことがあります。この問題を避けるためには、力の配向に対して適切なカンチレバーを選択する必要があります。

空気中でのフォースカーブ測定では接触から引き離しまでにファンデルワールス力の他に表面張力に基づく凝着力とメニスカス力が測定されます。 フォースカーブ測定を固体表面の酸ー塩基の評価に応用された事例もあります。

3. AFMとSTMの違い

STMは超高真空中で高い原子分解能を持ちますが、導電性を持たない資料の測定や大気中で起こる資料表面の汚染の影響を強く受けるという点があります。 AFMは資料と探針の間に働く力を検出するので、導電性を持たない資料でも測定ができ大気中でも測定も可能です。 

参考文献
[1] 分析化学実技シリーズ , 走査型プローブ顕微鏡 , 共立出版 (2017)
[2] ナノテクノロジー入門シリーズ , ナノテクのための物理入門 , 共立出版 (2007)
[3] 表面化学分析 – 走査型プローブ顕微鏡に関する用語 , JIS K 0147-2 (2017)
[4] Januszartur, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Procesor_486_AFM_J_REBIS.png
[5] Chychderivative work: Materialscientist, Public domain, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:AFMimageRoughGlass20x20.JPG
[6] Moslem Mansour Lakouraj, Nazanin Bagheri, Vahid Hasantabar, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Atomic-force-microscope-AFM-image-of-NCC.jpg
[7] Quantitative Data Processing in Scanning Probe Microscopy, Petr Klapetek, Elsevierhttps://www.an.shimadzu.co.jp/surface/spm/sol/faq/faq1.htm

本記事はAFM (原子間力顕微鏡)を製造・販売する日本カンタム・デザイン株式会社様に監修を頂きました。

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銅管用継手

銅管用継手とは

銅管は銅製の配管のことで加工性が良く耐食性も良いので以前は家庭用の配管でもよく使用されています。

銅管用継手はこの銅管専用の継手であり、幾つかのタイプがあります。銅管を使用した場合は材質がですのではんだが使用でき、はんだ付け、専門用語ではろう付けと言いますが、配管を接続させる際にはこのろう付けが可能となり、低温で接合可能となります。

他にも銅管を差し込むだけで接合できる便利なワンタッチ継手やねじで締め込むタイプの継手などもあります。

銅管用継手の使用用途

銅は耐腐食性や加工性が良いだけでなく値段が安いので経済的であり、家庭内では給水や給湯の配管として、また医療用や空調用などにも使用されています。

一方で、水道用の配管とすると配管の側壁から銅が溶け出す恐れがあるので、配管内部に無害な錫をコーティングして溶出を押さえているタイプの配管もあります。銅管用継手はこの銅の配管の引き回しを行う際に延長や分岐を行うために使用されており、コストや状況に応じて様々なタイプの銅管用継手から最適な物が選択されます。

銅管用継手の原理

高耐久の配管と言えばステンレス製の配管が思い浮かびますが、銅配管はステンレス配管と比較すると耐久性は劣りますが、値段では勝ります。一方で、低コストと言えば塩ビ配管などが思い浮かびますが、金属製の配管と比較すると耐久性では非常に劣り、特に径が細くなればその強度は著しく下がりちょっとした衝撃で壊れてしまいます。そこでコストと耐久性などの兼ね合いから良く選択されている素材が銅です。

はんだで接続する銅管用継手は、はんだでろう付けしますので継手の形状が非常に単純です。はんだに入っている錫は銅と合金を作りますので、錫を介して銅同士が接続できます。ろう付けの際にはトーチではんだを燃やします。このため、壁や燃えやすい物の近くでは使用できませんし、ある程度の技術が必要です。

そこで使用されるのがネジで締め込むタイプの継手や差し込むだけで接続できるタイプの継手です。銅管を差し込むだけで継手に接続できますので非常に便利です。また、Oリングでシールをしていますので配管と継手のサイズを合わせてしっかりと接続することでリークは無くなります。

参考文献
http://www.omn.ne.jp/~do/kkk.html

ネットワーク抵抗器

ネットワーク抵抗器とは

ネットワーク抵抗器は、一つの抵抗器を複数個連結させた複合部品です。主に電気電子回路にて用いられており、ネットワーク抵抗器を一つ使用するだけで複数個の抵抗器の役割を担うことができる素子となっております。

一つの抵抗器を複数個使用する必要がある場合に、ネットワーク抵抗器を使用することで、回路の高集積化やコスト削減に役立ちます。部品の形状は、ジャンパー線の足がついているディスクリート部品を連結させたリードタイプ、表面実装用のチップ部品を連結させた面実装タイプの両方があります。 

ネットワーク抵抗器の使用用途

電気電子回路において、同抵抗値の抵抗器が複数個必要になる時などに用いられます。例えば、基板上で同じ構成の回路が複数存在する場合、同じ抵抗値の抵抗器を複数個配置すると、基板の面積が多く必要となってしまいます。そのような時にネットワーク抵抗を用いることで、実装面積の削減が可能になり基板のサイズ縮小、高集積化を実現できます。また、同じ抵抗器を10個購入するのに比べ、抵抗器が10個接続されたネットワーク抵抗器を購入するほうが、コストが安く済むというメリットも考えられます。

ネットワーク抵抗器の原理

ネットワーク抵抗器は、一般に用いられるものでは抵抗器が複数個並列に接続された素子となっております。厚膜抵抗を用いるリードタイプでは、抵抗の役割を持つ厚被膜が並列に並べられており、各抵抗の片側に共通の電極がついていて、その逆側が素子の端子としてリード線に接続された構造となっております。さらに、外側がガラスコーティングで絶縁され、その外側が外装樹脂で覆われている構造により一つの素子を成します。
また、分圧抵抗の役割を成す素子も存在します。分圧抵抗として用いられるものは、直列に接続された二つの抵抗器の間から端子が出ています。
例えば、10Vの電圧を1/2の5Vに降圧したい時などに分圧機能を持つネットワーク抵抗器を用いることで、一つの素子を使用するのみで5V電圧を生成することができます。その他、抵抗値がすべて同じではなく2倍、4倍、8倍・・の抵抗値を持つ素子もあります。そのような素子をラダー回路等に用いることで、大幅な高集積化、コスト削減が可能になります。 

参考文献
http://www.sanadakoa.co.jp/product_J/pdf/resistors/mr.pdf

座繰りドリル

座繰りドリルとは

座繰りドリルとは、座繰り穴を開けるための工具です。

フォスナービットとも呼ばれ、電気ドリルやインパクトドライバーに取り付けることができるタイプもあります。座繰り穴とはネジやボルトを埋める円筒型の穴のことで、座繰り穴の中でネジやボルトを締めることで先端が木材から飛び出さず、表面が凹凸になりません。

座繰りドリルの刃は特殊で穴の底を平らにすることができるため、見た目を綺麗にしたり、構造上フラットな面が求められる場合に活用されます。

座繰りドリルの使用用途

座繰りドリルは、座繰り穴を形成するために用いられます。この座繰り穴は、ネジやボルトの先端が飛び出さないように様々な場面で必要です。例えば、建物に用いられる木材が挙げられます。

木材同士を結合させるためには大きなネジやボルトを使用しますが、先端が飛び出していると邪魔になったり構造支障をきたす可能性があります。また、自分でボルトを止めて組み立てる家具は、より見た目を綺麗にするために座繰りドリルを用いて座繰り穴が必要です。

1.穴あけ

 座繰りドリルは、さまざまなサイズと形状の穴を材料に開けるのに使用されます。これは木材、金属、プラスチックなどの材料に対して行うことが可能です。

2.カウンターシンク

ドリルビットを使用して、ネジが埋め込まれる位置にカウンターシンク (逆カウンターボア) を作成することができます。

3.リーマ穴

 穴の精度を向上させるためにリーマを使用する際に、座繰りドリルが利用されます。

座繰りドリルの原理

座繰りドリルは、座繰り穴を簡単に開けることが可能です。構造は通常のドリルとさほど変わりませんが、使用する刃が特徴的です。通常のドリルは先端がとがっているのに対して、座繰りドリルの刃は平らな円上になっています。

中心にはセンターと呼ばれるとがった刃があり、この部分が木材に突き刺さることでぶれることなく穴を開けることが可能です。その周りにはギザ刃が取り付けられており、これが回転することで座繰り穴を形成します。刃の形状は様々でウェーブ状になっている物や三枚刃になっている物もあり、穴の大きさや用途によって使い分けられます。

座繰りドリルで開けられた穴は座繰り穴と呼ばれ、建築現場や家具でよく目にする穴です。この穴の内部でネジやボルトを締めることで先端が表面に出ることなく止められるだけでなく、凹凸ができないため邪魔になることがないため、他の木材と組み合わせる建築現場では重要な工程です。

座繰りドリルの種類

1. 皿座繰り用ドリル

皿座ぐり用ドリルは、皿ネジの頭部分の締結させるために加工を施すための工具です。通常のネジと同様に頭を隠す目的にもなりますが、性質が違い皿ネジの頭部分がしっかりと固定されることでネジ全体を固定します。

皿座ぐりは通常の座ぐりドリルでの加工は難しく、皿座ぐり用ドリルを使用することを前提としています。

2. 段付きドリル

一般的な鉄板穴あけ用の段付きのドリルの他に、金属加工用の段付き座繰りドリルがありますが、主に使用される各ネジの頭に合わせて、平小ねじ用座ぐりドリル、さら小ねじ用座繰りドリル、六角穴付きボルト用座ぐりドリルの3種類があるため、うまく使い分けなければなりません。

しかし、これらの金属加工用段付き座繰りドリルを使用することにより、工具を交換せず一度の加工で下穴と座ぐり穴を同時に開けることができます。また、各ボルトの直径に合わせ作られており、使用するボルトの直径に合わせて選定する必要がありますが、工具交換の手間が省けコストの削減につながります。

座繰りドリルのその他情報

1. 使い方

座繰りドリルは、木材・樹脂・金属などの素材に穴をあけるための工作機械であるボール盤を使用して木材の加工を行う場合や、電動ドリルなど手動での加工する場合でも使用することができます。

いずれの加工方法でも共通するのが、下穴の加工です。座繰り加工を行う前には必ず下穴を開ける必要があり、下穴を開けないで加工をすると、ドリルが垂直に入らず正確な座繰り穴を開けることができません。その結果、ドリルの破損にもつながるため、座繰りドリルを使用しない加工方法もあります。

2. 安全対策

座繰りドリルは、高速回転する部品を持つ工作機械であるため、使用時には安全に注意する必要があります。適切な安全メガネや保護用手袋を着用し、ドリルビットが材料に入る前にモーターを起動しないようにすることも重要です。また、作業台がしっかり固定されていることを確認し、材料が適切に固定されているかを確認してから作業を行います。

ロッドエンドベアリング

ロッドエンドベアリングとは

ロッドエンドベアリング_図0

ロッドエンドベアリング (英: Rod End Bearings) とは、軸受ハウジングに、球面滑り軸受を組み込んだ軸受です。

ロッドエンド」「球面滑り軸受」「球面滑り軸受ロッドエンド」とも呼ばれていて、JIS B601で下記のように規定されています。

  • ロッドエンド
    部品間の相対運動及び部品間を連結するための,ロッドエンドハウジング及び軸受で構成する組立品
  • 球面滑り軸受ロッドエンド
    ロッドエンドハウジングとスタッド付き又はスタッドなし球面滑り軸受とで構成する組立品

ロッドエンドベアリングの使用用途

ロッドエンド ベアリング_図1

図1. ロッドエンドベアリングの使用例

ロッドエンドベアリングは、回転もしくは揺動運動を行う部品の連結や運動伝達し、建設機械や産業用機械、自動車、航空機などに幅広く使用されています。図1の使用例では、生産ラインの一部でエアシリンダーのピストンロッド先端にロッドエンドベアリングを取り付け、流れているワーク (製品など) を一時的に停止させ再び流れさせるような制御をします。

ロッドエンドハウジング端部は「おねじ」または「めねじ」で、連結棒などの端部に締結して使用します。2つの部品の固定や連結するために使用し、両部品の相対的な変位を球面滑り構造によって許容する機械要素部品です。

ロッドエンドベアリングの原理

ロッドエンドベアリングは、穴あけされた球体の内輪部分「ブッシュ (ボール) 」と、ロッドエンドハウジングに組み込まれた外輪部分は、球面接触で滑らかで柔軟な回転運動ができる連結部品です。

そのため、ロッドエンドベアリングを取り付けた軸と連結される部品には、回転や傾斜に自由度のある接続方法になり、人間の関節のような役割をすることができます。また、高負荷にも耐えられ、高重量を扱う場合にも適しています。

ロッドエンドベアリングの構造

ロッドエンド ベアリング_図2

図2. ロッドエンドベアリングの構造

ロッドエンドベアリングは、図2のように軸を挿入する内輪部分を「ブッシュ」と、ねじ加工され連結棒など他の部品と接続する部分を「ロッドエンドハウジング」で構成されています。ロッドエンドベアリングで部品同士を連結させる場合は、連結棒と呼ばれる軸 (ロッド) の両端もしくは片端がねじ切り加工されたオスねじを、ロッドエンドベアリングハウジング部分のメスねじにねじ込み使用します。

ロッドエンドベアリングのボール状の内輪中心部にあけられた穴に、部品のピンやシャフト、ボルトなどを差し込み、ナットなどで内輪とピンなどを締結します。ロッドエンドベアリングと連結棒のねじ込み深さで、部品間の距離と連結棒の長さを調整することが可能です。

ロッドエンドベアリングの種類

ロッドエンド ベアリング_図3

図3. ロッドエンドの種類

1. 形状による分類

ロッドエンドハウジングは、「おねじ」と「めねじ」の2種類があり、連結棒などの接続する部品の構造により選択します。この部分をJIS B1601では、「ロッドエンドシャンク」と呼んでいます。

2. 潤滑による分類

ロッドエンドベアリングの潤滑は、「給油式 (給脂式) 」と「無給油式 (無給脂式) 」があり、給油式はハウジングにグリースニップルが取り付けられています。給油式は、グリースガンなどでニップルからグリースを注入します。

無給油式は、潤滑性のある合成樹脂などが、ロッドエンドハウジング外輪部に組み込まれていています。グリースを給脂する必要がないため、給脂するための作業ができない狭い場所用や、メンテナンスフリー用途で使用されています。

3. 材質による分類

ロッドエンドの種類使用されている一般的な材質は、下記のとおりです。

  • ロッドエンドハウジング
    S35C、S20Cなどの機械構造用炭素鋼
  • ブッシュ
    SUJ2 などの高炭素クロム軸受鋼鋼材、銅合金、自己潤滑性合成樹脂など

また、全てが樹脂製のロッドエンドもあり、樹脂には固体潤滑剤が配合されていて、無給油・無潤滑で使用できます。金属製と比較して、軽量で油やグリースが不要で、粉塵などがある環境でも使用が可能です。

耐食性、耐薬品性などがあり、樹脂が振動を吸収できるため、振動を伴う用途にも適用できます。

4. その他

ロッドエンド ベアリング_図4

図4. リンクボール

その他の種類として、リンクボールがあります。ブッシュ部がおねじの軸 (スタッド) と一体になっていて、スタッド部を他の部品にねじ込むか、ナットで締め付け固定して使用します。また、ブッシュはゴム製のブーツで覆われ、水や粉塵の侵入を防止するとともに、内部にグリースなどの潤滑材を封入する構造です。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/g0080.html
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/208/

引張りバネ

引張りバネとは引張りばね

引張りバネは、引張り荷重を受ける働きで使われます。
別名で「引きバネ」とも呼ばれています。
バネ自体はコイル部とフック部から構成されています。
コイル部は初張力の有効活用と省スペースのため、らせん状に巻いた形になっています。
フック部はバネの両端部分に荷重を受けるために設けてあります。
フック形状は、使用用途に応じて多くの種類が存在します。
一般的には必要とする引張り強度が上がるとフック加工も複雑となり、加工コストも上がります。

引張りバネの使用用途

引張りバネの使用用途は、自転車のスタンドやワンタッチ傘、電車のパンタグラフ等で使われています。
引張りバネは、線材をコイル状に巻いたバネです。同じコイル状のバネに圧縮ばねがあります。
両バネの違いは荷重を加える方向が逆になっています。
引張りバネは左右から引っ張った後、戻る力を利用します。
これに対して圧縮ばねは左右から押した後、戻る力を利用します。
圧縮ばねは身近なところでボールペンやパソコンのキーボード等で使われています。

引張りバネの原理

引張りバネは、両端部分に荷重を受けるために用意されたフックがあります。
フック形状は用途により数多くありますが、ここでは代表的な3点を以下に説明します。

  • 逆丸フック
    安価なことから最も使われているタイプです。コイル部のひと巻きを捻り起こした形状で別名アメリカンフックとも呼びます。
  • 半丸フック
    取付け場所が狭いケースで使われているタイプです。
    コイル部の半巻き分を捻り起した形状で他のタイプより端部の角度が緩やかなため、折れ難いです。
  • 角フック
    角フックは端部を角形に加工したタイプです。
    平板に取付けるケースで使われており、別名ジャーマンフックとも呼びます。

次に引張りバネの材料は、主にピアノ線、硬鋼線、ステンレス線が使われています。
最も使われているのは安価で加工が容易なピアノ線です。
ピアノ線はJISで規格化されており、A種、B種、V種の3種類があります。
A種は靭性が高く、B種はへたり性が高いです。V種は耐疲労性に優れています。

引張りばねの使い方

ねじりコイルばねのような一定の可動に合わせるものもあり、可動したパーツを元の位置に戻す役割があります。使い方の一例としては、スプリングのフック部分をパーツに取り付け可動域にテンションを掛ける方法が一般的です。

古くから機械要素として重要な役割があり使用用途は多岐にわたり、多くの産業に利用されています。

引張りばねの重荷重

ばねの荷重についてはおおよそのものが規格化されており、各要素を計算し安全に使用可能か求める必要があります。

エンジニアの腕の見せ所である、ばねの一端の規格を、一部ではありますが下記にご紹介します。

直径3-自由長10 : 線径0.45 mm : 最大タワミ(max.mm)2.2 mm : ばね定数2.26 N/mm : 初張力(N)1.57 N : 最大荷重(N)6.47 N
直径3-自由長20 : 線径0.45 mm : 最大タワミ(max.mm)6.7 mm : ばね定数0.74 N/mm : 初張力(N)1.57 N : 最大荷重(N)6.47 N
直径4-自由長15 : 線径0.55 mm : 最大タワミ(max.mm)4.5 mm : ばね定数1.47 N/mm : 初張力(N)1.86 N : 最大荷重(N)8.43 N
直径4-自由長25 : 線径0.55 mm : 最大タワミ(max.mm)10.0 mm : ばね定数0.66 N/mmN : 初張力(N)1.86 N : 最大荷重(N)8.43 N
直径5-自由長15 : 線径0.7 mm : 最大タワミ(max.mm)3.9 mm : ばね定数3.14 N/mm : 初張力(N)2.45 N : 最大荷重(N)14.71 N
直径5-自由長20 : 線径0.7 mm : 最大タワミ(max.mm)6.9 mm : ばね定数1.77 N/mm : 初張力(N)2.45 N : 最大荷重(N)14.71 N
直径5-自由長25 : 線径0.7 mm : 最大タワミ(max.mm)9.6 mm : ばね定数1.28 N/mm : 初張力(N)2.45 N : 最大荷重(N)14.71 N

上記以外にも大きさや形が変わる毎に規格が変わりますので、使用する用途に合わせて変更しましょう。

参考文献
https://www.fusehatsu.co.jp/product/product-02.html
https://jp.misumi-ec.com/vona2/mech/M1200000000/M1202000000/M1202020000/
https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/kikaikiso_0305/
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/110302288510/
https://www.aoi-spring.co.jp/technology/pull/
https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/kikaikiso_0305/