ウォッチドッグタイマ

ウォッチドッグタイマとは

ウォッチドッグタイマ (英: Watch Dog Timer: WDT) とは、プログラムで動作する様々な機器の異常動作を検出してWDT割り込み信号を出力する電子回路です。

制御プログラムを実行するマイコンには一般的にWDTが内蔵されています。

ウォッチドッグタイマの使用用途

スマートフォン等のデジタル機器やエアコン等の家電製品、ロボット等の産業用機器、自動車に至るまで、様々な機器がマイコンで制御されています。

このようなマイコン搭載の機器は用途に応じて動作する内容が決まっているため、デバッグ済みの決まったプログラムによって動作する仕組みです。しかし、デバッグ時に想定されなかった稀なケースや周辺デバイスの故障等により、システムが異常な動作をする可能性があります。

マイコン制御下における異常動作の場合、システムにリセットをかけて正常な状態に戻す必要があります。特に自動車や航空機、産業用機器を制御するマイコンの異常動作は重大な事故につながる可能性があります。

WDTはこのような場合に備え、異常な動作状態を検知してマイコンに割り込みをかけてリセットすることで、システムを正常状態に復帰させることが可能です。

ウォッチドッグタイマの原理

WDTは決められた時間をカウントしており、この時間内に中央処理装置からのリセット信号を受け取ると最初からカウントをやり直します。万一この時間内にリセット信号が来なければ異常状態と判断し、割り込み回路に対してWDT割り込みの信号を出力してマイコンの動作がリセットされます。

ソフトウェア側では定期的にWDTリセット信号を出力するようにプログラムを設計します。これにより、プログラムが意図通りに動いている間はWDTがリセットされ、意図から外れた状態になるとWDTがリセットされず、異常として検出されるようになります。

タイマ時間の設定にはデジタル的に設定する方法以外にアナログ的に設定する方法があり、その場合は外付けの容量を変更することによって設定時間が調整可能です。

ウォッチドッグタイマの選び方

WDTは一般にマイコンに内蔵されていますが、システムに要求される信頼性が非常に高い場合は外付けの構成を選ぶ必要があります。

WDTはマイコンの異常動作を検出するためのシステムのため、マイコンに内蔵されている場合、もしWDTが起動するまでに何かしらの異常が生じた場合はその異常を検出できなくなります。

航空機など異常動作が重大事故につながるようなシステムでは、フェールセーフの観点から不足の事態に備えた外付けWDTの併用も必要です。

ウォッチドッグタイマのその他情報

ウォッチドッグタイマの動作モード

WDTにはマイコンの様々な異常を検出するための3つの動作モードがあります。

1. タイムアウトモード
最も標準的なモードで、一定期間内にマイコンからのリセット信号入力がない場合、マイコンが異常状態にあるとみなして割り込み信号を出力するモードです。

動作モードとしては標準的ですが、例えばWDTリセット処理のルーチン中に無限ループに陥ったような場合、WDTは定期的にリセットされるため、これを異常状態として検出することはできません。

2. ウィンドウモード
前述の無限ループのような異常状態も検出するモードとしてウィンドウモードがあります。 タイムアウトモードの基本動作に加えて、一定期間内に規定回数以上の信号が入力された状態 (ダブルパルス) を異常状態として検出可能です。

ウィンドウモードではタイムアウトモードのように、タイマ上限値を越えた場合に割り込み信号を出力するだけでなく、下限値を設定してこの下限値以内にリセット信号を受けた場合も割り込み信号を出力します。

このように、下限値と上限値の間 (ウィンドウ) を正常状態とするため、その値の設定とプログラムでのリセット処理を慎重に決める必要がありますが、高度な異常検出が可能となります。人命に関わるなどのシステムで、より安全性が求められるアプリケーションにはウィンドウモードのWDTが必要といえます。

3. Q&Aモード
さらに高精度の異常検出が可能なモードです。Q&Aモードでは予め決められたデータをWDTに送信し、WDTはマイコンから送られてきた信号が予定されているものと合致しているかどうかを判断し、正常か異常かを判断します。

プログラムの中で必要に応じて適宜このような処理をするため、高精度な異常検出が可能ですが、プログラムの記述難易度が高くなります。

参考文献
https://www.ablic.com/jp/semicon/products/automotive/automotive-watchdog-timer/intro
https://ednjapan.com/edn/articles/1510/19/news009_2.html

粉体計量機

粉体計量機とは

粉体計量機(英語:Powder weighing machine)とは、計量用の粉体を種類別に分けて保管しておく保管ケースと電子天秤の2つの構成から成り立つ測定機のことです。

通常作業者が素手で作業するには危険な粉体や測定精度を高める場合に使用します。

測定自体は保管ケースより測定用の粉体を電子天秤へ供給し測定する形となります。

粉を分散し供給することでダマになることを防ぎ高精度に測定するなどの技術開発が進んでいます。

粉体計量機の使用用途

粉体計量機は粉体を安全に温度・湿度を保ち高精度に分量を測定するための測定機です。

具体的な使用事例としては、以下のようなものがあります。

  • 絶縁用粉体の混載割合確認のための計量
  • 薬剤の研究開発における調合のための計量
  • 農薬の研究開発における調合のための計量

粉体を測定する上では、流動性が重要になってくるためクリーンルームや恒温室環境下での計測が推奨されます。

また粉体計量機自体に恒温環境が付帯しているものも存在します。

粉体計量機の原理

一般的な光電センサーは、水分子によって光を反射や拡散しながらも液体を検知・検出することは可能ですが、透明な水では光が透過すると同時に光の減衰量が非常に小さく検知することが困難であり、色のついた水や色の濃度が異なる水などでも減衰量が変わることで更に検知が困難になります。

一方、水検出センサーは、光電センサーと同様に投光側、受光側のセンサーで構成され、水分子に吸収される長波長の光には、主に1.45um(1450nm)の赤外光が用いられることが特徴です。

この水分子に吸収される長波長の光を水検出センサーに使用することで、透明な水、色のついた水、色の濃度が異なる水でも水分子に光が吸収し遮光されるため、安定して水を検知することができます。この水検出センサーの特徴から、光電センサーでは誤動作しやすい水滴や気泡、小さな気泡が蓄積した泡などの液-成分に水が使用されている場合、同様に水分子に光が吸収し遮光されるため、安定して水を検知することもできます。

参考文献
https://alpha-kabu.com/product/weight/zero

変位計

変位計とは

変位計(英語: Displacement meter)とは、測定対象物の高さ/厚さ/幅などの寸法測定に使用するものです。

様々な種類の変位計(変位センサー)が存在しているため、求める測定精度/使用環境/使用用途に応じて適切な測定器を選定する必要性があります。

多種類の変位計(変位センサー)が存在している結果、メーカー間の競争が激しくなっており、技術レベルの向上の著しい分野です。

変位計メーカーとしてはキーエンス社、三菱電機社、オムロン社などがFA業界では代表的な企業となります。

変位計の使用用途

変位計(変位センサー)は主に測定対象物の測定対象物の高さ/厚さ/幅など、寸法測定のために使用される測定器です。

具体的な使用事例としては、以下のようなものがあります。

  • プーリーなどの歯車加工工程における厚み、高さ、幅の寸法測定
  • 駆動モータコアの厚み、高さ、幅の寸法検査
  • 半導体基板の三次元形状測定に基づく高さ、幅の寸法測定

測定方法としては、以下の2つの手法が存在します。

光や磁界/音波などを用いた「非接触式」

対象に直接触れて測定する「接触式」

変位計の原理

ここでは紛体計量機の原理について説明します。

紛体計量機の計量方式は大きく4つの種類があります。

  • ①減量重量制御式

計量カップ内の原料の重量を測定することにより、フィードバック制御を行い、設定値に近づくようフィーダの回転数をコントロールする。

  • ②容積式

各種フィーダを一定の回転数で作動させ、供給量を一定に保つ方式。

供給量の精度を安定化させるためには、貯蔵槽の貯蔵量を常に一定に保つことが重要である。

  • ③ベルト式

ベルト上の重量とベルト速度を検出してベルト速度へフィードバック制御を行いながらコントロールする方式である。

  • ④ホッパー式

投入装置と呼ばれる別機構の設備を設置した上でホッパー内へ原料を投入し、設定重量に達した時点で投入動作を停止する。

紛体計量機メーカーとしては東洋ハイテック社、アルファ社、島津製作所社、などが業界では有名な企業となります。

5G(ファイブジー)技術の普及に伴う昨今のIoT化に伴い、各通信デバイスとの連携機能付与なども近年注目されています。

接触式の変位計

接触式の変位計とは、変位計本体部と可動部が有り、可動部の移動距離を測定します。ほとんどの変位計は距離の表示をする表示計を設けます。表示計は、変位計の仕様に合ったものを選定する必要があります。 表示部が付属しているものも有り、それらは ダイヤルゲージ、デジタルダイヤルゲージ、デジマチックインジケータなど、メーカーごとの商品名で呼ばれ、これらは主に機械加工現場などで使われ、測定工具の分野に含まれます。

接触式変位計には、おもに3つのタイプに分けられ、
1,リニアゲージと呼ばれる本体から伸び縮みする測定部が飛び出ていて、比較的短い距離を測定するタイプ
2,測定部がレール上をスライドして、上記タイプよりも長い距離が測定できるタイプ と
3,ワイア―エンコーダ―と呼ばれる本体部から巻き取り式のワイア―が伸びるタイプ が有ります。どのタイプも、測定できる距離が、測定部の可動範囲に限られます。 測定できる距離は、上記1,2,3,の順に長くなり、精度は3,2,1の順に高くなります。

非接触式の変位計

接触式の変位センサーに対し、可動部を持たない非接触式のセンサーが有ります。

レーザー変位計、過電流式、静電容量式、などが非接触式の代表的な測定方式です。この中でもレーザー変位計が用いられることが多くなっています。レーザー変位計は上下左右の移動だけでは無く、奥行方向も測定できるものが有ります。

非接触式は、被測定部が移動する時の抵抗にならない というメリットがあります。また、比較的短い距離を精度高く測定することに向いていますが、環境に影響されることが多く、光を妨げるガスや飛沫が有ったり、電気的なノイズが発生する場所では正しい距離が測定できないなど、それぞれのタイプごとに使用環境に影響を受けることが有ります。

近年はカメラで測定部を撮影し画像から距離を測定する方式も用いられるようになりました。

アナログタイプの変位計

変位計の種類のなかで、静電容量式変位センサーのことを呼びます。また、デジタルインジケータに対して、目盛板の付いたダイヤルゲージを呼ぶ場合も有ります。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/products/measure/
https://www.keyence.co.jp/ss/measure/hakaritai/

面積流量計

面積流量計とは面積流量計

面積流量計(英語: Area flow meter)とは、ガスや空気などの流体がある位置から他の位置へ移動したとき、その移動量を測定するものです。

様々な種類の面積流量計(ローターメーター)が存在しているため、求める測定精度/使用環境/使用用途に応じて適切な測定器を選定する必要性があります。

多種類のの面積流量計が存在している結果、メーカー間の競争が激しくなっており、技術レベルの向上の著しい分野です。

液体または気体の流量測定、パージ流体またはガスの測定などに使用される測定機器です。

面積流量計の使用用途

面積流量計は主に液体または気体の流量測定、パージ流体またはガスの測定などに使用される測定器です。

具体的な使用事例としては、以下のようなものがあります。

  • 薬液を注入する際の流量測定
  • 海洋石油プラットフォームの高圧流量測定
  • 都市ガスの家庭への供給における供給量測定

また計測方法としても接触方式、非接触方式の2点が存在するため、使用用途、目的に合わせた選定が重要になります。

  • 磁界/音波などを用いた「非接触式」
  • 対象を直接通して測定する「接触式」

面積流量計の原理

面積流量計は、テーパー管と治具類(ジョイント等)によって構成されています。

流体(液体、気体、蒸気)を流した際に生じる前後に圧力差による力のためにテーパー管が上部に押し上げられます。テーパ管との隙間の流通面積が増加するので、圧力差が減少してフロートはその有効重量と圧力差による力との均衡した位置で静止します。この時にテーパ管内のフロートの位置によって決まる流量の面積と通過する流量が等しくなるため、その位置を検出して流量を測定することができます。

参考文献
https://www.brooksinstrument.com/ja-jp/products/variable-area-flow-meters

電動スプレーガン

電動スプレーガンとは

電動スプレーガン

電動スプレーガンとは、電動式で塗料を噴射する塗料噴射機械のことです。

近年のDIYブームにより、家庭向けの販売が伸びている機器と言えます。電動スプレーガンは用途に応じて、いくつかの種類に分かれており、使用環境や用途に合わせて適切なものを選ぶことが重要です。

購入する際は、まず用途に合ったメーカーを選定し、商社経由やECサイト経由で発注するのが一般的です。より効率的かつ簡単に塗料を塗れるため、素人でもプロ並みの仕上がりを実現できます。

電動スプレーガンの利点は、均一な塗り面が得られることや、作業効率が向上すること、手間が省けるためDIY初心者でも扱いやすいことです。今後もDIYブームが続く中、電動スプレーガンはさらなる進化と普及が期待されています。

電動スプレーガンの使用用途

電動スプレーガンは、主に一般家庭でのDIY作業や製造業での筐体・車体への塗料塗布工程において、塗料の塗布を目的として使用されます。用途に応じて選ぶことで、最適なパフォーマンスを発揮します。手軽さや作業効率の向上が期待できるため、多くの人々に支持されているアイテムです。

電動スプレーガンは、用途に応じて大きく3つのタイプに分類されており、使用環境や条件に合わせて適切なタイプを選ぶことが重要です。

1. DIY作業時の塗料塗布

家具や壁など、さまざまなものの塗装作業に役立ちます。均一な塗り面が得られるため、仕上がりも美しくなります。

2. 農園での薬剤塗布

作物の病害虫対策や栄養補給のために、薬剤をまんべんなく塗布するのに適しています。

3. 製造ラインでの塗料塗布

車両や家電製品などの製造過程で、筐体や車体に塗料を塗布する際に使用されます。効率的かつ均一な塗布が可能で、生産性の向上に貢献しています。

電動スプレーガンの原理

電動スプレーガンは、環境に応じて3つのタイプに大別され、それぞれ原理が異なります。それぞれの強みと弱みがあり、使用用途や目的に応じて最適なものを選定して使用することが重要です。

1. 吸上式スプレーガン

塗料を入れる搭載部の容量が大きく、連続的な塗布が可能です。また、搭載部の底面がフラットで安定して設置できます。

2. 重力式スプレーガン

搭載部の角度を任意に変更でき、繊細な作業に適しています。塗料が自重で落ちるため、使い切ることができます。軽量であることもメリットです。

3. 圧送式スプレーガン

別体のタンクやポンプを通じて塗料を供給する方式で、自動車ボディー向けラインの塗装など、大量の同色塗料が必要な場合に適しています。

電動スプレーガンのその他情報

電動スプレーガンと併用される機械

電動スプレーガンと併用される機械としてエアーコンプレッサー、塗料ミキサー、塗料フィルターの3つがあります。それぞれの機械を電動スプレーガンと併用することで、塗装作業がスムーズかつ高品質な仕上がりになります。

適切な機械を選び、効果的な組み合わせで使用することが、プロのような塗装仕上がりを実現する秘訣です。

1. エアーコンプレッサー
電動スプレーガンと組み合わせて使用されることが多いのがエアーコンプレッサーです。エアーコンプレッサーは、空気を圧縮し、電動スプレーガンに送る役割を果たします。圧縮された空気は、スプレーガンのノズルから塗料と共に噴射され、均一な塗装面を作り出します。

エアーコンプレッサーの容量や圧力によって、スプレーガンの性能が変わるため、適切な機種を選ぶことが重要です。

2. 塗料ミキサー
電動スプレーガンで塗料を噴射する前に、塗料ミキサーを使用して塗料を適切に混ぜることが求められます。塗料ミキサーは、塗料の粘度や均一性を保ち、スプレーガンでの塗布時にムラやトラブルを防ぐ役割を担います。手動や電動のタイプがあり、使用する塗料の量や種類に応じて選ぶことが望ましいです。

3. 塗料フィルター
電動スプレーガンで塗装作業を行う際には、塗料フィルターの使用が推奨されます。塗料フィルターは、塗料に含まれる不純物や塗料の塊を取り除くことで、塗装面の仕上がりを向上させる役割を果たします。

また、フィルターを通した塗料はスプレーガンのノズルを詰まらせるリスクが減るため、作業効率が向上します。

駆動軸

駆動軸とは

駆動軸とは、モーターなどのアクチュエーターから得た動力を、伝達用機械要素などを介して、従動軸へ伝えるための機械要素です。

伝達用機械要素には、歯車タイミングベルトVベルト、チェーンなどがあります。駆動軸は、高い負荷を受けつつ、高精度に回転させなければなりません。

そのため、従動軸と比較して、高い強度と精度が求められます。また、駆動軸にはキーなど、伝達用機械要素と接続するための締結用機械要素も必要です。

駆動軸の使用用途

駆動軸は、さまざまな産業用機械に用いられています。具体的には、建設機械、工作機械、各種製造設備などです。モーターなどの原動機で動力を得る機械であれば、原動機が発生する回転を伝達するために、駆動軸が用いられています。

駆動軸は、使用する環境や機械システムによって、任意に設計・製作されます。しかし、使用頻度の高い形状の駆動軸は、さまざまなFA装置用部品メーカーによって規格化され、商品としてラインナップされているものもあります。

駆動軸の原理

駆動軸は、通常ベアリングで支持されることによって、回転精度を確保します。ベアリングは駆動軸の回転軸が受けるトルクを受けながら、回転軸がブレないように支えなければなりません。その軸部は、ベアリングとのはめ合いのため、JISはめ合い公差規格に準拠し、h6かh7公差で製作するのが一般的です。

駆動軸には高い捻りトルクに耐えるための強度や、耐摩耗性が求められます。そのために、高周波焼入れなどの熱処理が必要です。この場合は、S45Cなどの機械構造用炭素鋼材を使用し、表面硬度をHRC50以上の硬度に焼入れします。

耐食性の向上には、四三酸化鉄被膜や無電解ニッケルメッキなどの表面処理を施します。食品やクリーン環境の場合には、SUSU304が使用されます。

駆動軸のその他情報

1. 駆動軸と従動軸

駆動軸から歯車や継ぎ手などの伝達用機械要素により、伝導される動力によって動かされる軸を従動軸と呼びます。動力の入力側である駆動軸に対して従動軸は出力側となり、回転速度やトルクなど、設計者の意図した数値が出力されるよう設定されています。そのため、減速比や回転数を計算した上で動力伝達機構の選定が必要です。

駆動軸は何かしらの出力を得るための入力軸であり、必ず従動軸とセットで用いられます。従動軸がない場合、入力側の軸は出力を得るために用いられていないため、駆動軸という名称は用いられません。また、駆動軸は動力を入力する軸に使われる名称ですが、駆動軸から動力を伝達されて動かされる軸は全て従動軸と呼ばれます。よって、最終出力軸以外の軸も従動軸と呼ばれることがあり、推進軸や変速軸なども従動軸にカテゴライズされることになります。

2. 駆動軸の設計

駆動軸を設計するには、まず入力する動力の大きさと、出力として欲しい動力の大きさを設定する必要があります。入力側の動力はエンジンやモーターといった、動力に用いる装置によって決められ、そこから出力側の数値を求めるために減速比や回転速度を計算します。

計算された回転速度やトルクといった数値から、駆動軸が受ける負荷に対して十分な強度を持つ材質を選定します。軸が受ける負荷には、回転モーメントやねじれ荷重、衝撃、摩擦力といったものがありますが、最も重要となるものは軸のねじれによる静的強度、疲労強度です。

駆動軸は軸受けと組合わせて用いるため、軸の材質だけなく直径と長さも重要です。軸の直径が細すぎるとねじれ荷重を十分に受けることができず、破断の原因となります。軸の長さが長すぎると曲げモーメントの影響を受け、軸の変形につながります。また、軸受けによって軸を支える箇所も重要です。軸受けから軸の先端までの距離はできるだけ短くすることで、回転軸の強度を保つことができます。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure-sys/machine-elements/gear/

固定抵抗

固定抵抗とは

固定抵抗

固定抵抗とは、電気を流れにくくする基本的な電子部品の1つです。

回路に流れる電流の量を調節や、電圧の分割 (分圧) 、回路動作上必要な時定数を設定するなどの役割があります。固定抵抗は、回路上においていろいろな役割を果たす基本的な素子です。

なお、抵抗器には抵抗値を自由に変えることができる可変抵抗器、抵抗値の調整を行うことができる半固定抵抗器がありますが、これら抵抗値を変化させられる抵抗器に対し、抵抗値を変更できないものが固定抵抗です。

固定抵抗の使用用途

固定抵抗の基本的な用途は、回路に流れる電流のコントロールです。仮に回路上に抵抗が存在せずに全ての部品が直結されていた場合、回路には無制限に電流が流れ、その結果、回路部品は流れる電流により焼けてしまいます。

このような事態を回避する上で、抵抗は回路において適切な電流に調整する役割を果たすものです。 その他、固定抵抗を組み合わせて、所望の電圧を得るための分圧回路などいろいろな回路を構成することが可能です。

固定抵抗の原理

抵抗の大きさを表す抵抗値の単位は、オーム (Ω) と表現されます。これは、1Vの電圧を印可した時に流れる電流が1Aであった場合の抵抗値を1Ωとして定義されています。物質は導体、半導体、絶縁体に分類され、導体とは抵抗成分が極めて小さい鉄などの電流を良く流す物質、絶縁体とはプラスチックなど、電流をほとんど流さない物質、半導体はこれらの中間的な物質のことを示します。

抵抗は導体の中で比較的抵抗値が高いものが材料として採用されていて、例えば抵抗体としてカーボンを用いた炭素被膜抵抗や、薄い金属を用いた金属皮膜抵抗があります。固定抵抗は抵抗値が固定ですが、回路設計においては、いろいろな抵抗値が必要です。一方、生産性を考慮すれば、いくつかの種類に集約しなければなりません。

そこで、JISやISOでは抵抗値を集約し標準化するための数値が設定されています。これをE系列と言い、いくつかの種類が存在しますが、代表的なものにE6系列、E12系列、E24系列、E48系列があります。

E6系列は、1.0、1.5、2.2、3.3、4.7、6.8の6種類の値を基礎にして規定されているものです。つまり、1.0Ω、1.5Ω、2.2Ω、3.3Ω、4.7Ω、6.8Ω、10Ω、15Ω、22Ω、33Ω、47Ω、68Ω・・・という具合に抵抗値が設定されています。E12系列/E24系列/E48 では、12種類/24種類/48種類の数値を使って、抵抗値を細かく規定しています。

固定抵抗の種類

固定抵抗は形状と素材によって、大まかに分類することができます。

1. 形状による分類

固定抵抗の形状によって分けると、リードタイプと面実装 (チップ) タイプです。

リードタイプ
リード線 (金属線) を持つ抵抗器です。基板の穴に差し込んで半田付けすることを前提としたもので、嘗ては主流として使われていました。

面実装タイプ
基板面に直接実装する抵抗器です。現在電子機器の回路基板に採用されている抵抗のほとんどがこのタイプであり、小さな角板状の形状をしているチップ抵抗器がそのうちの9割近くを占めます。なお、わずかですがメルフタイプと呼ばれる円筒型の抵抗器も使われます。

2. 抵抗体の素材による分類

抵抗体の素材によって分けると、主に炭素系、金属系、メタルグレーズの3種類になります。

炭素系
さらに、炭素皮膜抵抗 (カーボン抵抗) とソリッド抵抗に分類できます。炭素皮膜抵抗は非常に安価で、さまざまなケースに使えるため、最もよく使用されている小電力用の抵抗です。多くの場合、抵抗器というと炭素皮膜抵抗を指しますが、誤差は±5%です。そのため、高精度を要求される用途には向きません。

金属系
さらに、金属皮膜抵抗と酸化金属皮膜抵抗に分けられます。金属皮膜抵抗は皮膜部分にニッケル・クロム合金などの金属材料を使用した抵抗器です。炭素皮膜抵抗と比べると、抵抗値精度が高く温度特性が良いという特徴がありますが、価格は高くなります。

同様に、酸化金属皮膜抵抗は皮膜部分に酸化スズなどの酸化金属を使用した抵抗器です。熱に強いため、中電力用として用いられます。

メタルグレーズ
金属酸化や金属とガラスを混合し、アルミナ基板などに高温で焼結させた素材です。非常に腐食しにくく、経年劣化がほとんどしない安定性が抜群という特徴があります。

固定抵抗のその他情報

リードタイプの抵抗

リードタイプの抵抗にはその抵抗値や許容差が分かるように、一般に4本か5本の色を用いて表示されています。色は数字と対応しており、例えば茶色は1、赤色は2、橙は3… といった具合です。このカラーコードはJIS C 5062で定められたものであり、詳しくはその一覧表で確認できます。

4色線の場合
1本目から4本目の順に第1数字、第2数字、乗数、許容差となっています。例えば、「赤黒赤金」である場合、カラーコードによると赤は2、黒は0、乗数を示す赤は10の2 乗、金は誤差±5%を表します。従って2.0 kΩ ±5%です。

5色線の場合
1本目から5本目の順に第1数字、第2数字、第3数字、乗数、許容差となっています。線の色が「茶緑黒黒茶」である場合、カラーコードによると茶は1、緑は5、黒は0、乗数を示す黒は10の0乗なので×1、許容差を示す茶は誤差±1%を表します。従って150Ω ±1%となります。

参考文献
https://contents.zaikostore.com/semiconductor/299/
http://sim.okawa-denshi.jp/keiretu.htm
https://article.murata.com/ja-jp/article/what-is-resistor
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/resistors/r_what2
https://www.akaneohm.com/column/classification/
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/resistors-guide
https://www.akaneohm.com/column/marking/

ビームセンサー

ビームセンサーとは

ビームセンサー

ビームセンサ (英: beam sensor) とは、光ビームを照射して対象物を検知するセンサーです。

光ビームは可視光、赤外線、レーザー光などが使用されます。人の侵入・移動、物の侵入、物の位置、段差などが検出可能です。

ビームセンサーの使用用途

ビームセンサーは、工場、住宅、駐車場、事務所、病院、太陽光発電所など多方面で使用されます。超小型の場合は、半導体や電子業界にて段差の検出や浮きの検出、位置決め、加工穴の有無検出、部品位置決め、先端検出、基板の到着確認等になどが代表例です。

病院では離床の際に、ナースコール等の用途です。車庫では出入口で通過があった場合にパトライト等で知らせます。また、閉まりかけた扉を反転させ開き、安全の確保も役割の1つです。

敷地内の夜間監視では、特定の場所を通過した時に威嚇用の警報を鳴らします。資材置き場などの侵入者の感知を行います。また、高所作業車が指定の高さを超えて侵入した場合の警報用途もあります。

ビームセンサーの原理

ビームセンサーの構成要素は、光ビームを出す投光部、光を受ける受光部、電源部、アンプ部などです。光ビームが対象物によって遮断・透過・反射などの変化を受けとり、受光部で検知する光の量が変化します。この変化を検出して、出力信号を出します。

光源色は、赤外、赤色、緑色、青色、3色 (赤、緑、青) などです。出力回路は、NPNトランジスタ・オープンコレクタ、PNPトランジスタ・オープンコレクタ、直流2線式、NPNトランジスタ・ユニバーサル、リレー接点などの接点出力があります。また、アナログ電圧によるアナログ出力のタイプも代表的です。

ビームセンサーの特徴

1. 非接触検出

ビームセンサーは、非接触で離れたところから状態の検出ができるので、センサー取付けの影響を全く受けません。長期の検出が可能です。

2. 高速応答

光ビームを使用し、すべて電子回路で構成するので高速な応答が可能です。高速ラインでも楽に対応できます。

3. 長い検出距離

透過型のセンサーは、数10m離れても検出可能です。

4. その他

色彩による特定の波長の光に対して、反射・吸収の比率が異なるため、種々の色を光量の差として検知できます。また、高精度検出が可能です。光学系が精密であり、電子回路技術によって最高20µmの精度が実現されます。

ただし、ビームセンサは塵やほこりが多いとレンズ面が覆われ、投光・受光が不十分で誤動作になる場合があることが欠点です。

ビームセンサーの種類

ビームセンサーは、検出形態と構成の違いにより、種類が多くあります。

1. 検出形態による分類

投光と受光の方法は、透過型やミラー反射型、反射型などが代表的です。その他、光ファイバを使用したファイバ型の小型センサーもあります

透過型
投光部と受光部を分離して設置し、人・物が光ビームを遮ることで検出します。両方に電源等が必要です。検出距離が長い特性があります。

ミラー反射型
投光部と受光部が一体であり、反射ミラーを分離設置して、人・物によるミラーの反射光の変化を検出します。長距離でも使えるうえ、透過型よりも安価です。

反射型
投光部と受光部が一体であり、人・物で反射した光をとらえます。検出距離が短く、色の影響を受けやすいのは短所です。

2. 構成による分類

電子回路の各構成は、内蔵もしくは分離の2タイプがあります。アンプ内蔵型や電源内蔵型、アンプ分離型、ファイバ型等があります。取り付けスペース、供給電源および耐ノイズ性の強弱などを検討して選定します。

アンプ内蔵型・電源内蔵型は、無接点出力やリレー接点出力の取り出しが可能です。アンプ分離型は、投光・受光の素子をアンプから分離します。センサー部を小型にでき、DC電源を加えると、無接点出力が得られます。

ファイバ型は、アンプ本体にある投光・受光素子に光ファイバを接続し、検出端を分離したものです。光ファイバを通して、投光と受光を行います。耐環境性に優れています。

参考文献
https://www3.panasonic.biz/ac/j/service/tech_support/fasys/tech_guide/photoelectric/index.jsp
https://www.hero-jp.net/bouhan/SENCER.html
https://www.fa-mart.co.jp/sunx/67.html

HID投光器

HID投光器とはHID投光器

HID投光器とは、高い輝度で放電する投光器の総称を指し、LEDを光源に持つ照明とは区別されています。HID投光器に使用される光源には、水銀やメタルハライド、ハロゲンなどのさまざまな種類があります。

HIDとは、高輝度放電 (英:High Intensity Discharge) の略称です。一方、投光器とは、反射鏡やレンズなどを用いることで一定方向に特化した強い光を放つ照明器具のことを指します。

光源によっては、寿命や消費電力などの特徴が異なるため、使用用途に適したものを選択することが重要です。

HID投光器の使用用途

投光器は、強力な発光による高い輝度が特徴です。光を照射する方向を自由に決めることができるため、街灯などの照射位置が固定された場所よりも照射位置を任意の位置に調整する必要のある場所などに使用されています。

しかし、HID投光器は使用用途によって照射対象以外に漏れる光が大きいため、光の広がりを考慮して設置する必要があります。屋外では看板や倉庫、運動場のナイター照明として使用されており、屋内では天井が高い重機工場などの照明として活用されています。

特に運動場のナイター照明として使用する場合には、プレーする選手や観客からの視認性のほか、放映用として光の演色性などを考慮し、ナイター照明ではメタルハライドの光源が選択されています。

工場の照明として使用する場合には、視認性や作業性のほか、持続可能な開発目標 (英:SDGs) もあり、省エネルギーにも積極的に取り組んでいるため、メタルハライドがよく使われています。

近年では、ランプの長寿命化や光束維持率の向上とともに高効率で高演色なセラミックメタルハライドの光源が普及しています。

HID投光器の原理

HID投光器は、 HIDランプの放電によって生じた光を反射鏡やレンズで特定の方向に射光することで周囲を照らします。この放電による発光の仕組みは、一般的に蛍光灯も同じです。ただし、白熱電球ハロゲンランプは、内部のフィラメントを発光させているため、異なる原理になります。

例えば、メタルハライドランプであれば、ナトリウムなどの金属ハロゲン化物質を発光管内部に封入し、電極に電圧を印加することで電極から熱電子が放出されます。この放出された熱電子と金属原子が衝突する際に生じた光が可視光線です。発光管内部に封入する金属ハロゲン化物質は、ナトリウム以外にも水銀やイリジウムなどの多様な金属物質が使用されています。

ランプの発光特性は、封入されている金属物質の種類や量によって変化するため、求める光の特性に合わせてHIDランプを選択することで最適な光量を得ることが可能となります。

HID投光器の種類

HID投光器には、以下のような光源の種類があり、それぞれ特徴が異なります。

1. 水銀灯

水銀灯は、水銀蒸気が放電するときに発する光を利用しています。発光管内に封入された水銀とアルゴンを温めて、水銀の蒸気圧を高めることで発光させています。

発光管内の電圧が下がって壊れてしまうことを防ぐために安定器が必要な光源です。安価で汎用性が高いので広く使用されていますが、点灯までに時間がかかります。また、消灯後に温度が下がるまでは使用ができません。

2. メタルハライドランプ

メタルハライドランプは、発光管内に封入された水銀とハロゲン化金属の混合蒸気が放電する際に発光する原理を利用しています。そのため、水銀灯と同様に安定器が必要です。

このランプは、ヨウ化物を用いる量を調節することで光の色合いを変えられます。水銀灯よりも消費電力が少ないうえに長寿命ですが、ランプ自体が高価です。

3. ハロゲンランプ

ハロゲンランプは、白熱電球にハロゲンガスを封入し、フィラメントに通電することでフィラメントを白熱させて発光させています。ランプ内のハロゲン原子が通電によってタングステン原子と結合し、ハロゲン化することでフィラメントが傷むことを防ぐため長寿命化を実現しています。

また、非常に明るく効率が良いため、小型電球でも性能が高い特徴があります。ただし、非常に高温になるといった特徴も有しています。

HID投光器の構造

HID投光器は、一般的に光源筒や反射鏡、全面部、支持部、アーム、台座、ハンドルなどから構成されています。

1. 光源筒

光源筒は、射光部となっており、主に鋼板が使用されています。HID投光器に使用するランプによっては、発光する際に高温となるため、より適した材質が選択されている場合もあります。

2. 反射鏡

反射鏡は、HIDランプの光を集光し、特定の方向に射光するための鏡です。反射鏡には、平面鏡や球面鏡、放物面鏡などの種類があり、設置環境に適した反射鏡が内蔵されています。材質は、主にアルミニウムが使用されており、より反射効率を向上させるためにシリカガラスなどをコーティングした製品も販売されています。

3. 全面部

全面部は、光を効率的に照射するためのカバーです。また、全面部は、投光器内部を水滴や粉塵から守るための役割も担っています。素材には、主に透明強化ガラスが採用されています。

4. 支持部・アーム・台座・ハンドル

支持部は、光源筒を支えるための補強部材です。アームは、ハンドルによって調整された射光方向を固定するための調整部になります。台座は、HID投光器を固定するための取り付け台座です。ハンドルは、光源筒からの光の方向を調整するための可動部です。これらの部材は、携帯用のHID投光器には、付属していない場合があります。

また、災害時に適した携帯型HID投光器も販売されており、専用のレンズカバーを取り付けることで光の射光方向を広げたり、特定部分に集めたりすることができます。

参考文献
https://electric-facilities.jp/denki3/hid.html
https://www.goodgoods.co.jp/tprojectorat
http://www.i-sss.jp/led-column/column08/
https://www.jlma.or.jp/tisiki/pdf/guide_hid.pdf
https://www.tozaidensan.co.jp/dictionary/dictionary3/halolanp_dic_1.htm
https://www.ushio.co.jp/jp/technology/lightedge/199811/100185.html

電解水生成装置

電解水生成装置とは

電解水生成装置とは、食塩水などを電気分解することにより、電解水を生成する装置です。

電解水の一番大きな区分は、酸性電解水である次亜塩素酸水と、アルカリ性電解水の2種類です。酸性電解水は、さらにpHによって強酸性電解水・弱酸性電解水・微酸性電解水に分類されます。

酸性電解水 (次亜塩素酸水) は殺菌・洗浄に利用されており、アルカリ性電解水は特に脂質やタンパク質などに洗浄効果を発揮します。各種法令の規定を満たしている強酸性電解水・弱酸性電解水・微酸性電解水は、食品添加物や、有機農産物使用可能農薬として用いることができます。

これは、規制を遵守している限りにおいては、電解水が非常に安全であるためです。電気分解生成装置は、衛生管理が必要な分野や現場で幅広く利用されています。酸性電解水の詳細は、図1をご参照ください。

酸性電解水の種類

図1. 酸性電解水の種類

電解水生成装置の使用用途

電解水の優れた除菌効果と洗浄効果を利用するため、電解水生成装置は衛生管理が必要とされているところに広く用いられています。具体的には、食品業界、医療業界、保育介護業界、清掃業界などの分野です。

例えば、食品工場や飲食店の厨房などにおける用途では、機器・調理器具の洗浄及び除菌や、食材の除菌などが挙げられます。医療業界における主な用途は、病院での医療器具の除菌や洗浄です。

また、保育施設や介護施設などにおいては、衛生的な環境の維持を目的として、哺乳瓶や食器の洗浄、衛生的な手洗いや、施設内の拭き取りによる除菌や清掃など、様々な局面で用いられています。

金属やプラスチックなどの部品を扱う工場においては、特にアルカリ性電解水による防錆を目的として電解水生成装置を使用する場合があります。アルカリ性電解水がタンパク質や脂質系の汚れの除去に優れているという特性を活用した用途です。

電解水生成装置の原理

強酸性電解水生成装置 (有隔膜二槽式) の概要

図2. 強酸性電解水生成装置 (有隔膜二槽式) の概要

電解水には、次亜塩素酸水などの酸性電解水と、アルカリ性電解水の2種類があります。多くの電解水生成装置は、陽極と陰極を隔膜で仕切った二室型電解槽構造です (有隔膜二槽式) 。

電解槽において、塩酸塩化カリウムなどの塩を微量加えた水道水などの原水を電気分解すると、発生したイオンが隔膜で分離される構造になっています。二室型電解槽で生成する酸性電解水は、主に強酸性電解水です。

食塩水の電気分解を行うと、電解槽内の陽極では、下記の反応が起こります。

  • H2O → O2 + 2 H+
  • 2Cl + 2e → Cl2

発生した塩素分子が水と反応することにより、次亜塩素酸水、即ち酸性電解水が生成します。この時生成する電解水は強酸性電解水です。

一方、陰極側で起こる反応は、以下の通りです。

  • H2O → H2 + OH

陰極側は陽極側とは隔膜で隔てられているため、水酸化物イオン (OH) の濃度が増加します。その結果、アルカリ性電解水が生成されるのです。

電解水生成装置の種類

微酸性電解水生成装置の概要

図3. 微酸性電解水生成装置の概要

電解水生成装置は、構造や目的とする電解水によって分類することができます。

1. 構造による分類

電解水生成装置には、上記で述べた二室型電解槽型の他に、微酸性電解水を生成する一室型電解槽型があります。微酸性電解水は、強酸性電解水と同様に食品添加物として承認され、「2~6%の塩酸を無隔膜の電解槽で電気分解して得られたpH5.0~6.5、有効塩素濃度10~30 ppmの生成水」と定義されています。

特徴は、強酸性電解水よりも有効塩素濃度が低く、かつ中性に近いpHで高い殺菌力を持つということです。各種食品の洗浄や厨房器具の洗浄殺菌など幅広く使われています。有効塩素濃度が低いため、特にカット野菜や果物などの洗浄に適しています。一室型電解槽は、予め2~6%に調製した塩酸を直接電解した後、原水と混合して生成を行う仕組みです。

電解槽内の陽極では塩酸を電気分解することにより塩素ガス (Cl2) が発生し、陰極では水素ガス (H2) が発生します。発生した塩素分子が水と反応することにより、次亜塩素酸水、即ち酸性電解水が生成しますが、原水と混合することにより目的の濃度まで希釈されます。

2. 電解水による分類

電解水によって分類する場合、下記の3つがあります。

  • 強酸性電解水生成装置
  • 微酸性電解水生成装置
  • アルカリ性電解水生成装置

原理の項で示した通り、強酸性電解水とアルカリ性電解水は一つの電気分解で同時に生成することから、装置の仕組み自体は同じものです。ただし、製品の中には、アルカリ性電解水を排水して酸性電解水専用になっているものもあるので注意が必要です。

また、形状には、工場でも使用可能な大型の据え置き型のものから、アンダーカウンタータイプの置型式製品、壁掛け可能な小型給水器型のものなど、様々な大きさ・形状があります。

参考文献
https://www.hoshizaki.co.jp/p/e-water/e-water.html
https://www.hoshizaki.co.jp/p/e-water/merit-woxrox.html
https://www.amano.co.jp/Clean/products/denkai.html
http://biseibutsu.co.jp/product/denkaisui