HID投光器とは
HID投光器とは、高い輝度で放電する投光器の総称を指し、LEDを光源に持つ照明とは区別されています。HID投光器に使用される光源には、水銀やメタルハライド、ハロゲンなどのさまざまな種類があります。
HIDとは、高輝度放電 (英:High Intensity Discharge) の略称です。一方、投光器とは、反射鏡やレンズなどを用いることで一定方向に特化した強い光を放つ照明器具のことを指します。
光源によっては、寿命や消費電力などの特徴が異なるため、使用用途に適したものを選択することが重要です。
HID投光器の使用用途
投光器は、強力な発光による高い輝度が特徴です。光を照射する方向を自由に決めることができるため、街灯などの照射位置が固定された場所よりも照射位置を任意の位置に調整する必要のある場所などに使用されています。
しかし、HID投光器は使用用途によって照射対象以外に漏れる光が大きいため、光の広がりを考慮して設置する必要があります。屋外では看板や倉庫、運動場のナイター照明として使用されており、屋内では天井が高い重機工場などの照明として活用されています。
特に運動場のナイター照明として使用する場合には、プレーする選手や観客からの視認性のほか、放映用として光の演色性などを考慮し、ナイター照明ではメタルハライドの光源が選択されています。
工場の照明として使用する場合には、視認性や作業性のほか、持続可能な開発目標 (英:SDGs) もあり、省エネルギーにも積極的に取り組んでいるため、メタルハライドがよく使われています。
近年では、ランプの長寿命化や光束維持率の向上とともに高効率で高演色なセラミックメタルハライドの光源が普及しています。
HID投光器の原理
HID投光器は、 HIDランプの放電によって生じた光を反射鏡やレンズで特定の方向に射光することで周囲を照らします。この放電による発光の仕組みは、一般的に蛍光灯も同じです。ただし、白熱電球やハロゲンランプは、内部のフィラメントを発光させているため、異なる原理になります。
例えば、メタルハライドランプであれば、ナトリウムなどの金属ハロゲン化物質を発光管内部に封入し、電極に電圧を印加することで電極から熱電子が放出されます。この放出された熱電子と金属原子が衝突する際に生じた光が可視光線です。発光管内部に封入する金属ハロゲン化物質は、ナトリウム以外にも水銀やイリジウムなどの多様な金属物質が使用されています。
ランプの発光特性は、封入されている金属物質の種類や量によって変化するため、求める光の特性に合わせてHIDランプを選択することで最適な光量を得ることが可能となります。
HID投光器の種類
HID投光器には、以下のような光源の種類があり、それぞれ特徴が異なります。
1. 水銀灯
水銀灯は、水銀蒸気が放電するときに発する光を利用しています。発光管内に封入された水銀とアルゴンを温めて、水銀の蒸気圧を高めることで発光させています。
発光管内の電圧が下がって壊れてしまうことを防ぐために安定器が必要な光源です。安価で汎用性が高いので広く使用されていますが、点灯までに時間がかかります。また、消灯後に温度が下がるまでは使用ができません。
2. メタルハライドランプ
メタルハライドランプは、発光管内に封入された水銀とハロゲン化金属の混合蒸気が放電する際に発光する原理を利用しています。そのため、水銀灯と同様に安定器が必要です。
このランプは、ヨウ化物を用いる量を調節することで光の色合いを変えられます。水銀灯よりも消費電力が少ないうえに長寿命ですが、ランプ自体が高価です。
3. ハロゲンランプ
ハロゲンランプは、白熱電球にハロゲンガスを封入し、フィラメントに通電することでフィラメントを白熱させて発光させています。ランプ内のハロゲン原子が通電によってタングステン原子と結合し、ハロゲン化することでフィラメントが傷むことを防ぐため長寿命化を実現しています。
また、非常に明るく効率が良いため、小型電球でも性能が高い特徴があります。ただし、非常に高温になるといった特徴も有しています。
HID投光器の構造
HID投光器は、一般的に光源筒や反射鏡、全面部、支持部、アーム、台座、ハンドルなどから構成されています。
1. 光源筒
光源筒は、射光部となっており、主に鋼板が使用されています。HID投光器に使用するランプによっては、発光する際に高温となるため、より適した材質が選択されている場合もあります。
2. 反射鏡
反射鏡は、HIDランプの光を集光し、特定の方向に射光するための鏡です。反射鏡には、平面鏡や球面鏡、放物面鏡などの種類があり、設置環境に適した反射鏡が内蔵されています。材質は、主にアルミニウムが使用されており、より反射効率を向上させるためにシリカガラスなどをコーティングした製品も販売されています。
3. 全面部
全面部は、光を効率的に照射するためのカバーです。また、全面部は、投光器内部を水滴や粉塵から守るための役割も担っています。素材には、主に透明強化ガラスが採用されています。
4. 支持部・アーム・台座・ハンドル
支持部は、光源筒を支えるための補強部材です。アームは、ハンドルによって調整された射光方向を固定するための調整部になります。台座は、HID投光器を固定するための取り付け台座です。ハンドルは、光源筒からの光の方向を調整するための可動部です。これらの部材は、携帯用のHID投光器には、付属していない場合があります。
また、災害時に適した携帯型HID投光器も販売されており、専用のレンズカバーを取り付けることで光の射光方向を広げたり、特定部分に集めたりすることができます。
参考文献
https://electric-facilities.jp/denki3/hid.html
https://www.goodgoods.co.jp/tprojectorat
http://www.i-sss.jp/led-column/column08/
https://www.jlma.or.jp/tisiki/pdf/guide_hid.pdf
https://www.tozaidensan.co.jp/dictionary/dictionary3/halolanp_dic_1.htm
https://www.ushio.co.jp/jp/technology/lightedge/199811/100185.html