定温乾燥機

定温乾燥機とは

定温乾燥機とは、庫内の温度を均一に保つ乾燥機のことで、乾燥させたい対象物の水分を乾燥させるために使用されます。大きく分けると自然対流式と強制対流式の2種類に分類されます。

定温乾燥機の他に、恒温乾燥機などとも呼ばれています。庫内の温度を高い精度で均一にコントロールし、高温環境を一定に保ちながら、効率の良い加熱で対象物を乾燥させることが可能です。

最大温度は200〜300℃程度まで設定できるものが多く、価格はおおよそ10万円〜となっています。

定温乾燥機の使用用途

定温乾燥機の用途としては、実験用のガラス器具の乾燥や、実験試料の乾燥など、名前の通り対象物の乾燥に最も多く用いられます。他にも試料の脱気・硬化のために使われたり、一定温度条件下での耐熱試験や水分測定などの分析にも活用されます。

定温乾燥機のうち、自然対流式ではヒーター熱の自然対流によって空気が循環しており、空気の流れによる飛び散りなどが起こりにくいことから、飛散しやすい粉末状の対象物などを乾燥させることに向いています。卓上でも使用できる小型なものから床置きで高さ1m以上の大型のものまで様々なサイズがあり、用途に適したサイズの乾燥機を選ぶことが出来ます。

定温乾燥機の原理

自然対流式の定温乾燥機は、熱を発生させることで生じた浮力によって、自然に気体に対流が起こることを利用して庫内の温度を均一にします。熱は温度に応じてエネルギーを持っており、熱が空気に伝わることで空気の温度が上昇します。

物質の温度が上昇すると、物質の分子の運動が活発になるため、温度の上昇に伴って密度が小さくなり、密度の差によって、重力と逆向きに浮力が発生して対流が起きることが自然対流の仕組みです。

一方で、強制対流式の定温乾燥機はヒーターの熱を送風のファンで循環させることで庫内の温度を均一にします。自然対流式よりも庫内の温度分布がより一定になりやすく、しっかりとした空気の流れがある分、乾燥時間は自然対流式よりも短くなる傾向があります。

定温乾燥機の選び方

定温乾燥機を購入する際に検討しておくべき項目は主に以下の7点です。

  1. サイズ
  2. 電源電圧
  3. 棚の数と高さ
  4. 設定可能温度と温度制御性能
  5. 対流方式
  6. タイマー・プログラム機能の有無
  7. 過昇温防止装置の有無

これらの機能面の必要性と価格との兼ね合いでどのモデルにするかを考えると良いでしょう。以下に、各項目について詳細を述べていきます。

1. サイズ

設置予定場所が実験台や棚の上なのか、或いは床に直置きにするのかによって選ぶ型式が変わります。また、加熱機器なので隣接する装置や壁との間にスペースを設ける必要があるので、それを含めて余裕のあるサイズを選びましょう。

2. 電源電圧

小型のものであれば通常の家電と同様に100Vの電源で使用できますが、大型になると200Vの電源が必要となるものもあります。また、中にはサイズが小型でも200V電源が必要なものもあるので、サイズだけでなく電源電圧も確認しましょう。

3. 棚の数と高さ

棚の数が多い程、設置面積が増えるため乾燥機内のスペースを有効活用できます。一方で、一段毎の高さが低くなるため、高さのある器具や試料を入れることができなくなります。どのようなものを乾燥機に入れるのかを想定して適切な棚の数と高さのものを選びましょう。

4. 設定可能温度と温度制御性能

定温乾燥機は加熱装置なので、設定可能温度の下限は室温となります。一方で、設定可能温度の上限は型式によって200℃程度のものと300℃程度のものがあります。また、温度制御性能はどの程度の変動幅で温度を一定に保てるかを示す値です。

「±○℃」という表記で記載されています。制御能力が高い(「±○℃」の値が小さい)方が価格は高くなるので、使用用途に合わせて過剰なスペックにならないように選びましょう。

5. 対流方式

上述した通り、自然対流式と強制対流式があります。粉体の乾燥など、飛散しやすいものを扱う場合には自然対流式が良いです。基本的には強制対流式の方が自然対流式よりも高価になるため、ガラス器具の乾燥に用いる場合など、大まかな温度分布で十分な場合にも経済的な観点から自然対流式を選ぶと良いでしょう。

一方で、耐熱試験や水分分析など、厳密な温度制御が求められる場合には温度制御能に優れる強制対流式を選ぶ方が好ましいでしょう。また、試験用途の場合には対流方式だけでなく、装置の温度制御性能も合わせて確認することが肝要です。

6. タイマー・プログラム機能の有無

タイマー機能が付いているものは、「○時間後に電源を切る」という形で運転させることが可能です。必要以上に熱を掛けたくない場合や、電源の切り忘れで終夜稼働させることを避けたい場合等に便利な機能です。

プログラム機能が付いているものは、「○℃で○時間、その後△℃で△時間」というように、温度と時間の設定をプログラムさせて運転することが可能です。タイマー機能よりも高性能な分、価格も高くなります。

7. 過昇温防止装置の有無

過昇温防止機能とは、装置の制御系の故障により設定温度以上に温度が上昇してしまった場合に、強制的に装置の電源を落としてくれる機能です。乾燥機の温度設定とは別に過昇温防止の温度設定を行うことができます。

例えば、乾燥機の温度設定を60℃、過昇温防止の温度設定を100℃にそれぞれ設定するという具合です。現在販売されているものの多くが安全機能として過昇温防止機能を内蔵したものが多いですが、価格が安いものだとそのような安全機能がついていないものもあります。

200℃、300℃と高い温度に設定できる装置であり、火災の原因にもなりうるため、過昇温防止機能のある装置を購入することをお勧めします。

参考文献
https://www.yamato-net.co.jp/product/category/science/drying-oven/convection-oven/
https://www.yamato-net.co.jp/word/65
http://www.daiwakeisoku.com/_userdata/PDF/electric_drying_oven.pdf
https://lab-brains.as-1.co.jp/article/selection-guide/2022/03/16313/

安全弁

安全弁とは

安全弁

安全弁は大きな圧力を保持するタンクや、レシプロ式コンプレッサ等の容積式圧縮機の出口に取り付けます。安全弁はプロセスで異常な高圧が発生しタンクの設計圧力以上になりそうな場合や、コンプレッサが壊れそうになる前に安全弁は内部のバルブが自動で開き、プロセスの圧力を開放します。

これによりプロセスの安全性を保ちます。その為、多くの工場や化学プラントで使用されています。

安全弁の使用用途

安全弁はプロセスの圧力が異常値になった際に、圧力を放出するために使用されます。例えば高圧タンクでは常に圧力監視を行っており、危険な圧力に達する前に設備を停止させますが、万が一の場合に備えて安全弁を取り付けています。

また、法律的に必ず安全弁を取り付けなければならない設備も存在します。同様にコンプレッサの出口などに取り付けられる場合もあります。この場合はあまりにも高圧になるとコンプレッサの圧縮機にも負荷がかかるため、それを緩和する場合に取り付けます。

安全弁の原理

安全弁の原理

図1. 安全弁の原理

安全弁の原理は非常に単純でスプリングで弁体を押さえつけているだけです。このスプリングを変える事で安全弁が吹き始める圧力を変更する事が出来ます。

また、減圧弁のように調整できるタイプのものも存在します。ただし、一度吹いてしまった安全弁はしっかりと締まりきらずに吹き続けてしまうことや、吹き始めの圧力が変わってしまうことがあるため、一度吹いてしまった安全弁は必ず交換する事が必要です。

また、基本的に安全弁は開かない事が原則なので、年に1回は定期点検で吹き始め圧力を確認する事もあります。よくある故障として、若干開いてしまった際に異物を噛み込んだりして、弁体に傷がついてしまったりきちんと締まらずに吹き続けてしまう事です。このような場合は安全性を担保する意味でも、弁体の清掃や新品への交換を行う必要があります。

安全弁の吐出口は多量のガスなどが高圧で吹き出るため、吹きだしても安全な所に取り付ける必要があります。

安全弁の選び方

安全弁の選定では、サイズと機能を必要に応じて選択する必要があります。

サイズは一般的に、入口側減圧弁より1~2サイズ小さいものを選定し、吹き出し量が減圧弁の最大流量の10%程度になるようにします。設定圧力は減圧弁圧力より若干高めにします。圧力の目安は各メーカーの技術資料に記載されています。

次にリフト方式を選択します。「揚程式」と「全量式」があり、用途に合わせて選択します。同じサイズでの吹き出し量において全量式は揚程式の4~5倍あり、危険圧力の開放に使用されます。圧力調整などに使用する場合は揚程式が多く使用されます。

その他、動作確認用レバーの有無、キャップの形式が選択でき、用途や使用環境に合わせて選択します。
レバー有では、設定圧力の75%の圧力で動作確認することができ、固着などの異常が無いかなどを確認することができます。

キャップの選択では、開放式では吹き出した流体は周囲に開放され、密閉式では開放されません。周囲に吹き出すと危険な流体や、周囲に流体が吹き出しては困る環境では密閉式を選択します。

また、横倒・倒立向きの取り付けは動作不良の原因になるため、取り付け姿勢が垂直になるように取り付け場所を決定する必要があります。

安全弁のその他情報

安全弁とリリーフ弁の違い

大きな意味ではどちらも安全弁に属しますが、機能の違いで安全弁とリリーフ弁(逃し弁)に分けられます。

安全弁は設定圧力になった場合、弁体が瞬時に全開し、圧力を逃がします。リリーフ弁は設定圧力になると弁体が開き始め、圧力の上昇とともに開度が大きくなります。

一般的に安全弁は蒸気や気体で使用され、危険圧力になるとすぐに開放し、事故を防止することを目的とします。リリーフ弁は液体で使用され、圧力調整や誤作動による圧力上昇防止が目的になります。

また、ポンプの出口に設置し、圧力調整や締め切り運転による圧力上昇防止、連続逃しが可能な「ポンプリリーフ弁」、安全弁とリリーフ弁の機能を併せ持ち、気体、液体両方に使用できる「安全逃し弁」もあり、使用用途と使用環境に合わせて選択します。

参考文献
https://www.venn.co.jp/products/safety_valve.html
https://www.fkis.co.jp/product_valve.html

多変量解析ソフト

多変量解析ソフトとは

多変量解析ソフトとは、多変量解析を行うことができるアルゴリズムやツールの機能を備えたソフトのことです。一般に、ユーザーが自らプログラムをすることなく、解析方法をソフト上で選択することで、難解な数式の複雑なプロセスをコンピューターが処理し、解析結果を容易に得ることができるソフトのことを指します。

多変量解析ソフトは、様々な多変量解析の手法のアルゴリズムを搭載しており、例えば、主成分分析、重回帰分析、ロジスティック回帰分析などがあります。多変量解析ソフトは、研究開発から製造まで、膨大な量のデータを扱う現場で使用されており、多くの因子から重要因子を特定すること、因果関係の推察や背景情報に基づいた予測などが可能です。

時系列データ、量的データ、カテゴリカルデータなどを扱うことができ、これらの解析をすることができます。活用される分野は多岐にわたっていて、医学や薬学、化学などから、製造やマーケティングまで様々です。

多変量解析ソフトの使用用途

多変量解析ソフトは、様々な業界のデータを扱う分野で使用されており、目的や用途に合わせてより適した解析手法を用いています。解析手法ごとの使用用途は下記の通りです。

1. 主成分分析

主成分分析では、多変量のデータを二次元( 第一主成分と第二主成分 )に集約し、二次元プロットでデータの散らばりを表します。人が直感的に把握できる二次元に集約することで、データの特徴を把握しやすくします。また、散らばりの観察から、外れた点を外れ値として検出することにも用いられます。

2. クラスター分析

クラスター分析は、複数の因子で表現した個々の対象物の間の距離を計測することで、対象物をクラスターとしてグループ分けします。例えば、アンケート回答に基づいて回答者を回答群や質問項目群の距離を計測することで、クラスターをグループ分けする際などに使用されます。

3. 重回帰分析

重回帰分析は、1つの目的とする数値を、説明変数を複数用いて予測を立てる手法です。例えば、売り上げに影響する因子が多数あるという仮説のもと、因子それぞれの影響度を推定することで、売上予測などを立てたい際に使用されます。

4. 構造方程式モデリング( SEM )

今までに紹介した個々の分析技法とは少し捉え方が異なりますが、近年注目されている構造方程式モデリングについて触れます。構造方程式モデリングは、共分散構造分析とも呼ばれ、共分散を用いてデータの背後にある構造を推定する分析方法を統合的に指す言葉です。

個別に実現する解析手法としては、重回帰分析、因子分析、パス解析などが含まれます。特に、パス解析といって、多項目のアンケート結果から、回答者をとりまくどのような要因がどのような行動につながっていそうか、といった因果関係の推定をする手法が注目されています。

5. その他

前項で例示したように、アンケート結果の傾向分析や、販売戦略の検討に使われ、マーケティングや社会科学研究に用いられています。また、理科系の研究において、多成分化学分析の結果から、分析対象の分類を行うことがあります。

例えば、工業製品の化学分析により、製品の異同を推定することや、野菜の成分分析により産地を推定することができます。また、製造元の異なる多数の製品の特徴をグループ分けすることも可能です。このように、化学分析分野での応用例はケモメトリックスと呼ばれ、近年利活用が広がっています。

多変量解析ソフトの原理

多変量解析ソフトには、多変量解析を行う際に必要な計算アルゴリズムが内部プログラムとして組み込まれています。パッケージソフトとして優れたグラフィック・ユーザー・インターフェース( GUI )を実装したものが多く、使用者は必要なデータを入力し、行いたい解析を選択するだけで複雑なプロセスがすべてコンピューターによって処理され、解析結果を得ることができます。

あるデータに対し異なる解析を試す場合も、マウスクリックなどで切り替えることが可能です。これらの特徴は、使用者が自らアルゴリズムを考えてプログラミングする方法とは大きく異なります。

多変量解析ソフトの選び方

多変量解析ソフトは、試用してから購入することをおすすめします。理由として、多変量解析は年々進歩している分野であるため、ソフトによる差異が大きいからです。

多変量解析ソフトを選ぶ際は、「実現したいことができるか」「使い勝手が良いか」の2つが重要なポイントになります。また、近年はソフトが複雑化しているため、有償の保守サービスを提案するベンダーが増えてきています。

保守に加え、運用上のトラブルシューティングやユーザートレーニングをセットにしている場合も多いです。この場合は、試用の感触から、技術支援の要否を判断するとよいでしょう。

多変量解析ソフトのその他情報

多変量解析のパッケージソフト

多変量解析のパッケージソフトでは、使用者が自ら具体的な計算方法を知っている必要はありません。近年ではプログラムソフトを用いる場合のプログラムコードが多数公開されていますが、やはり、プログラムの知識が無くとも解析を実行できるという、パッケージソフトの利点は大きいです。

ただし、パッケージソフトを利用する場合でも、データの構造、解析の意義、目的にあった解析法の選択についての知識を持つことは最低限必要です。ベンダーによってはこれらについてユーザートレーニングを実施しているところもあります。運用するにあたり、使用者の理解を促進するために、このようなトレーニングを活用することを考えてもよいかもしれません。

参考文献
https://www.infocom-science.jp/product/detail/simca.html
https://istat.co.jp/software/01
https://www.albert2005.co.jp/knowledge/statistics_analysis/multivariate_analysis/multivariate_method
https://istat.co.jp/ta_commentary

 

培養容器

培養容器とは

培養容器

培養容器とは、生命科学分野や創薬分野の研究開発などにおいて細胞などを培養するのに使用される容器です。

シャーレ (ディッシュ) や、フラスコなどの種類があります。培養面は均一で凹凸がないため、明瞭な視界を得ることができ、培養物の観察に最適です。

従来は、ガラス製の培養容器が主流でしたが、現在は通常、透明性と加工性の高さからポリエチレンなどの樹脂素材を用いたディスポーザブル培養容器を使用するようになりました。樹脂のままでは表面が疎水性で細胞との親和性が悪いため、表面を親水化することで細胞接着性を向上させています。

また、滅菌処理を行ったり、培養物が触れるブブをフィルム構造にすることで天板ごと外すことができるようにしたりするなど、用途に合わせて様々な工夫が施されています。

培養容器の使用用途

培養容器の主な使用目的は、接着細胞や浮遊細胞などの培養です。生命科学分野や製薬分野における様々なバイオプロセスにおいて、研究などの開発段階から製造リリースに至るまで、あらゆるステージで用いられます。

培養細胞は、多くの用途があり、細胞生物学者をはじめとする、生体材料研究者、臨床医などの研究者に加え、規制当局にも使用されているものです。

重要な細胞培養には、特に、ワクチンの研究や生産における細胞培養があります。培養細胞内で大量のウイルスを生育できることから、種々の疾患に対して、細胞培養技術を利用したワクチンの大量生産が使われています。

また、その他にも、哺乳動物細胞内でのタンパク質発現、がん研究や新規治療候補の試験におけるがん細胞の培養などがあります。

培養容器の原理

培養容器は、使用用途上、次のような条件を満たしていることが必須となっています。

  • 培養面は、培養に適した状態である、加工することが可能である
  • 毒性などがない
  • 滅菌することができ、滅菌状態を保つことができる
  • 明瞭な視界で顕微鏡観察の妨げにならない

これらの条件を満たすため、培養容器に使用する材質は適切なものが選択されます。培養面は均一で平滑な面に加工されているだけでなく、親水加工処理や滅菌処理などが施されています。

培養容器の種類

接着培養で用いる培養容器

図1. 接着培養で用いる培養容器

培養容器の種類には、シャーレ (ディッシュ) 、ウェルプレート、フラスコなどがあります。

大きさ、形状、コーティングや蓋のあり/なしなどまで含めると、非常に多種多様な製品が存在するため、培養する対象や用途に合わせて適した形状の容器を選択することが大切です。

浮遊培養で用いる培養容器

図2. 浮遊培養で用いる培養容器

接着培養の培養には、ペトリディッシュ (シャーレ) 、培養フラスコ、マルチウェルプレートなどを用い、浮遊細胞の培養には、培養フラスコ、スピンナーフラスコや振とうフラスコを用います。どちらの場合も、接着培養用にコーティングされたもの、或いは、浮遊培養用に接着しないようになっているものを用いることが重要です。

1. シャーレ型の培養容器

シャーレ型の培養容器には、直径35mm・60mm・80mm・90mmなどの種類があります。高さは12mm〜20mmの間であるものが多いです。また、外縁に滑り止めがついていたり、スタッキングして保管・培養できるようになっていたりと、製品によって、操作性の工夫がなされています。

2 .マルチウェルプレート型の培養容器

マルチウェルプレートは、ウェルと呼ばれる窪みが一つの容器に複数ついている培養容器です。シャーレ型と異なり、複数の培養条件を一つの容器上で検討することが可能です。6, 12, 24, 48, 96などのウェル数のプレートがありますが、通常ウェル数が増えるに従って一つ一つのウェルの大きさは小さくなります。

3. フラスコ型の培養容器

フラスコ型の培養容器は、スクリューキャップを閉めることで簡単に閉鎖系の培養が可能となることが特徴です。細胞の種類にもよりますが、フラスコ内を培地で満たして密栓することで一日程度の輸送にも耐えることが可能となります。

また、効率的に大量培養を行うために、フラスコを複数枚重ねて層状にした多層タイプの製品も利用されています。多層タイプのフラスコは重量があり、培養の際には片手でこの容器を支えながら、各層に対して培地の注入と排出を繰り返すことになります。そのため、操作手順が複雑で、容器の大きさや重量の問題もあって扱いにくいことが課題でした。

しかし、最近では、多層タイプのフラスコを用いた培養を機械化し、培養から観察までの一連の操作を、コンピュータを用いて自動制御するシステムも開発されています。また、浮遊細胞の培養容器では、撹拌棒が設置されているスピンナーフラスコや、振とう中に飛沫が上がりにくくなっている振とうフラスコなどがあります。

4. セルカルチャーインサートを用いた培養容器

培養容器の中には、セルカルチャーインサートを用いたものもあります。セルカルチャーインサートは、培養容器を上下に区切って細胞培養を可能とする器具です。

仕切り面に様々な材質からなる多孔のメンブレンフィルタをもつ構造となっています。すなわち、これにより、培地と気相の両面から異なる条件を同時に細胞に曝露させることができるのです。

接着細胞の培養は、メンブレンフィルタの上面、あるいは底面のいずれにおいても可能です。更に、浮遊細胞の培養を組み込むこともできます。複数の細胞を用いた共培養などの、より複雑な培養にも対応可能です。また、インサートの外側のみに培地を入れることで、容易に気相液相界面培養ができます。

このような培養法は、呼吸器系や皮膚、角膜など外気に接触している器官の細胞の培養などに活用されています。従来の単層細胞の実験では、脂溶性成分や粉体をそのまま曝露して評価することは困難でした。しかし、インサートを用いたモデルではそのような物質でも評価が可能となっています。

培養容器のその他情報

接着培養と浮遊培養

接着細胞と浮遊細胞

図3. 接着細胞と浮遊細胞

細胞は、接着細胞と呼ばれる培養容器に付着しながら増殖する細胞と、浮遊細胞と呼ばれる、培地中で浮遊した状態で増殖する培養細胞の2種類に分けることができます。

脊髄動物由来の細胞の大多数は、血球由来細胞など一部の浮遊細胞を除き、組織中で固着しながら増殖する接着細胞です。細胞の特性から、主な培養方法には下記の種類があります。

1. 静置培養 (単層培養)
接着細胞を培養容器に接着させ、単層の状態で培養する、接着培養の通常の方法です。正常細胞は基本的に単層状に伸展・増殖します。培養容器はペトリディッシュ (シャーレ) 、培養フラスコ、マルチウェルプレートなどが適切です。

2. 浮遊培養
血球由来の細胞などの浮遊細胞を、細胞を培地に浮遊させた状態で増殖させる培養方法です。培養容器は、細胞が接着しないようにコーティングされた専用のものが適切です。大量に培養する場合は、振とうフラスコやスピンナーフラスコを用います。

3. 回転培養 (ローラー培養)
回転培養専用の培養容器であるローラーボトルを、緩やかに回転させ、そのボトルの内壁に細胞を接着させて培養する接着培養の方法です。

4. 旋回培養 (振とう培養)
浮遊培養方法の一つであり、振とうフラスコを用い、シェーカーで振とうしながら培養します。菌体や植物細胞、リンパ球由来細胞などの、浮遊系細胞に適しています。

参考文献
https://www.sumibe.co.jp/product/s-bio/cell-culture/large-scale-flask/index.html
https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/cell-culture/cell-culture-plastics.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/membrane/30/3/30_171/_pdf/-char/ja
https://www.corning.com/jp/jp/products/life-sciences/applications/bioprocess-applications.html
https://cellbank.nibiohn.go.jp/legacy/information/hsrrb/default.htm
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2020/200226_4884.html

圧縮スプリング

圧縮スプリングとは圧縮スプリング

圧縮スプリングとは、外部から力を加えて圧縮することにより内部に力を蓄えるばねです。圧縮ばね圧縮コイルばねと呼ばれることもあります。内部のエネルギーは反発力(復元力)として作用するため、加えた力を解除することにより、ばねは元の長さに戻ります。

圧縮するだけで内部にエネルギーを貯めることができる点、衝撃を吸収できる点、繰り返し使用できる点などから、自動車や日用品など様々な用途で数多くの機械に使用されています。

圧縮スプリングの使用用途

圧縮スプリングは、主に反発力により元の長さに戻ろうとする機能と、変形してエネルギーを蓄えることにより衝撃や振動を吸収する機能の2つが利用されます。

反発力を利用した製品としては、2回クリックすると芯が収納されるボールペンや手を離すと元の位置に戻る押しボタン、使用すると芯が自動的に供給されるホッチキスなどに使用されています。

衝撃吸収の使用例としては、自動車の揺れを軽減するサスペンションがあります。 

圧縮スプリングの特徴

圧縮スプリングは、コイル状に巻かれた線材が塑性変形することによってその弾性エネルギーが反発力として作用します。したがって反発力の大きさは圧縮変位に比例し、反発力を圧縮変位で割った値をばね定数といいます。線材の径を大きくするとばね定数も大きくなり、幅広いばね定数の圧縮スプリングが生産されています。

ばね定数は圧縮スプリングの特性を示す値であるため、圧縮スプリングを選定する際にはこのばね定数とばねの長さが重要視されます。

反発力として使用する場合には、設計あるいは予想される変位と発生させたい反発力からばね定数を見積もります。

衝撃吸収に使用する場合には、設計上受け止められる変位の長さと想定される瞬間荷重からばね定数を決定します。また、システム全体の固有振動数が外部から加えられる周期的な力の振動数と一致しないようにする(共振しにくくする)ことも重量です。衝撃吸収の用途としては、圧縮スプリングは振動を吸収するダンパと組み合わされる事例が多くあります。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/kikaikiso_0304/
https://www.samini.co.jp/engineer/jirei.html 

 

圧力トランスミッタ

圧力トランスミッタとは圧力トランスミッタ

圧力トランスミッタは圧力を伝送する機器です。

圧力計との違いは圧力計はあくまでも現場で圧力を表示し、実際に目視する必要がありますが、圧力トランスミッタは圧力を電気信号で伝送するので遠隔からでも圧力の監視が出来ます。もちろん、デジタルの表示器と組み合わせて現場で確認する事も可能です。

ファクトリーオートメーションが進んでいる現在では、圧力の自動監視による制御やアラームは省力化のために必須です。その為圧力トランスミッタは無くてはならない物になります。

圧力トランスミッタの使用用途

圧力トランスミッタは圧力監視が必要な箇所に取り付けられます。

例えば高圧の圧力を保持するタンクや圧力を制御するコントロール弁の制御用に使用します。

圧力トランスミッタ現在の圧力を電気信号を介して常に表示できるので、圧力のコントロールにも使用できます。特に圧力が上昇する事で大きな事故に繋がる圧力タンクでは、安全弁などの使用も一般的ですがその前に警報を発して機器を止める為に圧力トランスミッタ―が使用されることもあります。

圧力トランスミッタの原理

圧力トランスミッタの構造は圧力計とは大きく違います。一見圧力トランスミッタはただの筒状の機器ですが、その先端にはダイヤフラムと呼ばれる膜がついており、そのダイヤフラムにひずみゲージを取り付ける事でダイヤフラムの変形を圧力に変換します。

基本的にダイヤフラムはSUS304などのステンレス鋼で作られており、高い耐久性を発揮します。また、ダイヤフラムの材質を変える事で多種多様なプロセス流体に対応する事が出来ます。

さらにダイヤフラムが変形した信号をひずみゲージが圧力に変換し、それを4-20mAのアナログ信号として出力する事で、圧力の連続的な変化も測定する事が可能です。

気を付けなければいけない事は圧力トランスミッタは使用する圧力により圧力レンジとして製品の規格が定まっています。特に真空が測定できない物はいくら真空を発生しても「0」としか表示されないので注意が必要です。

また、もし圧力トランスミッタが故障した場合や断線した場合などに、設備が危険な方向へ行かないようなソフトウェアも作成する必要があります。

噴射ノズル

噴射ノズルとは

噴射ノズル

噴射ノズルとは、高圧に圧縮された微量の液体や気体を微細な霧状にして空間内へ噴射することができる器具です。

噴射ノズルをエンジンに用いる場合、燃料を噴射して気化させることで素早く着火させたり、密閉空間全体に燃料を分散させることが求められており、エンジン特性に応じた噴射ノズルが使用されています。

噴射ノズルの使用用途

噴射ノズルは液体や気体を微細な粒子にして、霧状に噴射することを目的として設計されたシステムで、この特徴を応用した機械設備等で使用されています。

1. ディーゼルエンジン

ディーゼルエンジンは、軽油燃料を圧縮ポンプで高圧燃料にしてエンジン燃焼室へ送り込むため、噴射ノズルは燃料噴射口の役割を持つインジェクターノズルから、高圧燃料をエンジン燃焼室に送り込むシステムとして活用されています。燃料を効果的に霧状にするため、ノズル形状は様々な種類があります。

2. 直噴ガソリンエンジン

燃費改善のためガソリンエンジンへ直噴インジェクターノズルを採用する事例があります。特に4輪乗用車や2輪車へ活用する事例が多く見られ、燃料高圧化による燃費改善システムかつ環境配慮型製品として、自動車メーカー各社が採用しています。

3. 高圧噴射システム

液体や気体を高圧で活用したい場合に噴射ノズル採用事例が多く見られます。噴射ノズルはスプリンクラー装置に利用されたり洗浄や清掃で利用する機機などへ、高圧噴射システムとして活用されています。特に気体では高圧気体を噴射ノズルシステムを用いて、エアー洗浄やエアーシャワーカーテン等へ使う事例があります。

4. 機械装置

この他にも塗布・塗装を行う機械装置で噴射ノズルが活用されたり、加湿、消火、加熱冷却などの温度調節を目的とする機械装置にも採用されています。

噴射ノズルの原理

液体噴射用の噴射ノズルは一流体ノズルと二流体ノズルの2種類に大別することが出来ます。一流体型と二流体型では液体を微細化する方法が異なっています。一流体型は液圧を利用してノズルへ液体を押出し噴出させる構造をしており、二流体型は流体の流れを利用して液体自体を粉砕し粒子状にしたものをノズルから噴出させる構造をしています。

気体噴射用の噴射ノズルは、コンプレッサブロアなど、用途によって機構が異なります。

噴射ノズルの種類

噴射ノズル (インジェクションノズル) はノズルボデーとニードルバルブ (針弁) で構成されており、3種類のノズルが存在します。

1. ホールノズル

流体の広がりを得るために、ある角度(噴口角)でノズルが設計されている。

2. スロットルノズル

噴射量を絞る機構を得るために、絞り口を工夫したノズルが設計されている。

3. ピントウノズル

ノズルボデーに副噴口が設けられており、渦流室に設置できるノズルとして設計されている。

噴射ノズルのその他情報

噴射ノズルの特徴

噴射ノズルは高圧流体を最良の噴霧状態にして噴霧することができるシステムで、ノズル構造を変えると粒子大きさや噴射量が変わるため、噴射効率を高くして目詰まりの少ないノズルシステムが作れます。また噴射ノズルを液中で噴射させる構造とすることで、噴射時の負圧を利用して液中内の液体をノズルシステム内に取取り込み、通常の3倍以上の液体を噴射できるシステムが作れます。以下の特徴を活用してシステムが設計されます。

1. 微細化
微細な霧状にすることができる。

2. 貫通力
密閉空間の隅々まで噴霧を確実に到達させる。

3. 分散・分布
噴霧を広範囲に分散・分布できる。

4. 油密性
噴射終わりには、気体や液体を遮断し漏れを起こさない。

参考文献
https://www.tpc.toray/product/nozzle/noz_006.html#/
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/221000829969/

呼気ガス分析装置

呼気ガス分析装置とは呼気ガス分析装置

呼気ガス分析装置とは、呼気に含まれる酸素や二酸化炭素の容量やその濃度を検出し、分析できる装置のことです。

呼気を分析することは、運動能力の中でも心肺機能の能力を知るために重要な情報が得られます。いわゆるスポーツとしての運動には瞬発力が求められる無酸素運動と、持久力が求められる有酸素運動に大別することができます。運動中の呼気を分析することによって、被験者がどの程度の運動強度まで有酸素運動で活動でき、どの強度から無酸素運動になるのかを知ることが可能です。

呼気ガス分析装置を用いることで、呼吸だけでなく循環と代謝のサイクルを総合的な指標として利用することができます。運動競技者の持久力の測定などに利用したり、心疾患を持つ患者の心機能の分類や、治療効果の指標などにも利用されており、トレーニングやリハビリテーションの効果的な処方の作成に貢献しています。

呼気ガス分析装置の使用用途

呼気ガス分析装置は、主にプロスポーツ選手を含むハイレベルな競技者の心肺機能の評価に用いられます。特に持久力が勝敗の鍵を握るマラソンや陸上の中長距離競技、水泳競技、自転車競技などの種目において、心肺機能の優劣が勝敗を左右すると言っても過言ではありません。

スポーツ分野以外においては、医療業界でも利用されています。例えば心不全における心機能分類の指標にしたり、治療効果の判定、リハビリテーションや運動療法を実施する際に、どの程度の運動強度が適切なのかを呼気ガス分析装置を用いて検討する場合があります。

呼気ガスを分析したデータを即時的に取得し、パフォーマンスを解析することでより効率の良いトレーニングの提案をすることや、カロリー消費や栄養補給などのタイミングを、効果の高い理想的なタイミングを設計できます。

呼気ガス分析装置の原理

呼気ガス分析装置は大きく4つの分析装置が組み合わされているのが一般的です。まず一回換気量を測定する流量計、次に酸素と二酸化炭素の濃度計などから構成される測定装置、3つ目に測定結果から必要な基本データを計算する演算装置、そして演算結果にその他のデータを付加して総合的な分析を行う解析装置の4つです。

演算装置では呼吸数のカウントや呼気と吸気を区別したり、酸素の摂取量と二酸化炭素の排出量などを計算します。そして、得られた数値を解析により、パフォーマンスなどを分析できます。

呼気ガス分析装置ではガスマスクのように使用者の顔に装着するため、様々な運動時の測定が可能です。呼気ガス分析装置は、呼気だけでなく酸素摂取量、呼吸の回数、呼気の温度や湿度、酸素換気量なども測定できます。

呼気ガス分析装置のその他情報

人が運動するためにはエネルギーを作り出さなければならず、その能力は有酸素運動と無酸素運動との閾値に大きな関係があります。呼気ガス分析装置は、アスリートのパフォーマンス測定に重要な役割を果たす装置です。

また呼気ガス分析装置を用いた運動能力測定の代表例に、breath-by-breath法とmising chanber法があります。それぞれに長所と短所があるため、評価の目的によって選ぶことが重要です。

breath-by-breath法
breath-by-breath法では呼気と吸気ガス濃度の差から、酸素摂取量 (VO2) や二酸化炭素排出量 (VCO2) を1呼吸ごとに、連続して測定します。1呼吸ごとに測定が行われるため、安静時から運動中、そして回復時まで分析できるのが特徴です。運動量を変化させながら試験する漸増負荷試験に適しています。一方で高速センサーが必要なことと、換気量とガス濃度との時間のずれを正確に補正することが必要となります。

mixing chamber法
mixing chamber法は被験者の呼気ガスを、ある容積のあるchamberに集めて混合してからガス分析を行う方法です。試験方法の性格から、ある一定時間の継続した運動状態において測定可能になります。比較的安価で技術的にも容易に実施できる測定ですが、運動開始時などの短期的な状態を把握することには適していません。

参考文献
http://www.npo-jhc.org/cepp/cpet1txt.html

吸音パネル

吸音パネルとは

吸音パネル

 

吸音パネルとは、室内においてクリアな音楽を楽しんだり、会話の際に相手の声が聞き取りやすくすることを目的として、壁などに設置されるパネルです。

音は空気の振動として空間に伝わりますが、室内では壁で振動した空気が跳ね返り、再び室内に伝わります。壁で反射して再び伝わってきた音は、ノイズや不快な音となり、本来の音の邪魔をしてしまいます。吸音パネルは、壁で発生する音の跳ね返りを低減させることにより、室内の音響環境を改善できるものです。

また、音響をコントロールして空間を設計することで、音を扱うスタジオやシアターなどで活用したり、会議室や学習環境で集中力を高めたり、病院で患者のプライバシーを保護したりするなど、様々な副次効果も期待できます。

吸音パネルの使用用途

吸音パネルは音楽スタジオ、ホールやシアターといった、音楽を楽しむ場所で使われています。音楽を楽しむ室内の壁で音の跳ね返りが発生すると、楽器などが発している本来聴きたい音を、跳ね返った音が邪魔してしまうためです。室内に設置された吸音パネルは、壁で音を吸収することにより、跳ね返る音を減らして楽器などから発生する本来の音を邪魔しないようにしてくれます。

音楽に関連する部屋だけでなく、オフィスや会議室、打ち合わせエリアなどでも使われます。多くの人が働くオフィスでは、様々な会話やOA機器の動作音が室内を飛び交っています。会議室や打ち合わせエリアなど、重要な会話が行われる場所では、吸音パネルを設置することで相手の声を聴き取りやすくなります。

また、病院や学校などでも、医師と患者さん、先生と生徒、学生とのコミュニケーションの場においても同じです。その他、余計な音が少なくなることによって、学習効果の向上や患者さんのプライバシー保護にも繋げることができます。

工場などの生産現場では、大きな音が連続して発生するような場所に吸音パネルを設置すると、労働環境の改善にも貢献できます。

吸音パネルの原理

振動した空気がパネル内に音として入り込んでくると、パネルの柔らかい素材との摩擦により、空気の振動が小さくなります。この摩擦による振動の低減効果により、本来ならば壁で跳ね返って再び室内に伝わってしまう音の量を低減させることが可能です。

吸音パネルの中には表面が細かい凹凸状になったものがあります。これは表面積を増やすことによって、吸収する空気の量を増やす効果を狙っています。また、細かい穴や細かい繊維状のものは、小さな空間の中で音を拡散させて吸収する効果があります。

吸音パネルは、吸音素材や層の作り方によって、吸収しやすい周波数が変化する点に注意が必要です。吸音パネルで吸収したい音を明確にした上で、低減効果が大きい吸音パネルを選択することが大切です。

吸音パネルのその他情報

遮音や防音との違い

吸音以外にも遮音や防音といった言葉があります。言葉は似ていても、意味は異なります。

遮音とは
遮音とは、空気の振動を遮断して伝えないようにすることです。振動を抑えるために、密度が高く重たいものを使います。具体的には鉄板やコンクリート、石膏ボードなどが挙げられます。

防音とは
防音とは、外から侵入してくる音を防いだり、室内から外部に音が漏れたりしないようにすることです。具体的には、吸音と遮音を合わせたものを指します。吸音や遮音のように具体的な効果を占めるものではなく、音の侵入や漏れを抑えるという概念を指しています。

効果的に防音を行うには、ここでご紹介した吸音と、重たいものを使った遮音を組み合わせることが大切です。

参考文献
https://www.daiken.jp/public/products/off_tone/
https://www.acoustic-advance.co.jp/sound/sound_absorptive_panel.html
https://www.sonorize.jp/kyuuon-panel

印刷検査装置

印刷検査装置とは

印刷検査装置とは、印刷物を検査する装置です。

紙などの繊細な素材に繊細なインクで印刷した印刷物などでは、特に素材や条件の微細な変化で印刷の品質がばらついてしまいます。また、その日の気温や湿度の変化もばらつきの要因です。そこで、印刷の品質を保つために印刷検査装置による検査が行われています。

従来は人の目視による検査が一般的でしたが、人件費がかかることや検査する人によって合格ラインのばらつきがあること、均一な品質の保証が困難であることなどの問題点がありました。そこで、画像処理技術を用いた印刷検査装置が開発されました。

印刷検査装置の使用用途

印刷検査装置は、印刷の品質を検査するものです。印刷の品質を構成する要素としては、印刷ミス以外に、印刷かすれや欠け、インクだれ、にじみ、ピンホール、色のばらつき、文字や画像の欠落、しわなどがあります。印刷検査装置では、これらの要素を選択的に検出することも可能です。

また、紙の印刷物だけでなく、プラスチックやフィルムなどの印刷物にも対応し、ラベルや梱包材などの様々な用途の印刷物の検査に対応しています。この検査は、従来人の目視により行うのが一般的でした。

画像処理技術を用いて検査を自動化したことにより、人による検査と比べて検査の速度や精度の大幅な向上が望め、生産性が向上します。また、人手を減らせるので、人的コストの削減も可能です。さらには、印刷不良の製品を素早く検知、分別も可能で、後工程の印刷でのインクや後工程の作業の無駄が抑えられます。

印刷検査装置の原理

印刷検査装置は、画像認識処理の技術を用いて検査しています。簡単に言えば、全くミスがない状態で印刷された場合の画像データと実際に印刷した製品の画像データを比較して検査する装置です。印刷ミスや印刷かすれなど、品質保持のために必要な要素を比較するとともに、その度合いも比較できます。

具体的には、全く欠陥がない状態で印刷された画像データをマスター版として装置に登録し、このマスターデータを基に検査したい項目と精度や検査をする範囲を設定します。続いて行われるのが、検査したい印刷物をスキャンして装置への読み込み、登録したマスターデータと検査対象データとの画素単位の比較です。

印刷検査装置では、データの中の様々な値を比較しています。その中で最も一般的なのが、色の差である濃度差です。濃度差がある箇所では何かしらの印刷不具合が生じているため、次にこの濃度差が生じている部分のサイズ、つまり画素数を検出します。そして、許容される品質を保持できるサイズを閾値とし、閾値外のものを不良品として検出します。

印刷検査装置の種類

1. インライン検査装置

インライン検査装置は、生産ライン内に設置される装置で、生産しながら印刷検査ができます。生産ライン内に配されている多ため、全数および製品の全面検査ができることがメリットです。

不良品の排出は、ナンバリング装置およびテープインサーターなどを利用してマークし、明確化する方法と、後付けリジェクターやダブルデリバリーを使用して、自動的に排出する方法があります。インライン装置のデメリットは、検査のあとの工程、例えば加工工程で発生する欠陥などには対応できないことです。

2. オフライン印刷検査装置

生産ラインに別の搬送機を設置し、その搬送機上にオフライン印刷検査装置を設けます。メリットは、生産後に全数検査が可能なこと、最終工程での不良品の排出を検査と同時にできることなどです。デメリットは、搬送機を配置するスペースが別途必要なことです。

3. オフライン刷り出し・抜き取り検査装置

この装置は、刷り出し時や抜き取り時の印刷物の版キズや文字欠けなどを検査します。印刷物を完全に固定した状態で検査するため、スキャンの画質や精度が上がることです。一方、抜き取り検査となるため、全数検査ではないのがデメリットです。

印刷検査装置のその他情報

OK刷り出し印刷物

印刷検査装置のマスター版としては、通常刷版データであるRIPデータを使用しますが、OK刷り出し印刷物のデータを使用する場合があります。RIPデータは、印刷物を作成するために、各種アプリケーションで作成されたデジタルデータを印刷機器で印刷できるよう「網点」と称される小さなドットの集合に置き換えたデータです。

一方、OK刷り出し印刷物とは、実際に印刷をおこなって得られた基準となる印刷物です。OKシートとも呼ばれています。所定の枚数を印刷したところで各印刷物を比較し、その工程で品質の基準となるOK刷り出し印刷物を選んでいます。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nig/49/6/49_380/_pdf/-char/ja
https://www.jp.gtb.co.jp/correcteye-sis