多変量解析ソフトとは
多変量解析ソフトとは、多変量解析を行うことができるアルゴリズムやツールの機能を備えたソフトのことです。一般に、ユーザーが自らプログラムをすることなく、解析方法をソフト上で選択することで、難解な数式の複雑なプロセスをコンピューターが処理し、解析結果を容易に得ることができるソフトのことを指します。
多変量解析ソフトは、様々な多変量解析の手法のアルゴリズムを搭載しており、例えば、主成分分析、重回帰分析、ロジスティック回帰分析などがあります。多変量解析ソフトは、研究開発から製造まで、膨大な量のデータを扱う現場で使用されており、多くの因子から重要因子を特定すること、因果関係の推察や背景情報に基づいた予測などが可能です。
時系列データ、量的データ、カテゴリカルデータなどを扱うことができ、これらの解析をすることができます。活用される分野は多岐にわたっていて、医学や薬学、化学などから、製造やマーケティングまで様々です。
多変量解析ソフトの使用用途
多変量解析ソフトは、様々な業界のデータを扱う分野で使用されており、目的や用途に合わせてより適した解析手法を用いています。解析手法ごとの使用用途は下記の通りです。
1. 主成分分析
主成分分析では、多変量のデータを二次元( 第一主成分と第二主成分 )に集約し、二次元プロットでデータの散らばりを表します。人が直感的に把握できる二次元に集約することで、データの特徴を把握しやすくします。また、散らばりの観察から、外れた点を外れ値として検出することにも用いられます。
2. クラスター分析
クラスター分析は、複数の因子で表現した個々の対象物の間の距離を計測することで、対象物をクラスターとしてグループ分けします。例えば、アンケート回答に基づいて回答者を回答群や質問項目群の距離を計測することで、クラスターをグループ分けする際などに使用されます。
3. 重回帰分析
重回帰分析は、1つの目的とする数値を、説明変数を複数用いて予測を立てる手法です。例えば、売り上げに影響する因子が多数あるという仮説のもと、因子それぞれの影響度を推定することで、売上予測などを立てたい際に使用されます。
4. 構造方程式モデリング( SEM )
今までに紹介した個々の分析技法とは少し捉え方が異なりますが、近年注目されている構造方程式モデリングについて触れます。構造方程式モデリングは、共分散構造分析とも呼ばれ、共分散を用いてデータの背後にある構造を推定する分析方法を統合的に指す言葉です。
個別に実現する解析手法としては、重回帰分析、因子分析、パス解析などが含まれます。特に、パス解析といって、多項目のアンケート結果から、回答者をとりまくどのような要因がどのような行動につながっていそうか、といった因果関係の推定をする手法が注目されています。
5. その他
前項で例示したように、アンケート結果の傾向分析や、販売戦略の検討に使われ、マーケティングや社会科学研究に用いられています。また、理科系の研究において、多成分化学分析の結果から、分析対象の分類を行うことがあります。
例えば、工業製品の化学分析により、製品の異同を推定することや、野菜の成分分析により産地を推定することができます。また、製造元の異なる多数の製品の特徴をグループ分けすることも可能です。このように、化学分析分野での応用例はケモメトリックスと呼ばれ、近年利活用が広がっています。
多変量解析ソフトの原理
多変量解析ソフトには、多変量解析を行う際に必要な計算アルゴリズムが内部プログラムとして組み込まれています。パッケージソフトとして優れたグラフィック・ユーザー・インターフェース( GUI )を実装したものが多く、使用者は必要なデータを入力し、行いたい解析を選択するだけで複雑なプロセスがすべてコンピューターによって処理され、解析結果を得ることができます。
あるデータに対し異なる解析を試す場合も、マウスクリックなどで切り替えることが可能です。これらの特徴は、使用者が自らアルゴリズムを考えてプログラミングする方法とは大きく異なります。
多変量解析ソフトの選び方
多変量解析ソフトは、試用してから購入することをおすすめします。理由として、多変量解析は年々進歩している分野であるため、ソフトによる差異が大きいからです。
多変量解析ソフトを選ぶ際は、「実現したいことができるか」「使い勝手が良いか」の2つが重要なポイントになります。また、近年はソフトが複雑化しているため、有償の保守サービスを提案するベンダーが増えてきています。
保守に加え、運用上のトラブルシューティングやユーザートレーニングをセットにしている場合も多いです。この場合は、試用の感触から、技術支援の要否を判断するとよいでしょう。
多変量解析ソフトのその他情報
多変量解析のパッケージソフト
多変量解析のパッケージソフトでは、使用者が自ら具体的な計算方法を知っている必要はありません。近年ではプログラムソフトを用いる場合のプログラムコードが多数公開されていますが、やはり、プログラムの知識が無くとも解析を実行できるという、パッケージソフトの利点は大きいです。
ただし、パッケージソフトを利用する場合でも、データの構造、解析の意義、目的にあった解析法の選択についての知識を持つことは最低限必要です。ベンダーによってはこれらについてユーザートレーニングを実施しているところもあります。運用するにあたり、使用者の理解を促進するために、このようなトレーニングを活用することを考えてもよいかもしれません。
参考文献
https://www.infocom-science.jp/product/detail/simca.html
https://istat.co.jp/software/01
https://www.albert2005.co.jp/knowledge/statistics_analysis/multivariate_analysis/multivariate_method
https://istat.co.jp/ta_commentary